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wakaben6888のブログ

憲法を大事にし、音楽を愛し、原発を無くしたいと願う多くの人と繋がれるブログを目指します

憲法記念日前後のTVドキュメンタリー番組ご紹介と「お試し改憲」最新版・大学教育無償化について

 今晩(2017年4月29日)配信した「メルマガ金原No.2797」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
憲法記念日前後のTVドキュメンタリー番組ご紹介と「お試し改憲」最新版・大学教育無償化について
 
 昨日(4月28日)お送りしたメルマガ(ブログ)の記事「中野晃一氏講演会「市民の力で立憲民主主義を創る~他者性を踏まえた連帯の可能性~」@和歌山市(4/28)の動画紹介」は、ほぼ下書きを終えた段階で、小谷英治さん撮影による中野晃一先生講演動画が、講演終了の2時間半後に早くもアップされていることに気付き、急遽、構想をあらためて書き直したもので、当初下書きの7割方は流用しましたが、残り3割は今日に回すことにしました。
 それは、5月3日が目前にもかかわらず、NNNドキュメントやテレメンタリー、それにMBS映像など、優れたドキュメンタリー番組を送り出している民放各局が、今年の憲法記念日前後に、70周年という節目の年を迎えた日本国憲法を取り上げた番組を放送してくれるのかと思いきや、今のところ、全然それらしい情報に接しないことを嘆きながら、とりあえず目に付いたNHK地上波による3本の番組を紹介した部分でした。
 まずは、その3本の番組予告を、番組公式サイトから引用します。
 
NHK総合テレビ
2017年4月30日(日)午後9時00分~9時58分
NHKスペシャル「憲法70年 “平和国家”はこうして生まれた」

日本国憲法の施行から70年を迎える。今、新たな資料の公開で憲法誕生の知られざる舞台裏が明らかになりつつある。
たとえば「昭和天皇実録」などの公開で浮かび上がった新事実。それは昭和天皇が敗戦直後の昭和20年9月4日、勅語で「平和国家の確立」を明らかにし、憲法改正の調査を命じていたことである。
さらに幣原喜重郎首相が戦争放棄マッカーサーに提唱。GHQは戦力不保持の草案を作成する。しかし、GHQ草案の条文に「平和」の文字はなかった。では、どこから来たのかー。
番組では、近年、発掘された新たな資料をもとに、日本国憲法が誕生していく1年8か月を描く。」

NHK総合テレビ
2017年5月6日(土)午後9時00分~9時58分
NHKスペシャル「日本国憲法 70年の潮流 ~その時、人々は~」

「2017年5月3日、日本は現行憲法の施行から70年という節目を迎える。去年の参議院選挙の結果、改正に前向きな勢力が衆参両院で3分の2をこえ、国会で憲法改正発議が可能な態勢が整った。一方で、今年3月のNHKの世論調査では、憲法を「改正する必要がある」と答えた人が27%、「改正する必要はない」と答えた人が28%、「どちらとも言えない」と答えた人が35%だった。他の世論調査でも、施行から10年以降は「護憲」が「改憲」を上回っているが、2000年代に入ると拮抗あるいは「改憲」が上回る年が増えている。
番組では、世論調査の変遷を軸に、独自に入手した資料や関係者の証言などから、この70年間、日本人がどのように憲法と向き合ってきたのかたどっていく。」

NHK・Eテレ
本放送:2017年5月6日(土)11時00分~午前0時15分
再放送:2017年5月11日(木)午前0時00分~1時15分(10日深夜)
ETV特集「暮らしと憲法 第1回 男女平等は実現したのか」

日本国憲法施行から70年。その理念は今、暮らしの中でどう生かされているのか。第1回は女性と憲法。男女平等をうたった憲法の理想、どう実現され、残された課題とは。
憲法24条では「法律は個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して制定されなければならない」と男女平等がうたわれた。民法も改正され、戦後日本を大きく変える原動力となった。しかし、2016年、世界経済フォーラムによれば、平等の度合いは144か国中111位。特に経済と政治の分野で男女格差が大きい。「男女平等」の理想を実現すべく、職場や暮らしの中で差別と闘ってきた人々の証言から、70年の歴史を見つめる。」

 ところで、「民放頑張って欲しいなあ」と思いながら昨日は、上記NHKの番組を案内しようと思っていたのですが、今日たまたま夕方テレビを付けたところ(この時間帯にテレビを見るなどということはめったいにない)、TBSの「報道特集」をやっていました。特定のドキュメンタリー枠以外の地上波テレビを見ることなどほぼ絶無となった私でも、この毎週土曜日の夕方に放送されている「報道特集」が、「日本の地上波におけるリベラルな報道番組」という絶滅危惧種のほぼ唯一に近い生き残りであるらしいという位の知識はあり、たまたま今日の特集が「施行70周年~憲法の今」というものであったため、途中からではありますが、つい特集の終わりまで視聴することになりました。
 番組ホームページに「憲法改正に向けた議論が進む中、急浮上しているのが教育無償化を盛り込もうという動きだ。これに与野党のキーマンは?憲法学者は?施行70周年を迎える日本国憲法について考える。」と説明されているとおり、お試し改憲候補に急浮上してきた大学等の高等教育まで無償化することを憲法に書き込むという改憲案が取り上げられていました。
 番組では、この主張の旗振り役である下村博文元文科大臣(自民党)や、月刊誌に発表した改憲私案の冒頭に教育無償化を盛り込んだ細野豪志衆議院議員民進党)へのインタビューが行われ、その主張を紹介していました。さすがに、彼らも、高等教育の無償化は改憲しなくてもできること自体は否定していません。
 それよりも、私がこの特集で最も注目したのは、西原博史早稲田大学社会科学総合学術院教授(憲法学)の意見でした。西原教授は、高等教育の無償化は憲法マターではないとした上で(ここまでなら多くの人がそう考えていますよね)、憲法に高等教育の無償化を規定してはいけないという積極的反対論を主張しておられました。
 何しろ、番組で紹介された断片的な発言から、しかもメモもとれてない状況で、西原教授の主張を要約する自信はありませんので、ここから先は、西原教授インタビューを含む特集を見たことによって触発された私のつたない意見としてお読みください。

