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この7年間、私たちは何をしていたのか?~「小林節さんに聞いた」(2006年/マガジン9条)を読んで

 今晩(2013年7月13日)配信した「メルマガ金原No.1417」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
この7年間、私たちは何をしていたのか?~「小林節さんに聞いた」(2006年/マガジン9条)を読んで
 
 今は「マガジン9」となっていますが、この毎週水曜日に更新されるサイトは、以前は「マガジン9条」という名前でした。
 
 このサイトの中に「この人に聞きたい」というコーナーがあり(今でもあります。最新のインタビューは「武藤類子さんに聞いた」です)、様々な方への興味深いインタビューが掲載されています。
 
 そして、まだ「マガジン9条」であった2006年の夏、2回に分けて「小林節さんに聞いた」がアップされたのでした。
 
2006年7月26日 アップロード
小林節さんに聞いた その1 無知・無教養がはびこるこの国の政治
 
2006年8月2日 アップロード
小林節さんに聞いた その2 「憲法なんてどうでもいい」その態度が耐えられない
 
 最近の「96条」問題をきっかけとして、改憲派の論客、慶應義塾大学の小林(こばやし・せつ)教授の「立憲主義」に関わる主張を知り、その顔と名前が一致るようになったという人も多いのではないかと思います。
 
 ところで、私自身のことを振り返ってみると、「立憲主義」の危機が目の前まで迫っているということに気がついたのは、2012年4月27日に公表された自由民主党「日本国憲法改正草案」を読んだ時でした。
 その衝撃の勢いで、その年の5月3日に書いたのが、「憲法記念日に考える(立憲主義ということ)」とい文章でした。
 
 ところが、2006年夏に行われたマガジン9条によるインタビューの中で、小林さんは明確に「立憲主義」の危機を認識して自民党を厳しく批判するとともに、その危機を克服するための処方箋まで提示されていたのです。
 そこで語られている内容は、小林節さんの最近の発言と(当たり前ですが)同じです。つまり、小林さんは、全くぶれることなく同じ主張をしてこられたのですし、あえて言えば、2012年改憲案であらわとなった自民党の反「立憲主義」ぶりを、2006年当時から見通しておられたわけです。
 それは、小林さんが他の憲法学者よりも自民党に近い立場にいたために、同党憲法観を肌で感じていたからかもしれません。
 
 Fecebookで最近「友達」となった方が、上記「小林節さんに聞いた」のリンクをシェアしておられたため、「以前たしか一度か二度読んだはず」(たしか1年ほど前にも)と思いながら再読したのですが、に驚きました。
 「一体、自分は何を読んでいたのだろう?」と呆然としました。
 何故驚いたのか、是非上記サイトで全文を読んでいただきたのですが、ごく一部抜粋してご紹介します。
 
(抜粋引用開始)
 民法は、私人間の取引の法、商法は、その中の商売人の取引の法、刑法は犯罪の法、訴訟法(民・刑)は裁判の法、そして最上位法である憲法は、国民が政治権力を管理する法だという、法の基本的な役割分担を国会議員が知らない。
 だから、愛国心とか教育とか倫理・道徳の問題に、憲法を直に持ち込もうとするよ
うなことが起こるのだけれども、それは、はっきり言って無知・無教養だからなんだと気がつきました。
(略)
 しかし、自民党の二世、三世議員、世襲で権力者の階級になっているような人たちは、「自分たちは間違えない」と勝手に思い込んでいる。なぜかというと、自分たちこそが権力であり、判断基準だから。民主主義の制度の中では、権力は永遠じゃないのに、自分たちは永遠に権力の座にいる気なんですね。
 生まれたときからおじいちゃんは国会議員、お父さんも国会議員、そして自分も当
選したという人たちですから、権力を離さないし絶対に間違えない、という前提がある。だから、自分たちを管理するという立憲主義の発想にはすごく抵抗があるんだろうね。
(略)
 だけど、これは護憲派に言っておきたいけど、きちんとした憲法常識が世の中に浸透していないということは、護憲派がそれをきちんと何十年も語って来なかったということなんですよ。略)「9条を守りさえすればこの国は平和で、9条を改正されたらこの国は危ない」なんて言って内輪で会合を開いて、影響力のないところで護憲念仏を唱えて、うっとりしていた時代が長すぎたんです。
 そんなことより、小・中・高校と大学の憲法講座、一般教養の法学講座できちんと
した憲法教育をすることが護憲派の役目なんですよ。立憲主義の教育を全然してこなかった。それでいま襲われて焦っているわけだからね。
(略)
(「最後に、小林さんは今の護憲派に言いたいことはありますか?」と問われて)
 みんなお気楽な顔をして、「私たちはどうやって憲法を活かしていったらいいのか…」とかまだ言っているんですよね。現在の状況に、もっと危機感を持ってください!
 でも、作戦は二つあります。まずは次の参議院選挙で、自民党から権力を奪うこ
と。権力を乱用して憲法を蹂躙してきた人々を、権力の座から離すことなんです。らが一番嫌がっているのは、憲法改正ができないことなんかじゃない。憲法改正ができなくたって、彼らは権力を持っているから、憲法を無視して何でもできる。だから次の参議院選挙で、自民プラス公明を少数派に落とすことです。
 そうすると、二院制ですから、衆議院で3分の2の圧倒的多数を持っていても、参
議院で全部否決されます。首相指名と予算と条約以外は何も通らなくなるから、もう総選挙に入るしかなくなる。その総選挙で、民主党にかろうじて過半数をあげればいいんです。民主党が単独で過半数ないし自民・公明のセットで過半数割れを起こさせてあげればいい。とにかくもう我々は自民党の無知と傲慢に怒らなければいけない。
 もう一つの方法は、これは私が言うのではなく伊藤真からみんなに言ってほしいの
だけど(笑)、国民投票法は国会の多数決でつくられるんですから、四の五の言っても、いずれ10月からの臨時国会でできてしまいます。そして近い将来、憲法改正の発議があったとき、民主党がしっかりしていれば悪い改憲案は出てこないと思うけど、民主党が狂う場合も考えられます。じゃあ、どうすればいいか。
 今9条の会や憲法改悪に反対する市民の会というのが、燎原の火のごとく広が
っているじゃないですか。ああいう草の根の人たちが、「憲法とは何か」「立憲主義とは何か」ということをきちんと国民に伝えていく。それが、主権者=国民を忘れるなという憲法の精神を活かすことだと思います。
(引用終わり)
 
 いかがでしょうか?「お気楽な顔」をした護憲派と言われて気を悪くされたでしょうか?
 もしかすると、7年前にこのインタビューを読んだはずの私自身、そのように感じてスルーしてしまったのかもしれないのです。
 そして、おそらくは全国の「9条の会」に関わっていた多くの人にも、この小林節んの声は届いていなかったのでしょう。
 「失われた7年」(自民党2012年改憲案の出現までと考えれば「6年」)という言葉が私の頭の中で明滅しています。
 しかし、まだ「手遅れ」ではない、と思います。状況は、7年前よりはるかに悪化していますが・・・。

 

 7年前とは状況が変わりすぎている部分もあり(民主党の位置付けや「9条の会」の勢いなど)、小林さんの処方箋をそのまま用いることは無理ですが、1人1人が真剣に「どうすればよいか」を考えるための重要な示唆を今なお与えてくれるインタビューだと思います。