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石埼学龍谷大学法科大学院教授(憲法学)講演会へのお誘い~4/2「守ろう9条 紀の川 市民の会」@和歌山市

 今晩(2016年2月10日)配信した「メルマガ金原No.2362」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
石埼学龍谷大学法科大学院教授(憲法学)講演会へのお誘い~4/2「守ろう9条 紀の川 市民の会」@和歌山市

 和歌山市の北部、より厳密に言えば、奈良県に水源を発し、紀伊水道に注ぐ一級河川紀の川の北岸に居住する和歌山市民によって構成される地域9条の会「守ろう9条 紀の川 市民の会」については、私自身、同会設立時(2005年1月24日)以来、運営委員を務めていることもあり、春の総会における記念講演や秋の憲法フェスタを、その都度このメルマガ(ブログ)で案内してきました。
 今日は、来る4月2日(土)に開催する第12回総会における記念講演をご紹介します。
 まずは、チラシの文字情報を転記することとします。

チラシから引用開始)
守ろう9条 紀の川 市民の会 第12回 総会
 
 安倍自公政権は昨年9月19日に多くの国民の反対を押し切って憲法9条違反の「戦争法案(安全保障関連法案)」を強行可決させました。前線と後方地域、戦闘地域と非戦闘地域の区別を取り払い、自衛隊は、現に今の瞬間に戦闘が行われていないところなら地球の裏側でも活動ができるとし、従来は許されなかった米軍などへの弾薬の提供や発進準備中の軍用機への給油や整備もできるようにし、さらに任務遂行型の武器使用や駆け付け警護も解禁しました。戦後70年間、戦争でたった一人の外国人も殺さず、たった一人の戦死者も出さなかった日本に「殺し殺される」現実の危機が差し迫っています。
 「戦争法」は成立させられましたが、9月以降も戦争法の廃止を目指す活動は、「シールズ」「ママの会」「学者の会」など新しい自覚的な活動を始めとして大きく進んでいます。また、「2000万人署名」も力強く進められています。そして安倍政権を退場させるために、「野党は共闘!」の声はますます高まり、この夏の参議院選挙に向けて全国でも、和歌山でも野党統一候補擁立の動きが大きくなっています。
 憲法9条が輝く平和国家・日本を取り戻すためには「戦争法は廃止」しかありません。私たちにできることは何かを学び、みんなで力を合わせて「戦争法廃止」「安倍政権退場」を実現しようではありませんか。
 
※総会は会員でなくても参加できます。もちろん無料です。多くの方にご参加いただきたいと願っています。
 
日時 2016年4月2日(土)午後2時~
場所 河北コミュニティセンター 2F 多目的ホール
 和歌山市市小路192-3(Tel:073-480-3610)
 南海本線紀ノ川駅」下車すぐ(改札口を左折120m、左折し踏切を越え180m、右側)
 和歌山バス・六十谷線(川永団地⇔南海和歌山市駅)「梶取東バス停」前
 
◎第1部 記念講演 14:10~15:45
戦争法は廃止、憲法9条が輝く日本を取り戻そう
~今、私たちにできること~
講師 石埼 学(いしざき・まなぶ)氏

   龍谷大学法科大学院教授(憲法学

◎第2部 総会議事 15:50~16:30
 
補聴器を使用されている方がよりクリアな状態でお聞きいだけるように、会場に『磁気ループ』を設置します。使用できる補聴器は「Tモード」「MTモード」の補聴器です。
 
主催:守ろう9条 紀の川 市民の会  
お問合せ先:073-462-0539 原 通範
(引用終わり)
 
 上記のとおり、今年の総会における記念講演は、石埼学教授(龍谷大学法科大学院憲法学)をお招きします。
 石埼教授といえば、私のメルマガ(ブログ)を欠かさず読んでくださっている方(めったにいないでしょうが)なら、こういう記事をご記憶かもしれません。
 
 
 上の記事は、「2015年5月28日(木)13時15分から、京都市伏見区龍谷大学深草キャンパスで行われた石埼学教授による日本国憲法講義「平和主義と安保法制」の模様を中継した」IWJ京都による中継アーカイブ映像(1時間26分)をご紹介するとともに、「まず憲法9条の解釈が論じられ、ついで安保法制についての解説がなされるのですが、自分が学生になったつもりでノートをとりながら受講してみることをお勧めしたいですね。」と推奨したものです。
 このIWJの動画は今でも全編視聴できます。
 
