今晩(2013年6月22日)配信した「メルマガ金原No.1395」を転載します。
なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
札幌市議会「日本国憲法第96条の改正に反対する意見書」
以上の規定に基づき、都道府県議会、市町村議会では、様々な「意見書」が可決され、「国会又は関係行政庁に提出」されています。
また、「意見書」のような明確な根拠規定はないものの、議会の意思を対外的に表明するために行われる「決議」もしばしば行われます。
地方議会の「意見書」や「決議」に法的拘束力がある訳ではありませんが、全国の多くの議会において、一定の方向を志向する「決議」や「意見書」の採択が相次げば、一定の「政治的潮流」を生み出すことも不可能ではないでしょうから、軽視すべきではありません。
ただし、政治的対立が先鋭な問題については、全会一致での採択が困難であることもあって、提案自体が抑制されるという傾向があることは否めません。
「憲法改正」に関わる問題などはその典型でしょう。
ところが、去る(2013年)6月12日、札幌市議会が「日本国憲法第96条の改正に反対する意見書」を採択したのです。
以下に全文引用します。
(引用開始)
意見書案第9号
日本国憲法第96条の改正に反対する意見書
日本国憲法の改正要件を定めた憲法96条の見直しに関する議論が活発化している。安倍首相は、「憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない」と定めた96条を改正し、「各議院の総議員の過半数の賛成」で発議できるように提起している。
憲法は国家権力を制限し、基本的人権を守る立憲主義に基づいた国の基本法である。このことは、憲法が98条で国の最高法規であることを明記するとともに、99条で天皇や国務大臣、国会議員らに憲法を尊重・擁護する義務を課していることからも明らかである。
また、日本弁護士連合会は3月14日に「憲法96条の発議要件緩和に反対する意見書」を公表し、「簡単に憲法が改正されるとすれば、国の基本法が安易に変更され、基本的人権の保障が形骸化されるおそれがある」と指摘している。
憲法は、政治権力が平和、自由と民主主義、基本的人権を侵すことがないように、国民主権の立場に立って権力を縛ることに本質的役割がある。発議の要件を「過半数」にすることは、国家権力の都合で憲法改正ができる状況を生み出し、権力を縛るという立憲主義の本質にかかわり、手続き論ではなく、立憲主義と基本的人権を否定するものである。
よって、国会及び政府においては、憲法改正の発議要件を緩和しようとする憲法96条の改正を行わないよう強く要望する。
以上、地方自治法第99条の規定により、意見書を提出する。
また、日本弁護士連合会は3月14日に「憲法96条の発議要件緩和に反対する意見書」を公表し、「簡単に憲法が改正されるとすれば、国の基本法が安易に変更され、基本的人権の保障が形骸化されるおそれがある」と指摘している。
憲法は、政治権力が平和、自由と民主主義、基本的人権を侵すことがないように、国民主権の立場に立って権力を縛ることに本質的役割がある。発議の要件を「過半数」にすることは、国家権力の都合で憲法改正ができる状況を生み出し、権力を縛るという立憲主義の本質にかかわり、手続き論ではなく、立憲主義と基本的人権を否定するものである。
よって、国会及び政府においては、憲法改正の発議要件を緩和しようとする憲法96条の改正を行わないよう強く要望する。
以上、地方自治法第99条の規定により、意見書を提出する。
平成25年(2013年)6月12日
(引用終わり)
当然のことながら(と言うべきでしょう)、「全会一致」ではなく「賛成多数」による採択でした。
議会公式サイトによれば、「自、改金子議員、みんな木村議員反対」とありました。
上記サイトの議決結果を眺めていて気がついたのですが、6月12日に最終日を迎えた札幌市議会平成25年度第2回定例会で採決された「意見書案」は全部で12件あり、その内の11件が可決、1件が否決となっていました。
しかも、自民党は、そのうちの半分にあたる6件の「意見書案」に反対しているのですね。
こういう議会も珍しいかもしれない。
自民党が反対する位なら、さぞ「有意義な」意見書案なのではないかという推測が成り立ちそうですね。
以下に自民党が反対した「意見書案」の表題(件名)を書き出しておきます。
「平成25年度北海道最低賃金改正等に関する意見書」
「生活保護基準見直しによる各種制度改定の切り下げに反対する意見書」
「日本国憲法第96条の改正に反対する意見書」
「介護保険の軽度の認定者に十分な介護サービスを保障することを求める意見書」
「札幌航空交通管制部の存続を求める意見書」
「海外への原発輸出を行わないことを求める意見書」
このうち、最後の「海外への原発輸出を行わないことを求める意見書」だけが、「自、公、改金子議員反対」によって否決されてしまったというのはまことに残念です。
(参考サイト)
日本弁護士連合会 2013年3月14日
「憲法第96条の発議要件緩和に反対する意見書」
弁護士・金原徹雄のブログ 2013年4月13日