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「怒り」を「活力」に換えて(石田衣良氏の発言を読んで)

 「メルマガ金原」アーカイブス・シリーズです。2012年の年頭1月3日に配信したNo.778とNo.780から転載します。ネットに掲載されていた石田衣良氏へのインタビューを読んだことによって呼び覚まされた「怒り」を何とか建設的な「活力」に換えなければと思って書いたものです。もちろん、石田氏のこの発言を批判したブロガーは何人もいましたから、今さらブログに転載しなくてもともという気もしますが、他方、石田氏に代表されるような「いい気な態度」は、日本人の少なからぬ層に共有されているのではないかと感じることがしばしばありますので、なおお読みいただく価値はあるかと思います。
 
「怒り」を「活力」に換えて(石田衣良氏の発言を読んで)
 
 昨晩(1月2日)、OurPlanet-TVで「ContAct」の特別版として『私たちの未来は大丈夫?~子どもが考える原発と被曝』という素晴らしい2時間番組が放映されましたので、ご紹介しようと思ったのですが、この番組に登場する子どもたちとあまりにも対照的な「大人」の発言を目にしてしまい、対比させる意味で1本のメルマガにまとめて取り上げようかと思ったものの、よく考えてみると、それでは子どもたちに失礼だろうと思い直し、まずはその「大人」の発言だけをご紹介することにしました。
 
 皆さんは、石田衣良(いしだいら)という作家をご存知でしょうか?直木賞を受賞し、TVなどにもよく出ているらしいのですが、私は関心を持ったこともなければその文章を1行たりとも読んだことはなく、まあどうでも良い存在でした。
 ちなみに、1960年東京生まれだそうです。
 
 その石田衣良氏を何故メルマガで取り上げる事態になったかというと・・・
 小学館が運営する「NEWSポストセブン」というサイトがありますが、新年早々、同サイトに石田衣良インタビューが1日、2日と続けて掲載されました。
 
 1月1日に掲載されたインタビューは「50歳になった日本は一度早めに破綻するのもいい」というもので、「暴論なんだけれど、一回早めに破綻するのもいいかなあ(笑)。今の日本ほど、世界の中で潰れちゃってかまわない国はないかな。日本車が無くなれば韓国から買えばいいし、家電もそう。日本が無くなって世界の人が困るのは漫画とゲームが消えることぐらいでしょ」などと言いたい放題で、石原慎太郎「津波天罰」発言と同根だろうと思うものの、私が問題視するのはこれではありません。
  
 問題は、2日に掲載された「日本人は東京電力と社員を憎むのを止めた方がいい」というインタビュー記事です。
 まあ、我慢して全文を読んでください。
 
 以下に、特に問題だと思う部分を抜粋して引用します。
(引用開始)
2012年をどう生きるか。常に時代と切り結ぶ小説を世に問うてきた、直木賞作家・石田衣良さんに聞く。2回目のテーマは「震災と小説家」。(聞き手=ノンフィクションライター・神田憲行)
(中略)
――たしかにとくに原発問題では、文化人だけでなく財界人や芸能人まで口を揃えて反原発の大合唱ですね。
石田:いま日本のインテリが立ついちばん安全で正しい場所は「反原発」と「エコ」ですから僕自身は反対でも賛成でもないけれど、客観的に電力事情をみれば原発を残さざるを得ないだろうなあと思っています。全ての悪も危険も排除して生きていくことは不可能なのだから。現代人は常に不安やストレスにさらされていて、そのはけ口として外部に単純な悪を設定したがる。外国ならそれが移民排斥などの民族問題になるんでしょうが、日本の場合は一部韓国や中国に向かっている以外は、今は東京電力や政府に向かっているんじゃないでしょうか。でも地震が起きる前はみんな、普通にテレビをみたりゲームをしたりして原発の恩恵にあずかっていたわけですから。正当な批判はすべきなんですが、「会社を潰してしまえ」とか「社員の給料をゼロにしろ」とか、無茶苦茶なことをいう人もいる。でも簡単に人を憎むのは止めた方がいいですよ。心の機構がそうなってしまうと、次からは人を憎むことでしか自分の確認出来なくなってしまうから。
(引用終わり)
 
