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wakaben6888のブログ

憲法を大事にし、音楽を愛し、原発を無くしたいと願う多くの人と繋がれるブログを目指します

小林武さんの講演から学んだこと~10/18和歌山市9条センター秋の憲法学習会に参加して

今晩(2014年10月18日)配信した「メルマガ金原No.1882」を転載します。

なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
小林武さんの講演から学んだこと~10/18和歌山市9条センター秋の憲法学習会に参加して

 明日(10月19日)の朝、普天間を飛び立ち、岩国を経由した2機のオスプレイを迎える(と決めたのは知事であって県民ではない)ことになっている和歌山県で、今日(18日)午後1時半から開かれた憲法9条を守る和歌山市共同センター(和歌山市9条センター)主催の秋の憲法学習会の講師として、憲法学者の小林武先生(沖縄大学客員教授)が沖縄から講師として招かれました。
 その講演会の模様を詳しくレポートする余裕はありませんが、印象に残った点をいくつかご紹介したいと思います。

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 この学習会を事前告知した私のブログ(小林武氏講演会(10/18@和歌山市9条センター)へのお誘い(付・10月11月のその他の企画@和歌山県))に記載したとおり、小林先生は、2011年3月に愛知大学を70歳で定年退職された翌月の4月に沖縄に移住されました。
 
http://blog.livedoor.jp/wakaben6888/archives/40575227.html
 今日の講演の中で伺ったことですが、沖縄では「普天間基地の近く」にお住まいとのことでした。出講される沖縄国際大学琉球大学が近いという便宜もあったでしょうが、「あえて」普天間基地の近くに居を定められたについては、そもそもの沖縄移住の宿志の帰結であったと思われます。
 小林先生の沖縄移住の動機については、先に書いたブログで小林先生自身の文章(「勝手ながら沖縄に移りました。」革新・愛知の会)をご紹介しました。そこでは、「1960年、沖縄はまだ米軍統治の下にありました。私は、大学2回生。青年の主張弁論大会で、沖縄には日本国憲法が適用されず、核をもつ基地が島中に置かれ、異民族支配が続いている、この不条理は許されない、と叫びました。それが、沖縄に向かう出発点であったと思います」と書かれてい
ました。
 
http://www.kakushin-aichi.jp/action/110409-151457.html
 今日の講演では、「沖縄には日本国憲法が適用」されていなということを強く意識するようになったきっかけが、その前年(1959年)6月30日に沖縄の石川市(現うるま市)で発生した宮森小学校米空軍戦闘機墜落事故を伝えるニュースに接した衝撃であったことが語られました。
 この事故は、宮森小学校の生徒11人と近隣の一般住民6人の合わせて17人が死亡し、重軽傷者は210人に達する大惨事となりました。以前書いたブログ(映画『ひまわり-沖縄は忘れない あの日の空を-』上映会(6/29@和歌山市)のお知らせ)に、当時、宮森小学校の校長であった仲嶺盛文氏が犠牲となった子どもたちを悼んだ弔辞をご紹介しています。
 
http://blog.livedoor.jp/wakaben6888/archives/38265043.html
 1959年、小林青年は、立命館大学の1回生として憲法を学び始めたばかりでしたが、宮森小学校墜落事故に衝撃を受け、「沖縄で憲法はどうなっているのだろう?」と調べ始め、「この不条理は放っておけない。いつの日か沖縄に移り住み、沖縄の人々とともに考え、活動したい」という志を抱き、ついに半世紀余を経て、宿願を果たされたという説明を伺い、あらためて感銘を受けました。

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 さて、肝心の小林先生の今日の講演の内容ですが、用意されたレジュメはA4版7ページ余に及び、予行演習してみたら「4時間かかった」ということで、それを約100分でやろうというのですから、相当にはしょらざるを得ません。
 以下に、レジュメの主要項目のみ引用し、全体のあらましを想像するよすがとしていただければと思います。
 
(レジュメから抜粋引用開始)
       「戦争する国にはさせない~沖縄で考えること~」   
                                   小林 武(沖縄大学
ごあいさつ
はじめに 戦争国家づくりの中の沖縄
Ⅰ 集団的自衛権の何が問題か、それをもたらした安倍政権の手法の本質はどこにある

