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安保法制違憲訴訟~昨日(7/26)の信州訴訟(長野地裁)で8番目

 今晩(2016年7月27日)配信した「メルマガ金原No.2520」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
安保法制違憲訴訟~昨日(7/26)の信州訴訟(長野地裁)で8番目

 末尾にまとておいた過去ブログを一瞥していただければ分かるように、昨年9月19日にいわゆる安保
関連法が成立した直後から、安保法制違憲訴訟については継続してフォローしてきました。
 もっとも、その前から、元三重県職員の珍道世直(ちんどう・ときなお)さんによる東京地裁、東京高裁、最高裁と続いた裁判闘争に注目し、安保関連法成立後の昨年11月16日、再び珍道さんが、地元の津地裁に安保法制違憲訴訟を提起されたことも取り上げました。残念ながら、去る7月21日、本人訴訟(弁護士が代理人として付かない)で闘った珍道さんの訴えにつき、津地裁は、これを却下及び棄却する判決を言い渡しました。珍道さんから、今月中(ということは今週中ですね)にも控訴したいという意向を伺っていますので、舞台は名古屋高裁に移ることになります。こちらの方も注目していきたいと思
いますが、私たちはどうするんだ?ということです。
 まだ対外的に公表できることは何もありませんが、参院選も終わり、弁護士業務に復帰した由良登信弁護士にも加わってもらい、「安保法制違憲訴訟わかやま」を提起すべきかどうか、早急に検討しなければと思っています。
 
 ということで、自分たちの参考とするために、既に提訴した原告・弁護団の情報を集めているところなので、その一部をメルマガ(ブログ)でご紹介することにしました。
 珍道さんのような本人訴訟もありますし(多分他にも提訴した人がいるでしょう)、先日第1回の口頭
弁論が開かれてニュースとなった現役自衛官による提訴などもありますので、一体、この種の裁判が全部で何件起こされていると言うべきか、はなはだ曖昧ではありますが、「安保法制違憲訴訟の会」あるいはそれに類した名称の会を主体として、多くの弁護士が弁護団を結成し、複数の(多くの場合には公募した)原告が当事者となり、国を被告として、憲法違反の安保関連法の施行により、平和的生存権を中核とした人格権が具体的に侵害されたとして損害賠償を求める国家賠償請求訴訟を提起した案件と限定すれば、昨日(7月26日)提訴した信州訴訟(長野地裁)が8番目のはずです。
 以下に、その8件の提訴日・裁判所・原告数、それからホームページがあるところ(私が見つけたところ)につ
いてはそのURL、また、訴状が公開されていればそれもご紹介しています。
 なお、東京地裁と大阪地裁には、自衛隊派遣差止訴訟も提起されていますが、以下には国賠請求訴訟のみ掲載します。
 
2016年4月26日 東京地裁(安保法制違憲訴訟の会) 原告457名
 ホームページ
2016年4月26日 福島地裁いわき支部 原告225名
2016年5月6日 高知地裁 原告32名
2016年6月8日 大阪地裁 原告713名
2016年6月8日 長崎地裁 原告118名
 ホームページ
2016年6月17日 岡山地裁(安保法制違憲訴訟おかやま) 原告402名
 ホームページ
2016年6月20日 さいたま地裁(安保法制違憲訴訟埼玉の会) 原告318名
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 訴状
2016年7月26日 長野地裁(信州安保法制違憲訴訟の会) 原告292名
 ホームページ
 
 これからも、札幌、神奈川、広島、福岡、前橋など、多くの地裁に安保法制違憲訴訟が提訴予定であると聞いています。
 「安保法制違憲訴訟の会」の寺井一弘先生は、4月26日の提訴後すぐに、全国全ての地裁に安保法制
違憲訴訟の提訴を目指すべきだという檄を飛ばしておられました。
 和歌山も呼応できれば良いのですが。
 
 以下には、最近提訴された「さいたま訴訟」と「信州訴訟(長野)」の提訴に先立ち、憲法研究者に違憲訴訟について説明していただいた動画が見つかりましたので、今後の私たちにとっても大いに参考になると思い、ご紹介することとしました。
 
2016年4月3日
安保法制違憲訴訟埼玉の会 学習会
清水雅彦さん(日本体育大学教授)その1(16分)


清水雅彦さん(日本体育大学教授)その2(16分)

清水雅彦さん(日本体育大学教授)その3(16分)
 

2016年5月10日
第11回 信州大学人の会
又坂常人さん(信州大学法曹法務研究科特任教授)「安保法制と司法」(46分)
 

(弁護士・金原徹雄のブログから)
2015年9月27日
安保法制違憲訴訟を考える(1)~小林節タスクフォースへの期待と2008年名古屋高裁判決
2015年9月30日
安保法制違憲訴訟を考える(番外編)~法律の公布ということ
2015年10月3日
安保法制違憲訴訟を考える(2)~『今、改めて「自衛隊のイラク派兵差止訴訟」判決文を読む』を弁護士にこそ推奨したい
2015年10月27日
安保法制違憲訴訟を考える(3)~「5党合意」は違憲論にどんな影響があるのか?(検討用メモ)

