今晩(2013年4月8日)配信した「メルマガ金原No.1319」を転載します。
憲法の危機に臨んで日弁連が公表した2つの意見書
怒濤のように押し寄せる「憲法改悪」に向けた荒波に抗して、1人1人が「絶対に認めない」という声をあげていかねばならない状況になっています。
そのような持続的な闘いに何よりも必要なものは、「自分は何を守りたいのか」という最も心の根っこにある信念であることは間違いないでしょう。
ただし、100人いれば100通りの信念があるはずで、人の受け売りでは信念にはなりませんから、ぞれぞれが自らの良心と自問自答を繰り返していくしかないでしょう。
さらに必要となるのは、個人の信念を支えるための理論的検討の成果だと思います。
人は「理屈では動かない」としても、「道理にかなった道はどちらの方か」を理論的に明らかにする営みは、私たちの進路を照らす導きの灯火ともなるものです。
優れた学者、識者の発言、論考を学ぶことは、そのような意味から重要です。
ささやかながら、このメルマガにおいても、学ぶに値すると私が考えた情報をご紹介してきましたし、これからもそのような努力を続けていきたいと思います。
以上のような長い前置きの後でご紹介するのが、私も会員の1人である日本弁護士連合会が発表した2つの意見書であるというのは、やや手前味噌的な気配が気にならないこともないのですが、現在、最も懸念される進行中の危機に対し、その問題点を理論的に明らかにして警鐘を鳴らすものとなっていますので、是非1人でも多くの方にお読みいただきたくご紹介します。いずれも、2013年3月14日に公表されたものです。
「憲法第96条の発議要件緩和に反対する意見書」
以上2つの意見書で取り上げられた問題、すなわち「集団的自衛権行使容認」と「憲法96条(改正条項)発議要件緩和」は、「9条明文改憲」の先取り、あるいは地ならしであって、この両者、あるいは1つだけでも突破されれば、日本国憲法は、外堀・内堀を埋められて落城寸前の大坂城のごとき有様となることは間違いないでしょう。
この2つの意見書は、個々の細かな論点にも触れられており、学習会などのテキストとしても十分に活用していただけるのではないかと思います。
また、意見書中に引用されている文献などをたどっていけば、論点にかかわる基礎資料を探すのも容易です。
例えば、憲法96条の改正要件が厳しすぎるという主張に対して、「本当にそうなのか?」「諸外国との比較ではどうなのか?」ということを知りたいと思えば、意見書が引用しているように、衆議院憲法調査会事務局が平成15年4月にまとめた「硬性憲法としての改正手続に関する基礎的資料」の末尾に収録された「憲法改正手続の類型/諸外国の憲法改正回数」(国立国会図書館作成資料)が大変有用です。
とはいえ、各意見書とも相当な分量があり、「もう少し短めで分かりやすい文章はないだろうか?」という方がおられるかもしれませんね。
井上正信「国家安全保障基本法案の制定と憲法96条改正を許してはならない」(2013年4月1日)
実は井上さんは、日本弁護士連合会・憲法委員会の副委員長として、上記日弁連の2つの意見書とりまとめの中心を担った弁護士の1人であり(だろうと思います)、いわば両意見書のエッセンスを凝縮した論考となっています。
最後に、その論考の(国家安全保障基本法に関する部分の)イントロダクションとして、法学館憲法研究所サイトの「今週の一言」に掲載された以下の文章も併せてご紹介しておきます(こちらには井上弁護士のプロフィールも掲載されています)。