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再び週プレNEWSが取り上げた「和歌山市民“ツタヤ”図書館」問題~市民は出来レースを見せられた?

 2018年2月8日配信(予定)のメルマガ金原.No.3072を転載します。
 
再び週プレNEWSが取り上げた「和歌山市民“ツタヤ”図書館」問題~市民は出来レースを見せられた?
 
 フリージャーナリストの日向咲嗣(ひゅうが・さくじ)さんが、週プレNEWSを舞台に追及する「ツタヤ図書館」シリーズ。
 昨年暮れの12月28日から30日の3日間、和歌山市民図書館の指定管理者にCCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)が選定されたことを取り上げた日向さんの力のこもった記事が連載され、私もブログでご紹介しました(週プレNEWSが取り上げた「和歌山市民“ツタヤ”図書館」問題~目を離したらオシマイだ/2017年12月30日)。
 今日ご紹介するのは、その続編で、和歌山市民図書館の指定管理者は、公募に応じたCCCと図書館流通センター(TRC)の競争の結果、選定委員会(5人)の投票によって選ばれたCCCが、12月15日に市議会によって正式に承認された・・・ということになっているが、実は、CCCが指定管理者に選ばれることは、和歌山市やTRCも承知の上の「官製談合」「出来レース」だったのでは?という疑惑を追ったものです。もちろん、当事者はいずれも否定していますけどね(それはそうだ)。
 日向さんの3回連載記事にじっくりと目を通し、説得力のある「仮説」かどうか、ご自分で(特に和歌山市民に)考えていただきたいと思い、ご紹介することとしました。
 
