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和歌山(関西)における災害廃棄物(がれき)広域処理の帰趨について

 震災がれき広域処理問題をめぐっては、各地で根深い対立や分断を生み出してきましたが、私の地元である和歌山県や関西広域連合では、大阪市を唯一の例外として、当面は自治体が岩手や宮城の震災がれきを受け入れて処理するという可能性は遠のきました。

 これらの動きは8月初旬のうちには明らかになっていましたが、あまり大きく報道されることもなかったようなので、2012年8月26日に配信した「メルマガ金原No.1078」を転載して確認しておきたいと思います。

 

和歌山(関西)における災害廃棄物(がれき)広域処理の帰趨について
 
 岩手・宮城両県で発生した東日本大震災由来の災害廃棄物(がれき)の広域処理問題については、受入の是非をめぐり、先鋭な対立と分断が「広域」に拡散するとう憂慮すべき事態となっていることは、皆さまご承知のとおりです。
 
 ただし、報道では大きく取り上げられていませんが、私の地元・和歌山市や関西広連合では、今月、大きな動きがありましたので、整理してご報告します。
 
 まず、8月の前段階として、6月29日に開かれた国の「災害廃棄物の処理の推進に関する関係閣僚会合(第三回)」を機に公表された「広域処理の推進に向けた取組状況(環境省)」が注目されました。
 
 また、同日、環境大臣より各都道府県知事、政令指定都市市長宛に「災害廃棄物の広域処理の調整状況について」と題する通知が発出されています。
「岩手県の可燃物・木くずの広域処理について、既に実施中の自治体及び最優先で広域処理の実現を図るとして調整中の自治体における広域処理の受入予定量により、広域処理必要量に達する見通しが得られつつあります。当面はこれら調整中の自治体における広域処理を確実なものとすることが重要であり、それ外の自治体との調整は当面見合わせることといたします。
 宮城県の可燃物についても、既に広域処理実施中の自治体に加え、新たな受入れ表明も行われており、大きく進展してまいりました。今後は、宮城県内の仮設焼却炉の処理能力を考慮し、ある程度まとまった量の処理が可能な施設での受入れを対象に調整を行うことといたします」
 
 以上が6月末段階での状況でしたが、翌7月27日、関西広域連合から環境大臣宛に「東日本大震災により発生した災害廃棄物の今後の広域処理の方針について(照会)」という照会文書が送られました。
東日本大震災により発生した災害廃棄物の広域処理については、関西広域連合(以下「広域連合」という。)から平成23年12月に照会した処理のための基準の明確化及び処理の全体方針スケジュール等について、本年1月に開催した関西広域連合委員会において貴省から直接御回答をいただきました。これを受けて、広域連合では、災害廃棄物を受け入れる場合の統一した目安値を3月に定め、構成府県及び大阪湾広域臨海環境整備センター(以下「センター」という。)に対して取組を要請し、センターは7月25日付けで安全性の個別評価を貴省に申請しています。
 この度、7月25日に宮城県災害廃棄物処理実行計画(第二次案)が策定されましたが、これを踏まえた災害廃棄物の今後の広域処理の方針について見解を確認したいので、御回答くださるようお願いいたします」
 
 この関西広域連合からの照会に対する環境大臣からの回答が8月7日付で発出されました。
 
 また、同日付で、環境大臣から大阪湾広域臨界環境整備センター(通称「大阪湾フェニックス」)宛にも回答書が届いており、実質同文なので、こちらを引用します。
「本日開催された、災害廃棄物の処理の推進に関する関係閣僚会合では、平成26年3月末の目標期間内での災害廃棄物処理を確実なものとしていくため、東日本大震災に係る災害廃棄物の処理工程表」を策定・報告し、了承されした(別添参照)。この工程表においては、災害廃棄物の処理状況、被災県における処理計画、広域処理の調整状況と今後の方針、災害廃棄物の処理の工程表・目標を取りまとめ、災害廃棄物処理の全体計画を明らかにしたところです。今後、この工程表に定める目標達成に向けて、毎月の進捗管理を行い、その結果に応じて、必要な施策を講じてまいります。
 この中で、可燃物・木くずの広域処理については、岩手県の可燃物・木くず及び宮城県の可燃物は具体的な受入れを調整している自治体や受入実績のある自治体の追加的な協力が得られれば、目標期間内の処理が実現できると見込まれる状況であり、新たな受入先の調整は行わず、これらの自治体との調整を行うこととしました。また、宮城県の木くずは、県の意向を踏まえ、単純焼却ではない再生利用の受入先に限定し、近県での処理を優先して調整を行うこととしました。
 従いまして、平成24年7月25日付けで当職あて依頼のありました「災害廃棄物の埋立処分に関する個別評価」を行わないこととさせていただきますのでよろしくお願いいたします」
 
