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原子力規制委員会は大飯原発の基準地震動を見直さないことにした(2016年7月27日)

 2016年7月29日に配信した「メルマガ金原No.2522」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
原子力規制委員会大飯原発の基準地震動を見直さないことにした(2016年7月27日)

 島崎邦彦東京大学名誉教授(前原子力規制委員会委員長代理)が、大飯原発の基準地震動を入倉・三宅式によって計算すると過小評価となる可能性が高く、再計算すべきだと主張したことをきっかけに始まった原子力規制委員会と島崎氏とのやりとり、及び同規制委員会による再検討の経過については、以下のとおり、3回にわたって私のメルマガ(ブログ)でフォローしてきました。
 
 
 今日は、その最新版として、7月26日に行われた「原発地震動評価見直しと美浜3号審査中止を求める緊急要請・院内集会」、及びその翌27日に開催された第23回原子力規制委員会の模様をご紹介します。
 日程は前後しますが、まず7月27日に開催された原子力規制委員会の結果を報じた東京新聞の記事を引用します。

東京新聞 2016年7月28日 朝刊
規制委、大飯地震動「見直さず」 新基準審査優先で結論急ぐ

(引用開始)
 原子力規制委員会は二十七日、関西電力大飯(おおい)原発福井県)で想定する地震動が過小評価されているとの指摘を巡り、関電の手法は妥当で、現状では見直さないことを決めた。原発の安全性を考える上で、極めて重要な議論だったが、「この問題が解決しないと、新基準の審査結果が出せない」と、早期の幕引きをした。
 議論の発端は、大飯原発のように震源断層が垂直に近いと、関電の計算式では地震動を数分の一に過小評価するとの前規制委員長代理の島崎邦彦東大名誉教授からの問題提起。
 規制委事務局は、別の式で再計算を試みた。その過程で浮かんだのは、計算には多数の値が使われ、設定によって地震動の値はいかようにも出せることと、規制委も電力会社の計算内容を完全にはつかみ切れていないことだった。
 別の式を使えば関電の値より大きくなるはず-。その見込みに合わせようと、事務局は断層のずれる面積などの値を操作し、無理に計算を進めたが、規制委メンバーからは「科学を逸脱している」と指摘された。関電と同じ式を使った結果も出したが、同等の値になるはずなのに、半分以下と大きな開きが出た。事務局は「関電とは、地震波を合成する際のプロセスが異なるためではないか」と釈明している。
 地震動をはじく式は、過去の地震をうまく説明し、予測に活用しようと多様なものが考案されてきた。ただし、見えない地下を相手にする上、過去の事例から外れた地震も起きてきた。少なからず誤差が生じることは避けられない。
 誤差を見越して強度を高め「想定外」をなくすのが新規制基準の柱の一つ。規制委は連動する断層の長さなどを「安全側で審査している」と、評価手法は見直さないと結論づけた。だが、全国で起きている原発再稼働の訴訟では、まさに過小評価か否かが重要な争点。今回の一件は、裁判にも影響を与えそうだ。(山川剛史)
(引用終わり)
 
 「見直さない」という結論は容易に予想されたことで、全く驚きはありませんが、東京新聞の山川記者が書くとおり、全国で争われている原発差止訴訟にも大きな影響を与える、少なくとも住民側弁護団がこの点を重要な争点の1つとして攻勢をかけることは間違いないでしょう。その際、裁判所に提出する証拠となり得るのが、7月27日に開催された第23回原子力規制委員会の議事録ということになるでしょうが、それが公開されるまでの間は、動画を弁護団で文字起こしすることになりますかね。大飯原子力発電所の基準地震動については、議題1として、会議の冒頭から議論されています。
 
第23回原子力規制委員会(平成28年07月27日)(2時間21分)
 

 そして、会議終了後の田中俊一原子力規制委員会委員長らによる記者会見の模様です。
 
原子力規制委員会 定例記者会見(平成28年07月27日)(48分)
 

 次に、その前日の7月26日に、参議院議員会館で開催された「原発地震動評価見直しと美浜3号審査中止を求める緊急要請・院内集会」についてお伝えします。
 まず、その概要については、集会での基調報告も担当された阪上武さん(原子力規制を監視する市民の会)が書かれた「転載歓迎」のレポートをまず以下に引用します。
 
(引用開始)
みなさまへ(転載歓迎)
 
本日ご参加していただいたみなさん、ありがとうございました。
小山さん、アイリーンさんもお疲れ様でした。記者のみなさん含めて40名ほどの参加でした。
 
冒頭、規制委員会あての要請書を提出しました。要請は、呼びかけ、賛同含めて98団体、565名の賛同を付けて提出しました。ご協力ありがとうございました。
 
規制庁からは、規制部の地震担当が1名、技術基盤部(旧JNES)から1名来ました。要請書提出のあと、15分ほど状況説明と簡単なやり取りをしました。
 
規制庁規制部の担当者は、島崎氏とのこれまでのやりとりの経緯を話した上で、明日の規制委定例会合での再協議について、規制庁が行った再計算について詳しい説明を行うことになっている、再計算の過程でどのような問題があるのかが問題になるだろう、再計算の取り扱いがどうなるかはわからない、いま詳しい話はできないとのことでした。
 
