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再配信・国連PKOの変質を追及した志位和夫日本共産党委員長(1/27本会議&2/4予算委員会)

 今晩(2016年12月4日)配信した「メルマガ金原No.2650」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
再配信・国連PKOの変質を追及した志位和夫日本共産党委員長(1/27本会議&2/4予算委員会

 今年の1月に召集された第190回国会(常会)は、閉会してからまだ半年しか経っていないのに、何だかはるか以前のような気がしたりしますが、陸上自衛隊東北方面隊から南スーダンに派遣される最後の部隊が今月14日に出発し、いよいよ新任務(駆け付け警護、宿営地共同防護)の実施が可能となります。
 この時にあたり、上記常会においてPKOの変質を正面切って初めて本格的に取り上げた志位和夫日本共産党委員長による本会議と予算委員会における質疑を取り上げたメルマガ&ブログ(国連PKOの変質を追及した志位和夫日本共産党委員長(1/27本会議&2/4予算委員会/2016年2月5日)を再配信することも無意味ではないでしょう。
 なお、2月5日時点ではまだアップされていなかった衆議院会議録にもリンクし、主要部分を引用するなどの補注を加えています。
 

国連PKOの変質を追及した志位和夫日本共産党委員長(1/27本会議&2/4予算委員会
※2016年2月5日に配信した「メルマガ金原No.2357」に補注を加えて再配信します。
 
 昨年5月15日、安保関連2法案が内閣から衆議院に提出され、安保法制特別委員会(衆議院は「平和安全特別委員会」と略称)で本格的審議が始まった当初、各野党は党首級が質疑に立ってその意気込みを示しましたが、とりわけ多くの人を感嘆させたのは、5月27日と翌28日の両日に行われた志位和夫日本共産党委員長による質疑でした。
 私は、志位委員長による質疑が素晴らしかったポイントは、その周到な事前調査と分析、及び限られた時間の中で最大の効果を発揮させるための徹底した論点の絞り込みであったと思っています。
 
 2日間で結局何が取り上げられたかというと、
(1)重要影響事態法案における後方支援が、軍事的、国際的には兵站そのもの、武力行使と不可分一体のものであること。
(2)重要影響事態での後方支援、国際平和共同事態での協力支援、国際平和協力法に基づく拡大された業務のいずれにあっても、従来とは比較にならない危険な現場に自衛隊を投入し、自衛隊員に「殺し、殺される」任務を押しつけることになること。
(3)存立危機事態について、米国からの出兵要請を日本政府が自立的な判断に基づいて拒否することなど到底想定できず、結果として、自衛隊員を“米国の戦争”の尖兵として差し出すことになることが予想されること。
という、3つの論点に絞り込んで政府を追及したのでした。
 
 あまりに感心した私は、「志位和夫日本共産党委員長による質疑を読み解く」と題して、2日間の質疑と安倍首相ら政府側の答弁に注釈を加えるというシリーズを、メルマガ(ブログ)に6回にわたって連載したほどです。興味のある方は、私の第2ブログに、この連載の全てにリンクをはった「まとめ」記事をアップしてありますので、ご参照ください。
 
(あしたの朝 目がさめたら(弁護士・金原徹雄のブログ2)から)
2015年6月6日
志位和夫日本共産党委員長による安保法制特別委員会質疑(まとめ)
 
 さて、本年1月4日に召集された第190回常会でも、志位和夫日本共産党委員長は、代表質問(1月27日)だけではなく、昨日(2月4日)の予算委員会にも登場し、安倍首相らを厳しく追及しました。
 「続・志位和夫日本共産党委員長による質疑を読み解く」を連載するだけの用意はまだ出来ていませんが、とりあえずその代表質問と予算委員会での質疑の動画を日本共産党の公式YouTubeチャンネルからご紹介するとともに、その内容を報じた「しんぶん赤旗」にリンクしておきます。
 
2016年1月27日 衆議院本会議 志位和夫日本共産党委員長による代表質問(44分)


しんぶん赤旗 2016年1月28日
志位委員長の代表質問 衆院本会議

小見出しを引用開始)
安保法制=戦争法廃止、立憲主義回復を求める
南スーダンPKOに派兵されている自衛隊の任務拡大の危険
過激武装組織ISに対する軍事作戦に自衛隊が参加する危険
立憲主義の破壊――沖縄に対する憲法無視の暴圧
暮らしと経済――「アベノミクス」の破綻と、日本共産党の提案
アベノミクス」の3年間の検証と真摯な反省を
「貧困大国」からの脱却を、しっかりと政策目標にすえる
貧困と格差をただし、暮らし最優先で日本経済再生をはかる四つの提案
「緊急事態条項」の問題点――あらゆる解釈・明文改憲に反対する
(引用終わり)
 
