wakaben6888のブログ

憲法を大事にし、音楽を愛し、原発を無くしたいと願う多くの人と繋がれるブログを目指します

映画『天皇と軍隊』(渡辺謙一監督)を観てみたい

 今晩(2015年7月30日)配信した「メルマガ金原No.2167」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
映画『天皇と軍隊』(渡辺謙一監督)を観てみたい

 2009年にパリ在住の日本人監督・渡辺謙一氏によって作られた1本のドキュメンタリー映画が、日
本でようやく公開されようとしています。
 その映画とは、『天皇と軍隊』という90分の作品です。
 
 
予告編 TG trailer 0709 atodukeARI
 

 公式サイトから「この映画について」の一部を引用します。
 
天皇と軍隊 ●この映画について
(抜粋引用開始)
 冷戦期アメリカの庇護のもとで、日本は第二次世界大戦の荒廃から経済的復興を遂げた。ソ連の崩壊、中国の市場開放、欧州統合とグローバリゼーションの波は、日本の政治に舵を切らせた。世界の中の日本
のプレゼンスを高めるための“国際貢献”である。
 日本は矛盾と曖昧さの国であるとよく言う。憲法一つをとってもその矛盾は見てとれる。自衛隊の存在
と、戦争および軍の保持を禁じた9条。主権在民天皇の地位の曖昧さ。本作はこれら3本の軸と言える、9条、天皇そして軍隊について、天皇の貴重な映像をはじめ世界中から集めたアーカイブと、いまや鬼籍に入った政治家の田英夫中川昭一など国内外の論客による秘蔵インタビューを交え、日本の戦後史を問い掛ける。
 戦後70年の2015年、敗戦後、日本のたどった歴史をあらためて考えさせられる海外発の注目作である、
 
主な登場人物
田英夫(でん・ひでお)
ジョン・ダワー
樋口陽一(ひぐち・よういち)
ベアテ・シロタ・ゴードン
鈴木邦男(すずき・くにお)
葦津泰國(あしず・やすくに)
小森陽一(こもり・よういち)
五百旗頭真(いおきべ・まこと)
高橋哲哉(たかはし・てつや)
 
スタッフ
監督:渡辺 謙一
プロデューサー:オリヴィエ・ミル、渡辺クリスティーヌ
撮影:エマニュエル・ヴァレット
編集:ファブリス・タブリエ
音楽:ジェローム・クレ
録音:ステファン・ララ
ナレーション:フェオドール・アトキン

制作:KAMI Productions, ARTLINE Films, ARTE France
制作協力:TBS
宣伝美術:追川 恵子
配給:きろくびと
原題:Le Japon, l’Empereur et l’Armee  2009年/フランス/HDV/90分
2010年 FIGRA映画祭歴史部門コンペティション参加作品
(引用終わり)
 
 上記にもあるとおり、この作品にはTBSが制作協力をしており、2010年4月18日には、映画の一部を使用して、以下のような番組を放映しています。
 
TBS 報道の魂
「ドキュメンタリー『天皇と軍隊』をめぐって」
 (1)(2)(3)
 
(番組案内から抜粋引用開始)
 戦後日本を描いたフランスのドキュメンタリー作品が、話題になっている。タイトルは『天皇と軍隊』日本国憲法の一条と九条、すなわち「天皇制」と「戦争放棄」の問題にストレートに切り込んだ内容だ

 この作品は、海外で高く評価されているだけでなく、日本人がみても、新鮮な内容に驚かされる。「天
皇」、「軍隊」について、これほど真摯に問題提起しているドキュメンタリーは数多くないが、何よりも戦後日本のたどった歴史をあらためて考えさせられるからである。
(引用終わり)
 
