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wakaben6888のブログ

憲法を大事にし、音楽を愛し、原発を無くしたいと願う多くの人と繋がれるブログを目指します

「天皇退位」問題を考えるためのいくつかの参考資料(メモとして)

憲法 歴史
 今晩(2016年7月17日)配信した「メルマガ金原No.2510」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
天皇退位」問題を考えるためのいくつかの参考資料(メモとして)

 7月13日にまずNHKが報じた「天皇陛下 「生前退位」の意向示される」というニュースに接し、多くの国民と同様、私も驚くとともに、まずはこのニュースをどう受け止めるべきか、考えあぐねていまし
た。
 その間、参院選の結果、改憲勢力が2/3以上の議席を確保したという情勢を受け、改憲の動きを阻止するため、皇室典範改正について議論せざるを得ない状況を作り出そうとした陛下の素晴らしいご決断であると持ち上げる意見や、それとは逆に、官邸のコントロール下にあるNHKを利用し、政府が何らかの意図をもってこのタイミングで報道させたのだという観測が流れるなど、正直、右顧左眄していても仕方がないという印象で、もう少し冷静に考えられるようになるまで、静観するしかないかなとは思っていま
す。
 ただ、この問題を考えるための参考資料だけは蓄積しておいた方が良いと思い、いくつかご紹介してお
くことにしました。
 まずは、第一報を伝えたNHKの報道と、外紙の反応の一例として、7月14日付ルモンドの記事を内田樹さんが翻訳されたものにリンクしておきます。
 
NHK 7月13日 
天皇陛下 「生前退位」の意向示される

(抜粋引用開始)
天皇陛下が、天皇の位を生前に皇太子さまに譲る「生前退位」の意向を宮内庁の関係者に示されていることが分かりました。数年内の譲位を望まれているということで、天皇陛下自身が広く内外にお気持ちを表
わす方向で調整が進められています。
天皇陛下は、82歳と高齢となった今も、憲法に規定された国事行為をはじめ数多くの公務を続けられています。そうしたなか、天皇の位を生前に皇太子さまに譲る「生前退位」の意向を宮内庁の関係者に示さ
れていることが分かりました。
天皇陛下は、「憲法に定められた象徴としての務めを十分に果たせる者が天皇の位にあるべきだ」と考え、今後、年を重ねていくなかで、大きく公務を減らしたり代役を立てたりして天皇の位にとどまることは
望まれていないということです。こうした意向は、皇后さまをはじめ皇太子さまや秋篠宮さまも受け入れられているということです。
天皇陛下は、数年内の譲位を望まれているということで、天皇陛下自身が広く内外にお気持ちを表わす方
向で調整が進められています。
これについて関係者の1人は、「天皇陛下は、象徴としての立場から直接的な表現は避けられるかもしれ
ないが、ご自身のお気持ちがにじみ出たものになるだろう」と話しています。
海外では、3年前、皇室とも親交の深いオランダの女王やローマ法王などが相次いで退位を表明して注目
を集めました。
日本でも、昭和天皇まで124代の天皇のうち、半数近くが生前に皇位を譲っていますが、明治時代以降、天皇の譲位はなくされ、江戸時代後期の光格天皇を最後におよそ200年間、譲位は行われていません

皇室制度を定めた「皇室典範」に天皇の退位の規定はなく、天皇陛下の意向は、皇室典範の改正なども含
めた国民的な議論につながっていくものとみられます。
(引用終わり)
 
内田樹の研究室 2016年7月15日
ルモンドの記事から(天皇退位について)
 

