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新アピール(11/13)を読んで2004年「九条の会」アピールを想起する

 今晩(2015年11月18日)配信した「メルマガ金原No.2278」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
新アピール(11/13)を読んで2004年「九条の会」アピールを想起する

 先週の11月13日、「九条の会」新たなアピールを発表しているということは、「九条の会・わかやま」事務局の方から教えていただくまで全然気がついていませんでした。
 これって、記者会見とかはしていないのでしょうか?
 もっとも、11月13日には、
「鶴見俊輔さんの志を受けついで 九条の会講演会 今、立憲主義と9条の危機に立ち向う」日本教育会館一ツ橋ホール)が開催され、大江健三郎さん、澤地久枝さんという2人の呼びかけ人の他、益川敏英さんや森まゆみさんがお話されたようなので、その場で新アピールが発
表されたのかもしれません。
 
 有名な2004年6月10日の「九条の会」アピール以降も、節目の時期に新たなアピールが発表されるということはこれまでもあり、近くは今年の2月23日、アピール「憲法9条を根底からくつがえす「戦争立法」と改憲の暴走を止めよう―主権者の声を全国の草の根から」が発表されています。
 
(抜粋引用開始)
 いま、こうした国民世論を受け、安倍内閣の暴走にストップをかけようとするさまざまな団体による取り組みが発展し、それらの団体間の共同が広がっています。これを、私たちは心から歓迎し、その成功を
願ってやみません。同時に、結成から10年を経過した私たち九条の会にとっても、その真価が問われる正
念場です。
 戦後70年の今こそ、日本国憲法9条の意義を再確認し、日本と世界に輝かすべき時です。それこそが、世界に広がる暴力の連鎖を断ち切る保障です。全国のすべての「九条の会」が、憲法9条を破壊する安倍内閣の戦争立法と明文改憲に「NO」の声をつきつけ、その暴走をストップさせるために、草の根での訴えと話
し合いを創意をこらして展開しましょう。
(引用終わり)
 
 そして、残念ながら安全保障関連法案の成立を阻止できなかったという事実を踏まえ、「結成以来11年、「地域に根ざす」、「共同を広げる」という原点を大事に歩んできた「九条の会」には、戦争法反対に示された声に応えて、9条改憲を阻むための運動を新たに飛躍させることが求められています。」(「九条の会」ホームページに掲載されたリード文)という認識に基づいて新アピールが発表されました。
 まずは、その新アピール全文を読んでみましょう。
 
(引用開始)
九条の会アピール
憲法9条を守るために新たな飛躍を
 
 いま、日本国憲法は重大な岐路に立っています。安倍晋三政権と与党は、9月19日に戦争法(安全保障関連法)の採決を強行し、憲法9条の体制を大きく掘り崩すという暴挙に出ました。この動きに対し、「憲法9条を守れ」、「立憲主義を壊すな」など、多くの人びとが反対の意思を示し、運動の輪が大きく広がりました。この盛り上がりは、「日本が戦争することは許さない」という決意を込めて制定された憲法9条が人びとの中に強く息づいていることを改めて証明しました。しかし、安倍首相は、その後も、戦争法の発動に執念を燃やし、9条改憲になお意欲を示しています。結成以来11年、「地域に根ざす」、「共同を広げる」という原点を大事に歩んできた「九条の会」には、戦争法反対に示された声に応えて、9条改憲を阻むための運動を新たに飛躍させることが求められています。
 全国津々浦々から、戦争法廃止の声をあげましょう。
 戦争法と一体の辺野古新基地建設に反対し、オール沖縄の声を踏みにじるな、の声をあげましょう。
 憲法9条の「武力によらない平和」の理念をくつがえす明文改憲の動きを阻むために立ち上がりましょう。
 