2018年2月6日
「黒塗り」資料に隠された重大な疑惑…和歌山市“ツタヤ図書館”は官製談合の産物なのか?(取材・文/日向咲嗣
(抜粋引用開始)
 昨年12月、和歌山市が2年後に完成する駅前の市立図書館の運営者にレンタル大手『TSUTAYA』を展開するCCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)を選定した。
(略)
 今回は、この「ツタヤありき」の“出来レース”疑惑のさらなる核心に迫っていく。
 和歌山市が昨年10月に実施した市民図書館の運営者を決める指定管理者公募(受託期間は2019年10月から5年間)には、CCCの他に図書館流通センター(TRC、東京・文京区)が参加していた。TRCといえば、全国約3300の公共図書館のうち500館超の運営を自治体から受託している業界の“ガリバー”。片や、話題のツタヤ図書館を運営するレンタル・書店チェーンの“雄”。
 まずは、和歌山市民図書館の運営権をかけたコンペに両陣営が提示した入札価格とその内訳について、和歌山市に情報開示請求を行なった。これが本当に出来レースだったのなら、開示資料になんらかの証拠があるはずとの思惑もあった。
 昨年12月、和歌山市に開示を求めたのは市民図書館指定管理者選定に際して、両社の入札価格がわかる資料。同市の対応は思いのほか早く、12月11日の開示請求から11日後の22日に「一部開示」が決定。その1週間後には資料が送付されてきたが、その封筒の中身を見ると愕然とした。
 TRCとCCCそれぞれにおいて、初年度である平成31年度のみ半期、翌年度以降、平成35年度までは年間の収支とその内訳が試算されている。
 図書館は利用者から対価を徴収できないため「収入」は「指定管理料」と「コピー料金」のみ。一方、市があらかじめ決めた「施設管理費」と「図書購入費等」の固定費のみ、金額が明記されているものの、その他の「人件費」「旅費」「消耗品費」「燃料費」「印刷製本費」など積算根拠となる支出項目別の詳細は、両社ともすべてが“黒塗り”だった。
 そして「収入合計」欄に記載されている指定管理料がそれぞれの「入札価格」だが、その額を見るとさらに驚いた。
 『TRC vs CCC』の一騎打ちとあって、さぞやガチンコでしのぎを削りあったのか?と思いきや、両社ともに入札価格が驚くほど“無気力”なのだった…。
 TRCの入札額は3億3699万6千円で、落札率(入札額/自治体設定の上限額・3億3700万円)に直すと99.998%!一方のCCCは3億3375万円で、こちらも落札率はほぼ上限額に近い99.035%だった。
 公共工事の入札実態について定期的に調査している全国市民オンブズマン連絡会議の基準では、落札率90%~95%なら「談合の疑いがある」、落札率95%以上になると「談合の疑いが極めて強い」とされている。
 そんな中、2社ともに99%を超える数字。TRCに至っては、上限額よりも4千円低いだけの価格を提示。まるでお互いに安くしないことを申し合わせて、どちらかが落札することを事前に相談して決めていたかのような対応である。
 複数の自治体関係者に話を聞くと、皆一様に「落札率99%なんてありえない」と驚く。実際、普通にコンペをすれば必ず起きるはずの民間事業者同士の競争は全く起きなかった。
 今回のコンペは総合的に提案内容を競うプロポーザル提案方式なので、入札額だけで決められたわけではないが、和歌山市が募集要項に明記した5項目における配点を見ると、提案価格の配点は280満点中100点と、他のどの項目よりも高く、「ここで負けたら落選は決定的」であることは明らか。
 事実、選定結果は5項目中4項目を制したCCCの圧勝だった。TRCは、まるで「私は降りますから、どうぞとってください」と言っているかのような入札価格をつけているのだ。
(略)
 にも関わらず、何ゆえにTRCは和歌山市でやる気のない提案価格を出し、あっさりと敗北してしまったのか?
 ある図書館関係者がこう囁(ささや)く。
 「和歌山市は当初、TRCを指定管理者にするつもりでいたのですが、CCCが入ってきて、和歌山市、CCC、TRCの三者の談合でCCCに落ちるように決着させたものと思えます」
 和歌山市の市民図書館の指定管理者を採点した選定委員は5名。そのうち2名が市職員であるため、役所が主導して落札者を決める、いわゆる「官製談合が行われたのではないか?」というのだ。その証拠に、不審なのは落札価格だけではなかった。両社のその他の評価についても、おかしな点が次々と出てきたのだ。
 今回、TRCとCCCが競合した市民図書館の指定管理者選考委員の採点結果を見ると、5人の選考委員のうち3人が10点差以下の僅差なのに対して、D氏が76点、E氏が20点と、CCCに高い点数をつけていたことが判明した(和歌山市の『市民図書館について学ぶ会』が昨年12月に情報公開請求、2月1日に開示された指定管理者選考に関する資料による)。
 この結果を、図書民営化事情に詳しい図書館関係者はこう分析する。
 「この採点表の評価者欄は、市が選定結果を発表しているページで紹介されている委員の順番通りだと思います。それからすると、D氏は、産業まちづくり局長で、E氏が市民図書館長でしょう。この2人で合計96点差を稼いでますから、もしその点数がなければCCCは負けていました。こんな点数差は、ふつうありえないですよ。このままでは、計画通りにいかず自分の責任が問われると、焦ってこんなあからさまな点数を入れたのではないかと思われます」
 しかも、談合の疑いが持たれる両社の競争していない無気力な入札価格について、委員全員がほぼ満点をつけているのは、誰がどうみてもヘンである。
(略)
(引用終わり)
※金原コメント 3回連載の発端編において、「官製談合」を疑わせる根拠として指摘されたのは、和歌山市情報公開条例に基づく2件の請求に対して開示された公文書の分析結果でした。
 1つは、日向氏自身が請求して入手した公文書であり、これにより、TRCとCCCによる提案書記載の「収入合計」欄に記載されている指定管理料額(入札価格)が、和歌山市設定の上限額3億7000万円の、TRCは99.998%、CCCでも99.035%であり、「談合の疑いが極めて強い」ことを明らかにしています。
 2つ目の資料は、「市民図書館について学ぶ会」代表の方が請求し、2月1日に開示された5人の選定委員による各項目別の採点結果(委員の氏名は匿名化されている)です。
この後者の資料については、私も見せていただく機会がありました。
 日向さんの記事に若干の補足をすれば、5人の選定委員の両社に対する総合点を比較すると、
    TRCを上位とした委員2人(2点差、12点差)
    CCCを上位とした委員3人(10点差、76点差、20点差) 
という結果でした。ちなみに、委員1人当たりの1社に対する配点の最高点(持ち点)は280点です。どこからどう考えても、D氏の「76点差でCCCの勝ち」という投票の「異様さ」が際立ちます。D氏がどんな採点をしたか、「市民図書館について学ぶ会」のご了解があれば、ブログで公開しても良いかなと思うほど「露骨」です。
 なお、採点結果については、委員氏名が匿名化されただけでしたが、「2社の提案内容についてわかる資料」を請求した部分については、開示されたTRC84ページ、CCC97ページの提案書の大半が黒塗りとなっていました。開示されたわずかの部分を見比べたところ、多分、TRCは「見出し以外は全部不開示」、CCCに至っては、「見出しの大項目以外は全部不開示」ということなのだろうと思います。TRCは、見出しをつなげて提案書の目次を作ることは可能ですが、CCCはそれも不可能という印象を受けました。なお、不開示の理由については、「法人等に関する情報であって、公にすることにより、当該法人等の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあると認められる」(和歌山市情報公開条例第7条第1号及び第2号)と説明されていました。
 
