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「九条俳句」裁判が確定~その後(弁護団声明、記者会見、さいたま市の対応など)

 2018年12月26日配信(予定)のメルマガ金原No.3373を転載します。
 
「九条俳句」裁判が確定~その後(弁護団声明、記者会見、さいたま市の対応など)
 
 今日は、4日前のブログ(「九条俳句」裁判が確定~その成果を糧として/2018年12月22日)の続報をお届けします。
 
 1つは、さいたま市、第1審原告双方からの上告及び上告受理申立がいずれも最高裁でしりぞけられたことから、東京高裁判決が確定した意義について、弁護団が昨日(12月25日)付で声明を発表しましたので、それをご紹介したいと思います。
 
Facebook:九条俳句 から
     「九条俳句不掲載損害賠償等請求事件」上告棄却決定を受けての声明
                          2018年12月25日
                          九条俳句訴訟弁護団
 2018年12月20日、最高裁判所第一小法廷は、九条俳句不掲載損害賠償等請求事件について、上告及び上告受理申立を棄却する旨の決定(以下、「本件上告棄却決定」という。)を行い、これにより、本年5月18日に東京高等裁判所第2民事部が言い渡した判決(以下、「本件控訴審判決」という。)が確定した。この結果は、不正義を許さないとして困難の中で立ち上がった原告、原告を支えた市民、研究者の皆さんの不断の努力の成果である。
 本件控訴審判決は、公民館の社会教育施設としての役割を論じた上で、公民館を利用する住民の諸活動の憲法的な位置づけを確認し、市民サークルが選定した俳句の内容に着目して不掲載とした公民館の措置は、俳句の作者の思想・信条を理由とした不公正な取り扱いであり、作者の人格的利益を違法に侵害したものであるとして損害賠償を認めたものであり、市民の自由な学習活動の実質的な保障及び民主主義の観点」から、極めて重要な判断を示した。
 本件控訴審判決が、行政が市民活動を制限する際に用いる「行政の中立性・公平性・公正性」について、「ある事柄に関して意見の対立があることを理由に、公民館がその事柄に関する意見を含む住民の学習成果をすべて本件たよりの掲載から排除することは、そのような意見を含まない他の住民の学習成果の発表行為と比較して不公正な取扱いとして許されない」と判示したことにより、当該住民の学習成果の発表内容に他の住民との間で意見の対立が存在することは、行政による制限を正当化する根拠にはならないことが明確になった。
 当弁護団及び支援者らは、さいたま市に対し、本件控訴審判決後、一貫して本件俳句の掲載を求め続けてきたが、係争中であることを理由に未だ掲載は実現されていない。
 本件控訴審判決が確定したことを受け、改めてさいたま市に対し、同判決の意義を真摯に受け止め、速やかに本件俳句を掲載し、権利侵害を受けた原告の被害回復(謝罪と名誉回復と違法状態の回復)及び責任の明確化、再発防止策の実施に努めることを求める。
 併せて、さいたま市の公民館が「市民の<声>が生きる公民館」(2015年10月さいたま市第七期公民館運営審議会提言)として再生していくために、少なくとも、市民と行政が共に考え、これを共有するために、継続的に協議を行う機会を設けることを求める。
 当弁護団は、本件控訴審判決の意義を生かす上記のような取り組みを通じて、今後も、市民が自由に学習し、集会等の表現活動を行うことのできる社会を実現するために尽力する決意である。
                                                                             以上
(引用終わり)
 
 併せて、昨日(12月25日)、多分東京高裁内の司法記者クラブでだと思うのですが、「九条俳句」市民応援団及び弁護団による合同記者会見が開かれ、その動画がUPLANチャンネルから公開されていますのでご紹介します。
 
20181225 UPLAN「九条俳句」裁判確定共同記者会見(42分)
2分~ 弁護団から
16分~ 元上智大学教授の田島泰彦さん(憲法、情報メディア法)から
23分~ 市民応援団から
26分~ 「梅雨空に『九条守れ』の女性デモ」作者から(音声のみ)
33分~ 質疑応答
 
 動画・写真は顔を撮影しないという条件が付されたようですが、作者の女性も記者会見に出席し、はっきりとご自分の意見を述べられていて感銘を受けました。
 
 さて、その後のさいたま市の対応ですが、東京新聞が詳しく報じてくれています。
 
東京新聞WEB版 2018年12月26日 07時00分
さいたま市、9条俳句掲載へ 作者「諦めず闘って良かった」
(抜粋引用開始)  
 憲法九条を詠んだ俳句の公民館だよりへの掲載を巡り、作者の女性(78)がさいたま市に句の掲載と損害賠償を求めた訴訟で、市の賠償を命じた判決が確定したことを受け、同市は二十五日、一転して俳句を掲載する意向を示した。判決では掲載義務はないとしたが、記者会見した細田真由美教育長は「司法判断を踏まえ、作者の気持ちに配慮した」と説明した。(藤原哲也)
 女性は「一審判決が出た直後に決断してくれればなお良かったが、小さなことでも訴えて諦めずに闘うことで結果が出たことは非常に良かった」とのコメントを出した。
 細田教育長は会見で、作者の人格的利益を侵害したとする判決確定部分について「真摯(しんし)に受け止め、謝罪する」と語った。九条俳句の掲載時期は「できるだけ早く」としている。
(略)
◆作者の意に市が配慮
<武蔵野美術大の志田陽子教授(憲法)の話> 公民館に求められる政治的中立性とは、市民がさまざまな問題意識を持ち寄れる純粋な受け皿であることだ。裁判所が人格的利益の侵害を認めた一方、掲載請求権には踏み込まなかったことは煮え切らない判断だった。さいたま市が「違法性を認められた以上、作者の意に沿うべきだ」としたことは意義深く、評価したい。
(引用終わり)            
 
 東京新聞にもコメントが掲載されている志田陽子先生は、ご自身のFacebookでも、この東京新聞の記事を紹介する投稿の中で、いくつかコメントされています。志田先生のご了解をいただきましたので、そのコメントをご紹介します。
 
(引用開始)
「これは、一人の人の個人的承認欲求の利益を満たすために俳句掲載に固執した、という理解をしてはならず、市民の手による自発的な公共文化形成に、公共の組織が水をさす采配をすべきでないという、大きな問題としてとらえるべき事例です。」
「その問題を裁判の場で扱うには、当人の人格的利益への侵害があった、それは違法だった、という論法を、お作法としてとらざるを得ない。でもこの局地線には、それにとどまらない大きな法的、社会的意味が あると思います。」
(引用終わり)
 
 以上、「九条俳句」裁判の意義を広めていくための一助となればと思い、ご紹介しました。第1審のさいたま地裁判決、控訴審の東京高裁判決については、4日前のブログ(「九条俳句」裁判が確定~その成果を糧として)でリンクしていますのでご参照ください。
 
(弁護士・金原徹雄のブログから/「九条俳句裁判」関連
2017年10月13日
「九条俳句」裁判、さいたま地裁が画期的判決~思想・信条を理由とした公民館誌への掲載拒否と認定
2018年5月20日
「九条俳句」東京高裁判決(2018年5月18日)と社会教育の危機
2018年12月22日
「九条俳句」裁判が確定~その成果を糧として