 この間、戦争法反対に取り組んできた、地域、分野の「九条の会」のみなさんに改めて訴えます。
 戦争法反対運動では安保闘争以来といわれる多くの人々が創意工夫をこらしてさまざまな行動に立ち上がりました。6割に及ぶ人々が戦争法案に反対し、8割を占める人々が法案の説明が不十分だと感じています。憲法9条違反の戦争法を廃止するという課題を目の前にして、今一度すべての地域のすべてのひとを対
象に宣伝し、学習会を開きましょう。
 そして、戦争法反対運動でつちかった共同の輪をから生まれた結びつきを活かしながら、各地域、各分野でさらに広げる努力を粘り強くすすめていきましょう。近隣の会同士で互いに支え合い、交流すること
で運動の活性化を図ることも重要です。
 「戦争法廃止」の署名運動や沖縄での新基地建設反対運動など、「憲法9条を守る」という点からも重要な運動に積極的に取り組みましょう。地域で開かれるこれらの集会には、「九条の会」としてもできるだけ多数で参加しましょう。
 
 日本と世界の平和な未来のために、日本国憲法を守るという一点で手をつなぎ、「改憲」のくわだてを阻むため、一人ひとりができる、あらゆる努力を、いますぐ始めることを訴えます。
 
  2015年11月13日
                               九条の会
(引用終わり)
 
 2015年2月アピールのキーワードは「共同」と「地域(草の根)」でしたが、今回の11月アピールでも、基本的に変わりません。
 もちろん、安全保障関連法案成立という事態を迎え、「九条」が直面する危機的状況の階梯がさらに一段階上がったことは間違いなく、この状況に立ち向かうための新たなアピールを、という趣旨も分からな
いことはありませんし、そこに書かれていること自体には全く異論はありません。
 しかしながら、この新アピールを読むにつけ、2004年アピールが思い出されるのも致し方ないのではないでしょうか。
 
 今から11年以上前、イラク戦争開戦の翌年に発表された「九条の会」アピールは、「日本国憲法は、いま、大きな試練にさらされています。」という情勢分析に始まり、「日本と世界の平和な未来のために日本国憲法を守るという一点で手をつなぎ、「改憲」のくわだてを阻むため、一人ひとりができる、あらゆる努力を、いますぐ始めることを訴えます。」(2015年11月アピールの末尾は2004年アピールをそのまま流用したものです)という呼びかけで終わるこのアピールは多くの人に感銘を与え、全国各地で、このアピールに呼応して多くの9条の会が結成され、そのうちのかなりの会は、現在に至るまで活動を継続しています。
 読み返してみても、それだけのインパクトを持ち得たことにはそれなりの理由がある、と思えるだけの力を内包した文章だと思います。主として起案の任に当たられたのがどなたかは知りませんが、少なくとも9人の呼びかけ人全員が同意した上で発表されたはずであり、一家言も二家言もある呼びかけ人が納得
しただけのことはあると思わされます。
 
 2004年アピールは、情勢分析においても優れていました。例えば、「集団的自衛権の容認、自衛隊の海外派兵と武力の行使など、憲法上の拘束を実際上破ってきています。」とある部分は、テロ特措法(2001年)に基づく「不朽の自由作戦」に参加する有志連合に対する洋上給油活動(事実上の集団的自衛権の行使)、あるいは、イラク特措法(2003年)に基づく米軍等への支援活動(アピール以後のことですが、同法に基づく航空自衛隊による空輸活動が憲法9条1項に違反するとの名古屋高裁判決が出されています
)などを念頭に置いた文章でしょう。
 また、「非核三原則や武器輸出の禁止などの重要施策を無きものにしようとしています。」や「子ども
たちを「戦争をする国」を担う者にするために、教育基本法をも変えようとしています。」という3つの懸念については、既に2つまで、第一次安倍内閣(教育基本法改悪)と第二次安倍内閣(武器輸出三原則の廃止)によって「実現」されています。
 