※補注
衆議院 第190回国会 本会議 第8号(平成28年1月27日(水曜日)) 会議録
(抜粋引用開始)
 安倍政権は、昨年九月十九日、国民多数の反対の声を踏みつけにして、安保法制、戦争法の強行成立をさせるという暴挙を行いました。
 戦争法ばかりは、数の暴力で成立させられたからといって、それを許したままにしておくことは決してできません。
 戦争法は、まず内容の面で、憲法九条を踏みにじって、自衛隊の海外での武力行使を行う仕組みが幾重にも盛り込まれている違憲立法です。さらに、やり方の面で、戦後六十年余にわたる、憲法九条のもとでは集団的自衛権を行使できないという政府の憲法解釈を、一内閣の勝手な判断で百八十度覆すという、立憲主義の破壊が行われました。
 戦争法は、内容もやり方も二重に憲法違反であり、廃止するしかありません。
 安保法制、戦争法は、日本に極めて重大な危険をつくり出しています。
 第一は、日本の自衛隊が戦後初めて、外国人を殺し、戦死者を出すという現実的な危険が生まれているということです。私は、差し迫った重大な危険として、二つの問題について総理の見解を問うものです。
 一つは、アフリカの南スーダンのPKOに派兵されている自衛隊の任務が拡大されようとしていることです。
 改定されたPKO法では、PKOに参加する自衛隊に、安全確保業務、駆けつけ警護という二つの任務を新たにできるようにするとともに、任務遂行のための武器使用もできるようにしています。総理、南スーダンに派兵されている自衛隊に、こうした任務の追加を行うことを検討しているのですか。
 仮にこうした任務拡大となれば、極めて危険な事態となることを強く警告しなければなりません。
 二〇一三年十二月以来、南スーダンでは、大統領派と副大統領派の武力衝突が起こり、住民を巻き込んでの激しい内戦状態に陥っているからです。数千人が殺害され、二百四十万人が家を追われ、虐殺、レイプ、拷問などの残虐行為が行われ、多数の子供が少年兵として戦うことを強制されています。複数回、停戦が合意されたものの、そのたびに戦闘が再開され、昨年八月下旬の和平合意後も戦闘が続いています。
 こうした状況下で、南スーダンのPKOの主要な任務は住民保護とされ、そのために必要なあらゆる措置をとる権限、武力行使の権限が与えられています。住民保護のためにPKOみずからが交戦主体、戦争の主体となって武装勢力と戦う、これが南スーダンのPKOの実態なのです。
 総理、南スーダンが内戦状態に陥っているという認識はありますか。南スーダンでは、停戦合意を初めとするPKO参加五原則が崩壊し、自衛隊の派兵の法的前提がなくなっているのではありませんか。にもかかわらず、自衛隊の派兵を続け、その任務を拡大するならば、自衛隊が武力を行使し、武装勢力と戦うことになるではありませんか。武装勢力といっても、軍隊と民間人の区別はつきません。自衛隊が一たび少年兵や民間人を撃ってしまったら、取り返しがつきません。
 このような活動は、海外での武力行使を禁止した憲法九条のもとでは絶対に許されないと考えますが、いかがですか。日本の貢献は、憲法九条に立った非軍事の人道支援、民生支援に徹するべきであります。総理の答弁を求めます。
 いま一つは、過激武装組織ISに対して、米国を初めとする有志連合が行っている軍事作戦に、自衛隊が参加する危険です。
 ISのような残虐なテロ組織がどうして生まれたか。きっかけになったのは、二〇〇一年、米国等が開始したアフガニスタン報復戦争でした。対テロ戦争は、テロを根絶するどころか、その温床を広げる結果となりました。さらに、二〇〇三年、米国等が開始したイラク侵略戦争は泥沼の内戦をつくり出しました。この二つの戦争の混乱の中からISという怪物のようなテロ組織が生まれ、勢力を拡大していったのです。
 戦争でテロはなくせない。テロと戦争の悪循環をもたらし、世界じゅうにテロを拡散した。総理、この事実をお認めになりますか。米国によるアフガン、イラク戦争に無条件の支持を与えた自民党政府は、厳しい反省が必要ではありませんか。
 この歴史的教訓に照らしても、今、一部の国が行っているISに対する空爆など軍事作戦の強化では、問題は決して解決しません。それは、多数の罪なき人々を犠牲にし、憎しみの連鎖をつくり出し、テロと戦争の悪循環をもたらすだけではありませんか。
 安保法制、戦争法との関係で私が強く危惧するのは、政府が、ISへの空爆などへの自衛隊の軍事支援について、政策判断として考えていないとしつつ、法律的にはあり得ると答弁していることです。
 総理に伺います。そういう政策判断をしている理由は何ですか。米国が、対IS軍事作戦を拡大し、日本に支援要請をしてきた場合に、それを拒否できますか。戦争法がある以上、拒否できず、軍事支援を行うことになるのではありませんか。
 テロと戦争の悪循環、憎しみの連鎖に日本自身が入り込み、日本国民をテロの危険にさらす、そのような道は断じて許すわけにいきません。
 世界からテロをなくすために何が必要か。私は、国際社会が一致結束して、次の四つの対策に取り組むことを提唱します。
 第一は、国連安保理決議を厳格に実行し、テロ組織への資金、人、武器の流れを断つ断固たる措置をとることです。
 第二は、貧困や格差、民族的、宗教的差別など、テロの土壌となっている問題をなくしていく努力を払うことです。
 第三は、ISが支配地域を拡大してきたシリアとイラクでの内戦を解決し、平和と安定を図るための政治的、外交的努力を尽くすことです。
 第四は、シリア国民の半数以上が難民として苦しむもとで、難民の人権を守り抜く国際的支援を抜本的に強化することです。
 どれも困難を伴う大仕事ですが、この道しかないのではありませんか。総理の見解を求めます。