2015年11月25日
珍道世直さんの新たな闘い~「閣議決定・安保法制違憲訴訟」を津地裁に提起
2015年12月2日
安保法制違憲訴訟を考える(4)~伊藤真弁護士(安保法制違憲訴訟の会)による決意表明(11/19@国会前)と小林節氏の現時点(11/21@和歌山県田辺市)での見解
2015年12月23日
「安保法制違憲訴訟の会」による記者会見(12/21)と原告募集のご紹介
2016年3月29日
安保法制施行の日に「安保法制違憲訴訟」を思う
2016年4月21日
いよいよ4月26日「安保法制違憲訴訟」を東京地裁に提起~4/20決起集会から

2016年4月27日
安保法制違憲訴訟(4/26東京地裁に提訴)の訴状を読んでみませんか?
2016年6月4日
安保法制違憲訴訟を地方から起こす~「安保法制違憲訴訟おかやま」の動き

2016年6月18日
「安保法制違憲訴訟おかやま」提訴(6/17)~これで全国6地裁に(付・動画4本雑感)

「今後の市民連合の活動方針について」(2016年7月26日)を読む

 今晩(2016年7月26日)配信した「メルマガ金原No.2519」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
「今後の市民連合の活動方針について」(2016年7月26日)を読む

 本日(7月26日)、「市民連合(安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合)」から「今後の市民連合の活動方針について」と題する声明が発表されました。読んでみましょう。
 
今後の市民連合の活動方針について
(引用開始)
参議院選挙期間中、自公連立与党が「憲法改正は主要な争点ではない」と繰り返していたにもかかわらず、安倍政権やその影響下にあるメディアは選挙後にわかに、あたかも憲法改正が既定路線であるかのよう
有権者をあざむいています。
私たち市民連合は、改憲そのものを自己目的化するような倒錯した思考を拒絶し、個人の尊厳を擁護する
政治の実現をめざして、ひきつづき安保法制の廃止と立憲主義の回復を求めてまいります。
各種世論調査を見ても明らかなように、主権者たる国民は憲法改正を喫緊の課題とはとらえておらず、改憲論議を勝手に進めていくことを国会議員に委任したとは到底言えないことから、安倍政権率いる「改憲勢力」は、今後、市民とともに共闘してきた立憲野党(民進党共産党社民党、生活の党)の分断を図り、改憲発議や国民投票と連動させるかたちで衆議院解散総選挙を仕掛け、民主的正統性や立憲主義
見せかけを調達しようとする可能性があります。
そこで、私たち市民連合としては、ひきつづき全国各地の市民運動と連携しつつ、来るべき衆議院選挙における小選挙区での野党共闘の取り組みを後押しするとともに、個人の尊厳を擁護する政治をいっそう具体化していくために立憲野党との政策協議を積みかさねていきたいと考えています。私たちの代表を一人でも多く衆議院に送り込むために、主権者たる市民の皆さんの粘り強い政治参加を呼びかけます。
 
2016年7月26日
 
安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合
(引用終わり)
 
 「市民連合」が、参議院議員選挙の総括にじっくり時間をかけるいとまもなく、東京都知事選挙に対応せざるを得なくなったのは、いささか残念に思いますし、実はそのことは上記声明で「立憲野党」と位置付けられた4党にしても同じことです。
 そのような状況下ではありますが(というか、であればこそ)、都知事選の期日前のこのタイミングで、どうしても「今後の活動方針」を発表せざるを得ないという判断があったのでしょうね。
 
 理念・目的が変わらないことは当然として、具体的な「活動方針」として掲げられたのは、
 ①全国各地の市民運動との連携
 ②来るべき衆議院選挙の小選挙区での野党共闘の後押し
 ③立憲野党との政策協議の積みかさね
という3点です。
 「私たちの代表を一人でも多く衆議院に送り込む」(②)ためには、どうしても①と③が必要というこ
とであり、全く同感です。
 とりわけ、③については、去る6月7日に、「市民連合」が野党4党の政策に対する「要望書」を提出
し、4党が「上記要望を受け止め、参議院選挙勝利に向けて、ともに全力で戦います。」と約束しましたが(必読!市民連合から4野党への要望書(付・6/12に和歌山のゆら登信さんと市民連合が政策協定に調印します/2016年6月8日)、これをさらに発展させ、具体的な「共通政策」を掲げるところまで行
かなければということだろうと思います。
 単に「安倍暴走阻止」だけでは、投票行動によって共感を示してくれる層に限界があることは、今度の
参院選の重要な教訓だったと思いますから、この点をどこまで実現できるかが、次の衆議院選挙の帰趨に大きな影響を与えるでしょう。
 
 そして、①の「全国各地の市民運動との連携」です。
 参院選では、32ある1人区全てにおいて野党共闘を実現するために、各地の市民運動が大きな力を発揮したことは特筆すべきであり、そのために結集した市民の力をいかに発展させていくかが、議席を獲得した11選挙区に限らず、全ての野党共闘に尽力した市民運動にとっての今後の大きな課題となっていま
す。
 参議院では複数区での野党共闘が進まず、近畿2府4県では、立憲野党からの当選者が京都選挙区(定数2)の民進党現職1人だけという悲惨な結果に終わりましたが、来るべき衆議院選挙では、ブロックごとの比
例以外、全国全ての選挙区が1人区であり、野党共闘は待ったなしです。
 各地の選挙区事情、野党間の関係、野党と市民運動との関係は様々でしょうから、なかなか一概には言えませんが、参議院選挙に続き、立憲野党に強力に共闘を促す市民運動の力が、さらに求められていると思います。何しろ、何としても共闘を実現しなければならない1人区が、32から295に増えるのですから。
 
