wakaben6888のブログ

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歴史修正主義には正義もなければ未来もない

 今晩(2014年12月9日)配信した「メルマガ金原No.1934」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
歴史修正主義には正義もなければ未来もない

 第47回衆議院議員総選挙の投開票日まであと5日。マスメディアの報じる選挙情勢が大きく外れない限り、安倍晋三政権が好き放題に暴走を加速させるという悪夢の光景が現前する可能性はもちろん十分にあるのですが、安倍政権にとっての「大勝利」が「転落の第一歩」となる可能性も全くない訳ではないと思っています。
 というのは、安倍政権は、発足当初から「致命的な弱点」を抱えたまま現在に至っているからです。
 末尾に、私がこれまでブログに書いてきた記事の中から、この「弱点」をメインテーマとして取り上げたもののうち、ざっと思い出したものだけ拾い上げてみました。
 言うまでもなく、そのテーマというのは安倍政権の「歴史認識」です。
 何しろ、「毎日更新」している私のブログですが、「歴史認識」だけで1つのカテゴリーを作っても良いほどで、しかも、自分で言うのも何ですが、このテーマで書くと我ながら力のこもった大作(?)になる傾向があります。もっとも、長いので、期待したほどには誰も読んでくれていなかったりするのですが。
 
 安倍政権を駆動している動力源の1つが「新自由主義」であることは間違いないでしょうが、ブレーンはともかくとして、安倍首相本人には、新自由主義に「殉じる」つもりなど毛頭ないでしょう。第一、どこまで「新自由主義」の理念を理解して政策を推進しているのか疑わしいものです。
 他方、「戦後レジームからの脱却」というかつて愛用したスローガンを、安倍首相は決して手放そうとはしないでしょう。彼自らがそういう信念の持ち主だと自分で信じ込んでいるでしょうし、彼の周りには、それに同調する(あるいは同調したふりをする)取り巻きばかりが集められているようですから。
 そう、安倍政権を駆動している最も重要な動力源は「歴史修正主義」なのだと思います。
 「戦後レジームからの脱却」を国内的文脈で解釈すれば「日本国憲法体制の否定」ということかもしれませんが、「歴史修正主義」は、国際的な文脈でこそ、より問題になる概念であることを忘れてはなりません。
 試みに、「戦後レジームからの脱却」を、世界中の誰にとっても分かりやすい言葉に言い直せば、「ポツダム体制からの脱却」「極東国際軍事裁判東京裁判)の否定」ということになるはずです。
 さすがに、安倍首相自身、東京裁判について否定的評価を口にすることはあっても、ポツダム宣言受諾を撤回するとは言っていませんが(言えるはずがありません)、彼らの論理を突き詰めれば、そこに行き着かざるを得ないはずです。
 しかし、安倍晋三氏自身もその取り巻きも、いまさら「靖国史観からの脱却」など絶対に出来ません。彼らは、あまりにも深く「歴史修正主義」の罠に自ら進んでからめとられ、そこに権力の基盤の根を張ったのですから。
 
 人が成功の絶頂にある時、自ら最も得意と過信している問題をきっかけとして自己崩壊することは、十分にあり得ることです。そもそも、「歴史修正主義」が世界で自らの「正義」を主張することなど金輪際不可能です。
 問題は、安倍政権の崩壊までの間に、悲惨な境遇に落ち込む国民を1人でも少なくする方策を必死に考え続けなければならないということでしょう。
 
 最後に、私が信頼するドキュメンタリー作家の保阪正康さんが、去る10月16日に「立憲フォーラム」と「戦争をさせない1000人委員会」が主催する院内集会で行った講演の映像をご紹介します。
 この講演に先立つ10月7日、保阪さんは日本記者クラブの招きにより講演されていますが、9日後のこちらの講演では、日本記者クラブの時よりもはるかに舌鋒鋭く、安倍政権を「世界で唯一」「歴史修正主義が公然と権力と一体化」した存在であり、「世界に恥ずかしい」とまで言い切っておられます。
 ここまで断言するのですから、保阪さんとしても相当に腹をくくっておられるのだと思います。発言の一部を文字起こししておきます。
 
20141016 UPLAN 保阪正康さんに聴く「いま、昭和史から学ぶこと」

「しかし私たちの国は、世界で唯一、歴史修正主義が権力を持ってるんですね。権力と一体になってるんです。NHKの3人の安倍さんによって送り込まれた経営委員を見てください
(金原注:会長と2人の経営委員という趣旨かもしれません)。彼らはまさにその典型ですね。私たちは、安倍さんの歴史観というのは、歴史観じゃなくて、それは歴史をですね、政治のツールに使ってるってこと。道具に使ってるってこと。そのことはきちんと見極める必要がある。そして、世界に恥ずかしい状況である。歴史修正主義が公然と権力と一体化しているっていうこと。だから安倍さんは、『侵略には定義がありません』って言いますね。そんなこと、東京裁判見てください。第一次世界大戦の裁判記録読んでください。パリ不戦条約見てください。そんなこと、いっぱい資料見れば分かるし、現に、安倍さんが『侵略に定義がない』って言った時に怒ったのは、アメリカの上院の共和党の保守派ですね。『じゃあ、真珠湾は何だったんだ』っていうことで。つまり、そういったゆがんだ歴史観というのはですね、それぞれの国に全く信用されていないということ。で、このことをですね、私たちはやっぱりきちんと知るべきだと思うんですね」(24分~)
 
 余談ですが、この院内集会を開いた議員連盟「立憲フォーラム」所属の議員(前衆議院議員)が1人でも多く国会に戻ってきてくれることを祈るばかりです。「票にならない」と思われる「民主主義」や「立憲主義」を大事なものと考える議員を落選させてどうするんですか?とそれぞれの議員の選挙区の有権者に訴えたいですね。
 
(弁護士・金原徹雄のブログから)
2012年11月3日(2013年3月24日にブログに転載)
保阪正康氏講演「領土問題は歴史問題である」(日本記者クラブ)
2013年8月18日
安倍晋三首相の“歴史認識”と加藤陽子氏の“歴史家としての役割の自覚”
2013年10月4日
千鳥ヶ淵戦没者墓苑に献花したケリー、ヘーゲル両長官が意図したこと
2014年1月1日
なぜ総理大臣が靖国神社に参拝してはいけないのか?(基礎的な問題)
2014年1月14日
「日本傷痍軍人会」最後の式典での天皇陛下「おことば」と安倍首相「祝辞」(付・ETV特集『解散・日本傷痍軍人会』2/1放送予告) ※追記あり
2014年8月15日
“コピペ”でなければ良いというものではない~全国戦没者追悼式での安倍晋三首相の式辞を聴いて

2014年8月18日
続 “コピペ”でなければ良いというものではない~“平和と繁栄”はいかにして築かれたのか
2014年8月30日
“平和主義と天皇制”~「戦後レジーム」の本質を復習する
2014年9月14日
安倍晋三氏の“昭和殉難者”追悼メッセージを忘れるな(「朝日たたき」の陰にあるもの)
2014年10月8日