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何が争点だったかは勝った者が決めるということか?~12/15安倍晋三自民党総裁記者会見を視聴して

 今晩(2014年12月15日)配信した「メルマガ金原No.1940」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
何が争点だったかは勝った者が決めるということか?~12/15安倍晋三自民党総裁記者会見を視聴して(一部文字起こし)

 総選挙公示前の11月25日、自民党が発表した「重点政策集2014」をメルマガ(ブログ)で取り上げた私は、①原発政策、②集団的自衛権、③憲法改正について自民党がどのような公約を掲げているかを検討した上で、以下のように結論付けました。
 
2014年11月26日
「自民党 重点政策集 2014」(選挙公約)の不誠実さを問う
(抜粋引用開始)
 ごちゃごちゃと色々書いているようではありますが、「集団的自衛権」についてはわずか1項目だけ、それも7月1日閣議決定の要約とも言えぬ簡単な項目だけであり、うっかりすると見過ごしてしまいそうです。
 しかし、一応書いていることは書いているので、もしも今度の総選挙で過半数の議席を獲得すれば、「集団的自衛権の行使を容認した閣議決定について国民の支持を得た」と言うに決まっています。
 もちろん、「原発再稼働」など、「集団的自衛権」よりもずっと多い行数(?)を費やしているのですから、いかに議席を減らそうが、過半数を維持する限り、「国民の理解を得られた」と強弁することは火を見るよりも明らかです。
 しかし、日本が戦争をする国になるかどうかという死活的に重要なテーマに費やした分量がわずか5行ですよ。
(略)
 (「憲法改正」についての公約の)後半の選挙権年齢はともかく、前半を読んで、私は9月に和歌山県議会が採択した意見書を思い出さざるを得ませんでした。同意見書は「新たな時代にふさわしい憲法に改めるため、国会は憲法審査会において憲法改正案を早期に作成し、国民が自ら判断する国民投票を実現することを求める」とするのみで、一体どんな内容に憲法を改正すべきかについて全く触れないという奇妙な、というよりも、不誠実かつ無責任極まりないものでしたが、この自民党公約は、まさにその「本家本元」ぶりをいかんなく発揮したものなのです。
(引用終わり)
 
 そして案の定、総選挙の投開票から一夜明けた今日(12月15日)の記者会見において、安倍晋三自民党総裁は、早速以下のように述べたと伝えられています。
 
共同通信 2014年12月15日 17時42分
首相、集団的自衛権を推進 来秋の総裁再選目指す

(引用開始)
 自民党総裁安倍晋三首相は15日、衆院選を受けて党本部で記者会見し、7月に閣議決定した集団的自衛権の行使容認を踏まえた安全保障法制の整備を推進する考えを強調した。法整備に関し「公約でも街頭演説でも来年の通常国会で行うと訴えた。国民の支持を頂いた」と語った。来年9月の党総裁選について「支持を得ることができるよう努力を重ねていきたい」と述べ、再選を目指す意向を表明した。
 衆院選で多数の議席を得たことを踏まえ、24日に第3次安倍内閣を発足させ、安保や経済政策を一層進めていく構えだ。
(引用終わり)
 
 まあ、誰もが予想したとおりの展開に過ぎませんが、「鉄は熱い内に打て」と言いますので、自分の周りで自民党に投票した人を見つけたら、記者会見での安倍首相のこの発言を伝えた上で、「集団的自衛権の行使を容認し、日本が攻撃を受けてもいないのに、自衛隊に海外で戦争をさせる安全保障法制の整備について、『国民の支持を頂いた』と言っているが、あなたも『支持』したのか?」と尋ねてみるべきですね。
 中には「支持した」という人もいるでしょうが、その場合には、それをきっかけとして、集団的自衛権の本質についてどういう風に理解しているのか、議論を展開するきっかけになるかもしれません。
 
 ・・・とお勧めする以上、安倍晋三氏の発言がどういうものであったかを正確に確認しておく必要を感じ、自民党ホームページを閲覧してみました。
 すると、以下のとおり、「冒頭発言」については、原稿とおぼしき文章が掲載されていましたが、質疑応答部分についての文字起こしは掲載されていませんでした。
 