(引用終わり)
 
2016年2月4日 衆議院予算委員会 志位和夫日本共産党委員長による質疑(1時間38分)
 
 
※補注
衆議院 第190回国会 予算委員会 第7号(平成28年2月4日(木曜日)) 会議録
(抜粋引用開始)
○志位委員 (注:南スーダン派遣自衛隊の任務拡大を)検討の対象にされているという御答弁でした。
 そうした自衛隊の任務拡大が何をもたらすか。その危険性を考える上で、国連PKOの任務がこの二十年間余りで大きく変化していることについて総理がどういう認識を持っているかについて、次にただしていきたいと思います。
 かつての国連PKO、一九九〇年代前半ぐらいまでのPKOは、国連の大原則である内政不干渉、中立性を尊重した活動を行っていました。すなわち、内戦が終結して停戦合意がされている国に、紛争当事者全ての合意を得て、中立の存在としてPKOは展開する、いざ停戦が破れて内戦が起こったら撤退する、これが基本でした。主要任務、筆頭マンデートは、停戦合意を監視することに置かれていました。一九九二年にカンボジアに展開したPKOは、そうしたPKOの典型だと思います。
 ところが、この任務に大激変が起こります。契機となったのは、一九九四年、アフリカ・ルワンダで内戦が勃発し、政権側が主導する形で引き起こされた大虐殺でした。この事件を契機として、保護する責任という考え方が出てきます。ある国で重大な人権侵害が起こった場合に、その国の政府が何もしない、あるいは政府が人権侵害を引き起こすような場合には、国連は、中立性を失おうとも、内政干渉になろうとも、そして武力を行使してでも住民を保護すべきだという考え方です。
 こうした流れの中で、一九九九年八月、当時のアナン国連事務総長が、これからの国連PKOは国際人道法、武力紛争法を遵守せよという告示をPKO要員に発します。すなわち、これから先は、任務遂行のために、国連PKO自身が武力紛争法で定義される交戦主体、紛争当事者となって、軍事紛争に積極的に関与する覚悟を持てというものであります。
 
 
 こうして、徐々に、武力を行使しての住民保護がPKOの主要任務、筆頭マンデートになっていきます。
 パネルをごらんください。
 二十一世紀に入って創設され現在活動中の国連PKOは九つありますが、そのうちアフリカに展開する八つのPKO、リベリアコートジボワールダルフール、コンゴ、アビエ、南スーダン、マリ、中央アフリカのPKOは、その全てで武力を行使しての文民保護が任務、マンデートに位置づけられております。停戦が破れて戦闘状態になってもPKOは撤退しません。国連自身が交戦主体となって住民保護のために武力の行使をする、これが今日のPKOの主流になっております。
 総理に基本的認識を伺います。
 国連PKOの活動がこうした方向に大きく変わっている、かつての停戦監視から、武力を行使しての住民保護へと大きな変化が起こっているという認識はありますか。
 
安倍内閣総理大臣 (略)
 