(抜粋引用開始)
 天皇は退位の意向を持っていないと7月13日水曜日夕刻に宮内庁は断言した。同日の早い時間に、公
共放送NHK共同通信は数年以内に明仁が退位する可能性があることを報じた。
 1989年に即位し、現在82歳になる天皇は、政府筋によると、以前から「この地位にあるものが果
すべき責務」を十全に担い得る者に譲位したいという意向を洩らしていた。
「退位はない」と同日夜に宮内庁の山本信一郎次長は述べた。だが、観測筋によると、これほどのニュースが確かな筋からの裏づけなしにNHK共同通信から報道されることはありえないという。さきに五月に宮
内庁は君主の公務の削減を発表していた。
(略)
 皇室典範の改定には全党派が支持している。ただし、共産党小池晃書記長が退位の声明はまだ公式な
ものではないと述べて態度を保留している。
 今上天皇は日本の125代天皇で、歴史上はじめて平民(日清製粉という食品業者の社長の娘)を皇后
に迎えた。彼は率直で国民に親しい天皇というイメージを作り上げて、日本国民には非常に人気がある。
(略)
 退位についての情報は7月10日の参院選における安倍晋三総理大臣陣営の圧勝の三日後にリークされた。参院選の当日、安倍氏は日本経済の難問への取り組みを後回しにして、1947年制定の平和憲法
改定に言及した。
 2012年に起草された自民党改憲草案によれば、天皇の地位は現行憲法における「国家と国民の統
合の象徴」から「国家元首」になる。
 天皇には政治的権威はないが、天皇安倍氏の政策選択に必ずしも同意していない。
 第二次世界大戦時の役割についていまだに議論されている裕仁の後継者として、明仁は世界平和と、軍
国主義日本の犠牲となった国々とりわけ中国と韓国との和解をつよく求めて来た。
 2015年に明仁は終戦70年記念に際してさきの大戦に対する「深い反省」の意を表明した。後継者である徳仁皇太子も憲法に対する愛着と、「平和のはかりしれない価値を心に刻む」との意志を約束して
いる。
(引用終わり)
 
 次に、日本国憲法と「退位(譲位)」について。現行の日本国憲法には、旧皇室典範を引き継ぎ、生前退位に関する規定はありません。想定していないということですね。第2条に「皇位は、世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する。」とありますので、普通の憲法学説では、皇室典範を改正して「退位による皇位継承」を認めるかどうかは立法政策の問題だと解釈していると思いますが、憲法上生前退位は認められないという学説、ありますかね?(私は知らない)
 
日本国憲法(昭和二十一年十一月三日憲法)
  
第一章 天皇
第一条 天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民
の総意に基く。
第二条 皇位は、世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する

第三条 天皇の国事に関するすべての行為には、内閣の助言と承認を必要とし、内閣が、その責任を負ふ

第四条 天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない。
2 天皇は、法律の定めるところにより、その国事に関する行為を委任することができる。
第五条 皇室典範 の定めるところにより摂政を置くときは、摂政は、天皇の名でその国事に関する行為を
行ふ。この場合には、前条第一項の規定を準用する。
第六条 略
第七条 略
第八条 略
 
 皇位継承に関する現行の皇室典範の規定も読んでおきましょう。誰が皇位を継承するかを定めているのが1条~3条、どういう場合に皇位継承がなされるかを定めているのが4条です。
 
皇室典範(昭和二十二年一月十六日法律第三号)
最終改正:昭和二四年五月三一日法律第一三四号

  
第一章 皇位継承
第一条 皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する。
第二条 皇位は、左の順序により、皇族に、これを伝える。
一 皇長子
二 皇長孫
三 その他の皇長子の子孫
四 皇次子及びその子孫
五 その他の皇子孫
六 皇兄弟及びその子孫
七 皇伯叔父及びその子孫
2 前項各号の皇族がないときは、皇位は、それ以上で、最近親の系統の皇族に、これを伝える。
3 前二項の場合においては、長系を先にし、同等内では、長を先にする。
第三条 皇嗣に、精神若しくは身体の不治の重患があり、又は重大な事故があるときは、皇室会議の議に
より、前条に定める順序に従つて、皇位継承の順序を変えることができる。
第四条 天皇が崩じたときは、皇嗣が、直ちに即位する。
 