こちらからは、不確かさや基本ケースで規制庁の値が関電よりも小さいことについても議論するのかと聞きましたが、計算の過程について説明をすることになっているとだけ答えました。
 
こちらの要望として
・不確かさや基本ケースの扱いについても議論すべき
・規制庁が武村式で再計算したことそのものは評価している。撤回すべきではない。これをより適正なやり方で行う方向で検討してほしい
・その場合、美浜3号の地震動計算も見直しが必要となることから、審査を止めて欲しい
・今回再協議中であることを理由に交渉を断わったがが、再協議中で結論がでていないときこそ、きちんと交渉に応じて、疑問に答えて意見を聞くべき
といったことを話して終わりました。技術基盤部の人にもいまの状況をどう受け止めているのか聞いたのですが、規制部の役人がさえぎってしまい、結局一言も話しませんでした。
 
その後は院内集会となり、私のほうから、島崎氏と規制委とのこの間の経緯と、規制庁の再計算について、2つのごまかしと、その一方で、島崎氏の聞き取りにより、武村式では入倉式の1.8倍になることが明らかになったことの意義について、これを恐れた規制委が、再計算そのものをなかったことにしようと動いていることについて、規制委と島崎氏
のやりとりのビデオを交えて話しました。
 
美浜の会の小山さんからは、熊本地震で武村式の正しさが証明されたこと、規制庁の再計算で、武村式に不確かさを考慮しないことの誤りについて、入倉式が過小評価になる原因(経験式の対象地震のとりかた)について、地震モーメントと地震動の加速度の関係について、詳しい説明がありました。その後活発な質疑があり、後藤政志さんからもコメント
をいただきました。
 
明日の規制委の会合が注目ですが、規制庁の再計算の意義と低くみせるからくりを広く知らせながら、原発を止めたうえでの武村式での評価を要求し、大飯原発美浜原発をはじめ、各地の原発で再稼働ができない状況をつくっていこうと確認しておわりました。
 
31日には京都でこの問題で集会がもたれるということです。
資料をアップしたらまたお知らせします。
 
阪上 武
(引用終わり)
 
 この集会の模様は、UPLAN(三輪祐児さん)によって撮影・アップされています。この動画は、音声も非常にクリアで聴き取りやすいです。これによって、少しでもこの難解な技術上の問題についての理解を深めたいと思います。
 
20160726 UPLAN 原発地震動見直しと美浜3号審査中止を求める緊急要請・院内集会(2時間06分)

冒頭~ 司会 満田夏花さん(国際環境NGO FoE Japan)
4分~ 緊急要請書提出と原子力規制庁による説明
26分~ 「「入倉・三宅式」過小評価問題の経緯」 阪上武さん(原子力規制を監視する市民の会)
49分~ 「入倉・三宅式の過小評価 武村式で再評価を 規制庁試算が表す原稿基準地震動評価の破たん」 小山英之さん(美浜の会)
 聴き手 アイリーン・美緒子・スミスさん(グリーン・アクション)
1時間15分~ 質疑応答
 
 なお、以前の記事でもご紹介しましたが、上記動画の小山英之さんのお話を聴く前に、同氏の以下の論考にざっとでも目を通しておいた方が良いと思います。
 
 
最後に、明後日(7月31日)、アイリーンさんの地元・京都の同志社大学烏丸キャンパスで行われる集いの案内を再掲しておきます。
 
島崎邦彦氏(元原子力規制委員会委員長代理)の警告 
原発の地震評価は過小 原発震災・破局的災害を止めるための集い

時間 13:45(開場13:30)~17:00
場所 同志社大学 烏丸キャンパス 志高館 SK112
資料代 500円(学生:無料)
内容
「担当弁護士が語る島崎邦彦氏が主張する入倉・三宅式問題の意味」
  甫守一樹氏(弁護士 大飯原発3・4号機差止め訴訟など)
「島崎提言の意味と意義、さらにその枠を超えて」
  小山英之氏(美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会(美浜の会)代表)
「入倉・三宅式問題と新レシピ? なぜ重要なのか」
  長沢啓行氏(若狭ネット資料室 室長)
各地の裁判から発言・アピール
主催 原発地震の過小評価を考える集い・連絡会
問い合わせ:グリーン・アクション
京都市左京区田中関田町 22-75-103. E-mail:
info@greenaction-japan.org
Tel: 075-701-7223 Fax: 075-702-1952 HP: http://www.greenaction-japan.org/