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アニメーション『戦争のつくりかた(what happens before war?)』が公開されました

 今晩(2016年2月11日)配信した「メルマガ金原No.2363」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
アニメーション『戦争のつくりかた(what happens before war?)』が公開されました

 当初の予定(昨年12月10日)からほぼ2か月遅れとなりましたが、2016年2月11日(木)午前0時、アニメーション『戦争のつくりかた(what happens before war?)』が一般公開されました。
 まず、その全編を視聴してみましょう。
 
「戦争のつくりかた」アニメーションプロジェクト-What Happens Before War?-(7分37秒)
 

 このアニメーションプロジェクトの成り立ち、作品に寄せられたコメント、スタッフ等は同プロジェクトの公式サイトをご覧ください。
 この内、プロジェクトの趣旨を説明した部分を引用します。
 
(引用開始)
 みなさま、『戦争のつくりかた』という絵本は知っていますか?
 これは2004年、この国が戦争へと近づいていくのではないかと気づいた人たちによって制作された「絵本」です。
 しかし、この絵本をいま開くと、驚くべきことに、いまの日本や私たちの日常はその絵本に描かれている「戦争へと導かれていく国」の姿へと日々近づいているように思えます。
終戦70周年を迎えた2015年、新たに戦争の悲しみと不条理を繰り返してはならないと考えた私たちは、この物語を広く伝えるためにアニメーション映像化しようと考えました。
3.11の東日本大震災とそれにまつわる福島原発事故をきっかけに立ち上げられた映像作家やアーティストたちの集団「NOddIN(ノディン)」が中心となって、日本の数多くのアニメーション作家と共に「絵本の言葉をリレー形式でアニメーション化する」という自主制作のプロジェクトが始動し、構想期間を含めのべ1年以上の制作期間を経てこの短編映画を完成することができました。
 私たち日本に住む国民は、約70年、直接には戦争を経験していない国の中で生きてきました。しかしこのまま行けば、次の世代が戦争を経験することになってしまうかもしれない。
 戦争を知らない世代が、自分たちの都合や責任感の無さによって、次の世代に戦争を押し付けてしまうことになるかもしれないのです。
 わたしたちはそれぞれにいろんな立場があります。
 でも、どんなに政治的な議論をしても、それぞれの解釈を持ってしても、「戦争をしてはならない」という想いだけは、誰もが疑いなくイエス!と言えるものであると思っています。
 憲法で戦争を放棄すると決めた国、日本。
 大きな犠牲のもとに築かれたこの平和な70年という遺産を、次の世代にきちんと手渡しできるかは、私たちひとりひとりが一歩を踏み出せるかどうかにゆだねられているのです。
 この作品に協力してくれた数多くの人々に感謝を込めて。
 そして、この物語が、多くの人の心に触れ、平和の礎の一つになることを願って。
  2015年10月2日
  チーム 一同
(引用終わり)
 
 著名人のコメントから1人だけ、アーサー・ビナードさんの言葉をご紹介します。
 いつものことですが、ビナードさんの的確な批評眼と表現力はずば抜けており、これ以上何も付け加えることはない、と思わせられます。抜粋引用にしようと思ったのですが、どこも削れるところがなく、結局、コメント全部の転載になってしまいました。文章が書かれた趣旨から考えて、ご了解いただけるのではないかと思い、全文を引用しました。
 
(引用開始)
アーサー・ビナード(詩人)
逆引きハウツーものの光
さまざまなハウツーものやメソッドやマニュアルが巷にあふれているけれど、その中で異彩を放つのはこの『戦争のつくりかた』だ。 戦争をしかけて利益を得ようとする連中は、先祖伝来のメソッドを使い、脈々とテクニックを受け継いできている。ただ、そんなのが下々のぼくらには伝わってこない。庶民をだますためのメソッドとテクニックだから当然といえる。ところが、一種の「逆引き辞典」として組み立てられたのが『戦争のつくりかた』。ま、ペテンを逆手に取るための「逆見抜き戦争辞典」と呼ぶべきか。
ぼくらが生きのこるためのハウツーもの『戦争のつくりかた』だが、今度は優れた映像作家の力が新たに注ぎ込まれ、美しく複眼的なアニメの短編に発展した。これを観て一人ひとり、自分の「人生のつくりかた」を問われると思う。無抵抗のままずるずる戦争メソッド資金提供をつづけるのか、否か。 生き方そのものを「逆引き」に切り替えて闘うときが来た ―― この映像は力強く引っ張ってくれると思う。
(引用終わり)
 