 
 講義の冒頭でたしか「受講者300人」と語られていますので(最初の方はマイクが学生の私語をやたらと拾って正直煩わしいですが)、法科大学院生を対象とした講義ではなく、学部の学生を対象とした講義だったと思うのですが、確言はできません。4月2日に石埼教授に直接伺おうかと思います。
 
 それから、石埼先生は、2015年7月3日に国会前で行われた憲法学者によるリレートークの「発案者」として、トップでスピーチされています。
 
20150703 UPLAN 安保関連法案に反対する憲法学者リレートーク(2時間54分)

※石埼教授のスピーチは2分~の部分です。
 
 あと、昨年各メディアが全国の憲法研究者を対象としたアンケートを実施しましたが、石埼学教授による回答を2つ見つけましたので、少し長くなりますが、回答の一部をご紹介します。
 
朝日新聞によるアンケートへの石埼学氏の回答
(抜粋引用開始)
■安保関連法案は憲法違反か
 6月4日の衆議院憲法審査会における3名の憲法学者の発言等により、安保関連法案が違憲であることは国会にとって明白となった。違憲であることが明白な立法を敢えてするならば、その立法だけではなく、国会の立法行為そのものが違憲と評価せざるを得ない。
自衛隊憲法違反か
 私は、現在の「武力行使」をする自衛隊違憲と考える。しかし重大な態様における武力行使である武力攻撃に対する武力行使である個別的自衛権の行使は憲法9条によって禁止されているが、武力攻撃に至らない武力行使に対する暫定的な対抗措置(1986年の国際司法裁判所ニカラグア事件判決)というものが国際法上存在します。そうした個別的自衛権の行使に至らない暫定的な対抗措置を実施することは憲法9条1項の禁止する武力行使等に該当せず、そうした暫定的な対抗措置のみを実施する実力組織の保持は憲法9条2項で禁止されていないと考える。
憲法9条の改正について
 現代の戦争は、正規軍と正規軍とが対戦する古典的な戦争であることは稀であり、無差別の空爆、正規兵と民間人との区別を消去したパルチザン戦による侵略者への長期の抵抗、国際的なテロであり、ひとたび本格的な戦争となれば、たとえ自衛戦争であっても凄惨な結果とならざるをえない。第2次世界大戦後の戦争の例を考えれば、日本は、他国とは別の道を選択して国際平和に貢献すべきである。
(引用終わり)
 