○志位委員 いろいろおっしゃいましたけれども、文民の保護などを重要任務にするものに変化があるということはお認めになりました。
 ただ、ここで私がさらに言いたいのは、武力を行使しての住民の保護というのは生易しいものではないという問題です。
 私は、先日、国連PKOの幹部として東ティモールシエラレオネアフガニスタンなど世界各地で武装解除などに携わってきた、東京外国語大学教授の伊勢崎賢治さんに話を伺いました。伊勢崎氏によると、一九九九年にアナン事務総長が出した告示は、PKOの現場に大きな影響を与えたと言います。その後、PKO部隊が好戦的になっていったとして、二〇〇〇年当時、みずからの経験を次のように語っておられます。ちょっと紹介いたします。
 
 僕は、インドネシアから独立した東ティモールの暫定知事を務めて、PKF、平和維持軍を統括していたことがあります。そのとき、反独立派の住民によってPKFの一員であるニュージーランド軍の兵士が殺されました。彼は首がかき切られて耳がそぎ落とされた遺体で見つかりました。見せしめであることは明白でした。そのとき、僕らは復讐に駆られてしまった。ニュージーランド軍司令官の求めに応じて、僕は武器使用基準を緩めました。敵を目視したら警告なしで発砲していいと。法の裁きを受けさせるために犯人を拘束するという警察行動ではありません。敵のせん滅が目的です。現場はどんどん復讐戦の様相を呈してきました。僕自身もです。結果、全軍、武装ヘリまで動員して追い詰めていったのです。民家などをシラミ潰しにして、十数名の敵を皆殺しにした。全員射殺したので、その中に民間人がいたかどうかはわかりません。
 
 伊勢崎氏は、民兵の射殺は国際法上違法ではないこととはいえ、それでも、胸の中に、ある後ろめたさ、重苦しさを抱え込みましたと率直に語っておられます。
 いま一つ、伊勢崎氏がPKO部隊が好戦的になっていることを示す典型例として挙げたのが、南スーダンの隣国コンゴで二〇一〇年から活動している国連コンゴ安定化ミッションであります。コンゴPKOは、主要任務、筆頭マンデートに住民保護を掲げるとともに、三千人から成る攻撃型部隊、介入旅団を設置、その任務を武装勢力の無害化としています。
 武装勢力の無害化とは何か。コンゴPKOのトップ、マーティン・コブラー事務総長特別代表は、無害化とは、最終的に武装勢力を消すということだ、投降に応じなければ攻撃を加える、これが基本方針だと明言しています。あらかじめ対象とする武装勢力を指定し、住民や国連に対する攻撃がなくても、投降に応じなければ攻撃を加え、武装勢力を無害化、せん滅する、事実上の先制攻撃の権利が与えられています。
 総理に伺います。
 これが国連PKOの現実です。もちろん、このコンゴのPKOには日本は参加しておりませんが、現在のPKOは事実上の先制攻撃の権利まで与えられるようになっている。総理はこうした実態を御存じでしょうか。
 
安倍内閣総理大臣 (略)
 
○志位委員 日本の参加は参加五原則に基づいてやるんだと繰り返しておっしゃられます。しかし、問題は、世界のPKOの実態がその五原則とはかけ離れたものになっているということなんですよ。
 パネルをごらんください。
 これは、二〇〇〇年以降の国連PKO要員の犠牲者の数の推移であります。
 任務拡大の影響もあって、年間百人超の犠牲者を出すことは、一九九〇年代までは四回だったんですが、二〇〇〇年以降は十二回と常態化しつつあります。このグラフでいいますと、赤い線の上です。二〇一五年には百二十一人が犠牲となっています。
 政府は、自衛隊国連PKOに参加する際には、PKO参加五原則、すなわち、停戦合意の成立、全ての紛争当事者の受け入れ同意、中立的立場、いずれかが満たされない場合の撤収、武器使用は自己保存型に限定を遵守する、憲法九条で禁じた武力行使を行うことはないとしてきました。先ほど総理もそういう御答弁をされました。
 それに対して、先ほど紹介した伊勢崎賢治氏は次のように批判しております。
 
 PKO五原則があるから、停戦合意が破られたら帰ってくればいいと言いますが、停戦が破られてもPKOは撤退しません。住民の保護のために武力行使します。停戦合意が破られてから住民保護という本来の任務が始まるのです。それができないなら、初めから来るなという世界になっていることに政府は全く気づいていない。PKO五原則や憲法九条との整合性は、PKOそのものの変質によって完全に破綻しています。そして、二十年前の議論をしている政府の認識とPKOの現実がかつてないほど乖離している。このように述べています。
 
 今日の国連PKOは、憲法九条を持つ日本が到底参加できないようなものに変化している。それを見ずに政府は二十年前の議論をしているという批判であります。
 長年国連PKOで幹部として活動してきた伊勢崎氏の発言、これは大変重いものがあると思うんです。この批判にどうお答えになりますか。
 
安倍内閣総理大臣 (略)
 