 
 そこで、やむなく記者会見の動画を視聴して確認してみたところ、14分~の部分で幹事社の産経新聞記者から、どう考えても「事前通告」通りの質問がなされ(あるいは「事前協議」済みかも)、これに対して「原稿」通りの回答がなされていました。
 とりあえず、これが投票翌日に表明された自民党総裁の「公式見解」ですから、少々手間ではありますが、以下に文字起こししておきます。
 
衆議院総選挙後】 安倍晋三総裁 記者会見(2014.12.15)
(14分~ 文字起こし)
産経新聞・とよだ記者 平河クラブ幹事社の産経新聞の「とよだ」と申します。今回の選挙戦では、アベノミクスの他に、集団的自衛権の行使容認や憲法改正原発の再稼働も争点になりました。この選挙結果を受けまして、来年の通常国会に提出する安全保障法制の整備に向けた関連法案は、どのように審議を進めていかれるお考えでしょうか。また、憲法改正について、どのような取組をしたいと考えておられるのかということと、最後に原発再稼働についてのお考えもあらためてお聞かせください。
安倍晋三総裁 まず安全保障法制についてでありますが、今回の選挙はアベノミクス解散でもありましたが、7月の1日の閣議決定を踏まえた選挙でもありました。そのことも我々しっかりと公約に明記しています。また、街頭演説においても、あるいは数多くのテレビの討論会においても、その必要性、日本の国土、そして領海を守っていく、国民の命と安全な国民の幸せな暮らしを守っていくための法整備の必要性、閣議決定を基にした法整備の必要性ですね、集団的自衛権の一部容認を含めた閣議決定に基づく法整備、これを来年の通常国会で行っていく、それを訴えてきた訳であります。このことにおいても、ご支持をいただいた訳でございまして、当然約束したことを実行していく、これは当然政党政権(「政権政党」の言い間違い?)としての使命であろうと思います。来年の通常国会、しかるべき時に法案を提出していきたいと、そして成立をはたしていきたいと、こう考えています。
 そしてまた、原発についてはですね、これも様々な討論会等で(聴取不能)議論をさせていただいた訳でございますが、毎日100億円の日本の富が今の状況では海外に流出をしている訳であります。我々は、安定した低廉なエネルギー、これを供給していく責任がある訳でありまして、徹底的な省エネ、再エネの導入によってですね、原発依存度を限りなく低減させていく方針に変わりはありませんが、原子力規制委員会が再稼働に求められる安全性を確認した原発については、地元の理解を得つつ、再稼働を進めていく考えであります。
 憲法改正については、これは自民党結党以来の一貫した主張であります。ただし、国会において3分の2の確保の・・・議員を確保しなければならないいうことと同時にですね、最も重要なことは、国民投票において過半数の国民の支持を貰えなければならない。この観点から、国民的な理解と支持を深め広げていくために、これから例えば自由民主党総裁として、努力をしていきたいと思っております。
(下線は金原による)
 
 さて、この記者会見での発言を視聴されて(あるいは読まれて)どう思われたでしょうか?
 公約集を読んだ時から「こうなることは分かっていた」という内容ではあるのですが、私は、平河クラブの産経記者が言い放った「アベノミクスの他に、集団的自衛権の行使容認や憲法改正原発の再稼働も争点になりました」という質問の前提に、驚きはしませんでしたが、あらためて怒りを覚えましたね。この女性も、新聞記者を志した時には何ほどかの「ジャーナリスト魂の萌芽」のようなものは持っていたのではないかと推測するのですが、産経に入社した時点で、そんなものはどこかに捨ててきたのだろうと思わざるを得ません。
 
 ちなみに、この答弁原稿を誰が書いたのかは知りませんが、最後の部分において、憲法改正について「国民的な理解と支持を深め広げていくために、これから例えば自由民主党総裁として、努力をしていきたいと思っております」とある部分は、憲法上の重要論点に対する先回りした「弁解」です。
 簡単に言えば、憲法99条(公務員の憲法尊重擁護義務)の解釈として、内閣総理大臣が(他の国務大臣でも同じですが)、その立場において「憲法改正」を主張することは憲法99条違反であるという説があるのです。というか、それが通説だろうと思います。
 従って、このとってつけたような部分は、「この発言は憲法違反ではない」というアリバイ作りのために原稿起案者が付け加えたものでしょう。もっとも、この原稿を読み上げた安倍「総裁」が、そのような趣旨を理解していたかどうかについては、何とも判断しかねますが。
 
