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『チェルノブイリ事故から25年:将来へ向けた安全性 2011年ウクライナ国家報告』の日本語全訳が京大原子炉実験所サイトで読めます

 今晩(2016年3月16日)配信した「メルマガ金原No.2397」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
チェルノブイリ事故から25年:将来へ向けた安全性 2011年ウクライナ国家報告』の日本語全訳が京大原子炉実験所サイトで読めます

 「KUR Reportは、京都大学原子炉実験所における各種研究会の報告等を随時出版するものです。」とい
説明をようやく見つけました。
 なぜ、「KUR Report」とは何か?を調べようとしたかといえば、PDFファイルにして418ページという膨大なレポートが京大原子炉実験所のホームページに掲載されていることにようやく気がついたから
です。
 気づかせてくれたのは、NPJ(news for the People in Japan)の「資料」というコーナーでした。
 そのレポートというのは以下のものです。 
 
チェルノブイリ事故から25年:将来へ向けた安全性 
2011年ウクライナ国家報告
原著:ウクライナ緊急事態省
監修:今中 哲二
監訳:進藤 眞人
発行所:京都大学原子炉実験所
発行日:平成28年2月 
 
 以上は、以下の報告書(英語版)の全訳です。
 
 
 この報告書は、2011年4月20日~22日、ウクライナの首都キエフにおいて、チェルノブイリ事故25周年を期して開催された国際会議のためにウクライナ緊急事態省が作成した資料であり、3.11直後のことでもあり、日本でも大きな注目を集め、これを部分的(第3章、第4章)に翻訳して公開したNGOもありました(第3章、第4章については、この翻訳が京大原子炉実験所全訳版のベースとして使われています)。
 また、この報告書は、NHK・ETV特集チェルノブイリ原発事故・汚染地帯からの報告」の第2回
ウクライナは訴える」でも取り上げられ(2012年9月23日上映)、その取材内容は、『』(馬場朝子・山内太郎共著/NHK出版/2012
年)として刊行されています。

 そういえば、私は上記著作の共著者・馬場朝子さんの和歌山での講演を聴講しています(2013年7
月6日/主催:核戦争防止和歌山県医師の会)。
 
 大規模核災害(監訳者・進藤眞人氏の言)についての当事国からの四半世紀の経過を踏まえた公式レポートであり、全訳が待望されていた報告書です。
 この全訳版刊行(PDFファイルのネット上での無償公開という形態ですが)の意義について、監訳者
の進藤眞人さんは「序文」の中で以下のように述べています。
 
(引用開始)
 東電核災害発生から5年の月日が経とうとしている。しかし、残念ながら、大規模核災害というものに関する全体像及び執られるべき対策の類型に関する理解が、広く共有されているとは言い難い状況にある。その大きな要因としては、大規模核災害というもの及びその影響を克服する為の対策についての体系だった知識に関する、日本語文献の貧困が挙げられる。本翻訳の原著であるウクライナ政府国家報告は、東電核災害が発生する以前は唯一無二の大規模核災害として知られていた、チェルノブイリ核災害の全貌をコンパクトにまとめている。のみならず、チェルノブイリ核災害による悪影響を克服する為に執られた25年間の対策の軌跡を、網羅的に叙述している。東電核災害による悪影響の克服に際しては、チェルノブイリ核災害とその影響を克服する為に執られた対策から、学ぶべき部分が非常に多い。故に、本翻訳が人口に
膾炙し、東電核災害による悪影響の克服に有効に活かされんことを祈念したい。
(引用終わり)
 
 最後に、監修者である今中哲二さんの「後記」も読んでおきましょう。
 前半は、進藤さんに頼まれて監修を引き受け、全訳の成果を「KUR Report」として京大原子炉実験所のホームページで公開するに至った経緯の説明ですが、これはリンク先の報告書翻訳本体でお読みくださ
い。
 以下には、後半部分を引用します。「ウクライナ国家報告に示された情報のすべてが“たしかな情報である”とは私は思っていない。」ということは、私自身、今中さんの和歌山での講演の際に伺った記憶が
あります。
 確かにそれはそうでしょうね。私のような科学的素養を欠いた者が読む際には、なおさら批判的に読むことが必要となるのでしょうが、何が「気になるデータ」なのかに気がつくこと自体がそもそも難しい。しかし、そのような困難を自覚した上で、なお読み込むだけの価値のある翻訳だと思い、まだこの全訳の
存在を知らない人のためにご紹介しました。
 
(今中哲二氏「後記」から引用開始)
 翻訳の監修者になっているものの、ウクライナ国家報告に示された情報のすべてが“たしかな情報である”とは私は思っていない。たとえば、本書の図3.36(162ページ)に「被曝した親から生まれ慢性疾患のある子どもと健康な子どもの比率の事故後の期間における変動」という図が示され、汚染地域住民や事故処理作業者の子どものうち慢性疾患のある子どもの割合が、1992年の約20% から2008年には約80%に増加している。“気になるデータ”というものには、原論文にあたることはもちろん、それでも分からなかったら、著者に直接尋ねるというのが専門家としてのやり方だと私は思っている。私は、2013年6月ウクライナを訪問した際に、図を作った本人に面談し、データの根拠を質問したが「何年か前に作った図なのですぐには分からない」という返答をもらったままになっている。私の頭の中では、図3.36は“よくわらな
い情報”のままである。
 とはいえ、チェルノブイリ25年ウクライナ国家報告は、チェルノブイリ事故の原因、経過、被害、対策
についての包括的で貴重な情報が盛り込まれている大事な資料であり、福島第1原発事故を経験している私たちにとって参考になることは間違いない。この3年間、大変な作業を担ってきた“進藤チーム”の面々
の努力を讃えたい。
(引用終わり)
 

(付録)
『そこにある場所』 作詞・作曲:嶋田奈津子 演奏:なつおmeets南風
 
※2015年9月23日@ララロカレ(田辺市