○志位委員 伊勢崎さんの批判は、PKO五原則というのは停戦が破れたら撤退するということになっていると今おっしゃいました、しかし、世界のPKOは、停戦が破れても撤退しないで、住民保護のために武力の行使をするものになっていると。これはもうかけ離れているという現場からの批判は重く受けとめるべきだと思います。
 総理は五原則ということを繰り返し繰り返し言われるわけですが、そういう建前が通用するかということを、私は、次に、南スーダンの具体的なPKOに即して聞いていきたいと思います。
 自衛隊が参加している南スーダンのPKOの現状は、まさに住民保護のために武力の行使を行うという典型的な事例となっております。
 二〇一三年十二月以来、南スーダンでは、大統領派と副大統領派の武力衝突が起こり、住民を巻き込んで激しい内戦状態に陥っています。政府軍と反政府軍双方によって、数千人が殺害され、二百四十万人が家を追われ、虐殺、レイプ、拷問などの残虐行為が行われ、多数の子供が少年兵として戦うことを強制されています。約十八万人を超える民間人が南スーダン各地にある国連施設に逃げ込み、恐怖の余り外に出ることができない状態です。
 ここに私、持ってまいりましたが、これは、二〇一五年八月二十日に発表された国連報告書、南スーダンに関する専門家委員会の暫定報告書でありますが、ここでは、政府軍と関連武装グループによる二〇一五年四―七月のユニティ州攻撃として、次のような事実を告発しております。
 読み上げます。
 
 恐るべき人権侵害。本委員会は、政府軍がいわゆる焦土作戦をユニティ州全域で実行したことを知った。政府の同盟軍は村々を破壊し続けた。人が中にいる家屋に火をつけ、家畜その他金品を略奪し、学校や病院など主要なインフラを襲撃し破壊した。さらには、彼らは民間人を無差別に殺害し、殴打し、拷問にかけた。子供たちは特に深刻な被害を受けた。多くの子供が殺され、七歳の子供たちを含めてレイプされ、拉致あるいは少年兵として州内での戦闘を強制された。本委員会は、少女たちがしばしば両親や地域の人々の前でレイプされ、その後、生きたまま家ごと焼かれたとの証言を聞いた。
 
 大変深刻なレポートであります。反政府勢力だけでなく、政府軍によってもこうした残虐行為が行われているんです。これが南スーダンの現状です。政府軍と反政府勢力との間で複数回、停戦が合意されたものの、そのたびに戦闘が再開されています。昨年八月下旬に和平合意が交わされましたが、その後も戦闘が続いています。
 
 総理に伺います。
 私は、本会議の代表質問で、南スーダンが内戦状態に陥っているという認識はありますかとただしました。それに対して総理は、南スーダンPKOの活動地域において武力紛争が発生しているとは考えていないと答弁しました。しかし、南スーダンの現状は今お話ししたとおりです。これは国連の報告書です。文字どおりの内戦状態が続いているではありませんか。武力紛争が続いているではありませんか。
 
○中谷国務大臣 (略)
 
○志位委員 これは、全く甘い、現地の状況を全くつかんでいない認識ですよ。
 これは、昨年十一月二十三日に発表された南スーダン・ミッションの任務見直しに関する国連事務総長の特別報告です。
 今、政府勢力と反政府勢力の間にいわば和平合意が成り立っているかのような御発言がありましたが、守られておりません。昨年八月下旬の和平合意、守られていない。
 この国連事務総長報告には何と書いてあるかといいますと、停戦違反と、和平合意実施の準備段階のために決められた当初期限を当事者たちが守れなかったことは、彼らの和平プロセスへの誓約及び彼らの実施にかかわる政治的支持に懸念を持たせると厳しく批判しております。そして、この特別報告では、南スーダンで武力紛争が続き、その結果として、UNMISS、人道関連要員、国内避難民に移動の自由がない状況が続いているとしています。
 これは去年の十一月二十三日ですよ。和平合意の後に発表された国連事務総長報告が、停戦違反が続いていること、当事者たちが平和的解決の意思を持っているかどうか疑わしいこと、そして、武力紛争が続いていることをはっきり述べているじゃありませんか。読んでいないんですか。
 
○岸田国務大臣 (略)
 
○志位委員 この認識も全くだめですね。
 今、暫定政府の閣僚ポストの合意がされたというふうにおっしゃいましたけれども、政府はつくられていないじゃないですか。一月二十二日の期限につくる予定だった政府はつくられていない。
 それから、今、政府間開発機構の声明に即した合意がされたと言いますが、その後出された二月二日のアフリカ連合、AUの声明では、スーダン和平合意が危機に瀕していることを極めて憂慮している、こう述べている。
 一つ、直近のレポートを示しましょう。ことし一月二十一日、国連人権高等弁務官事務所南スーダンPKO、UNMISSが発表した報告書。「南スーダンの長期化する紛争下での人権状況」、直近の南スーダンの状況をこう述べております。読み上げます。
 