2018年2月7日
著名教授も「だまされた!」ーー和歌山市・ツタヤ図書館“談合疑惑”の裏で、競合“ガリバー企業”の不可解な影(取材・文/日向咲嗣
(抜粋引用開始)
(略)
 その謎を追っていくと、和歌山市が一時期、“ダッチロール”のような動きをしていたことがわかった。全国の図書館民営化事情に詳しいある図書館関係者がこう明かす。
 「和歌山市は当初、TRCを指定管理者にするつもりでいたのですが、CCCが参入し、“三者の談合”でCCCに落ちるように決着させたのではとも思えます」
 ある時期までは「CCCありき」どころか「TRCありき」で事が進んでいたというのだが、取材を進めると、確かにそのような動きがあったことが一部確認された。今回の和歌山市の動きを時系列順に整理したのが以下だ。
 
《前半・指定管理者制度導入》
2015年
5月 市民図書館を南海和歌山市駅への移転計画発表
7月 和歌山市民図書館基本計画策定業務を担当する事業者を募集
9月 TRC系列の図書館総研と地元企業との共同企業体が受託
11月~ 地元企業2社が図書館関連の各種イベント開催
2016年
2月 有志が市民団体「みんなでつくろう未来の図書館」を発足
5月 基本計画発表 直営と民間委託、指定管理の選択肢を提示
2017年
5月 基本設計発表 設計者はCCCと関係の深いアール・アイ・エー
6月 市議会定例会に指定管理者制度導入の条例改正案を提出して成立
 
《後半・指定管理者選定》
2017年
8月 現図書館で市民向け説明会開催
10月18日 指定管理者公募開始
11月24日 公開プレゼン CCCとTRCが競合
11月30日 指定管理者にCCCが選定
12月15日 本会議でCCC指定管理者承認案議決
2019年秋 南海市駅直結のビル内に新図書館オープン予定
 
