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中国脅威論と安全保障関連法案~このペテンを打ち破るための様々な方法

 今晩(2015年8月19日)配信した「メルマガ金原No.2187」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
中国脅威論と安全保障関連法案~このペテンを打ち破るための様々な方法

 昨日のメルマガ(ブログ)で、「平和安全法制の早期成立を求める国民フォーラム」の声明を取り上げて、
声明発表の記者会見における出席者の発言を聴く(読む)につけ、いまや「安保法案」推進派の最大のアピールポイントが「中国の脅威」であることが、あらためてよく分かりました。
 
 「日本の安全保障と中国」というテーマが重要な論点であることを否定するものではありませんが、それに対する「解」が政府提出の「安保法案」であるという主張は明らかな欺瞞であるということを、どうすれば「素朴な日本人」に分かりやすく届けることができるのか、相当に悩ましい問題です。
 もちろん、「中国の脅威」が増大しているから「安保法案」が必要だという主張は、「大阪の発展」を目指すには都構想を推進するしかないと主張しながら、実際に住民投票の対象となった条例案は大阪市を解体するだけのものだったのと全く同じで、国民(市民)をなめたペテンというしかないものです。
 しかし、ペテンでも、四六時中繰り返せば、ペテンと気付かずに支持する人が一定増えていくことは避けがたいことです。
 これに対抗するためにどうするか?
 
 一つには、小林節慶大名誉教授や長谷部恭男早大教授が言われるように、日本の安全保障環境が厳しくなっているというのであれば、我が国及びその周辺の守りを固めなければならないはずなのに、(現在審議中の安保法案によって)全世界に自衛隊をより積極的に展開させることによって日本の守りを手薄にする防衛政策など愚の骨頂であるという、非常にシンプルかつ筋の通った意見を広めることでしょう。
 これは、住民投票の対象となる条例の中身が、単なる大阪市の解体に過ぎないということを広めること
によって、大阪都構想推進派との闘いに勝利したように(辛勝ではありましたが)、安保法案の本質が、世界中どこででも、自衛隊が「切れ目なく」米軍を支援できる体制を構築することにあるのだということを、1人でも多くの人に知ってもらうことを目指すものです。
 
 そして、おそらくもう一つの方法は、より迂遠で時間がかかるかもしれませんが、軍事にしても経済にしても、中国についてのより精度の高い情報を多くの人と共有するように努めるということではないかと思います。
 このメルマガ(ブログ)でご紹介した「自衛隊を活かす会」主催のシンポジウムなども、そのような役に十分立つと考えてご紹介したのでした。
 
2015年1月13日
「自衛隊を活かす会」シンポジウムから学ぶ(4)「新たな米中関係と日本の安全保障」~今回はまず予告編
2015年1月14日
小原凡司氏が語る中国海軍・空軍の現在~「自衛隊を活かす会」シンポ④補遺その1
2015年1月15日
植木千可子氏が語る東アジアにおける日米中関係~「自衛隊を活かす会」シンポ④補遺その2

2015年3月8日
「自衛隊を活かす会」シンポジウムから学ぶ(4)「新たな米中関係と日本の安全保障」~いよいよ本編(その1)
2015年3月11日
「自衛隊を活かす会」シンポジウムから学ぶ(4)「新たな米中関係と日本の安全保障」~これが最終(動画付)
 
 そして今日は、民主党政権時代に駐中国大使を務められた丹羽宇一郎氏(元伊藤忠商事社長)が、今年の2月28日、商社九条の会・東京の招きにより行った講演会の記録(講演抄録)が同会ホームページにアップされていましたので、ご紹介したいと思います。
 
※注 この講演抄録は、録音した講演内容を全文ではなく、要点を(商社九条の会・東京)事務局の責任で編集し、見出し、小見出しをつけ、抄録としてまとめたものです。
 
 もちろん、根が財界人ですから、TPP推進など、同意しにくい主張もありますが、それなりに聴くべきところ(読むべきところ)が多いと思いました。
 印象に残った1節を引用します。
 
(引用開始)
 日中関係は、日米関係にあり、日韓関係は日中関係にあり、つまり日中関係は今の経済力とかいろんなことから言うと、全ての道は北京に通じるとウオールストリートジャーナルが昨年11月の9日か10日に、記事を書いた。中国抜きにして世界は語れない、こういう時期に日本は今まで通りの戦略で中国とやってはいけない。お互いに現実の姿を知って、中国と話をしなければいけない。
 サンフランシスコ平和条約第11条には、極東軍事裁判判決を受諾すると書いて、45カ国の連合軍とサインをしている。これをなしにしろ、これに疑義があると最近国会議員で言う人が出てきたが、これは大変なこと。アメリカを否定するのか、これをどう思っているんだ、という疑義が出てくる。敗戦国、無条件降伏のボツダム宣言、サンフランシスコ平和条約は平和主義―今の日本の憲法の骨格にあるものを書いている。これはインターナショナルバリュー。国民主権基本的人権、平和主義は、何もアメリカ主導のレ
ジームだからではなく、国際的に人類が希求すべきもの。だからそれに疑義があるということになるとオバマはちょっと待てよ、ということになる。このところが靖国参拝も含めて非常に問題を複雑にしている。
(引用終わり)
   
 なお、丹羽宇一郎氏が駐中国大使を退任されてまだ1年経たない2013年10月24日に新外交イニシアティブ(ND)が主催したシンポジウムに基調講演講師兼パネリストとして登壇された際の動画も併せてご紹介しておきます。
 
13 10/24 NDシンポジウム「民間大使が見た日本外交 ―これからの日中関係を考える―」 
 
4分~ 主催者挨拶 柳澤協二氏(ND理事)
9分~ 基調講演 丹羽宇一郎
49分~ パネルディスカッション 丹羽宇一郎氏、鳥越俊太郎氏(ND理事)、猿田佐世弁護士(ND
事務局長、コーディネーター)    
 
 さらに、中国脅威論者に対する究極の対処方法を考えるとすれば、「中国の人と仲良くなったら?」と勧めることでしょうね。
 もっとも、いきなり簡単にはいかないでしょうから、適当な機会に巡り会うまで、こういうサイトでもチェックして楽しんではどうかと推奨したらどうでしょう?