1 7月1日の閣議決定を読む
(1)主な特徴
(2)集団的自衛権発動の3つの要件(「新3要件」)
(3)「新3要件」で、「限定」的な集団的自衛権になったのか
(4)このような手法は、憲法を転覆させる「解釈クーデタ」である
2 集団的自衛権容認の本質を憲法の観点からつかむ
(1)憲法hが集団的自衛権はもとより、個別的自衛権の戦争・戦力も認めていない。
(2)9条は有名無実に。平和憲法としての日本国憲法の世界史的意義の喪失。これこそ歴
史的愚行。
(3)日本の統治構造の根幹をなすものが安保体制であることが一層明瞭に。
(4)憲法上、軍事的価値が自由主義・民主主義の価値に優越することになる。
(5)憲法の根幹を解釈により変容させる:あからさまな立憲主義の蹂躙。
Ⅱ 安倍政権はどこから来たのか、どこへ行くのか
1 安倍改憲の原点―どこから来たのか

(1)自由民主党の結党(1955.11.15。自由党日本民主党)、その政綱:《現行憲法の自
主的改正と占領法制の改廃を図る》―これが原点。
(2)安倍首相の改憲の論理
(3)安倍首相の集団的自衛権=戦争国家への「決意」はただものではない。
(4)なぜ急ぐのか
2 歴史逆行の政権―どこへ行くのか
(1)憲法破壊の政策を連発
(2)立憲主義無視の改憲
(3)戦後保守政治とも異質
(4)国民は安倍内閣の個々の政策に賛成していないが、内閣を支持。
Ⅲ 沖縄情勢:「辺野古」新基地建設の強行と抵抗
1 問題の経緯と現状
(1)権力は沖縄の民意を一貫して踏みにじってきた
(2)普天間の「代替」は口実、本音は辺野古に永久・巨大「新基地建設」
(3)新基地建設強行の姿
2 沖縄知事選挙の歴史的意義
(1)民主主義をとり戻す。
(2)仲井眞知事の県民裏切りの暴挙を県民の手で正す。
(3)基地社会沖縄からの脱却を展望する。
(4)自然環境・生態系を破壊から守る。
(5)権力の圧迫に屈しない県民の誇りと良識を内外に示す。
3 「オール沖縄」による翁長候補擁立の理由
4 沖縄知事選挙勝利の内外への影響
(1)安倍政権憲法じゅうりん・弱者の生活破壊の暴走への痛打
(2)「日米同盟」(日米安保条約の軍事体制)を揺るがし、安保条約終了に向う可能性を拓く。
Ⅳ 九条の会運動にいま求められるもの
1 九条の会の原点の確認
2 憲法破壊クーデタの現況において担うべき課題
(引用終わり)
 
 小林先生が指摘されたことは多岐にわたりますので、1点だけ、冒頭でお話された「Ⅰ-1 7月1日の閣議決定を読む」「(1)主な特徴」をご紹介します。
 まず、該当箇所のレジュメの記載を引用します。
 
(引用開始)
1 7月1日閣議決定を読む
 標題「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」
(1)主な特徴
①お為ごかしの狡猾なタイトル:「国民を守る」は実質無意味(「国の存立」が第1義)。
②キーワードは、「切れ目のない」安全保障法制:
●いつでも・どこでも、どんな武力行使でも可能にする軍事体制づくり。
=個別的・集団的自衛権、集団安全保障、多国籍軍参加、「国際的な平和協力活動」、
グレーゾーン(狭義の「切れ目のない」;すべてに対応。その中軸は、集団的自衛権
集団的自衛権の行使容認を憲法解釈の変更で実現させる。
(引用終わり)
 
 以上の引用で、小林先生が話されたことの概略はご想像いただけると思いますが、これを私なりに要約すれば以下のとおりとなります。
 
 安倍首相がことあるごとに「国民を守る」と繰り返し、閣議決定の標題にも「国民を守る」としているのは単なる「お為ごかし」に過ぎず、まず第一義的に重視していることが「国の存立を全う」することである以上、「国民を守ること」はその中に吸収されてしまい、何よりも「国家」優先となることは、歴史を振り返ってみれば一目瞭然である(「滅私奉公」、「国体護持」等)。そして、「切れ目のない(シームレス)」というキーワードが意味するのは、究極的には、いつでも、どこでも、どのような武力行使でも可能な軍事国家を目指すということであって、このことは、去る10月8日に公表された「日米防衛協力のための指針の見直しに関する中間報告」を一読すれば明らかである(「周辺事態」という概念がなくなり、「切れ目のない」というキーワードが頻出する)。
 