 そして、地元メディアに次の見出しが踊ったのは、駅ビルへの新図書館の移転計画が発表された翌年の2016年2月のことだった。
 “未来の市民図書館を考えよう 建築士ら有志が「準備室」”
 和歌山市内の建築士らが市民団体「みんなでつくろう未来の図書館」(以下、みん図書)を発足させ、2019年度に完成が予定されている駅ビルへ移転・開館する市民図書館を応援する取り組みを始めたという内容だ。
 具体的には、参加者みんなで新しい図書館にどんなカフェができれば利用したくなるかなどを話し合ったり、アイデアを出し合う、まさに市民による草の根運動である。
 ところが調べてみると、この「みん図書」の発足メンバーである地元の建築関係事業者は2名とも、前年11月から12月にかけて、市が新図書館建設へ向けて市民の関心を高めるために開催したイベントの主催者側だった。つまり、市から委託された基本計画策定の業務を請け負った事業者としてイベントを開催していたわけだ。
 彼らは仕事として図書館計画に取り組んでいるうちに個人的にも図書館づくりへの意欲が大いに高まって、ボランティア的な運動にも取り組むようになったのだろうと解釈することもできるが…「最初から市民団体(みん図書)設立も業務の一貫」だったのでは?との疑念も湧く。実際、地元の図書館サークルで活動している人に聞いても、この団体の活動を「知らない」と言う。一体、どういうわけなのか? 『みん図書』主催のワークショップに参加した人物がこう話す。
 「私が聞いていたのは、もうTRCが(図書館運営者として)入るというのは決まっている話で、どのようにTRCが図書館運営に関わるかを“市民の声”として提案するのが『みん図書』という団体。市民の声を吸い上げて図書館の運営に反映するために、意見を出す人たちを集めるような形で立ち上げられました」
 まだ図書館の民営化すら本格的に議題にも上っていない段階で、新しい図書館の運営者にTRCが内定しているという話がスンナリと出てくること自体が驚きだ。
 「TRCの社員もワークショップでは議事進行などを担当するファシリテーターとして入られ、図書館の専門家と一緒に市民の皆さんの意見をまとめていました」
 つまり、「どんな図書館にしたいか、みんなでアイデアを出そう」と呼びかけるリーダー自らが、実は受託(予定)企業の社員だったわけで、それが事実なら、自社に都合のいい方向に結論を導くだけの“茶番劇”が繰り広げられていた可能性もある。
 TRCは「議事の進行・議論の整理を行ないましたが、意見の方向性を誘導したことはありません」と釈明したが、市民主導の図書館イベントに今後、受託する可能性のある企業の社員が参加していること自体が不適切のようにも思える。
 さらに、一連のワークショップのキックオフイベントで講演した大学教授が周辺に不満をぶちまけているのだという。
 「先生は元々、図書館は自治体直営でやるべきとのお考えの方なので、最初、市の職員から講演を頼まれた時、『民営化の方向に導くのに利用されるのではないか』と断ったらしいんです。ところが、市の職員が『体を張ってでも図書館を守ります!』と言っていたので引き受けざるをえなかったと言っていました」(和歌山市内の図書館サークルメンバー)
 市民参加型の図書館づくりを提唱していることでも著名なこの大学教授は、自らの講演が結果的には“市民が望む図書館づくりには民の力を借りるべし”と指定管理者制度導入(民営化路線)へと繋がってしまったため「騙(だま)された!」と憤慨。実際、委員を務める和歌山市図書館協議会の場で最後まで反対意見を述べたものの全く聞き入れられなかったという。
 そして、この民営化への流れを主導したのがTRCだった可能性が高い。
 そもそも一連の図書館づくりのイベントが開催される直前の15年9月に、和歌山市が公募した市民図書館の基本計画策定事業者に選定されたのは、株式会社・図書館総合研究所なるシンクタンクだった。図書館に関する様々な調査・研究を行なう、図書館専門のコンサルティング会社で、知る人ぞ知るTRCの関連会社である。
 それも地元・建築士事務所とのJV(共同事業体)だった。つまり、TRC系シンクタンクは裏方に回り、表に立って市民を巻き込むワークショップやイベントを主催したのが、『みん図書』の発足メンバーでもある、その建築士事務所の代表者と、まちづくりイベントを企画・開催する地元建築系企業の代表者のふたりだった。
(略)
(引用終わり)
※金原コメント 私が、和歌山市民図書館の問題に関心を持ち始める前の話なので、「みんなでつくろう未来の図書館」なるサークルのことなど、つい最近まで知りませんでしたから、このような記事で整理してもらって勉強になりますね。
 なお、「著名教授も「だまされた!」」というような扇情的なタイトルを付けられては、〇〇先生もさぞご迷惑だろうと拝察しますが、〇〇先生の図書館にかける熱い情熱に一度でも接する機会のあった者は、記事の詳細についてはともかく、「多分大筋ではそうなんだろうなあ」と思ったのではないですかね。
 