 上記回答でも触れられているとおり、8月7日に「災害廃棄物の処理の推進に関する関係閣僚会合(第四回)」が開かれ、そこで了承されたという「東日本大震災に係る災害廃棄物の処理工程表(環境省)」が、今後の「広域処理」のロードマップとなる訳です。
 
 そして、同日(8月7日)、環境大臣より各都道府県知事、政令指定都市市長宛に「東日本大震災に係る災害廃棄物の処理工程表の策定について」と題する通知が発出されました。
  各都道府県知事宛
  ※ 和歌山県知事宛は48、49ページ
     大阪府知事宛は43ページ
(和歌山県知事宛)
「この中で、可燃物・木くずの広域処理については、岩手県の可燃物・木くず及宮城県の可燃物は具体的な受入れを調整している自治体や受入実績のある自治体の追加的な協力が得られれば、目標期間内の処理が実現できると見込まれる状況であり、新たな受入先の調整は行わず、これらの自治体との調整を行うこととしました。また、宮城県の木くずは、県の意向を踏まえ、単純焼却ではない再生利用の受入先に限定し、近県での処理を優先して調整を行うこととしました。これまでの間、内閣総理大臣及び環境大臣からの広域的な協力の要請に対し、真摯に御検討いただいた全ての自治体のおかげであり、そのことに対し、心より感謝いたします。
 また、岩手県の漁具・漁網、宮城県の不燃混合物については、一部受入れ調整中ですが全体の見通しが立っていない状況ですので、具体的に検討いただける受入先があれば、特段の御協力を御願いします」
(大阪府知事宛)
「この中で、広域処理については、岩手県の可燃物・木くず及び宮城県の可燃物を対象に、大阪府を含め具体的な受入れを調整している自治体について、その調整状況をとりまとめました。処理工程表に定める目標を達成し、被災地における御協力が不可欠ですので、引き続き、広域処理の着実な実施に向け、御協力くださいますよう、改めてお願い申し上げます」
  各政令指定都市市長宛
  ※ 大阪市長宛は17ページ(大阪府知事宛と同文)
     北九州市長宛は28ページ 
 
 以上の動向を踏まえ、8月9日、和歌山市一般廃棄物課は、「東日本大震災により生じた災害がれきの今後の広域処理の方針について」という文書を作成しました。これは、関係部局や市議会宛の「報告」文書として作成されたもののようですが、「子どもたちの未来と被ばくを考える会」事務局からの問い合わせに対し、オープンにして「可」という回答が得られているとのことなのでご紹介します。
「1 経緯
 昨日(8/8水)、関西広域連合及び大阪湾広域臨海環境整備セン
ター(フェニックス)より、環境省から『「災害廃棄物の埋立処分に関する個別評価」を実施しない旨』の回答があったと連絡が来る。
2 内容
 国では8/7(火)に開催された、「災害廃棄物の処理の推進に関する関係閣僚
会合」において「東日本大震災に係る災害廃棄物の処理工程表」が了承された。その行程の中で、今後の広域処理の方針としては、『岩手県の可燃物・木くず及び宮城県の可燃物は具体的な受入れを調整している自治体や受入実績のある自治体の追加的な協力が得られれば、目標期間内の処理が実現できると見込まれる状況であり、新たな受入先の調整は行わず、これらの自治との調整を行う。』とされたため、フェニックスにおける個別評価は実施しないこ
とが決まった。また、その工程表の策定により、同日8/7付けで各都道府県知事宛に今後の広域処理の方針とあわせ、謝意の通知が送付された。
3 結果
 上記の経緯により、最大の懸念事項であった災害がれきを焼却した際に発
する焼却灰をフェニックスにおいて埋めることができなくなったため、青岸清掃センターでの焼却は不可となり、実質上、本市における災害がれきの受入れは出来なくなった。また、国からの今後の広域処理の方針により、新たな受入先の調整は行わないため、本市の広域処理の必要は無くなった」
 
