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小林節氏らの「96条“改正”絶対阻止」の主張に連帯するために

 今晩(2013年5月13日)配信した「メルマガ金原No.1354」を転載します。
 
小林節氏らの「96条“改正”絶対阻止」の主張に連帯するために
 
 昨日お届けしたメルマガ金原No.1353「羽柴修弁護士講演『自民党改憲草案と秘密保全法』(憲法が危ない!3連続学習講座その2)」の中で、6月8日(土)、慶應義塾大学の小林節教授を講師に迎えた講演会が神戸で開催予定であることを取り上げ、是非USTREAM中継を実現して、全国の人が視聴できるようにして欲しいと書きましたが、その点をやや敷衍します。
 
 ご存知の方も多いと思いますが、小林節(こばやし・せつ)教授といえば、9条改憲論者として知られた人です。
 2012年5月3日に日比谷野外音楽堂で開かれた「5.3憲法を変えて日本とアジアの自由を守る!国民集会」での小林教授のスピーチ映像があります(2分40秒)。大雨の中、音声が聞き取りにくいのが難点ですが(おまけに映像と音声が同期しいない)、まあ、大体何を言っているか位は分かります。
 
 ところで、その小林節教授が、96条(改正規定)先行改憲論は絶対に容認できないという論陣を張っているのです。
 様々なところで発言されているようですが、反響が大きかったのは、4月9日の毎日新聞「特集ワイド」でしょう。
 
毎日新聞 2013年4月9日 夕刊 特集ワイド
憲法96条改正に異論あり 9条を変えるための前段、改憲派からも「正道じゃない」
 
 相当長いので、全文は上記サイトでお読みいただくとして、以下に主要部分を抜粋します。
 
(引用開始)
 「絶対ダメだよ。邪道。憲法の何たるかをまるで分かっちゃいない」
 安倍首相らの動きを一刀両断にするのは憲法学が専門の慶応大教授、小林節さん(64)だ。護憲派ではない。今も昔も改憲派戦争放棄と戦力不保持を定めた9条は「空想的だ」と切り捨て、自衛戦争や軍隊の存在を認めるべきだと訴える。改憲派の理論的支柱として古くから自民党の勉強会の指南役を務め、テレビの討論番組でも保守派の論客として紹介されている。その人がなぜ?
 「権力者も人間、神様じゃない。堕落し、時のムードに乗っかって勝手なことをやり始める恐れは常にある。その歯止めになるのが憲法。つまり国民が権力者を縛るための道具なんだよ。それが立憲主義、近代国家の原則。だからこそモノの弾みのような多数決で変えられないよう、96条であえてがっちり固めているんだ。それなのに……」。静かな大学研究室で、小林さんの頭から今にも湯気が噴き出る音が聞こえそうだ。
 「縛られた当事者が『やりたいことができないから』と改正ルールの緩和を言い出すなんて本末転倒、憲法の本質を無視した暴挙だよ。近代国家の否定だ。9条でも何でも自民党が思い通りに改憲したいなら、国民が納得する改正案を示して選挙に勝ちゃいいんだ。それが正道というものでしょう」
 そもそも「日本の改憲要件は他国に比べ厳しすぎる」という改正派の認識は間違っている、と続ける。例えば戦後6回の憲法改正(修正)をしてきた米国。連邦議会の上下両院の3分の2以上の議員が賛成すれば改正が提案され、全米50州のうち4分の3の議会での批准が必要で「日本より厳しいんだ」。
 諸外国で改憲要件を変えるための憲法改正がなされた例は「記憶にない」。他国と同等の国にしたいだけと訴える改憲派が、例のない特殊な手法に手を染めようというのだろうか。
(中略)
 重ねて言うが、小林さんは護憲派ではない。しかし今や改憲派から「変節者」というレッテルを貼られつつある。2年前、自民党を含む超党派議員が96条改正を目指す議員連盟を発足させた時のこと。講演を依頼され、「僕は改正反対ですよ」と伝えると立ち消えになった。以来、自民党のその種の集まりには、ぱったり呼ばれなくなった。改憲派メディアからの取材も激減した。 小林さんは生まれつき、手に障害がある。小さな頃からいじめられ、いつも一人。誰かと群れたくても群れさせてもらえなかった。「憲法学者としての良心に従って発言し、批判しているだけ。ここは曲げられない。一人でいるのには慣れているからね」
(引用終わり)
 
 今日(2013年5月13日)掲載された毎日新聞のコラム「風知草」において、田孝男氏は、小林節教授の上記4月9日特集ワイドでの発言と、東京大学法学部の石川健治教授が、5月3日の朝日新聞朝刊オピニオン欄に発表た論考「96条改正という『革命』」を取り上げ、「安倍人気に乗って一気に進むかと見えた96条改正の流れにブレーキがかかった」と評しています。
 「ブレーキがかかった」と言えるほど事態は決して好転していないと思いますが、それも「反転攻勢」のきっかけにはなし得る、というか、是非しなければならないと思います。
 
