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2012年2月:TPP協定(日本との協議に関する米国政府意見募集の結果概要)について

 今晩(2013年3月20日)配信した「メルマガ金原No.1299」を転載します。
 
2012年2月:TPP協定(日本との協議に関する米国政府意見募集の結果概要)について
 
 これほど重要な情報が、1年以上も前から、しかも外務省の公式サイトに堂々と掲載されているということに全然気がついていなかったというのは実にうかつなことでした(もちろん、気がついていた人もたくさんいたのでしょうが)。
 
 外務省サイトの中に「環太平洋パートナーシップ(TPP)協定交渉」というコーナーが設けられており、政府サイドが収集した資料が集積されています。
 
 このコーナー中の「TPP交渉参加各国等に関する資料」の中に、昨年(2012年)2月に掲載された「[米国]TPP協定(日本との協議に関する米国政府意見募集結果概要)」という資料があります。
 
 これは、TPP協定についての日本との協議について、米国政府が行った意見募集(いわゆるパブコメですね)についての回答結果(締切:2012年1月13日)を、日本政府が独自に集計・分析した資料です。
 
米国政府意見募集に提出されたコメント原文
 
TPP協定(日本との協議に関する米国政府意見募集の結果概要)
 
TPP協定(日本との協議に関する米国政府意見募集の結果概要:主要体の意見詳細)
 
 外務省サイトに掲載されているのはpdfファイルなので、印刷して読むには便利ですが、これをさらに汎用性を高めるためにテキスト化したサイトがありましたのでご紹介しておきます。
 
TPP協定(日本との協議に関する米国政府意見募集の結果概要:主要体の意見詳細)テキスト版(マスコミに載らない海外記事)
 
 米国政府のパブコメに意見を提出した各種団体のうち、TPPを積極的に推進すべきという意見を述べている団体の顔ぶれや意見の内容を読めば、TPPによって真に利益を得るのが誰か、彼らは究極的に何を目指しているのかが見えてきます。
 是非、詳細版を熟読していただきたいのですが、とりあえず概要版の一部を以下に抜粋して引用します(下線は引用者によるものです)。
 
(引用開始)
(3)肯定的意見の例
ア 全米商工会議所

TPP交渉参加に関する日本の関心表明を歓迎。日本経済の開放からは米国
の全ての関係者が裨益できる。日本は米国にとってアジアで最も重要な戦略的パートナーである。TPPをアジア太平洋地域の経済統合の先駆けとなし得る。さらに、TPPの枠内で共通の政策目標を追求し得る。全ての財・サービス及び貿易・投資に関する国内の障壁をテーブルに載せるべき。米国と同レベルの市場アクセスの確保を求める
イ 米国食肉協会
日本は米国にとって最大の豚肉輸出相手国、第三位の牛肉輸出相手国であ
ることから、日本のTPP交渉参加は大きな機会。他の交渉参加国が合意済みのものと同じ包括的な農産品市場アクセスへの合意、食品安全に関する国際的で科学に基づいた基準の遵守が必要。
ウ 全米製造業協会(NAM)
日・カナダ・メキシコの交渉参加を支持。TPP協定交渉は参入障壁に係る長
年の懸案を解決する機会を提供する。アプリオリの除外をすることのない包括的な合意へのコミット、合意済みの事項をリオープンしないこと、全ての貿易・投資障壁をテーブルに載せること等が必要。
エ 米国保険協会(ACLI)
TPP協定交渉への日本の関心表明を歓迎し、完全に支持。TPPは、公平
な競争、消費者の保護、消費者の商品選択、市場の効率性等を確保するため米国と日本が協調する機会を提供。
TPPのプロセスを通じ、かんぽ生命及び共済との競争をゆがめる政策・法律・
運用を除去又は修正すること、かんぽ生命による新規又は修正された商品の販売が認可されないこと、新たな措置の導入前に、影響を受けるTPP交渉参加国と優先的に協議すること等に合意するよう要望。
オ 米国速達協会(EAA)
日本が交渉参加するとの考えを支持。ただし、日本が高い水準の包括的な協
定(との基本的考え方)に合意するのが条件。交渉参加に関する議論においては、独占的な郵便サービス提供者に関連する競争促進的政策に対する支持を確保することが重要。
(引用終わり)
 
 また、同じく概要版には、以下のような記載もあります。
 
(引用開始)
●提出された意見の大部分は、日本のTPP交渉参加に肯定的。
・主な理由:日本は米国にとって主要な貿易投資相手国である、米国の輸出に大きな機会をもたらす、日米関係の強化に資する等。
・主な条件:現在の交渉スケジュールを妨げることとなってはならない、高い水準
を目指すことに対するコミットが必要、合意済みの事項についてリオープンしてはならない等。
●肯定的な意見であっても、我が国の一層の市場アクセス改善等を求める意
見が付されているものがある点につき注意が必要。
(引用終わり)
 
 詳細版を読めば、農業関連団体から日本による農産物に対する関税の撤廃を求める意見も出ているものの、非関税障壁打破(によるビジネスチャンスの拡大)を求める意見が圧倒的であることが分かります。
 とりわけ、保険業界からは、「かんぽ生命」「共済」をターゲットとした日本市場配の欲望が露骨にあらわれた意見が堂々と表明されています。
 また、郵便事業も危ないし、食品安全基準も「国際的で科学に基づいた基準」を押しつけよう(つまり「米国基準」に合わせろということですね)としています。
 さらに、外務省自身が正しくまとめているように、「現在の交渉スケジュールを妨げることとなってはならない、高い水準を目指すことに対するコミットが必要、合意済みの事項についてリオープンしてはならない」ということが大前提となっているのですから、3月15日の記者会見において安倍首相が表明した「交渉力を駆使し、我が国として守るべきものは守り、攻めるものは攻めていきます」というのが単なる「口から出まかせ」の「嘘八百」であることは明らかです。
 
 憲法、原発だけでも頭が痛いのに、よくこれだけ「反国民的」な政策を次々と繰り出せるものだと呆れてしまいます。
 ・・・と愚痴ばかりこぼしていても仕方がないので、一つ一つの課題について愚直に取り組んでいくしかないでしょうね。