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青法協和歌山支部憲法連続講座第1回「集団的自衛権ってなあに?」を開催しました(9/29)

今晩(2014年9月29日)配信した「メルマガ金原No.1863」を転載します。

なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
青法協和歌山支部憲法連続講座第1回「集団的自衛権ってなあに?」を開催しました(9/29)
 
 青年法律家協会和歌山支部が、今年も憲法連続講座を開催することは2週間ほど前に本メルマガで予告しました。
 
2014年9月15日
青法協和歌山支部は今年もやります!憲法連続講座~深めよう集団的自衛権
 
 今晩はその第1回「集団的自衛権ってなあに?」が行われましたので、簡単にそのレポートをお届けします。

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 3回連続講座の構成は以下のとおりとしました。
 
第1回 2014年 9月29日(月)  
 集団的自衛権ってなあに?
第2回 2014年10月15日(水)  
 政府はなぜこれまで集団的自衛権を認めてこなかったのか
第3回 2014年10月31日(金)  
 集団的自衛権閣議決定の問題点を知ろう
 
 現時点で、集団的自衛権を3回に分けて論じようとする場合には、以上のような構成とするのが一般的ではないかと思います。
 ちなみに、私が直近に講師を務めた集団的自衛権をテーマとした学習会では、以下のような構成でお話しました。
 
(1)なぜ「7.1クーデター」と呼ばなければならないのか?
(2)集団的自衛権とは何か? その① 国連憲章51条から考える
(3)集団的自衛権とは何か? その② 実際の行使事例から考える
(4)集団的自衛権とは何か? その③ 米国の「先制攻撃正当化論」から考える
(5)日本国憲法集団的自衛権 従来の政府解釈を理解する
(6)「7.1クーデター」の「論理」
(7)殺すな 殺されるな
(8)今からでも遅くはない
 
2014年7月20日
あらためて集団的自衛権を学ぶ~遅すぎるということはない 自分が何をするかこそが問題~
 
 私のレジュメの見出しはやや個人的見解が露骨に出ていますし、思えば、「殺すな 殺されるな」というのは、カメラマン・福島菊次郎さんの写真集のタイトルからのパクリでしたが、構成自体は青法協と一緒でしょう?
 
2013年1月19日(1月30日にブログに再アップ)
報道写真家・福島菊次郎さん91歳
 
 講座の進行は昨年(の第2回と第3回)を踏襲し、第1部「基調報告」を若手会員に担当してもらい、第2部「質疑応答・意見交換」では、第1部の講師を務めた会員に、アドバイザー役のベテラン会員が加わり、2人で担当するというスタイルをとりました。

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 昨年の連続講座「完全攻略 深めよう憲法~」第1回で岡正人会員が「憲法96条改正問題」を担当した際、第2部の質疑応答も含めて同会員1人に任せていたため、参加者からの厳しい質問の雨霰への対応に四苦八苦させてしまったということを教訓に、第2回以降、質疑応答対応要員として、ベテランの元支部長クラスの会員をサポートに付けることになったものであり、今年も「それで行こう」ということになった次第です。
 ちなみに、昨年の第1回の講師を務め、さんざん苦労した岡会員が、今年は支部長として開会挨拶をされたのですから、いささかの感慨があったのではないかと推察します。
 
 さて、今日の第1部の講師を務めたのは、2012年12月に弁護士登録した新65期の戸祥子(とむら・しょうこ)弁護士であり、第2部のサポート役は私・金原が務めました。

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 以下には、第1部のために戸村さんが作成したレジュメから、その項目部分のみ引用します。これで大体の話の流れが分かるのではないかと思います。
 
第1 集団的自衛権とは
1 集団的自衛権(定義)
2 個別的自衛権(定義)
3 国連憲章における自衛権の位置づけ
国連憲章51条抜粋引用)
 
第2 集団的自衛権制定の沿革
1 国連憲章が定められるまで
 
第3 集団的自衛権行使の要件(ニカラグア事件判決:1986年)
 