 渡辺謙一監督自身のコメントも、映画公式サイトから一部ご紹介しておきます。
 
天皇と軍隊 ●監督のことば
(抜粋引用開始)
(略)
敗戦に終わり冷戦で始まった「戦後」の分水界に「天皇」と「広島」がある
 この仕事を準備する過程で小熊英二著「<民主>と<愛国>」を手にしたとき表紙の写真に打たれなん
としても使いたいと思いました。1947 年12 月7 日天皇が広島に巡幸しドームと市民の前に立つ瞬間です。写真の所在はわかりましたが、映像もあるはずです。ワシントンを中心に手を尽くしましたが、結局アメリカではなくロンドンで見つかりました。原爆ドームと2 万人の市民を前に手を振る天皇。この構図の意味をつき詰めていく過程がこのドキュメン
トを構成する過程でもありました。
 天皇を抜きに戦後政治は語れません。動機こそ違え日米の政治的エネルギーが「天皇免責」のために大いに費やされました。冷戦が天皇を救った、と言えばこれはアメリカ側の動機です。国体護持は当然日本側のものですが、そのためになにがどう動いたのか、これを見つめるのが歴史認識の根本です。国体護持(一条)のためには「九条」も止むなしとした日本側の論理をアメリカ側の視点から描きました。その結
果、視点を日本側に移せば意味が逆転する「意味の二重性」を歴史に織り込みたいと考えました。
昭和天皇マッカーサーが敷いた講和・安保路線と戦後ナショナリズムの矛盾
 1945 年9 月27 日の天皇マッカーサー会見にあらためて光を与えます。通算11 回におよぶ二人のトッ
プ会談は、新憲法下であってもマッカーサーがいる限りにおいて天皇が政治的影響力を行使した軌跡を示しています。朝鮮戦争の最中、皇軍なき天皇の悲願は制度的保障でした。沖縄を売り渡しても、準占領状態がつづこうとも、皇祖皇宗を共産主義の脅威から守護する保障が講和条約日米安保でした。今日の日本を規定するこの2 つの条約こそ戦後の新・国体と呼ぶべきではないでしょうか。しかるに、一部ナショナリストは「東京裁判」、「九条」が国体護持の重要なファクトだったことには目をつぶり、一気に「侵略戦争」を否定してしまうという無知と矛盾を堂々とさらします。彼らえせナショナリストこそ「三島事
件」と「昭和天皇の戦後」を相対化すべきです。
(略)
(引用終わり)
 
 何しろ、私自身、まだ映画を観ていないので、映画そのものを語ることはできません。しかし、上に引用した「この映画について」と「監督のことば」を読んでただちに想起した書籍があります。豊下楢彦氏(元関西学院大学教授)による名著の誉れ高い以下の2冊です。
 
安保条約の成立―吉田外交と天皇外交 (岩波新書)
 
 また、象徴天皇制戦争放棄を盛り込んだ日本国憲法が制定され、やがて日本が国際社会に復帰するまでを跡づけたブログをいくつか書いたことがありました。例えば、以下のような文章です。
 
2014年8月30日
“平和主義と天皇制”~「戦後レジーム」の本質を復習する
 
 この映画が真正面から取り上げた「天皇」「9条」「軍隊(自衛隊)」は、日本の「戦後」の骨格(新たな「国体」)を形作った3大要素です。
 未見である以上、映画そのものに対する評価は不可能ですが、是非観てみたい映画です。
 
 なお、東京では、8月8日から14日までの1週間、ポレポレ東中野で上映されますが、日替わりで豪華ゲストと渡辺監督との対談(15:40~)が予定されています。」
 
8月08日(土) アメリカ人から見た日本の戦後
 ジャン・ユンカーマンさん(映画監督)
8月09日(日) 天皇の戦争責任をどう考えるか
 高橋 哲哉さん(哲学者・東京大学教授)
8月10日(月) メディアから見た日本の戦後
 金平 茂紀さん(TBS「報道特集」キャスター)
8月11日(火) 「愛国」を考える─日本人の国民性
 小熊 英二さん(社会学者・慶應義塾大学教授)
8月12日(水) 「愛国」を考える─右翼と天皇
 鈴木 邦男さん(「一水会」顧問)
8月13日(木) 9条の行く末を占う
 小森 陽一さん(国文学者・九条の会事務局長・東京大学教授)
8月14日(金) 日本国憲法がもたらしたもの
 樋口 陽一さん(法学者・東京大学名誉教授)