毎日新聞 2013年05月13日 東京朝刊
風知草:最近「96条」攻防録=山田孝男
 

朝日新聞 2013年5月3日
(寄稿 憲法はいま)96条改正という「革命」 憲法学者石川健治

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 石川健治教授は上記の寄稿の中で以下のように述べて96条改正論の非強調されています(論述の中心は「憲法改正条項」は「改正」の対象となしのか?という「改正の限界」論です)。

 

(抜粋引用開始)

 現在の日本政治は、こうした当たり前の論理の筋道を追おうとはせず、いかる立場の政治家にも要求されるはずの「政治の矩(のり)」を、踏み外そうといる。96条を改正して、国会のハードルを通常の立法と同様の単純多決に下げてしまおう、という議論が、時の内閣総理大臣によって公言され、権与党や有力政党がそれを公約として参院選を戦おうとしているのである。
 これは真に戦慄(せんりつ)すべき事態だといわなくてはならない。その主張
後に見え隠れする、将来の憲法9条改正論に対して、ではない。議論の筋道を追うことを軽視する、その反知性主義に対して、である。

(引用終わり)

 

 私が、9条の心ネットワークなど、兵庫県の3団体が共催する小林節氏講の模様を、全国民が視聴できるようにユースト中継して欲しいとお願いしたのも、小林節教授や石川健治教授らによる「憲法学者としての良心に

かけて覚悟を決めた」発言を、真に「潮目」を変えていくための力としなければならないと考えたからです。

 なお本日、羽柴修先生から、「全国中継目指して頑張ってみます」という心強いメールを頂戴しました。期して待ちたいと思います。 

 

 最後に、小林節氏が大阪日日新聞に連載しているコラム「一刀両断」最新記事「『古い憲法観』と言われる驚き」(4月30日)をご紹介します。

 これは、4月26日に公表された産経新聞の改憲案(「国民の憲法」要綱)の基理念を痛烈に批判したものですが、いよいよ改憲派メディアからお声がかからななるでしょうね。

 
コラム「一刀両断」2013年4月30日掲載
「古い憲法観」と言われる驚き
 
(引用開始)
 4月26日(金)に、ある大手新聞社が、1年余の議論の成果として、「国民の憲法」要綱なるものを発表した。
 一読して、賛成の点も反対な点もあるが、それらは今後の論争の中で生産的に昇華して行けば良い。
 ただし、一点だけ、今、看過できないことがある。それは「憲法観」(つまり憲法の「定義」)である。
 標準的な理解によれば、まず通常の「法律」は国家(国民代表の国会)の意思として国民(大衆)の行動を縛るものであるのに対して、「憲法」は、主権者国民の意思として権力者(政治家他の公務員)が権力を濫(乱)
用しないように縛るものである。
 ところが、今回のその新聞社の憲法要綱は、この標準的な憲法の定義(常識)を「絶対王制からの解放を目指した初期立憲主義の古い憲法観だ」と切り捨ててしまっている。そして、要するに、(国家と国民を対立関係として捉えるのではなく)国家と国民は、より良き国家づくりを目標に、ともに力を合わせて行動する協働関係にあると見るべきだ…という前提に立っている。
 これは、議論に際して、議論の前提を動かしてしまう暴挙で、何よりも、もっと丁寧な説明が必要でなかろうか。
 近代市民革命で「確認」された憲法観は、(古今東西に共通する)権力(ひいては人間)の本質に着目してのものである。つまり、「絶対的な権力は絶対に堕落する」と言われるように、個人としての自然の能力を超えた権力
を託された者は、常に、それを乱用する危険性をはらんでいる。そしてそれは、それが絶対王制だからではない。つまり、それは人間の本性(本来的不完全性)に由来するものである。
 例えば、借りたお金は返さなければいけない…などという当たり前なことでも守れない者がいるから、古今東西どこにでも民法は存在したし存在する。また、カッとなって他者を傷付けてはいけない…などという当たり前なことでも守れない者がいるから、古今東西どこにでも刑法は存在したし存在する。
 このように、私たち人間の本質が不変である以上、急に、今、「もう近代ではなく現代なのだから」権力の本質に対する警戒を緩めよ…と権力者の側が大衆(非権力者)に対して法的に要求出来る制度を唐突に提案されても、素直にうなずけるものではあるまい。
(引用終わり)
 
※産経新聞「国民の憲法」要綱
 
(参考サイト)
IWJ USTREAM中継 2013年5月8日
「96条改正は、政権の都合によって国民が振り回される」~「憲法96条改正」の是非を論じる公開討論会
■登壇者
小林節氏(慶應大学教授)
桜井充氏(民主党政調会長)
想田和弘氏(映像作家)
井坂信彦氏(みんなの党衆議院議員)
高橋昌之氏(産経新聞記者)
司会:今井一氏
■主催
国民投票/住民投票 情報室