 以上は和歌山市の動きですが、関西広域連合においても、去る8月23日に鳥取市で開かれた委員会(首長会合)において、災害がれき受入手続の中止を正式決定したと伝えられています(読売新聞・京都版)。
関西広域連合は、鳥取市で開いた23日の首長会合で、東日本大震災で発生したがれきの受け入れ手続きの中止を正式決定した。兵庫県尼崎市沖と大阪府泉大津市沖の処分場でがれきの焼却灰を埋め立てる計画を進めていたが、国が今月7日、処分に見通しがついたとして手続き中止を連合側に伝えていた」
 
 ただし、以上はあくまでも「関西広域連合」の話であって、大阪府・大阪市と岩手との基本合意(8月3日付)はしっかり有効なままです。
 
 なお、環境省から、8月24日時点での「広域処理に関する地方自治体の状況」公開されています。
 ざっと目を通したところ、西日本では、北九州市と大阪市が突出していますね。
 
 和歌山市議会が「東日本大震災に伴い発生した瓦れきの受け入れに関する決議」をするらしいということが分かり、若いお母さんたちが中心になって決議反対の陳情行動を行ったにもかかわらず、全会一致で受入決議が行われたのが3月22日のことでしたが、それから4か月半後の「帰趨」は以上のとおりとなりました。
 もともと正当性の疑わしい「広域処理」が国策として推進されるという異常事態が今も進行していますが、北九州と大阪を除き、和歌山を含む西日本の多くの地域が、とりあえずではあるものの、受入阻止を果たしつつあることは評価すべきだと思います。
 
 以上、8月時点における災害廃棄物(がれき)広域処理問題についての中間告とします。
 
(追記)
 和歌山市が、環境省の方針を受けて、「実質上、本市における災害がれきの受入れ出来なくなった」という認識を示す文書を作成したのが8月9日のことでしたが、それから一月近くが経った9月3日、ようやく同市のホームページに市長名による文書が掲載され、上記方針が公式に確認されました。
東日本大震災に伴い発生した瓦れきの受け入れについては、平成24年3月22日和歌山市議会において「東日本大震災に伴い発生した瓦れきの受け入れに関する決議」が可決され、現時点での和歌山市の考え方を、私からのメッセージとして申し上げたところです。
 その後、被災地における現地状況調査を行ったり、廃棄物処理施設や放射能の基
準などの諸問題について、いかに市民の皆さんが安全に、また安心してもらい、受け入れが可能かどうかを検討して参りました。
 このような中、先般、国より今後の広域処理の方針について、大阪湾広域臨海環境
整備センター(フェニックス)での「災害廃棄物の埋立処分に関する個別評価」を実施しない旨の回答があり、実質上、本市における災害瓦れきの受入れは出来なくなりました。
 また、それと同時に国が策定した「災害廃棄物の処理工程表」では、新たな受入先の調整は行わず、既存の自治体との調整を行う旨が示され、実質上、本市における広域処理の必要は無くなりました。
 これを受け、本市における災害瓦れきの受け入れ検討を終了することにしました。
 ただ、被災地におきましては、災害瓦れきが全て処分されたわけでなく、また広範囲に
壊滅的な被害をもたらされた被災地では、復旧と復興に向け、今もなお全力で取り組まれております。
 和歌山市においても災害瓦れきの受け入れ検討は終了いたしますが、今後も、被災
地の復興のために、できるだけ支援を行っていきたいと考えています。
 市民の皆様におかれましても被災地への支援に対するご理解、ご協力を引き続きよろ
しくお願い申し上げます。
                             平成24年9月3日
                             和歌山市長 大橋 建一  」