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安保法制:「5党合意」「附帯決議」「閣議決定」をどう読むか(6)~逐条的に読んでみた⑤(5項)

 今晩(2015年10月13日)配信した「メルマガ金原No.2242」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
安保法制:「5党合意」「附帯決議」「閣議決定」をどう読むか(6)~逐条的に読んでみた⑤(5項

(これまでの連載)
2015年10月4日
安保法制:「5党合意」「附帯決議」「閣議決定」をどう読むか(1)~とにかく読むだけは読まなければ(資料編)
2015年10月5日
安保法制:「5党合意」「附帯決議」「閣議決定」をどう読むか(2)~逐条的に読んでみた①(前文・1項)
2015年10月7日
安保法制:「5党合意」「附帯決議」「閣議決定」をどう読むか(3)~逐条的に読んでみた②(2項)
2015年10月9日
安保法制:「5党合意」「附帯決議」「閣議決定」をどう読むか(4)~逐条的に読んでみた③(3項)
2015年10月11日
安保法制:「5党合意」「附帯決議」「閣議決定」をどう読むか(5)~逐条的に読んでみた④(4項)

 9月16日に自由民主党公明党、日本を元気にする会、次世代の党、新党改革の5党間で締結された「平和安全法制に関する合意事項」をどう読むかシリーズ、逐条的に読んできて、今日は5項です。
 前回の前書きで、「好評なのかどうかよく分かりませんが」と書いたところ、熱心なブログの読者から、「プリントアウトして、しっかりと拝読させていただいています。」という丁重なコメントを(Facebookに)いただき、あらためてやる気がわいてきました。これまでも、いやいや書いていた訳ではないのですが、反響がないと、正直「誰も読んでくれていなかもしれない」と思って意欲がそがれますからね(私のブログは、ネトウヨの荒らしに対応する時間などとてもないので、事実上コメントできない設定にしてありますから)。

 さて、いつも書いていることですが、9月16日の「合意事項」も翌17日の参議院・我が国及び国際
社会の平和安全法制に関する特別委員会での「附帯決議」もほぼ同内容ですが、9月19日の閣議決定「平和安全法制の成立を踏まえた政府の取組について」が「趣旨を尊重し、適切に対処するものとする。」としたのは、直接的には「5党合意」についてであって「附帯決議」ではありませんので、以下には9月16日の「平和安全法制に関する合意事項」を引用します。
 なお、引用した「合意事項」は茶色で、私が書いた補注は黒色で、私が引用した文章は紺色で表記してあります。

5 国会が自衛隊の活動の終了を決議したときには、法律に規定がある場合と同様、政府はこれを尊重し、速やかにその終了措置をとること。
 
 今日はこの1文しかないので、早く書き終われるでしょうか。
 この5項は、前回取り上げた合意事項4項第1文「平和安全法制に基づく自衛隊の活動について、国会がその承認をするにあたって国会がその期間を限定した場合において、当該期間を超えて引き続き活動を行おうとするときは、改めて国会の承認を求めること。」と対になる規定であり、4項は承認を与える際に期間を限定することにより、また、5項は承認して自衛隊が活動を開始した後に終了の議決をすることにより、国会が、無限定に自衛隊の海外派遣が長期化すること防ぐ手段を確保しようとした合意事項であり、それなりに意義のある規定であると思います。
 ただ、5項については、「法律に規定がある場合と同様」とあるとおり、法律自体が、議会の議決によって対処措置の終了を政府に義務付けている場合もあります。
 
武力攻撃事態等及び存立危機事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律(改正事態対処法)
(対処基本方針)
第九条 政府は、武力攻撃事態等又は存立危機事態に至ったときは、武力攻撃事態等又は存立危機事態へ
の対処に関する基本的な方針(以下「対処基本方針」という。)を定めるものとする。
2~13 略
14 内閣総理大臣は、対処措置を実施する必要がなくなったと認めるとき又は国会が対処措置を終了す
べきことを議決したときは、対処基本方針の廃止につき、閣議の決定を求めなければならない。
15 内閣総理大臣は、前項の閣議の決定があったときは、速やかに、対処基本方針が廃止された旨及び対処基本方針に定める対処措置の結果を国会に報告するとともに、これを公示しなければならない。
 
 以上は、武力攻撃事態、武力攻撃予測事態、存立危機事態に際して作成される対処基本方針についての国会承認について定めた9条の規定であり、その13項及び14項において、「国会が対処措置を終了すべきことを議決」することが想定されています。
 つまり、存立危機事態又は武力攻撃事態において、国会による事前の又は事後の承認を得て自衛隊が防衛出動していたとしても、国会が「対処措置を終了すべき」と議決した場合には、政府がそれに従わなければならないことについては(武力攻撃事態について前からそうでした)明文の規定があります。
 
 しかし、重要影響事態における国会承認を定めた重要影響事態法(重要影響事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律)5条は、その3項において「政府は、前項の場合において不承認の議決があったときは、速やかに、当該後方支援活動、捜索救助活動又は船舶検査活動を終了させなければならない。」とはありますが、いったん承認した後の「活動終了の議決」は規定されていません。従って、5党合意の5項は、重要影響事態における後方支援活動等を「終了させる国会の議決」において、特に意味を持ってくることになります。
 