報道ステーションによるアンケートへの石埼学氏の回答
(自由回答欄から引用開始)
 上記のご質問のうち幾つかへの回答を補足させていただきます。
 質問3についてですが、昨年7月1日の閣議決定および武力攻撃事態法案において明記されている集団的自衛権は、それを行使するのは「存立危機事態」だけであるとしており、国連憲章51条が行使を容認するものよりも限定がかかっているのは確かです。ただ、それにしても集団的自衛権の行使であることに変わりはありません。武力攻撃事態法案の文言による限定にもかかわらず、「他衛」という集団的自衛権の性質が変わるわけではなく、憲法上容認される余地はないと私は考えます。
 質問4についてですが、現に武力行使を行っている他国軍への後方支援はそもそも武力行使の一環であり憲法9条1項違反であると私は考えます。しかも今回の法案(重要影響事態法案および国際平和支援法案)における後方支援は、旧イラク特措法の「非戦闘地域」という限定もなく「現に戦闘行為が行われている現場」以外で実施することが可能であり、さらに捜索救助活動については、自衛隊がすでに「遭難者」を発見している場合には「現に戦闘行為が行われている現場」でも継続できます。他国軍の武力行使と一体化するのは必然と考えるのが自然でしょう。たとえて言えば、旧イラク特措法と同じ立場に立つと、「赤信号(=戦闘地域)なのだけれども、車の往来が無い時は横断しても良い。横断中に車の往来が始まっても、ケガ人がいた場合にはそのまま路上で救助活動をしてもよい」という理屈だと考えます。
 質問5についてですが、PKO協力法改正案に盛り込まれている安全確保業務や駆け付け警護は「武器の使用」を伴うものですが、国際法上これらの「武器の使用」は「武力の行使」と同視されます。憲法9条1項に違反します。政府の従前の見解では、海外における「武器の使用」が「武力の行使」ではないのは正当防衛や緊急避難にあたる場合等に限定されており、いわば「自然権的権利」だからだというものでした(自衛隊法95条の海外での適用は「限定的受動的」だからですが)。そうした従前の政府見解に照らしても、任務遂行のための武器の使用は、憲法9条1項が禁止する「武力の行使」に該当すると評価せざるをえません。
2.安保法制についての政府の説明の不誠実さ。まだ国会での審議がはじまったばかりではありますが、法案についての安倍首相や中谷防衛大臣の答弁等は極めて不誠実であると考えます。私が、とりわけ不誠実と考えるのは、政府が法案の意味内容を説明する代わりに、例えば「ホルムズ海峡での機雷掃海以外に他国領域での武力行使は念頭にない」という言い回しで政権担当者らの、いわば心づもりの説明に終始している感があることです。この法案が可決・成立した場合に自衛隊は何をできるようになるのかではなく、政権担当者が何をするつもりなのかの説明に終始しているということです。法案の審議である以上、法案の提案者は、前者を説明すべきです。全国民の代表者たる国会議員憲法43条)に対する説明として極めて不誠実と評価せざるをえません。また「自衛」や「専守防衛」の観念を拡張して用いて従来の政府の立場との一貫性を強弁する点も見過ごすことはできません。国連憲章上の集団的自衛権の行使は、その性質上「他衛」です(国際司法裁判所の1986年のニカラグア事件判決もそう評価しています)。これは、従前の個別的自衛権の行使容認の延長線上で説明しようとするのは無理です。「専守防衛」については、これは法的概念ではありませんから、政治家がどのように定義してどのように用いても自由と言えば自由ですが、安保法制の審議においては、政府が憲法解釈を変更したことを覆い隠す観念として用いられており、学問上、現実を隠ぺいする観念という意味でのイデオロギーと評価せざるをえません。その他、昨日(6月5日)の中谷防衛大臣の「憲法を…法案に適応させる」旨の答弁等看過しがたい答弁等が他にもありますが、長くなりますので、また既にご承知かと思いますので控えさせていただきます。
(引用終わり)
 
 以上、2つのアンケートへの回答によって、石埼学教授の憲法9条についての基本的な見解はご理解いただけるのではないかと思います。
 チラシにも記載しているとおり、会員でなくてもどなたでも参加いただけます。是非周りの方ともお誘い合わせの上、1人でも多くの方にご参加いただきたいと思いますので、よろしくお願いします。
 
 ところで、「守ろう9条 紀の川 市民の会」は、田舎の一地域9条の会であるにもかかわらず、豪華講師陣を県外から招くことを躊躇しないところがあります。もちろん、手に余る講演料が必要そうな方へのお声かけは遠慮しますが、今まさにお話を伺いたいという方に積極的にアプローチする姿勢は見上げたものだと、私自身が運営委員であることを棚に上げて、褒めたい位です。

 私の記憶が正しければ、「守ろう9条 紀の川 市民の会」が憲法学者をお招きするのは、石埼学先生が5人目のはずです。
 最後に、過去、「守ろう9条 紀の川 市民の会」で講演していただいた4人の憲法学者の皆さんの講演要旨を掲載した会紙「九条の会・わかやま」(事務局の南本勲さんが編集)をご紹介しておきます(ついでに、私のブログで取り上げた記事にもリンクしておきます)。
 
 
 
2014年3月30日 第10回 総会
森英樹名古屋大学名誉教授
 会紙「九条の会・わかやま」243号
 会紙「九条の会・わかやま」244号
 会紙「九条の会・わかやま」245号
 「あしたの朝 目がさめたら(弁護士・金原徹雄のブログ 2)」(森英樹氏講演会を開催しました(守ろう9条 紀の川 市民の会・第10回総会/2014年3月30日)