 あまりの程度の低さと「上から目線」に呆れかえり、一々反論する元気もわいてきませんが、まあ、一応書いておきましょうか。
 
インタビュアー:たしかにとくに原発問題では、文化人だけでなく財界人や芸能人まで口を揃えて反原発の大合唱ですね。
→この神田憲行というインタビュアーの程度がそもそも低すぎる。十把一絡げに「反原発の大合唱」というのがあまりに大ざっぱすぎるだけではなく、意図してか無知なのか、明らかなミスリードになっている。明確に「反原発」を公言している「芸能人」がどれだけいるのか?ましてや「財界人」においておや(日本経団連理事会の中で孫正義氏の発言を擁護した理事は1人もいなかったというのに。「スズキ」や「城南信用金庫」のリーダーは例外中の例外)。
 
石田:いま日本のインテリが立ついちばん安全で正しい場所は「反原発」と「エコ」ですから
→「自分は普通の『インテリ』よりも上に立っている」という鼻持ちならない意識。
 
石田:客観的に電力事情をみれば原発を残さざるを得ないだろうなあと思っています
→恥ずべき「無知」。
 
石田:全ての悪も危険も排除して生きていくことは不可能なのだから
→一見もっともらしい命題を持ち出しながら、実は論旨とは何の関係もない単なる「こけおどし」にしかなっていない。
 
石田:地震が起きる前はみんな、普通にテレビをみたりゲームをしたりして原発の恩恵にあずかっていたわけですから
→「それがどうした?」と言うしかないですね。3.11以降、何を考え行動したかが問題なのであって、少なくともこの石田衣良という人間が何も考えなかったことだけは確かでしょう。
 
石田:「会社を潰してしまえ」とか「社員の給料をゼロにしろ」とか、無茶苦茶なことをいう人もいる
→2チャンネルやそれと同じレベルの匿名投稿になら、東電「社員の給料をゼロにしろ」という「無茶苦茶な」主張はあったかもしれませんが、少なくとも私の知る限り、責任ある発言をした原発の論客の中で「社員の給料をゼロにしろ」などと主張した人は誰もいなかったはずです。「会社を潰してしまえ」ということなら私も最初からそう言っていますが、より正確に言えば、資本主義の論理と倫理に従い、役員、株主、融資元金融機関などのステークホルダーは、当然引き受けるべき責任を果たす義務があるという当然の主張をしているだけです。石田衣良関するウイキペディアの解説によると、一応成蹊大学経済学部を卒業しているらしいのですが、この知的レベルでは、まじめに経済学を学ぶといようなことはしていないに違いありません。
 
 インタビュー構成記事というのは、録音の文字起こしそのままではなく、当然、インタビュアーや編集者の視点から構成されるものですから、それなりに割り引いて読む必要はありますが、それにしてもあんまりですからね。
 そもそも、小学館サイトの新春インタビューとして掲載されることが分かっていて、このような発言をするということは、「こういう風に発言すれば人からエラく思われるだろう」と石田衣良氏が判断したということでしょうから(講談社サイトならこういう発言はしなかった?)、世間の一般的な風潮とそれほど乖離はしていない可能性もあり、実はそのことが最大の問題かもしれないのです。
 私たちは、このような発言からもたらされた「怒り」をそのままため込んだり怨んだりするのではなく、反原発に向けた「活力」に転換する必要がある、と痛感させられたのでした。
 

石田衣良氏の「原発 私はこう思う」
 
 今日のメルマガNo.778で、石田衣良インタビュー「日本人は東京電力と社員を憎むのを止めた方がいい」をご紹介しつつ、「インタビュー構成記事というのは、録音の文字起こしそのままではなく、当然、インタビュアーや編集者の視点から構成されるものですから、それなりに割り引いて読む必要はありますが」という留保を付しておきましたが、この留保は撤回します。
 
 昨年8月19日、「報道ステーション」(テレビ朝日)が「原発 私はこう思う」というシリーズを連続放映した内の1本として、石田衣良氏が原発について語った映像を放映していました。
 
 今度こそ、一々反論する気にもなりません。
 これが「まっとうな(?)」原発推進論であれば、論理的に批判することも可能でしょうが、思考の道をたどることも困難な、論理性のかけらもない「ヨタ話」では、批判のしようもありません。
 
 とりあえず、この人物の話題はこれで打ち止めにします。