http://www.mod.go.jp/j/approach/anpo/sisin/houkoku_20141008.html
 
 実は、これまで7月1日閣議決定については、新3要件を掲げて集団的自衛権の行使を認めた「3 憲法第9条の下で許容される自衛の措置」にばかり注目し過ぎていたように思います。そして、この部分を読めば読むほど、一体どのような「論理」で書かれた文章なのか、訳が分からなくなってくるという隘路に入り込んでしまっていました。国民安保法制懇が9月29日に発表した「集団的自衛権行使を容認する閣議決定の撤回を求める」において、「この閣議決定内容は、その意図も帰結もきわめて曖昧模糊としており、見る者の視点によって姿の変わる鵺(ヌエ)とも言うべき奇怪なものと成り果てている」という総括を読み、思わず膝を叩いてしまったのはそのためでした。
 ところで、この閣議決定は、「1 武力攻撃に至らない侵害への対処」「2 国際社会の平和と安定への一層の貢献」「3 憲法第9条の下で許容される自衛の措置」「4 今後の国内法整備の進め方」の4章で構成されているのですが、実はその前に、結構長い「前文」がついているのです。
 この「鵺(ヌエ)」のような「奇怪」な閣議決定を読み解くためには、小林武先生が「お為ごかしの狡猾な」と評された「標題」と、それを敷衍した「前文」にもっと注目しなければならないのではないかと思い始めていた時でしたから、今日の小林先生のこの部分の説明を伺いながら、「この方向性で間違いない」と自信を深めるとともに、実は、「切れ目のない」という「キーワード」を理解するためには、「1 武力攻撃に至らない侵害への対処」「2 国際社会の平和と安定への一層の貢献」も、もっと読み込まなければならないことに気づかせていただきました。
 
 ということで、私にとって、非常に実り多い講演会でした。このように、自分自身の問題意識と絶妙にフィットして考えを深めてくれる箇所が1箇所でもあれば、講演会まで足を運んだ甲斐があったというものです。
 もちろん、今日の小林先生のお話で勉強にった箇所は他にもたくさんあり、ただ、最も印象深かった部分をご紹介したものであることは言うまでもありません。
 
 最後に、7月1日閣議決定から、問題の「お為ごかしの狡猾な」標題とその直後の前文を引用しておきます。
 
http://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/pdf/anpohosei.pdf
 
(抜粋引用開始)
   国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について

                                平成26年7月1日
                                国家安全保障会議決定
                                閣議決定
 
 我が国は、戦後一貫して日本国憲法の下で平和国家として歩んできた。専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国とはならず、非核三原則を守るとの基本方針を堅持しつつ、国民の営々とした努力により経済大国として栄え、安定して豊かな国民生活を築いてきた。また、我が国は、平和国家としての立場から、国際連合憲章を遵守しながら、国際社会国際連合を始めとする国際機関と連携し、それらの活動に積極的に寄与している。こうした我が国の平和国家としての歩みは、国際社会において高い評価と尊敬を勝ち得てきており、これをより確固たるものにしなければならない。
 一方、日本国憲法の施行から 67 年となる今日までの間に、我が国を取り巻く安全保障
環境は根本的に変容するとともに、更に変化し続け、我が国は複雑かつ重大な国家安全保障上の課題に直面している。国際連合憲章が理想として掲げたいわゆる正規の「国連軍」は実現のめどが立っていないことに加え、冷戦終結後の四半世紀だけをとっても、グローバルなパワーバランスの変化、技術革新の急速な進展、大量破壊兵器や弾道ミサイルの開発及び拡散、国際テロなどの脅威により、アジア太平洋地域において問題や緊張が生み出されるとともに、脅威が世界のどの地域において発生しても、我が国の安全保障に直接的な影響を及ぼし得る状況になっている。さらに、近年では、海洋、宇宙空間、サイバー空間に対する自由なアクセス及びその活用を妨げるリスクが拡散し深刻化している。もはや、どの国も一国のみで平和を守ることはできず、国際社会もまた、我が国がその国力にふさわしい形で一層積
極的な役割を果たすことを期待している。
政府の最も重要な責務は、我が国の平和と安全を維持し、その存立を全うするとともに、国
民の命を守ることである。我が国を取り巻く安全保障環境の変化に対応し、政府としての責務を果たすためには、まず、十分な体制をもって力強い外交を推進することにより、安定しかつ見通しがつきやすい国際環境を創出し、脅威の出現を未然に防ぐとともに、国際法にのっ
とって行動し、法の支配を重視することにより、紛争の平和的な解決を図らなければならない。
 5月 15 日に「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」から報告書が提出され、
同日に安倍内閣総理大臣が記者会見で表明した基本的方向性に基づき、これまで与党において協議を重ね、政府としても検討を進めてきた。今般、与党協議の結果に基づき、政府として、以下の基本方針に従って、国民の命と平和な暮らしを守り抜くために必要な国内法制を速やかに整備することとする。
 
1 武力攻撃に至らない侵害への対処  省略
2 国際社会の平和と安定への一層の貢献  省略
3 憲法第9条の下で許容される自衛の措置  省略
4 今後の国内法整備の進め方  省略
(引用終わり)