 ところで、スタッフ表を眺めていても、最近のアニメーションや音楽の世界に全く疎い私には、どなたがどういう作品を発表されているという知識もないのですが、見る人が見れば、凄い人材が集まっているのでしょうね。
 巻末に、音楽を担当された世武裕子(せぶ・ひろこ)さんの『みらいのこども-始まりの鐘が鳴る-』という楽曲をネット検索で見つけましたのでご紹介しておきます(プロモーション用に公式チャンネルにアップされたもののようです)。 
 
 なお、「りぼんぷろじぇくと」の公式サイトでは、『新・戦争のつくりかた』の全文とイラスト(井上ヤスミチさん)が公開されています。まだ読んだことのない方は、是非目を通してください。その上で、あらためてアニメーションを視聴されれば、一層感銘も深まることでしょう。
 
 
 もちろん、書籍(2014年版)の『新・戦争のつくりかた』(マガジンハウス)も好評発売中です。
新・戦争のつくりかた
りぼん・ぷろじぇくと
マガジンハウス
2014-09-11


 私が『戦争のつくりかた』をメルマガ(ブログ)で取り上げるのは、今回で5回目となります。
 あらためて、2004年に書かれた内容が次々と現実に姿を変えていくありさまに、恐怖を覚えざるを得ません。
 
(4頁)
わたしたちの国を守るだけだった自衛隊が、
武器を持って よその国にでかけるようになります。
 世界の平和を守るため、
 戦争でこまっている人びとを助けるため、と言って。
せめられそうだと思ったら、先にこっちからせめる。
とも言うようになります。
(6頁)
戦争のことは、
ほんの何人かの政府の人たちで決めていい、
というきまりを作ります。
 ほかの人には、
 「戦争することにしたよ」と言います。
 時間がなければ、あとで。
 
などというのはそのほんの一例です。
 そして、今夏の参院選の結果次第では、明文改憲が具体的な政治日程にのぼるというところまで来てしまっています。
 また、いずれにせよ、参院選後には、改正PKO協力法に基づき、南スーダン派遣自衛隊の任務として、新たに安全確保業務や駆け付け警護を追加するとも言われており、以下のような事態も、(集団的自衛権行使や米軍への後方支援ではありませんが)明文改憲を待つまでもなく、早晩現実のものとなる恐れが大きいと言わざるを得ません。
 
(22頁)
さあ、これで、わたしたちの国は、
戦争できる国になりました。
 政府が戦争すると決めたら、
 あなたは、国のために命を捨てることができます。
政府が、「これは国際貢献だ」と言えば、
そのために命を捨てることができます。
 戦争で人を殺すこともできます。
(23頁)
おとうさんやおかあさんや、
学校の友だちや先生や、近所の人たちが、
戦争のために死んでも、悲しむことはありません。
 政府はほめてくれます。
 国や「国際貢献」のために、いいことをしたのですから。
(25頁)
人のいのちが世の中で一番たいせつだと、
今までおそわってきたのは 間違いになりました。
 一番たいせつなのは、「国」になったのです。
 
 私たちに残された時間はほとんどないのかもしれません。しかし、仮にそうであったとしても、「あきらめる」「何もしない」という選択肢はあり得ません。
 『戦争のつくりかた』アニメーションプロジェクトに結集した皆さんの思いも、もちろんそこにあるはずです。
 
(31頁)
わたしたちは 未来をつくりだすことができます。
戦争しない方法を、えらびとることも。
 
 

(付録)
『みらいのこども-始まりの鐘が鳴る-』 演奏:世武裕子(せぶ・ひろこ)