 各地の実情は様々ということで言うと、私の地元和歌山県は相当に特殊であり、参院選で共闘が実現した32の1人区の中で、民進党県連が統一候補を全く支援しなかったのは多分和歌山だけだったのではないでしょうかね(和歌山の統一候補は無所属のゆら登信弁護士)。全国で唯一、共産党公認候補統一候補となった香川県でさえ、民進党香川県連の小川淳也代表(衆議院議員)が応援演説していましたものね

 ということで、統一候補を擁立して全力で選挙戦を闘った「市民連合わかやま」と、「自主投票」とし民進党和歌山県連の関係が果たして修復可能なのか?民進党和歌山県連代表が、衆議院和歌山1区の現役議員であるだけに、実に悩ましい事態です。こんなところ、日本中に他にあります?
 
 「市民連合わかやま」でも、残念な結果に終わった選挙の後、とりあえず県下各地で選挙運動を担った方々に集まっていただき、報告や意見を述べ合う機会を設けましたが、「今後の活動方針」を打ち出すまでには至っていません。
 上に述べたような特殊事情もありつつ(あるからこそ)、私たちの今後の運動の方向性を打ち出すため
の議論が早急に必要だろうと思います。

京都脱原発訴訟第4回原告団総会(7/24)における井戸謙一弁護士講演「脱原発訴訟の現状と展望」を視聴する

 今晩(2016年7月25日)配信した「メルマガ金原No.2518」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
京都脱原発訴訟第4回原告団総会(7/24)における井戸謙一弁護士講演「脱原発訴訟の現状と展望」を視聴する

 島崎邦彦東京大学名誉教授(前原子力規制委員会委員長代理)が、大飯原発の基準地震動を入倉・三宅式によって計算すると過小評価となる可能性が高く、再計算すべきだと主張されていることについては、ここ1週間以内に3回も(!)メルマガ(ブログ)で追いかけてきました。
 
 
 もともと、2011年3月28日に「メルマガ金原」の配信を始めた当初1年ほどの間は、連日何本も配信し、しかもその大半が原発問題をテーマとしたものでした。最近、ブログを読んでくださるようになった方には信じられないかもしれませんが。
 それが、徐々に原発問題を取り上げる頻度が低下し、主要なテーマが憲法問題に移行していったのは、日本国憲法をあからさまに敵視する
政権が権力を掌握したためであることは言うまでもありません。
 けれども、本来注目すべき原発問題をスルーしてしまっているという引け目は常に感じていたのですが、個人が目を行き届かせることの出来る範囲など非常に限られたものですから、「仕方がない」と自分に
言い聞かせていた部分があります。
 それが、ここ1週間、島崎邦彦氏という1人の地震研究者の勇気ある行動に感銘を受けてフォローしていると、関連する情報が目に入ってきやすくなるのですよね。
 
 ということで、今日も原発問題を取り上げます。ご紹介するのは、昨日(7月24日)開催された京都脱原発訴訟原告団の第4回総会における井戸謙一弁護士による記念講演をIWJ京都が中継したアーカイブ動画です。地方局のツイキャス中継の映像は、とりあえず会員登録しなくても視聴できるようです。音声はクリアに録音されており、非常に聴きやすいです。
 井戸謙一弁護士(滋賀弁護士会/1954年3月生)は、金沢地方裁判所で部総括判事(いわゆる裁判長)として在勤中の2006年3月、北陸電力志賀原発2号機の運転差止を命じる画期的判決を言い渡したことで知られており(運転中の原発の稼働停止を命じた唯一の判決ですが高裁で破棄されました)、3.11直後の2011年3月末、大阪高等裁判所裁判官を最後に退官して弁護士登録され、滋賀県彦根市
に事務所を構えられました。
 その後、様々な原発訴訟に代理人として参加されてきましたが、とりわけ井戸弁護士が弁護団長を務めておられる以下の事件において、画期的な仮処分決定を勝ち取られたのは、記憶に新しいところです。
 今年の3月9日、日本の裁判所が、史上初めて運転中の原子力発電所の設置主体に対して「運転してはならない」という仮処分決定を言い渡しました(判決ではなく仮処分は即時に効力を生じます)。裁判所は大津地方裁判所(山本善彦裁判長)、設置主体は関西電力、運転が禁止された原発は高浜原子力発電所3号機(運転中)及び4号機でした。
 井戸弁護士は、昨日の講演で、高浜原発仮処分決定のみならず、日本における現在の原発裁判の全体的な見取図を、分
かりやすく語っておられます。
 IWJ京都による動画は2本に分かれています。講演は約1時間、その後の質疑応答が約15分です
Ustream録画1/2)。
 
京都脱原発原告団(大飯原発差止訴訟)第4回原告団総会 ―記念講演 井戸謙一・弁護士 2016.7.24
Ustream録画1/2
11分~ 主催者挨拶 竹本修三氏(京都脱原発訴訟原告団長、京都大学名誉教授)
18分~ 出口治男氏(京都脱原発弁護団長)
23分~ 記念講演「脱原発訴訟の現状と展望」 井戸謙一氏(弁護士、福井原発訴訟(滋賀)弁護団長)
1時間22分~ 質疑応答
Ustream録画2/2
23分~ 報告「大飯原発差止訴訟の経過と今後の方向」 渡辺輝人氏(弁護士、京都脱原発弁護団事務
局長)
45分~ 「原告団世話人からの報告と訴え」 吉田明生氏(京都脱原発訴訟原告団事務局長)
56分~ 質問・意見
1時間15分~ 決議文提案・採択
 