 二〇一三年十二月の暴力勃発から約二年、情け容赦ない戦闘とその多方面にわたる影響が続いており、民間人全体の人権と生活条件に対する重大な衝撃を与えている。加えて、国連の要員、施設、人道物資を狙った攻撃が続いており、二〇一三年十二月以来、三十四人の国連要員、三人の現地要員、一人の契約者の命が犠牲となった。政府軍と反政府軍の二〇一四年一月二十三日の停戦合意、両者による二〇一四年五月九日の再確認及び二〇一五年八月下旬の和平合意の実施の一環としての停戦合意にもかかわらず、戦闘は続いている。紛争当事者たちは、礼拝所や病院といった伝統的な避難場所、そして、時として国連の基地まで攻撃しているので、紛争地域で安全な場所は極めてわずかになった。
 
 これは直近の報告ですよ。これが、国連が公式に報告している南スーダンの直近の現状です。情け容赦ない戦闘が続き、停戦合意が何度も交わされたが、繰り返し破られ、国連の要員と基地が攻撃され、安全な場所は極めてわずかになっている。まさに現瞬間も内戦状態、武力紛争が続いているということじゃないですか。
 政府は、こうした報告書が出ていることを把握していないんですか。この報告書、読んでいないんですか。
 
○岸田国務大臣 (略)
 
○志位委員 国連事務総長報告が、武力紛争が続いているとはっきり言い切っているじゃないですか。これだけ国連の報告書に基づいて明瞭な事実を示しても、南スーダンが内戦状態、武力紛争に陥っているという事実を認めようとしない。自衛隊を派兵しておいて、余りにも無責任な姿勢と言うほかありません。
 総理に続けて伺います。
 こうした内戦状態のもとで、南スーダンPKO、UNMISSに、二〇一四年五月以降、主要任務、筆頭マンデートとして住民保護が掲げられ、そのために必要なあらゆる措置をとる権限、武力行使の権限が与えられております。昨年十月、十二月の国連安保理決議では、戦術ヘリコプター、無人機を配備することまで求めております。住民保護のためにPKOみずからが交戦主体、戦争の主体となって武装勢力と戦う、これが南スーダンPKOの実態となっております。
 こうしたもとで、改定PKO法によって、自衛隊の任務に安全確保業務、駆けつけ警護の任務が新たに付与され、任務遂行のための武器使用が可能になったらどうなるか。
 これまでは、ともかくも、PKOにおける自衛隊の武器使用は自己保存のために限定されていました。活動内容も施設や道路をつくることなどに限定されていました。ですから、深刻な内戦下での派兵でしたが、これまでのところ、幸いにも、自衛隊は一発の銃弾も撃たず、一人の死者も出さないできました。しかし、改定PKO法によって任務拡大となれば、自衛隊が武器を使用して武装勢力と戦うことになるではありませんか。
 武装勢力といいましても、政府軍と反政府軍がともに民兵を動員し、さらに、武装した住民を含むさまざまな集団が入りまじり、区別がつきません。こういう勢力を相手にして自衛隊が武器の使用をすれば、市民に向かって発砲する、少年兵を撃ってしまうということになりかねません。既に南スーダンPKOの要員から三十六名の死者が出ておりますが、自衛隊員の犠牲者が出るという強い危惧があります。
 改定PKO法によって任務拡大となれば、自衛隊が戦後初めて殺し、殺されるという危険が、私は、現実のものになる、このように強く危惧しております。
 私は、本会議の代表質問で、南スーダンPKOに派兵されている自衛隊に、改定PKO法に基づいて安全確保業務、駆けつけ警護などの新たな任務を付与し、これらの任務遂行のための武器使用権限を与えたら、憲法九条が禁止した海外での武力行使を行うことになるのではないかとただしました。それに対して総理は、何の根拠も示さずに、憲法九条の禁ずる武力の行使を行ったと評価されることはないと答弁されました。
 総理に伺います。
 なぜ、改定PKO法における任務遂行型の武器使用は憲法九条の禁ずる武力の行使を行ったと評価されることはないのか、その根拠を端的に示していただきたい。
 
安倍内閣総理大臣 (略)
 