 ここで、大日本帝国憲法下の皇室典範も読んでおきましょう。なお、戦前の皇室典範は法律ではなく、帝国議会は関与できませんでした。旧皇室典範63条「将来此ノ典範ノ条項ヲ改正シ又ハ増補スヘキノ必要アルニ当テハ皇族会議及枢密顧問ニ諮詢シテ之ヲ勅定スヘシ」の規定に基づき、2回増補がなされています。
 なお、現行皇室典範と旧皇室典範皇位継承の部分を読み比べてみると、主な違いといえば、旧典範では、嫡出と庶子を区別して皇位継承の順位に差を設けていたことくらいでしょう。
 
旧 皇室典範
明治22(1889)年2月11日制定、明治40(1907)年2月11日増補、大正7(1918)年11月28日増補、昭和22(1945)年
5月3日廃止

  
第一章 皇位継承
第一条 大日本国皇位ハ祖宗ノ皇統ニシテ男系ノ男子之ヲ継承ス
第二条 皇位ハ皇長子ニ伝フ
第三条 皇長子在ラサルトキハ皇長孫ニ伝フ皇長子及其ノ子孫皆在ラサルトキハ皇次子及其ノ子孫ニ伝フ
以下皆之ニ例ス
第四条 皇子孫ノ皇位ヲ継承スルハ嫡出ヲ先ニス皇庶子孫ノ皇位ヲ継承スルハ皇嫡子孫皆在ラサルトキニ
限ル
第五条 皇子孫皆在ラサルトキハ皇兄弟及其ノ子孫ニ伝フ
第六条 皇兄弟及其ノ子孫皆在ラサルトキハ皇伯叔父及其ノ子孫ニ伝フ
第七条 皇伯叔父及其ノ子孫皆在ラサルトキハ其ノ以上ニ於テ最近親ノ皇族ニ伝フ
第八条 皇兄弟以上ハ同等内ニ於テ嫡ヲ先ニシ庶ヲ後ニシ長ヲ先ニシ幼ヲ後ニス
第九条 皇嗣精神若ハ身体ノ不治ノ重患アリ又ハ重大ノ事故アルトキハ皇族会議及枢密顧問ニ諮詢シ前数
条ニ依リ継承ノ順序ヲ換フルコトヲ得
  第二章 践祚即位
第十条 天皇崩スルトキハ皇嗣即チ践祚シ祖宗ノ神器ヲ承ク
第十一条 即位ノ礼及大嘗祭ハ京都ニ於テ之ヲ行フ
第十二条 践祚ノ後元号ヲ建テ一世ノ間ニ再ヒ改メサルコト明治元年ノ定制ニ従フ
 
 最後に、象徴天皇制に関わる議論の枠組みを考える上で、参考になる一つの見解として、首都大学東京教授(社会学)の宮台真司氏が、ビデオニュースドットコムにおいて、神保哲生氏と語り合った動画(ニュースコメンタリー)をご紹介しておきます。全面的に賛同するかどうかはともかくとして、避けては通れない問題が指摘されています。
 

(番組紹介引用開始)
 今上天皇が、生前に天皇の位を皇太子に譲る意向を示していたことが報道され、大きな議論を呼んでい
る。それは現在の象徴天皇制が、そのような事態を想定していなかったためだ。
 今上天皇は82歳とご高齢なうえ、過去に前立腺がんや心臓のバイバス手術などの病歴もあり、多くの公務を務めなければならない状態が大きな負担になっていた。一方で、長男の皇太子も既に56歳と、今上天皇が即位した時の年齢を超えている。そうした中で、今上天皇天皇の位を生前に皇太子さまに譲る「生
前退位」の意向を宮内庁の関係者に示していたのだという。
 皇位継承などを定めた法律、皇室典範には生前退位に関する定めがない。そのため、今上天皇の意向に
沿って生前退位を可能にするためには、皇室典範の改正が必要になると考えられている。
 皇室典範とて法治国家日本においては法律の一つに過ぎない。国会の承認があれば、その改正は可能だ