 ところで、昨日4回目の総会を開いた京都脱原発訴訟が京都地裁において、どのような裁判を闘っているのかを知っていただくため、その「請求の趣旨」を訴状(第一次訴訟)から引用します。
 
(引用開始)
1 被告関西電力株式会社は、福井県大飯郡おおい町大島1字吉見1-1所在の大飯原子力発電所1号機
、2号機、3号機、4号機を運転してはならない。
2 被告国と被告関西電力株式会社は、連帯して、原告らに対し訴状送達の日から1項記載の大飯原子力
発電所各号機を使用停止するまで1月あたり各金1万円を支払え。
3 訴訟費用は被告らの負担とする。
との判決を求める。
(引用終わり)
 
 京都脱原発訴訟原告団長の竹本修三先生(京都大学名誉教授)は、原告勧誘のために各地を飛び回り、昨年3月8日に和歌山城西の丸広場で開催された「フクシマを忘れない!原発ゼロへ 和歌山アクション2015」にもゲストスピーカーとして登壇し、大会後のデモ行進でも増山麗奈さん(参院選おしかったですね)とともに先頭を歩まれ、さらに原告募集のブースも出展されました。
 このような努力の甲斐もあり、和歌山からも何人もの原告がこの訴訟に参加しておられます。
 京都脱原発訴訟原告団のホームページに、昨年3月8日、西の丸広場における竹本修三団長によるスピーチの原稿が掲載されていますので、京都脱原発訴訟についての理解を深めていただくため、主な部分を引用します。
 
◆原発再稼働は認めない!和歌山集会にて 竹本修三原告団長の訴え
(抜粋引用開始)
2015 年3 月8 日「フクシマを忘れない!原発ゼロへ 和歌山アクション2015」(3/8和歌山城西の丸広場)
原発再稼働は認めない。すべての原発廃炉に!
竹本修三(大飯原発差止京都訴訟原告団長、京都大学名誉教授)
◆ご紹介いただいた竹本でございます。本日は、この大きな集会にお招きいただき、発言の機会を与えてくださった金原徹雄先生や江利川春雄先生をはじめとする実行委員会の皆さまに、厚く御礼を申し上げます。
◆さて、ここ和歌山県は、日高町那智勝浦町周辺及び日置川(ひきがわ)町で原発設置計画がもちあがったときに、そのすべてに「NO!」の回答を出し、県内に原発を作らせませんでした。この和歌山県民の皆さまの見識の高さに、私は深く敬服いたしております。いま、和歌山の皆さんと私たち京都の仲間が、
全ての原発廃炉にするために共に闘っていくことができることを、大変嬉しく存じます。
◆皆さま、よくご存じのように、昨年5月21日に福井地裁で樋口英明裁判長から「大飯発電所3号機及び4号機の原子炉を運転してはならない」という原告勝訴の歴史的判決が言い渡されました。この判決文のなかに、ひとたび原発事故が起これば、250km以内の人に被害が及ぶ可能性があることが指摘されています。日本の原発から250kmの範囲を、コンパスで描いてみますと、日本のほとんどがこの範囲に入ります。僅かに
北海道の東部と、沖縄県がここから外れるだけです。
◆和歌山の皆さんも、若狭湾原発群や浜岡原発から250kmの圏内に入ります。あなた方も原発事故の当事者なのですね。ですから、今日お集まりの皆さんは、原発の問題を他人事でなく、自分の問題として考え、自分のできる範囲で原発ゼロへの意思表示をしたいという思いで来られておられるのだろうと思います
。私も同じ思いで、今日、ここに参りました。
(略)
◆昨年(2014年)、福井地裁で大飯原発差止の判決が出されましたが、これ1つだと、それ以前の「もんじゅ」訴訟や「志賀原発」訴訟のように、上級審でひっくり返される可能性が高いです。そこで京都地裁でも福井地裁と同様に原告側の主張を認める判決が出て、2つの地裁で原告側が勝訴すれば、それを高裁でひっくり返すのが難しくなるでしょう。そこからすべての原発廃炉にする道筋が開けると考えております。
◆また、昨年11月27日に大津地裁では、「大飯原発、高浜原発の再稼働差し止め仮処分申し立て」に対して、山本善彦裁判長から申し立て却下が言い渡されてしまいました。しかし、その決定内容には、基準地震動の策定方法に関して関電から何ら説明がないことや住民の避難計画の策定が進んでいないことなども述べられていて、裁判長が原発稼働に強い危惧を抱いていることが読みとれます。そのうえで、こんな危険な状態なのだから「原子力規制委員会がいたずらに早急に、再稼働を容認するとは到底考えにくい」として、申し立てを却下したのです。この判決が出てすぐに、私は新聞社からコメントを求められ、「裁判長の判断の原子力規制委員会が早急に再稼働を容認するとは考えられないという見通しは、楽観的すぎる」と返事をしました。その後の原子力規制委員会の動きをみますと、まさに私が指摘した通りの経緯を辿
っています。
◆今年2月12日に、原子力規制委員会は、高浜原発3・4号機が新規制基準を満たすと認めて、再稼働を承認しました。規制委員会の新規制基準には、「原子力施設の設置や運転等の可否を判断するためのもの」で、「絶対的な安全性」を確保するものではない、と書かれています。つまり、規制委員会は、「安全審査」ではなく、基準に合っているかどうかの「適合性の審査」を行うものであり、原発稼働にお墨付きを与えるための委員会なのです。ですから、規制委員会は、電力会社に対して対応可能な程度の改善策を提示し、電力会社の対応を見たうえで、「運転にあたり求めるレベルの安全性は満足しています」という審査書を出すことは、あらかじめ予想されていました。これは規制委員会と電力業界のなれあいの茶番劇であ
り、こんなことを許していては、無辜の国民は救われません。
◆話は戻りますが、昨年5月21日に福井地裁で出された判決文の地震原発に関する個所には、次のように書かれています。「地震大国日本において、基準地震動を超える地震大飯原発に到来しないというのは根拠のない楽観的見通しにしかすぎない上、基準地震動に満たない地震によっても冷却機能喪失による重大な事故が生じ得るというのであれば、そこでの危険は、万が一の危険という領域をはるかに超える現実的で切迫した危険と評価できる」。これは、当日、福井判決の出る一時間前に私が京都地裁で陳述した内
容と軌を一にするものだったので、大変心強く思いました。
(略)
◆私達は、2012年に1,107名の原告で大飯原発(1~4号機)の運転差し止め訴訟を起こしました。その後、2013年に856名で第二次提訴、2015年1月29日に730名で第三次提訴を行い、現在の原告は合計2,693名となっています。数は力なので、2015年中にさらに1,000人の新規原告を増やして第四次提訴をしたいと考えております。今日お集まりの皆さんも、ぜひこの趣旨にご賛同いただき、原告のひとりになっていただきたいと思います。
◆原告になっていただくには5,000円の参加費が要りますが、そのほとんどは訴訟の際の収入印紙代に消えてしまい、弁護士費用も捻出できません。私も個人としては、5,000円の参加費はいささか痛いですが、そ
れが可愛い孫の世代に負債を残さないで済む道筋につながると思えば、仕方ないかと思っております。
◆本日、西の丸広場に大飯原発差止京都訴訟のブースも設けられておりますので、皆さんどうかお立ち寄
りください。
(引用終わり)
 