○志位委員 今の総理の御答弁は、結局、派遣先国及び紛争当事者の受け入れ同意の安定的維持、国家または国家に準ずる組織が敵対的なものとして登場しないことを前提にしたものだから、憲法が禁止する武力行使に当たらないとの御答弁でした。
 しかし、問題は、南スーダンでこういう前提が成り立つかということなんですよ。
 南スーダンPKO、UNMISSに関する国連報告を読んで、私は、極めて深刻だと痛感させられるのは、反政府勢力だけでなく、南スーダン政府軍によってもUNMISSに対する危害行為、攻撃が加えられていることです。
 パネルをごらんください。
 これは、二〇一五年八月二十一日に発表された南スーダンに関する国連事務総長報告から作成したものであります。この報告であります。
 二〇一五年四月十四日から八月十九日までの時期に南スーダン政府軍によって行われたUNMISSに対する危害行為、攻撃について、報告書では次のように記載しています。
 
 この時期におけるUNMISSに対する危害行為、攻撃百二件のうち九十二件は、政府軍、治安部隊による。
 四月二十九日、五月七日、七月二十七日の三回にわたり、ユニティ州ベンティウのUNMISSの基地と国連の住民保護区のすぐ近くで政府軍が対空射撃を行い、保護を求めてきた住民五人が負傷。
 六月二十七日、ボルの北二十一キロで政府軍兵士がUNMISSのはしけに十五から二十発の砲撃。
 七月五日、二人の政府軍兵士がベンティウの国連の住民保護区に侵入し発砲、一人を殺害。
 七月九日、マラカルの南で政府軍がUNMISSのはしけ船団をロケット弾と重機関砲で攻撃。
 
 これは一断面ですが、南スーダン政府軍によってさまざまな形でUNMISSに対する危害行為、攻撃が加えられていることを生々しく示しております。
 改定PKO法における任務遂行型の武器使用は、派遣先国及び紛争当事者の受け入れ同意の安定的維持、国家または国家に準ずる組織が敵対するものとして登場しないことを前提にしたものだから憲法九条が禁止する武力行使に当たらないとの先ほど御答弁でした。しかし、このどちらの条件も南スーダンには存在していないじゃないですか。南スーダン政府軍がUNMISSに対して攻撃しているじゃないですか。敵対するものとして登場しているじゃないですか。
 伺います。
 南スーダンで、自衛隊に安全確保業務、住民の保護という新たな任務を付与し、任務遂行のための武器使用を認めたら、自分の身に危険が及ばなくても、住民に銃を向ける相手を殺傷することになるんです。南スーダン政府軍が住民やそれを防護するUNMISSを攻撃してきたら、自衛隊南スーダン政府軍と銃火を交えることになるわけであります。これは、憲法が禁止する武力行使そのものになるじゃありませんか。先ほどのあなたの論理からいっても武力行使になるでしょう。こんなこと、憲法上許されませんよ。
 
○中谷国務大臣 (略)
 
○志位委員 聞いていることに答えておりません。
 偶発的なものだとおっしゃいましたけれども、先ほどの国連の報告書というのは、限られた期間ですが、百二件中九十二件は政府軍によるものだと言っているわけですよ。九十二件ですよ。そのうち、政府の側から是正がされたのはたった一件だ、あとは是正もされていない、このように国連が報告しているんです。偶発的なものとは言えません。
 それから、ジュバは安定しているというふうにおっしゃったけれども、先ほど私が紹介した一月二十一日の国連報告書では、昨年も、ジュバの国連の住民保護サイトのまさに周辺において政府軍による襲撃があって、そして住民が拉致されて殺害される、ジュバのど真ん中で起こっている、そういう報告になっているわけですよ。
 私はこれだけ具体的な事実を示して聞いている。私は、事実に即して、南スーダンで現実に起こっている事態に基づいて、自衛隊の任務を拡大し、政府軍と銃火を交える事態になったら武力の行使になるのかならないのか、これを聞いているんです。武力の行使になるでしょう。国家がまさに敵対するものとして登場しているじゃないですか。
 
○中谷国務大臣 (略)
 