2018年2月8日
炎上しまくりの“ツタヤ図書館”で利権を巡る仁義なき「談合レース」が…!?(取材・文/日向咲嗣
(抜粋引用開始)
(略)
指定管理者制度導入までの経緯》
2015年
5月 市民図書館を南海和歌山市駅への移転計画発表
9月 図書館総研と地元企業が市民図書館の基本計画策定業務を受託
11月~ 地元企業2社が図書館関連の各種イベント開催
16年5月 基本計画発表 直営と民間委託、指定管理の選択肢を提示
―1年間の空白―
17年
5月 基本設計発表 設計者はCCCと関係の深いアール・アイ・エー
6月 市議会定例会に指定管理者制度導入の条例改正案を提出して成立
※新図書館(ツタヤ図書館)オープンは19年秋予定
 “空白の1年”の後、事態が大きく動いたのは17年5月のこと。南海和歌山市駅前に建設される市民図書館の基本設計を市が発表したところ、そのパースの一部に天井までダミー本を配架するツタヤ図書館を彷彿(ほうふつ)とさせる高層書架が描かれていた。実は、その設計者が代官山蔦屋書店を手掛けたことで有名な「株式会社アール・アイ・エー」(以下、RIA)だったのである。
 CCCのフラッグシップともいえる代官山蔦屋書店を街づくりから手掛けたのはRIAだ。15年に大規模改修を行い、リニューアルオープンした海老名市・ツタヤ図書館(神奈川)、16年に新装オープンした多賀城市・ツタヤ図書館(宮城)の設計も担当。“CCC御用達”の設計事務所和歌山市の新図書館の基本設計も担当したとあって、ツタヤ図書館ウォッチャーたちは「まさか和歌山もCCCか!?」とざわついた。
 その予想は的中。11月中旬、公募された指定管理者の応募者がTRCとCCCの2社だと発表され、間もなく公開プレゼンが行なわれたと思ったら、翌週にはCCCが選定。最初にその名前が出てから選定委員会で結果が出るまで、たった2週間で和歌山市のツタヤ図書館誘致が決定してしまった。
 新図書館の基本設計の担当がRIAに決まったことは、それまで「TRCありき」で進んでいたものが「CCCありき」に大逆転した始まりではないか、と全国の指定管理者制度導入事情に詳しい図書間関係者が話す。
(略)
 かくして、RIAが選定された経緯は闇の中。「RIAの力を借りて巨額の補助金を引っ張ってきたCCCを和歌山市は選んだ」のが事実かどうかは、巨額の公金を受け取るにも関わらず、情報開示義務を果たそうとしない民間企業が間に入っているため、これ以上は検証不能だ。
 最後に、今回の談合疑惑の構図について、まとめておこう。
 和歌山市民図書館の指定管理者選定において、CCCの入札価格がTRCよりも安い価格であったことは「和歌山市にとって願ってもない話だった」と図書館民営化事情に詳しい図書館関係者は指摘する。
 「市は、市民にも議会にもこう説明できます。皆さんはTRCがいいというけれど、公募で高い金額を提示してきたのだから、TRCにするわけにはいかないじゃないですかと。これは説得力があります。市民は黙ってしまうでしょう。それをTRCは手伝っていると思われるため談合ではと思うのです」
 では、それに応じたTRCサイドには、何か見返りがあったのか…。
 「私は、特にTRCにメリットはなかったと思います。屈服しなければならない理由があって、苦渋の選択を余技なくされたのでは」と前出の図書館関係者は話す。そして、これまでの経過をまるで“ヤクザの抗争物語”のようにこう解説してくれた。
 「CCCは、海老名市では共同事業体であるTRCに裏切られました。独自分類などを公然と批判され、JV解消を口にするなど、まるで背中をナイフで切りつけられるような仕打ちを受けました。その結果、TRCは誠実に図書館を考える企業、CCCは非常識な企業というイメージが社会的な評価になりました。
 さらに高梁市では、TRCは自らに近い議員を使って自社のほうが安くできると横槍を入れ、CCCがスンナリ受託できないよう妨害したともとられかねないことを行ないました。(その報復として)和歌山市ではCCCが自らの力を見せつけたものとも見えます」
 ところが、そんな意見とは逆の見方をするのは書籍の流通事情に詳しい出版関係者だ。
 「談合があったかどうかはわからないが、指定管理者の座を逃しても、TRCにも十分オツリがくるくらい見返りはあったはず。新設の図書館の初期納品で、仕事を取りたい書店の外商が叩き合いしていると聞きます。特に地方では定価の8割で落札してしまい、『これでは赤字になる』と頭を抱えている書店や組合も多い中、TRCが初期納品だけでも有利に取れれば十分においしいといえるのではないでしょうか」
 実際、CCCが指定管理者となっている図書館は全て新刊をTRCから購入。多賀城市でも全て定価で購入していることが情報開示によって明らかになっている。もちろん、図書の装備も合わせてTRCに委託されているため、指定管理を取らなくてもこれまで通り、初期納品の部分はTRCに任せることになる可能性は大。それにラベル貼りの装備なども合わせれば、結構大きな取引になるのは間違いない。
 本の売上が年々減少して書店業界が苦境に陥る中、一度入り込めば、以後、安定的な収益が期待できる公共図書館への図書納入は書店にとっては喉から手が出るほど獲得したい仕事。そのため競争が年々激しくなっていて、TRCといえども値引きを余儀なくされているとも言われる中、確かに大きな値引きもなしに新設館の仕事を取れるのなら決して悪い話ではないはず。
 ひとつ指定管理を取られたところで、“図書館界のガリバー”にとっては「痛くも痒くもない」と、この出版関係者は言う。選書問題などでCCCに対する批判も激しくなり、「図書館を任せるなら安定感のあるTRC」との評判も保てる。CCCを誘致したい自治体が今後も続々と現れるとも思えない。3300ある公共図書館のうち500館を受託しているガリバーからすれば、まだ10館未満のCCCなど「取るに足らない競争相手」なのかもしれない。
 おいしい果実は、独り占めせずに身内で分かち合う。利益が減るような競争はしないーー。それも世の常だろうが、もし裏でそんな駆け引きがついていたのだとしたら、損を被っているのは和歌山市民かもしれない。駅ビルの「賑わい創出」優先で図書館本来の機能に不安あるにも関わらず、バカ高い費用負担を余儀なくされるのだから…。
 なお、今回の談合疑惑について三者にコメントを求めたところ、提案額が99%超の落札率となっていることについてCCCは「市設定の上限価格内で提案したものであり、特別な事情はございません」と回答。
 また、「談合ではないか」との噂についてはCCC、TRCともに「そのような事実はない」と否定した。和歌山市の担当者も「2社が頑張って競争してくれた結果がたまたまそういう額になっただけと理解している」とのこと。もちろん、市が関与した事実もないと回答した。
(引用終わり)
※金原コメント 私たち和歌山市民が見せられたのは「出来レース」だったのではないか?という記事をどう読まれたでしょうか。全文転載する訳にもいきませんので、部分引用にとどめましたが(長い、ということもあります)、是非リンク先で全文をお読みいただきたいと思います。特に、和歌山市民の方には是非ともお読みいただきたいですね。その上で、先にも書いたとおり、自分ならどう考えるか、さらに、行政や議会にどう働きかけるべきかにまで思いを及ぼしていただきたいと思います。
 