(参考書籍)
 竹本修三原告団長は、「固体地球物理学・測地学」を専門とする研究者でもあるそうなのですが、一体どういう研究分野なのか、理系に疎い私にはさっぱり分かりません。けれども、どうやら地震学とも縁
がありそうだ、という位の直感は働きます。
 その竹本先生が、今年の4月、『日本の原発地震津波・火山』(マニュアルハウス)という新著を
刊行されました。著者が執筆意図を語った文章を引用しておきます。
 

(引用開始)
筆者の専門は固体地球物理学・測地学なので、国内の測地学会や地震学会のみならず、国際測地学及び地球物理学連合などで議論された資料を改めていろいろ調べた結果、地震・火山大国のニッポンにおいて、原発稼働は土台ムリ筋であるという強い確信を持つに至った。それ以来、孫達の世代に辛い思いをさせないために、原発稼働反対の運動に携わっている。第1章「地震大国ニッポン」は、国内の測地学会や地震学会のみならず、国際測地学及び地球物理学連合で見聞きした話を日本が地震大国であるとしてまとめてみた。第2章「原発地震」以降の章は、京都地方裁判所で行われている大飯原発差止京都訴訟において、被告関電及び国と対峙している原告側の主張について、原告団長としての考えを示したものである。これらの記述は、日本のすべての原発稼働の是非を考える上で、普遍性のある問題点だと考えている。本書が日
本において原発稼働の是非を考える多くの人々に、広く読まれることを期待する。
(引用終わり)
 
(弁護士・金原徹雄のブログから)
2013年9月18日
井戸謙一氏講演会「ふくしま集団疎開裁判から見えてきたふくしまの現状」
2014年10月6日
あなたも京都脱原発訴訟(大飯原発差止請求)の原告になりませんか?~第三次提訴原告募集中!
2014年10月21日
竹本修三先生(脱原発京都訴訟原告団長)奔走する~第三次原告募集中!(10/19神戸集会にて)
2014年12月21日
とりあえず1/8まで「京都脱原発訴訟」第三次原告なお募集中!(付・5/21福井地裁判決と12/15安倍記者会見)
2016年3月9日
高浜原発3号機(運転中)、4号機の運転禁止を命じた大津地裁仮処分決定の大きな意義

「原発地震動評価・美浜3号審査に関する緊急要請」と院内集会(7/26)、京都「集い」(7/31)、そして小山英之氏(美浜の会)による論考のご紹介

 今晩(2016年7月24日)配信した「メルマガ金原No.2517」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
原発地震動評価・美浜3号審査に関する緊急要請」と院内集会(7/26)、京都「集い」(7/31)、そして小山英之氏(美浜の会)による論考のご紹介

 原子力発電所の安全審査において重要な役割を果たす基準地震動評価において、断層面積から地震規模
を算出する際に使われる入倉・三宅式が、地震動を過小評価するのではないかという問題の続報です。過去2本の記事は以下のとおりです。
 
2016年7月20日
 
 7月20日に「共同声明」を出した27団体・・・と言いたいところですが、どうも22団体のようです・・・が、7月26日(火)午前10時を締切とする「緊急要請」への賛同者をネットで募っています。
 
原発地震動評価・美浜3号審査に関する緊急要請への賛同
(引用開始)
 以下の緊急要請書を7月26日(火)13:30~参議院議員会館B107での要請行動・院内集会に
て提出します。締め切りは26日10時です。

入倉・三宅式の過小評価を熊本地震が証明
武村式を用いた規制委の再計算により地震動は1.8倍に

美浜3号炉の審査手続きを止め、寿命延長の断念を!
原発を止め、全ての原発の基準地震動を武村式で再計算を!
 