○志位委員 そんな認識で自衛隊を出しているというのは本当に無責任だと思います。南スーダンの現実は、内戦状態、武力紛争が続いている。これは国連が認定していることです。そして、政府軍はUNMISSや避難民を攻撃している。これも事実です。この現実に即して質問しているのに、武力の行使か否かを答えられない。私は、ここにこの法律の危険性があると思います。
 自衛隊の任務に安全確保業務を追加し、任務遂行のための武器使用の権限を仮に与えたとすれば、住民への攻撃をしている南スーダン政府軍と自衛隊が戦うことになる。憲法九条が禁止した武力の行使そのものになります。
 私は、きょう、国連PKOが住民保護のために断固たる武力行使が求められるPKOへと大きく変化していること、そして、南スーダンPKOもその典型的な一つだということを明らかにしてまいりました。今日の国連PKOは、憲法九条を持つ日本の自衛隊が参加できるような活動ではいよいよなくなっているということを強調しなければなりません。
 もちろん、住民が深刻な人道的危機にさらされているときに、国際社会がその保護のための責任を果たすことは必要であります。しかし、日本の貢献は、憲法九条に立った非軍事の人道支援、民生支援に徹するべきです。
 南スーダンでも、国連の活動はPKOだけではありません。国連難民高等弁務官事務所UNHCR国連児童基金ユニセフ、世界食糧計画、WFP、いわゆる国連人道支援の御三家と言われる機関が、各国のNGOと協力して、難民支援、食糧支援、医療支援、教育支援、児童保護など、さまざまな人道支援に取り組んでいる。日本は、憲法九条を持つ国として、こういう非軍事の人道支援こそ抜本的に強化すべきであります。
 私は、安保法制、戦争法の強行によって、日本の自衛隊が戦後初めて外国人を殺し、戦死者を出すという現実的な危険が生まれていると思いましたが、南スーダンPKOに派兵している自衛隊の任務拡大が最初の殺し、殺されるケースになることが強く危惧されます。これまで自己防護に限っていたから、一人の犠牲者も出さないで済んだのです。それを拡大したら、最初のそういう危険なケースになることを強く危惧いたします。戦争法を廃止することが文字どおりの急務であることを強く訴えたいと思います。
(引用終わり)
 
 とりわけ注目されるのは、南スーダンにPKO要員として派遣されている自衛隊の置かれている現状認識を問い、その任務拡大による一層の危険について追及する質疑にあたり、伊勢﨑賢治氏(東京外国語大学教授)の年来の主張を踏まえていることです。
 例えば、1月27日の代表質問における南スーダン関連の質問は以下のように展開されます。(※補注で引用した会議録を参照願います)
 
(引用開始)
 安保法制=戦争法は、日本にきわめて重大な危険をつくりだしています。
 第一は、日本の自衛隊が、戦後初めて、外国人を殺し、戦死者を出すという現実的な危険が生まれているということです。私は、差し迫った重大な危険として、二つの問題について総理の見解を問うものです。
 一つは、アフリカの南スーダンのPKO(国連平和維持活動)に派兵されている自衛隊の任務が拡大されようとしていることです。
(略)
 総理、南スーダンが内戦状態に陥っているという認識はありますか。南スーダンでは、停戦合意をはじめとする「PKO参加5原則」が崩壊し、自衛隊の派兵の法的前提がなくなっているではありませんか。にもかかわらず自衛隊の派兵を続け、その任務を拡大するならば、自衛隊が武力を行使し、武装勢力とたたかうことになるではありませんか。武装勢力といっても軍隊と民間人の区別はつきません。自衛隊が一たび、少年兵や民間人を撃ってしまったら、取り返しがつきません。
 このような活動は、海外での武力行使を禁止した憲法9条のもとでは絶対に許されないと考えますが、いかがですか。日本の貢献は、憲法9条にたった非軍事の人道支援、民生支援に徹するべきです。総理の答弁を求めます。
(引用終わり)
 
 そして、2月4日の予算委員会審議では、さらに詳細にわたって質疑がなされています。YouTubeで6分~56分の部分ですが、南スーダン情勢を中心とする国連PKO変質の問題にこれだけの時間が国会審議に割かれたのは、おそらく初めてのことでしょう。
 伊勢﨑賢治さんが、Facebookに投稿(予算委員会質疑の当日でしたが)された以下の言葉を最後に引用し、さらにこの問題に関する議論が深まることを期待しましょう。

衆院本会議の代表質問で、共産党の志位委員長に、自衛隊南スーダンで既に「交戦主体」になっている現実を言及していただきました。ぜひ、これを機に、戦時国際法・国際人道法で定義される「交戦主体」が、安全保障と自衛隊政策で論議される語彙のコアになるように。」
 
(追記 2016年2月6日)
 2月6日にFacebookに投稿された伊勢﨑賢治さんの志位委員長に対する「お礼」を引用しておきます。

「一昨日の衆院予算委員会共産党の志位さん。交戦権が支配する世界に交戦権のない自衛隊を送り続ける、日本人が犯してきた根源的な矛盾に言及していただきました。自衛隊員が命をかけられる大義を与えるのは国民です。政治ではありません。少なくとも、非常に脆弱な内戦状態だと国連が認識する南スーダンを、そうではないと言い張る日本政府ではありません。志位さん、自衛隊員にかわってお礼を申し上げます。」