 ところで、テロ特措法イラク特措法の恒久法化と言われる国際平和支援法(国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律)における国会承認の規定も読んでおきましょう。
 
(国会の承認)
第六条 内閣総理大臣は、対応措置の実施前に、当該対応措置を実施することにつき、基本計画を添えて
国会の承認を得なければならない。
2 前項の規定により内閣総理大臣から国会の承認を求められた場合には、先議の議院にあっては内閣総理大臣が国会の承認を求めた後国会の休会中の期間を除いて七日以内に、後議の議院にあっては先議の議院から議案の送付があった後国会の休会中の期間を除いて七日以内に、それぞれ議決するよう努めなけれ
ばならない。
3 内閣総理大臣は、対応措置について、第一項の規定による国会の承認を得た日から二年を経過する日を超えて引き続き当該対応措置を行おうとするときは、当該日の三十日前の日から当該日までの間に、当該対応措置を引き続き行うことにつき、基本計画及びその時までに行った対応措置の内容を記載した報告書を添えて国会に付議して、その承認を求めなければならない。ただし、国会が閉会中の場合又は衆議院
が解散されている場合には、その後最初に召集される国会においてその承認を求めなければならない。
4 政府は、前項の場合において不承認の議決があったときは、遅滞なく、当該対応措置を終了させなけ
ればならない。
5 前二項の規定は、国会の承認を得て対応措置を継続した後、更に二年を超えて当該対応措置を引き続き行おうとする場合について準用する。
 
 国際平和共同対処事態において、自衛隊がなし得る対処措置は、協力支援活動、捜索救助活動、船舶検査活動であって、実質的な内容としては重要影響事態において行える活動とほとんど変わりません(後方支援活動は協力支援活動と言い換えられますが)。
 ただ、重要影響事態と異なり、国際平和共同対処事態にあっては、2年ごとにあらためて国会承認を求めなければならないことになっています。これは、テロ特措法やイラク特措法が時限立法であったこともあるでしょうが、直接的にはPKO協力法(国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律)6条の規定を踏襲したものであり、一定期間ごとに国会の判断を求めるべきという考えに基づくものです。2年も経てば政権交代している可能性だってありますしね。

 そこで、5党合意の5項が国際平和共同対処事態における対処措置や、国際連合平和維持活動又は国際連携平和安全活動などに適用があるのかどうかが一応問題になります。
 法律の規定がもともと2年ごとに国会の判断を求めることになっているのであるから、国会によるコントロール(民主的統制)は、それによって十分担保されており、合意事項の5項にいう「法律に規定がある場合」にあたるので、合意事項そのものは適用されないと解釈することも不可能ではないかもしれません。
 しかしながら、国際平和支援法やPKO協力法が定める2年のインターバルの途中であっても、国会が自衛隊の活動を終了させるべきとの判断に至る可能性もある以上、あえて合意事項を限定的に解釈する合理性はなく、2年の期間内であっても、国会が自衛隊の活動の終了を議決した場合には、政府はそれを尊重して活動を終了すべき義務を負う(閣議決定の効力による)と解すべきだと思います。
                                         (続く)
 

(忘れないために)
 「自由と平和のための京大有志の会」による「あしたのための声明書」(2015年9月19日)を、「忘れないために」しばらくメルマガ(ブログ)の末尾に掲載することにしました。
 
(引用開始)
  あしたのための声明書
 
わたしたちは、忘れない。
人びとの声に耳をふさぎ、まともに答弁もせず法案を通した首相の厚顔を。
戦争に行きたくないと叫ぶ若者を「利己的」と罵った議員の無恥を。
強行採決も連休を過ぎれば忘れると言い放った官房長官の傲慢を。
 
わたしたちは、忘れない。
マスコミを懲らしめる、と恫喝した議員の思い上がりを。
権力に媚び、おもねるだけの報道人と言論人の醜さを。
居眠りに耽る議員たちの弛緩を。
 
わたしたちは、忘れない。
声を上げた若者たちの美しさを。
街頭に立ったお年寄りたちの威厳を。
内部からの告発に踏み切った人びとの勇気を。
 
わたしたちは、忘れない。
戦争の体験者が学生のデモに加わっていた姿を。
路上で、職場で、田んぼで、プラカードを掲げた人びとの決意を。
聞き届けられない声を、それでも上げつづけてきた人びとの苦しく切ない歴史を。
 
きょうは、はじまりの日。
憲法を貶めた法律を葬り去る作業のはじまり。
賛成票を投じたツケを議員たちが苦々しく噛みしめる日々のはじまり。
人の生命を軽んじ、人の尊厳を踏みにじる独裁政治の終わりのはじまり。
自由と平和への願いをさらに深く、さらに広く共有するための、あらゆる試みのはじまり。
 
わたしたちは、忘れない、あきらめない、屈しない。
 
     自由と平和のための京大有志の会
(引用終わり)