 私がこの2004年アピールの中で最も感銘深く読んだのは、末尾の呼びかけの直前に置かれた次の3つの文章です。
 
「私たちは、平和を求める世界の市民と手をつなぐために、あらためて憲法九条を激動する世界に輝かせたいと考えます。そのためには、この国の主権者である国民一人ひとりが、九条を持つ日本国憲法を、自分のものとして選び直し、日々行使していくことが必要です。それは、国の未来の在り方に対する、主権者の責任です。」
 
 「九条を持つ日本国憲法を、自分のものとして選び直し、日々行使していくこと」とは、自分にとって何をしなければならないということなのか?を、国民1人1が自らに問いかけるべきだという、思えば、非常に重い呼びかけだと思いました。
 2004年アピールを何度読み返しても、私はここで立ち竦みます。「自分はどれだけのことをなし得
たのか?」という問いに直面して。
 
 2015年11月13日の新アピールを読んだ方には、是非とも2004年アピールを再読していただ
きたいと思います。
 2004年アピールの呼びかけにもかかわらず、今日の事態を迎えたのは、ある意味、「九条の会」の
敗北であるかもしれませんが、そうであればなおさら、この原点に立ち返ることの意義は大きいと思いま
す。
 以下に、2004年アピールを全文引用しますが、その前に、今年の7月20日に逝去された呼びかけ人・鶴見俊輔さんが、他の3人の呼びかけ人とともに、2012年暮れの総選挙の結果を承けて、2013年1月に公表されたメッセージをご紹介したいと思います。これは、今でも私たち1人1人の覚悟である
べきだと思うからです。
 
九条の会呼びかけ人からのメッセージ(2013年1月)
(引用開始)
九条の会の働きどき  鶴見俊輔
 今度の選挙結果を見ると、九条の会の働きは、これまで以上に大切になると思います。現在、私にできることは少ないかもしれません。しかし、まだ私たちの内に(そして私たちの未来に)希
望が残っているとするならば、私はそれにひとつの石を置こうと思います。
(引用終わり)
 
「九条の会」アピール(2004年6月10日)
(引用開始)
 日本国憲法は、いま、大きな試練にさらされています。
 ヒロシマナガサキの原爆にいたる残虐な兵器によって、五千万を越える人命を奪った第二次世界大戦
。この戦争から、世界の市民は、国際紛争の解決のためであっても、武力を使うことを選択肢にすべきで
はないという教訓を導きだしました。
 侵略戦争をしつづけることで、この戦争に多大な責任を負った日本は、戦争放棄と戦力を持たないこと
を規定した九条を含む憲法を制定し、こうした世界の市民の意思を実現しようと決心しました。
 しかるに憲法制定から半世紀以上を経たいま、九条を中心に日本国憲法を「改正」しようとする動きが、かつてない規模と強さで台頭しています。その意図は、日本を、アメリカに従って「戦争をする国」に
変えるところにあります。そのために、集団的自衛権の容認、自衛隊の海外派兵と武力の行使など、憲法上の拘束を実際上破ってきています。また、非核三原則や武器輸出の禁止などの重要施策を無きものにしようとしています。そして、子どもたちを「戦争をする国」を担う者にするために、教育基本法をも変えようとしています。これは、日本国憲法が実現しようとしてきた、武力によらない紛争解決をめざす国の在り方を根本的に転換し、軍事優先の国家へ向かう道を歩むものです。私たちは、この転換を許すことは
できません。
 アメリカのイラク攻撃と占領の泥沼状態は、紛争の武力による解決が、いかに非現実的であるかを、日々明らかにしています。なにより武力の行使は、その国と地域の民衆の生活と幸福を奪うことでしかありません。一九九〇年代以降の地域紛争への大国による軍事介入も、紛争の有効な解決にはつながりませんでした。だからこそ、東南アジアやヨーロッパ等では、紛争を、外交と話し合いによって解決するための
、地域的枠組みを作る努力が強められています。
 二〇世紀の教訓をふまえ、二一世紀の進路が問われているいま、あらためて憲法九条を外交の基本にすえることの大切さがはっきりしてきています。相手国が歓迎しない自衛隊の派兵を「国際貢献」などと言
うのは、思い上がりでしかありません。
 憲法九条に基づき、アジアをはじめとする諸国民との友好と協力関係を発展させ、アメリカとの軍事同
盟だけを優先する外交を転換し、世界の歴史の流れに、自主性を発揮して現実的にかかわっていくことが求められています。憲法九条をもつこの国だからこそ、相手国の立場を尊重した、平和的外交と、経済、
文化、科学技術などの面からの協力ができるのです。
 私たちは、平和を求める世界の市民と手をつなぐために、あらためて憲法九条を激動する世界に輝かせたいと考えます。そのためには、この国の主権者である国民一人ひとりが、九条を持つ日本国憲法を、自分のものとして選び直し、日々行使していくことが必要です。それは、国の未来の在り方に対する、主権者の責任です。日本と世界の平和な未来のために、日本国憲法を守るという一点で手をつなぎ、「改憲」のくわだてを阻むため、一人ひとりができる、あらゆる努力を、いますぐ始めることを訴えます。
 