第4 過去の事例
 
第5 集団安全保障と集団的自衛権
1 集団安全保障とは
2 集団安全保障と集団的自衛権の比較
 
 3回連続講座の中でも、最もアカデミックな(?)部分を担う第1回は、誰が講師をするにしても同じような話をせざるを得ず、特別に工夫して分かりやすく説明することも容易ではないと思います。
 戸村さんも、日弁連WEBサイトの会員専用ページに搭載されている「集団的自衛権Q&A」という80ページを超える膨大な「会員資料」に目を通したりして準備していましたが、苦労されただろうと思います。お疲れ様でした。
 もしも私が第1部を担当したとしたら、先ほど示したレジュメ目次のとおり、「集団的自衛権とは何か? その③ 米国の『先制攻撃正当化論』から考える」を付け加えたでしょうけどね。
 もっとも、日弁連の「集団的自衛権Q&A」には、米国の先制攻撃論やブッシュ・ドクトリンについて解説した部分が見当たらなかったように思うのだけれど、まさか、政治的に遠慮してということではないでしょうね?

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 それはさておき、会場からの質問で、私が記憶しているものを項目だけご紹介しておきます。何しろ、自分でとっさに答えなければならないので、細かなメモなどとるだけの余裕はなかったので、とても網羅的なご紹介はできませんが。
 
○「自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を・・・云々」という集団的自衛権の定義を説明してもらったが、この定義の出典は何か?国際法上のものか、それとも国内的なものか?
○7.1閣議決定に基づき自衛隊が海外で人を殺した場合、憲法9条2項「交戦権否認」がそのまま存在する限り、それは合法とはならず、単なる「人殺し」として処罰の対象になるのではないか?
○7.1閣議決定の法的効力をどのようなものととらえるべきか?
湾岸戦争において、集団的安全保障措置の前に集団的自衛権が行使されたとの説明であったが、もう少し詳しく説明して欲しい(憲章41条の非軍事的措置との関係は?)。
○アメリカによるイスラム国攻撃を集団的自衛権行使という観点からどう理解すれば良いのか?また、このような米国の軍事的措置に日本が関与を求められる恐れはないのか?
 
 私が思い出した質問をいくつか読むだけでも、なかなか鋭い質問が多かったことがご理解いただけるのではないでしょうか。
 そう、この連続学習会は、我々弁護士にとっても得難い勉強の機会なのです。
 弁護士経験が2年にも満たない若手に講師を務めてもらうのは、やや荷が重かったかもしれませんが、昨年から青法協和歌山支部が憲法連続講座を企画し、若手に講師をお願いしている(押し付けている?)のも、このような真剣な質問に直接対峙することによってこそ、真のスキルアップが図れるという親心(?)からなのです。
 
 次回は10月15日(水)午後6時30分~、会場は同じく和歌山ビッグ愛801・802会議室です。
 テーマは「政府はなぜこれまで集団的自衛権を認めてこなかったのか」、第1部の講師は海堀崇会員が、第2部のアドバイザーは畑純一元支部長が務める予定です。
 次回も是非多くの方にご来場いただきたいと期待しています。
 ちなみに、今日の参加者は、弁護士を含めて約60名でした。
 
※連続講座チラシ
 
(参考書籍)
 私が、第2部の最後で、参加者の皆さんに推奨した書籍です。今さらご紹介するまでもな豊下楢彦さんによる名著ですが、この本が岩波新書の新刊として刊行された2007年7月(第1次安倍政権の末期)には、現在問題となっている論点はほぼ出尽くしていたのだということが、この本を読めば分かります。今でも全く古びていません。最新の情勢については、今年の7月に豊下さんが古関彰一さんとの共著として出版された新刊を併せてお読みいただければと思います。
集団的自衛権とは何か』(岩波新書) 豊下楢彦著 2007年7月刊
集団的自衛権と安全保障』(岩波新書) 豊下楢彦・古関彰一著 2014年7月刊