 とにかく、来年の通常国会に、再び衆議院で3分の2以上の議席を確保した自民・公明連立政権が、集団的自衛権行使容認を具体化するための関連法案を上程してくることは(自民党総裁兼総理大臣が明言しているのですから)間違いありません。
 公明党が歯止めになることを期待する意見も一部にあり、私としても公明党が努力することに難癖をつけるつもりは毛頭ないので、是非頑張っていただきたいとは思いますが、7月1日閣議決定をめぐる公明党の行動を振り返る時、木村草太氏や佐藤優氏のような「期待」を述べる気持ちには到底なれませんので、いずれ公明党は関連法案提出に協力するということを前提とした対策を考えるしかありません。
 
 その1つの具体例として、日本弁護士連合会が取組を始めることになった「集団的自衛権の行使等を容認する閣議決定を撤回し関連法律の改正等を行わないことを強く求める請願署名」をご紹介します。
 実は、私も今日、日弁連から届いた会員向けのニュースメールを読んで知ったのですが、既に日弁連サイトでも公開されていました。
 
集団的自衛権の行使等を容認する閣議決定を撤回し関連法律の改正等を行わないことを強く求める請願署名のお願い
(引用開始)
 
2014年7月1日、政府は、集団的自衛権の行使等を容認する閣議決定を行いました。集団的自衛権の行使は、本来、憲法9条の下では許されないことです。当連合会は、憲法の基本原理に関わるこのような重大な解釈変更を、閣議決定で行うことは、立憲主義に反し、憲法の存在意義を失わせると考えており、法律家団体として、立憲主義を堅持する立場から、この閣議決定を認めることはできません。
 ところが、政府は現在、この閣議決定を実施するための関連法律の改正案等を、2015年の通常国会に提出し、その成立を図ろうとしています。しかし、このような立法も、同様に憲法9条及び立憲主義に違反するものとして許されません。
 そこで、これらに反対し、立法を阻止するための取組の一環として、市民の皆様の声を広く集め、集団的自衛権等に関する立法を行わないことを求める請願署名運動の実施を下記のとおり企画しました。ぜひ、多くの皆様に御協力いただければと存じます。
署名の方法
こちらからPDF署名用紙(PDFファイル;64KB)をダウンロードいただき、氏名・住所を記入の上、必ず郵送でお送りください(FAXでお送りいただいても、無効となります。)。 
送付先
〒100-0013
東京都千代田区霞が関1 丁目1番3号 日本弁護士連合会人権部人権第二課 宛て
 TEL:03-3580-9941
(引用終わり)
 
 署名用紙を見ると、
  集約単位弁護士会 [     ]弁護士会
を記載する欄があり、「和歌山弁護士会」や「千葉県弁護士会」などの地方単位弁護士会が署名集約に取り組むことが想定されていますが、日弁連サイトの記載を読む限り、協力してくれる市民が直接日弁連に郵送していただくことも歓迎のようです。
 私の地元(和歌山県)では、和歌山弁護士会から各団体や個人に署名へのご協力をお願いすることになるかもしれませんので、その節はよろしくお願いします(来年3月末まで任期が残っている同会憲法委員会委員長としてのお願いでした)。
 最後に、この日弁連作成の請願署名用紙の請願本文を引用したいと思います。
 
(引用開始)
       
集団的自衛権の行使等を容認する閣議決定を撤回し
             関連法律の改正等を行わないことを強く求めます
 
 
 政府は,2014年7月1日,憲法解釈の変更による集団的自衛権行使の容認,海外での武器使用の拡大等を内容とする閣議決定を行いました。
 集団的自衛権の行使は,日本が武力攻撃を受けていないにもかかわらず,他国に対する武力攻撃に反撃して参戦することを意味し,戦争をしない平和国家としての日本の国の在り方を根本から変えるものです。このような憲法の基本原理に関わる重大な解釈の変更は,憲法9条を実質的に改変するものとして同条に違反するとともに,憲法に拘束されるはずの政府がこれを閣議決定で行うことは背理であり,立憲主義に根本から違反します。したがって,このような閣議決定を実施するための立法もまた,憲法に違反して許されません。
 そこで,内閣に対し,本閣議決定を速やかに撤回し,本閣議決定に基づく自衛隊法の改正等の関連立法を断念することを強く求めるとともに,衆議院及び参議院に対し,上記立法を行わないことを強く求めます。
(引用終わり)