 ところが、問題はそれほど簡単ではない。そもそも皇室典範に生前退位の定めがないのは、政府にでき
ればそのような事態を避けたい理由があったからだった。
 現在の皇室典範では天皇崩御した時のみ、皇太子が世襲で即位することが定められており、それ以外の方法で退位や譲位が行われることは想定されていない。一般には生前譲位が可能になると、天皇が退位後も上皇法皇などの地位から政治的な影響力を持つことになる恐れや、逆に本人の意思に反して強制的に天皇が退位させられることも可能になる恐れがあることなどが、指摘されている。また、天皇自身が退
位の意向を示すことは、それ自体が憲法が禁じた天皇による政治権力の行使につながるとの指摘もある。
 そうした懸念が、近い将来、現実に問題化することは考えにくいが、天皇に関する取り決めは国家百年の計にも関わる重い意味を持つ。一度それが可能になれば、何十年、何百年か先の将来に大きな禍根を残
すことになる可能性も真剣に考えなければならない。
 しかし、今回、今上天皇が「生前退位」、あるいは「譲位」の意向を示したことによって、それよりももっと重要な問題がわれわれに投げかけられたと考えるべきだろう。それはそもそも象徴天皇制という現在の制度が、元々孕んでいる大きな矛盾と言ってもいい。われわれは天皇を聖なる存在として尊んでいる。だからこそ、われわれの多くが天皇に対して強い尊崇の念を抱く。陛下が被災地に赴けば、被災者たち
は大きな勇気を与えられ、どんなスポーツでも天覧試合は歴史に残るような名勝負になることが多い。
 ところがわれわれは天皇がそのような聖なる超越的な存在であることを求めながら、もう一方で、政治
的な発言を一切封じたばかりか、事実上人権さえも認めていない。天皇は公務を拒否することもできないし、そもそも憲法天皇世襲と定められている以上、即位を拒むこともできない。職業選択の自由など何もない。しかも、一度即位してしまえば、退位もできず、亡くなるまで天皇としての役割を全うすることを義務付けられる。これがわれわれが象徴天皇制と呼んでいる制度の実態だ。
 これまでは今上天皇がそのようなある意味で理不尽な立場を甘受し、粛々と公務に勤されてきたからこそ、その問題は浮上してこなかった。しかし、同時にわれわれ日本国民はその間、その問題と向き合うことをせず、放置し続けてきた。今上天皇に聖なる存在として国民を包摂したり励ます役割を果たすことは
期待しながら、天皇ご自身がどのような問題を抱えているかについては、いたって鈍感だった。
 今回の問題はその矛盾が、今上天皇ご自身がご高齢の上に健康不安まで抱えるようになった今日、現実
的な問題として浮上したに過ぎない。 
 そもそも何が問題なのか。そして、この問題とわれわれはどう向き合えばいいのか。ジャーナリストの
神保哲生社会学者の宮台真司が議論した。
(引用終わり)
 
(弁護士・金原徹雄のブログから)
2012年3月19日(2013年2月24日に再配信)
3/11天皇陛下の「おことば」とマスコミ報道
2013年4月4日
「主権回復の日」式典と天皇陛下
2013年10月30日
五日市憲法草案を称えた皇后陛下の“憲法観”
2014年1月6日
天皇陛下の“日本国憲法観”(付・「陛下」という敬称について) 
2014年1月14日
「日本傷痍軍人会」最後の式典での天皇陛下「おことば」と安倍首相「祝辞」(付・ETV特集『解散・日本傷痍軍人会』2/1放送予告) 
2014年8月30日
“平和主義と天皇制”~「戦後レジーム」の本質を復習する
2014年12月23日
天皇誕生日に皇后陛下の文章を読み天皇陛下の発言を聴く
2015年5月30日
内閣総理大臣の孤独な闘い~天皇制と日本の若者を救った幣原喜重郎(この仮説は知っておく価値がある
2015年8月15日
全国戦没者追悼式総理大臣「式辞」から安倍談話を読み返す(付・同追悼式での天皇陛下「おことば」について)


(付録)
『世界』 
作詞・作曲:ヒポポ田 演奏:ヒポポフォークゲリラ