 日本国憲法には、既に教育無償化に関する規定が存在します。
 
日本国憲法(昭和二十一年十一月三日憲法)
第二十六条 すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。
2 すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。
 
 上記のとおり、日本国憲法26条2項は、保護する子女に義務教育を受けさせることを国民の義務とした上で(日本国憲法が規定する数少ない国民の義務の一つ)、それと一体をなすものとして、義務教育を無償としているのです。
 これに対し、現在急浮上している教育無償化は、大学教育までの無償化という問題であって、当然のことですが、大学教育まで「義務教育化」するという主張ではないわけです。
 憲法26条2項をもう一度読んでください。前段の「普通教育」と後段の「義務教育」は、厳密に言うと別の概念でしょうが、実質的にはほぼ同じものと考えて良いでしょう。ここでは、現行の(法律の定めるところにより)子どもに9年間の義務教育を受けさせることが国民の義務であるとしたことと引き換えに言ってもよいし、担保するためと言ってもよいかと思うのですが、義務教育の無償化が制度として保障されています。

 これに対して、大学教育を義務教育と同列に論じることはできません。まず何よりも、進学することが義務的ではないことの帰結として、本人にとっても、(本人が未成年の場合)保護者にとっても、進学するかどうかは「義務」の問題ではなく、「選択」の問題です。
 その「選択」にあたっては、能力(学力)と経済力が非常に重要な要素となることは間違いありませんが、そもそもその前に意欲(大学で学びたいという)の有無という前提問題があります。
 大学教育の無償化という議論が出てくる背景には、国民の貧困化と密接に結びついた教育格差を何とかしたいという国民の切実な声があることは事実でしょうが、それを憲法に大学教育までの無償化を書き込むことで解決しようというのは、やはり間違っていると思います。

 まず、憲法に「無償化」と書き込むにしても、その「無償」となる対象は何でしょうか?判例は、憲法26条2項の義務教育の「無償」というのは、義務教育課程における授業料は無償とすることを保障したものに過ぎないと解しています(教科書の無償化は、上乗せの「政策」によるものです)。とすれば、大学教育の場合に、授業料以外も国庫負担とするというような規定をおくことは義務教育との権衡上無理でしょう。
 そもそも、経済上の理由によって大学進学を断念するという問題を、授業料の無償化だけで解決できるものではありません。
 その上、憲法に大学教育の無償化を規定してしまうと、大学進学を「選択」せずに(あるいは出来ずに)社会人となった者が納める税金を原資として、(高額所得家庭に生まれた学生も例外なく)大学の授業料が国費で賄なわれるということになってしまい、著しく不公平な事態が現出します。
 経済力による教育格差の是正については、給付制奨学金制度の抜本的充実など、公平かつ公正な制度を法律によって整備することにより解決すべきであって、無償化を憲法に書き込むのは間違っているということだと思います。

 なお、義務教育と大学の中間的存在の高校をどう考えるかについては、義務教育に準じるものという国民的合意があると解することよって、大学とは異なった取り扱いが可能でしょうが、それでも憲法マターではないでしょう。

(付記)
 今日の論旨と直接の関係はありませんが、明後日(5月1日)、放送大学で特別編成の放送が行われます。普段なら、週に1回しか放送枠のない特別講義(45分)が、この日集中放送されるのです。
 なかなか、興味深い番組が多い中で、19時00分から放送される「文人精神の系譜―与謝蕪村から吉増剛造まで」を担当する林浩平氏恵泉女学園大学教授・詩人)は、私の中学校(和歌山大学教育学部附属中学校)の同級生であり、同級生で作るMLにご本人からお知らせがあったために放送に気がつきました。
 彼のブログ()によると、和歌山県新宮出身の佐藤春夫も取り上げたようです。
 皆さんも(視聴できる環境にある方は)是非ご覧になってはいかがでしょうか。
 なお、視聴方法は以下をご参照ください。
 関東では地上波12チャンネルで放送されていますが、それ以外の地域の方は、BS231チャンネル、もしくは契約しているケーブルテレビかスカパー!などで視聴できます。
 ところで、林君の勤務校である恵泉女学園大学のホームページをのぞいてみたところ、「今もなお、継承される「3つの礎」」が建学の精神として紹介されていました。
(引用開始)
聖書
聖書に基づき、神を畏れ、人を愛し、いのちを育む、このキリスト教教育理念を世界平和と恵泉の園芸の基礎とする。
国際
平和な社会を創り出していくために、女性の貢献が重要であるとの自覚を持って、さまざまな分野で平和のために奉仕する女性を育成する。
園芸
額に汗して土に親しみ、植物を育て、いのちを慈しみ、花のある生活を築いていく女性を育成する。
(引用終わり)
 「平和のために奉仕する女性を育成する」というのが素晴らしい!
大学ホームページの教員紹介(林浩平)