原子力規制委員会委員長 田中 俊一様
2016年7月26日

 元原子力規制委員の島崎邦彦氏は、熊本地震を踏まえて「入倉・三宅式では地震動は過小評価」との警
告を発し、原子力規制委員会・規制庁は7月13日に、大飯原発地震動を武村式で再計算した結果を公表しました。その結果、入倉・三宅式ではなく、原発津波評価で採用している武村式に置き換えて計算すれば、地震動は1.8倍になることが明らかになりました。これにより、大飯原発の基準地震動856 ガルは1,550ガルになり、クリフエッジを超えます。美浜3号炉も約1,800ガルとなり、やはりクリフエッジを超
えるため、大惨事となります。
 規制委田中委員長は、7月19日に島崎氏と面談し、自らの再計算について「やってはいけないことをやっ
てしまった」などと述べ、再計算そのものをなかったことにしようとしています。これほど無責任なこと
があるでしょうか。
 規制委の発表では、計算結果は644ガルで、入倉・三宅式による基準地震動よりも小さくなっており、
1.8倍とは矛盾します。これは、規制委の再計算では、①計算のベースになる基本パターンについて関電よりも小さい値を用いる、②「不確かさの考慮」による上乗せをしない、といった操作がされていたことによります。島崎氏が指摘するように、式の置き換え以外は、関電の断層モデル・計算結果に基づいて計算
をすべきです。その場合は、基準地震動が1.8倍になります。
 規制委は自らの再計算結果に基づき、大飯原発美浜原発3号炉の再稼働を断念すべきです。川内原発
を止め、伊方3号の原子炉起動を中止して、全ての原発の基準地震動を武村式で再計算すべきです。美浜原発3号炉は、40年超えの寿命延長の審査中であり、原子炉設置変更許可の審査書案が7月27日にも出ると
されていますが、審査の手続きを止め、廃炉にすべきです。以下要請します。

要 請 事 項
一.美浜原発3号炉の審査手続きを止め、寿命延長を断念すること
二.原発を止めて全ての原発の基準地震動を武村式で再計算すること
 
呼びかけ団体
ふるさとを守る高浜・おおいの会
原発設置反対小浜市民の会
プルサーマルを心配するふつうの若狭の民の会
サヨナラ原発福井ネットワーク
原発なしで暮らしたい宮津の会
原発なしで暮らしたい丹波の会
グリーン・アクション
美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会
おおい原発止めよう裁判の会
脱原発わかやま
脱原発はりまアクション
さよなら原発神戸アクション
避難計画を案ずる関西連絡会
放射能のゴミはいらない!市民ネット・岐阜
さよなら原発・ぎふ
核のごみキャンペーン・中部
玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会
川内原発30キロ圏住民ネットワーク
国際環境NGOグリーンピース・ジャパン
国際環境NGO FoE Japan
福島老朽原発を考える会
原子力規制を監視する市民の会

連絡先原子力規制を監視する市民の会/新宿区下宮比町3-12-302
問合せ:090-8116-7155 阪上まで
(引用終わり)
 
 賛同していただける方は、上記フォームから送信してください。締切は26日(火)午前10時です。
 また、上記「緊急要請」への賛同フォームにも書かれていたとおり、7月26日(火)午後1時30分から、「緊急要請・院内集会」が開かれ、賛同署名もそれに向けて緊急募集されているものです。
 以下に、「緊急要請・院内集会」についての案内を引用します。
 
<緊急集会・賛同募集>
原発の地震動見直しと美浜3号審査中止を求める緊急要請・院内集会

(引用開始)
原発地震動見直しと美浜3号審査中止を求める緊急要請・院内集会
-7月26日(火)13:30~15:30@参議院議員会館B107-
 
 熊本地震から、原発地震動で使われている経験式「入倉・三宅式」に過小評価があるとの元規制委の島崎氏の警告により、規制庁は、大飯原発の基準地震動について、「武村式」を用いた再計算を実施しました。
 その結果は、基準地震動が1.8倍になるというものでした。大飯原発はクリフエッジ(崖っぷち)の値を超えて1550ガルにもなります。
 40年超え運転のための審査が行われている美浜3号炉は、設置許可の審査書案が27日にも出るとされていますが、これもクリフエッジを超えて1800ガルという数値になります。大惨事です。
 規制委田中委員長は「やってはいけないことをやったと」して規制庁職員を蔑み、自らの再計算をなかったことにしようと躍起になっています。無責任極まりない対応です。
 この問題について、政府交渉を準備しましたが、規制庁が再協議中であることを理由に断ってきました。事情・状況の説明はするということですので、要請行動と院内集会に切り替えたいと思います。
 院内集会では、「入倉・三宅式」に替えて「武村式」を使うことを早くから求めて活動されてきた「美浜
の会」の小山英之さんを迎えて、この問題の核心についてお話しいただきます。ぜひご参加ください。
 また、美浜3号の審査中止と原発を止めて武村式での再評価を求める要請書について、みなさんの賛同を募りたいと思います。時間がありませんが是非賛同及び拡散にご協力お願いいたします。
 