                                         2004年6月10日
 
井上 ひさし(作家)   梅原 猛(哲学者)   大江 健三郎(作家)
奥平 康弘(憲法研究者)   小田 実(作家)   加藤 周一(評論家)
澤地 久枝(作家)   鶴見 俊輔(哲学者)   三木 睦子(国連婦人会)
(引用終わり)
 
(物故された呼びかけ人)
小田実氏 2007年7月30日 ご逝去
加藤周一氏 2008年12月5日 ご逝去
井上ひさし氏 2010年4月9日 ご逝去
三木睦子氏 2012年7月31日 ご逝去
奥平康弘氏 2015年1月26日 ご逝去
鶴見俊輔氏 2015年7月20日 ご逝去
 

(忘れないために)
 「自由と平和のための京大有志の会」による「あしたのための声明書」(2015年9月19日)を、「忘れないために」しばらくメルマガ(ブログ)の末尾に掲載することにしました。
 
(引用開始)
  あしたのための声明書
 
わたしたちは、忘れない。
人びとの声に耳をふさぎ、まともに答弁もせず法案を通した首相の厚顔を。
戦争に行きたくないと叫ぶ若者を「利己的」と罵った議員の無恥を。
強行採決も連休を過ぎれば忘れると言い放った官房長官の傲慢を。
 
わたしたちは、忘れない。
マスコミを懲らしめる、と恫喝した議員の思い上がりを。
権力に媚び、おもねるだけの報道人と言論人の醜さを。
居眠りに耽る議員たちの弛緩を。
 
わたしたちは、忘れない。
声を上げた若者たちの美しさを。
街頭に立ったお年寄りたちの威厳を。
内部からの告発に踏み切った人びとの勇気を。
 
わたしたちは、忘れない。
戦争の体験者が学生のデモに加わっていた姿を。
路上で、職場で、田んぼで、プラカードを掲げた人びとの決意を。
聞き届けられない声を、それでも上げつづけてきた人びとの苦しく切ない歴史を。
 
きょうは、はじまりの日。
憲法を貶めた法律を葬り去る作業のはじまり。
賛成票を投じたツケを議員たちが苦々しく噛みしめる日々のはじまり。
人の生命を軽んじ、人の尊厳を踏みにじる独裁政治の終わりのはじまり。
自由と平和への願いをさらに深く、さらに広く共有するための、あらゆる試みのはじまり。
 
わたしたちは、忘れない、あきらめない、屈しない。
 
     自由と平和のための京大有志の会
(引用終わり) 
 

(付録)
『世界』 作詞・作曲:ヒポポ田 演奏:ヒポポフォークゲリラ