 最後に、この週プレNEWSは、他のネットニュースにも転載されています。ページが分割されていなかったり、コピペが簡単に出来たりして、使い勝手はこちらの方が良いものもありますし、どう考えても、週プレNEWS自体より多くの読者を持つ媒体もありますので、こちらにもリンクしておきます。なお、2月6日の記事を(前編)、7日の記事を(中編)、8日の記事を(後編)と称します。
 
[Yahoo!ニュース]
[Niftyニュース]
[Livedoor'NEWS]
[ニコニコニュース]
[excite.ニュース]
(前編)
[Rakuten Infoseek News]
[Amebaニュース]
 
(弁護士・金原徹雄のブログから/図書館問題関連)
2017年8月12日
新しい和歌山市民図書館(2019年10月開館予定)に指定管理者制度が導入される
2017年9月16日
「市民と歩む図書館~図書館が変わる!?~」(9/30山本健慈さん&渡部幹雄さん/和歌山市勤労者総合センター)のご案内
2017年10月1日
「市民と歩む図書館~図書館が変わる!?~」(2017年9月30日)大成功!
2017年12月1日
和歌山市民図書館が「ツタヤ図書館」に!?~市民の皆さん、嬉しいですか?
2017年12月2日
「ツタヤ図書館」を通じて「図書館」そのものを学ぶために~「武雄市図書館・歴史資料館を学習する市民の会」設立趣旨を読む
2017年12月30日
週プレNEWSが取り上げた「和歌山市民“ツタヤ”図書館」問題~目を離したらオシマイだ
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