・日 時:7月26日(火)13:30~15:30
・場 所:参議院議員会館B107
・スケジュール
13:00~      通行証配布
13:30~13:50 要請書提出・規制庁による説明
13:50~15:30 院内集会
・お話し:小山英之さん(美浜の会)、阪上武さん(規制市民の会)他
・資料代:500円
・主催 美浜の会/グリーン・アクション/FoE Japan/原子力規制を監視する市民の会他調整中
・問合せ:090-8116-7155阪上まで
※要請・集会の設定には福島みずほ事務所にご尽力いただきました。
(引用終わり)
 
 この案内文に、「院内集会では、「入倉・三宅式」に替えて「武村式」を使うことを早くから求めて活動されてきた「美浜の会」の小山英之さんを迎えて、この問題の核心についてお話しいただきます。」とあります。
 実際、「入倉・三宅式」とか「武村式」と言われても、その方式の違いや優劣について、それなりの理解に達している人はほとんどいないでしょう(もちろん私自身がそうです)。
 26日の「緊急要請・院内集会」もどこかが中継して動画をアップしてくれるのではないかと期待しているのですが、とりわけ私が注目しているのは小山英之さんによるお話なのです。
 そして、明後日の院内集会でのお話のための準備も兼ねてでしょうか、「美浜の会(美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会)」ホームページで、小山英之さんによる論考『島崎提言に関連する見解』が今日公開されました。
 
島崎提言に関連する見解
入倉・三宅式の過小評価を熊本地震が証明
クリフエッジを超える大飯原発・美浜3号は廃炉
再稼働はやめて、全ての原発の基準地震動を武村式で評価し直すこと
2016.7.24 小山英之(美浜の会代表)
 
 PDFで12ページもある論考なので、通読するだけでも大変ですが、この問題に関心を有する人にと
って必読文献でしょう。
 
 最後に、京都での開催となりますが、7月31日(日)に、「島崎邦彦氏(元原子力規制委員会委員長代理)の警告 原発の地震評価は過小 原発震災・破局的災害を止めるための集い」が開かれ、そこでも小山英之さんが「島崎提言の意味と意義、さらにその枠を超えて」と題してお話されることが予告されています。
 関西在住で時間のある方には是非参加をお勧めしたい「集い」です。
 この問題は、これからもフォローを続けていく必要がありそうです。
 
(引用開始)
時間 13:45(開場13:30)~17:00
場所 同志社大学 烏丸キャンパス 志高館 SK112
資料代 500円(学生:無料)
内容
「担当弁護士が語る島崎邦彦氏が主張する入倉・三宅式問題の意味」
  甫守一樹氏(弁護士 大飯原発3・4号機差止め訴訟など)
「島崎提言の意味と意義、さらにその枠を超えて」
  小山英之氏(美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会(美浜の会)代表)
「入倉・三宅式問題と新レシピ? なぜ重要なのか」
  長沢啓行氏(若狭ネット資料室 室長)
各地の裁判から発言・アピール
主催 原発地震の過小評価を考える集い・連絡会
問い合わせ:グリーン・アクション
京都市左京区田中関田町 22-75-103. E-mail
: info@greenaction-japan.org
Tel: 075-701-7223 Fax: 075-702-1952 HP: http://www.greenaction-japan.org/
(引用終わり)

今年も「九条連」が紀州おどり(第48回 2016年8月6日)に参加します

 今晩(2016年7月23日)配信した「メルマガ金原No.2516」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
今年も「九条連」が紀州おどり(第48回 2016年8月6日)に参加します

 今から11年前の2005年(平成17年)8月6日、毎年8月の第一土曜日に開催される例となって
いた紀州おどり(正調ぶんだら節の部)に、「九条連」という新しい連が、新調したばかりの青地に「九
条ネットわかやま」と白く染め抜いた新調の法被を身にまとい、初出場を果たしました。
 出場する各連は、事前に主催者に連を紹介してもらうための原稿を提出するのですが、初出場時に提出した原稿は、おそらく以下のようなものでした。
 
「私たち憲法9条を守る和歌山弁護士の会と9条ネットわかやまは、世界に誇る平和憲法9条を守り、再び戦争の惨禍が起こることのないよう活動しています。戦後60年、平和な日本を築き上げてきた憲法9条に感謝しながら、力いっぱい踊ります」
 
 私の手元に11年前の提出原稿の写しが残っていた訳ではなく、初出場以来、1回も休まず出場している私ですが、この紹介文章が変更されたという記憶が全然ないのですね。何しろ、「戦後60年」の部分さえ、何年経っても改訂していなかったほどですから。憲法9条の趣旨を尊重し、条文の一部を引用した格調高い紹介文ですから、改訂のしようもなかったということでしょう。
 もっとも、いくら何でも「戦後60年」という箇所、昨年は「戦後70年」になっていたでしょうね?(後にご紹介する動画を視聴して確認したら、何と去年も「60年」のままだった!)。
 
 さて、1969年(昭和44年)から始まった紀州おどりは、今年で第48回となります。過去、第30回(1998年)と第46回(2014年)の2回、悪天候のために中止となっていますので、「九条連」としては、今年が通算11回目の出場となります。
 
