今晩(2014年8月4日)配信した「メルマガ金原No.1807」を転載します。
なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
最近でこそ、集団的自衛権をめぐる書籍は様々刊行されており、その一々をフォローする余裕もないほどですが、私の印象では、ここ3~4年前ころまで、集団的自衛権について勉強しようと思えば、まず手に取るべき本は、以下の新書本にとどめをさしたものです。
豊下楢彦氏が書かれた国民必読の3冊
2013年1月に関西学院大学を退職された後、少し体調を崩されているのではという噂を耳にして心配したりしていたのですが、集団的自衛権をめぐって風雲急を告げる情勢が豊下先生をそっとしておくことを許さず、5月に放映されたNHKの特別番組に出演され、さらに、7月には岩波新書から新著を刊行されました。
執筆分担は以下のとおりです。
はしがき(豊下楢彦)
第I部 「集団的自衛権」症候群(豊下楢彦)
第一章 なぜいま「集団的自衛権」なのか
1 「翼を欠いた飛行機」
2 「安全保障環境の悪化」とは何か
3 「イラク戦争の総括」の欠落
4 「隙間」としての「必要最小限度」論
5 集団的自衛権と安保条約
第二章 「歴史問題」と集団的自衛権
1 領土紛争と戦略性の欠如
2 「東京裁判史観」からの脱却
3 「歴史問題」への立ち位置
4 米国が直面するジレンマ
第三章 「ミサイル攻撃」論の虚実
1 「軍事オタク」の論理
2 原発「再稼働」とミサイル防衛
3 「最悪シナリオ」論の陥穽
第四章 中国の脅威と「尖閣問題」
1 分岐点としての「国有化」
2 誰が「引き金」を引いたのか
3 「固有の領土」の現実
4 佐藤栄作首相の認識
5 オバマ大統領の「通告」
第II部 憲法改正と安全保障(古関彰一)
第一章 憲法改正案の系譜
1 「終わらない戦後」の検証
2 押しつけ―イデオロギーから実証へ
3 いつに変わらぬ憲法改正内容
4 自民党憲法改正草案の内容
第二章 「国防軍」の行方
1 いま、準備されている戦争
2 「国民と協力する」国防軍
3 「審判所」とは何か
第三章 「国家安全保障」が意味するもの
1 安全保障とは何か
2 米国の国家安全保障法
3 日本版NSCの誕生
4 冷戦後の日米同盟の変容
第一章 なぜいま「集団的自衛権」なのか
1 「翼を欠いた飛行機」
2 「安全保障環境の悪化」とは何か
3 「イラク戦争の総括」の欠落
4 「隙間」としての「必要最小限度」論
5 集団的自衛権と安保条約
第二章 「歴史問題」と集団的自衛権
1 領土紛争と戦略性の欠如
2 「東京裁判史観」からの脱却
3 「歴史問題」への立ち位置
4 米国が直面するジレンマ
第三章 「ミサイル攻撃」論の虚実
1 「軍事オタク」の論理
2 原発「再稼働」とミサイル防衛
3 「最悪シナリオ」論の陥穽
第四章 中国の脅威と「尖閣問題」
1 分岐点としての「国有化」
2 誰が「引き金」を引いたのか
3 「固有の領土」の現実
4 佐藤栄作首相の認識
5 オバマ大統領の「通告」
第II部 憲法改正と安全保障(古関彰一)
第一章 憲法改正案の系譜
1 「終わらない戦後」の検証
2 押しつけ―イデオロギーから実証へ
3 いつに変わらぬ憲法改正内容
4 自民党憲法改正草案の内容
第二章 「国防軍」の行方
1 いま、準備されている戦争
2 「国民と協力する」国防軍
3 「審判所」とは何か
第三章 「国家安全保障」が意味するもの
1 安全保障とは何か
2 米国の国家安全保障法
3 日本版NSCの誕生
4 冷戦後の日米同盟の変容
第III部 日本の果たすべき国際的役割
第一章 「積極的軍事主義」の行方(豊下楢彦)
1 日本版「死の商人」への道
2 果てなき「軍拡」の果て
第二章 「国際社会のルール化」とは何か(豊下楢彦)
1 「例外主義」と「拡張主義」の狭間で
2 「国際公共財」としての憲法諸原則
第三章 いま、憲法を改正する意味(古関彰一)
1 「贈る言葉」のある憲法を
2 「国を開く」ということ
第四章 「安全保障」認識の転換を(古関彰一)
1 激変した「戦争」と安全保障
2 グレーゾーン―自衛権と警察権の間
3 不安を除去する憲法と安全保障を
第一章 「積極的軍事主義」の行方(豊下楢彦)
1 日本版「死の商人」への道
2 果てなき「軍拡」の果て
第二章 「国際社会のルール化」とは何か(豊下楢彦)
1 「例外主義」と「拡張主義」の狭間で
2 「国際公共財」としての憲法諸原則
第三章 いま、憲法を改正する意味(古関彰一)
1 「贈る言葉」のある憲法を
2 「国を開く」ということ
第四章 「安全保障」認識の転換を(古関彰一)
1 激変した「戦争」と安全保障
2 グレーゾーン―自衛権と警察権の間
3 不安を除去する憲法と安全保障を
あとがき(古関彰一)
5月15日の安保法制懇による報告書提出と、同日の思い出すだにおぞましい首相記者会見、さらに、自民党・公明党に内閣法制局も巻き込んだ与党協議の末の7月1日・閣議決定と続いた一連のめまぐるしい動きに翻弄され、さらに、読めば読むほど訳が分からなくなってくる閣議決定の文章に頭を悩ませていると、ことの本質がどこにあるのか?という一番肝心な点がおろそかになってしまいがちです。
7月中に私がメルマガ(ブログ)に書いた私の文章を振り返ってみれば、右往左往している姿に我ながら忸怩たるものがあります。
刊行時期との関係から、本書『集団的自衛権と安全保障』の本文に、与党協議の果ての閣議決定自体は取り込まれていません。しかし、だからこそと言うべきかもしれないのですが、この集団的自衛権をめぐる安倍晋三政権による狂奔の本質が、くっきりと浮かび上がっていると感じました。
現在の混迷のよってきたるところを解き明かし、私たちの目指すべき方向を指し示してくれる必読書として、是非一読されることを皆さまにお勧めしたいと思います。
最後に、「はしがき」(豊下楢彦氏)の一部を引用します。
(抜粋引用開始)
以上に見てきたように、米艦船による邦人救出という“架空のシナリオ”、北朝鮮によるミサイルの脅威の喧伝と原発「再稼働」という根本的な矛盾、あるいはホルムズ海峡での機雷掃海という“幻のシナリオ”など、なぜ集団的自衛権をめぐる議論は、これほどにリアリティを欠いているのであろうか。それは、本来であれば何らかの具体的な問題を解決するための手段であるはずの集団的自衛権が、自己目的となってしまっているからである。
なぜ自己目的と化してしまうのであろうか。それはつまるところ、集団的自衛権の問題が、安倍首相の信念、あるいは情念から発しているからである。(略)
安倍首相にとって集団的自衛権の問題は、「東京裁判史観」によってマインドコントロールされてきた戦後日本の国家のあり方を根本的に改造せねばならない、という課題意識のなかに位置づけられているのである。だからこそ、様々な事例やシナリオが支離滅裂であり具体性を欠いているといったことは問題の外であり、最大の眼目は、青年が誇りをもって「血を流す」ことができるような国家体制を作り上げていくところにある。だからこそ、集団的自衛権と憲法改正の問題は、まさに国会のあり方と日本の進路の根幹にかかわる問題なのである。
(引用終わり)