 今年の紀州おどりの日程は以下のように発表されています。
 
(引用開始)
開催日 平成28年8月6日(土曜日)
開催時間 16時50分~21時(予定)
開催場所 和歌山城周辺
内容 昭和44年に始まり、毎年10万人を超える人が訪れる和歌山市民から愛され続けている伝統ある
お祭りです。紀伊國屋文左衛門にちなんだ「ぶんだら節」に合わせ、約60の連が和歌山城周辺を練り歩
き、大勢の人でにぎわいます。※午後4時00分~周辺道路交通規制有
問い合わせ 和歌山市紀州おどり実行委員会事務局 電話073-435-1234
(引用終わり)
 
 以下は、これを踏まえての「九条連」に参加しようという方へのお知らせとお願いです。ただし、本日現在、「憲法9条を守る和歌山弁護士の会」紀州おどり担当者からの公式発表に接していませんので、去る7月20日に開催された某会議の席上、豊田泰史弁護士から会議出席者への「九条連」参加要請に際して発表された内容、及びこれまでの例から「多分こんなところでいいだろう」という私見を交えたご案内です。この通りにしていただいて、まず間違いないと思います。
 開催2週間前となりましたし、ぼちぼち私のところに「今年の紀州おどりの集合時間や場所は決まりま
したか?」という問い合わせが来ていますので、このタイミングでお知らせすることとしました。
 
【事前集合・練習】
時刻:2016年8月6日(土)午後5時30分~
場所:和歌山弁護士会館4階講堂(和歌山市四番丁5番地
※裏の駐車場側入口から入館し、エレベーターで4階へお上がりください。法被を配布し(先着順)、直
前練習を行います。お茶とおにぎりも用意します。「ぶんだら節」未経験者でも、直前練習で何とかなっています。本番では、ベテランを前方に、初心者を後方に配置するように配慮します。いよいよとなれば、「平和」幟を持って歩くだけという役もあります。
 
【待機・スタート地点等】
スタート待機地点:和歌山市三木町交差点付近 
スタート時刻:正確な時刻は未確認ですが、例年通り、午後7時ちょうどころのはずです。
※スタートの20分前(6時40分ころ)に待機地点である三木町交差点集合です。和歌山弁護士会館に立ち寄る時間的余裕のない方は、直接三木町交差点付近にお越しください。「九条ネットわかやま」と染
め抜かれた青い法被を着た一団が目印です。
スタート地点:六番丁交差点付近
ゴール地点:西の丸広場先付近
 
【お問合せ・連絡先】
あすか綜合法律事務所
 和歌山市六番丁24 ニッセイ和歌山ビル11階 
 電話073-433-3980  
 担当:重藤雅之(しげとうまさゆき)弁護士

 今年の「九条連」のご案内は以上のとおりです。
 ここから先は私の個人的な、なくもがなの述懐です。
 
 ここ数年、紀州おどりのたびに、私は「これが最後の九条連かもしれない」と思いながら参加してきました。その主な理由は、端的に言って参加者数の先細り、減少です。
九条連2015出発前 そもそも紀州おどり全体の参加者数(の公式発表)自体、減少傾向が続いており、「九条連」が初出場した2005年に「8,801人」であったものが、昨年2015年には「5,953人」にまで減少しています。県の人口自体、100万人の大台を割ってから毎年着実に(?)1万人規模で減少しています
ので、当然と言えば当然かもしれませんが。
 そして、「九条連」です。昨年は、一応公式発表「50人」としましたが、実質的にちゃんと踊っていた大人は30人もいたかどうかという有様で、まともな「連」としての体裁を維持することも困難なとこ
ろまで来てしまったというのが私の率直な感想でした(写真は昨年のスタート直前のスナップ)。
 10回目の出場となったその「九条連」の写真(私が撮影)と動画(西郷章さんが撮影)が、Facebook
に公開設定で投稿されていますので、ご覧ください。
 
 
 様々な企画が生み出されても、始めたころの熱気がそのまま維持・発展していくケースは多くありません。大抵は、年を経るにつれて勢いを失い、やがて消滅に至るのが普通ですから、「九条連」とて例外ではないと考えれば、いまさらじたばたしても始まらないのかもしれません。ただ私としては、「九条連」にここまで付き合った以上、最後まで見届ける責任があるだろうと思っています。
 
 ・・・というかなり悲観的な感想は、昨年の参加状況を踏まえてのものですが、ここに来て、「これが最後の九条連かもしれない」別の要因が浮上しつつあるようなのです。
 今のところ、この点に詳しく触れるだけの情報を私個人は持ち合わせていませんので、これ以上書く訳
にはいきませんが、2014年の憲法記念日に開催される憲法集会(講師:内田樹氏)の後援を求められた神戸市が、「憲法に関しては、『護憲』『改憲』それぞれ政治的な主張があり、憲法に関する集会そのものが、政治的中立性を損なう可能性がある」として後援不承諾としたこと、同年6月、「梅雨空に『九条守れ』の女性デモ」という俳句が俳句教室会員の互選によって公民館報に載せる句に選ばれながら、公民館(さいたま市)が独断で掲載を中止したこと(この事件はその後、さいたま市を被告とする訴訟に発展)などが、決して対岸の火事などではないのだということを私
たちは自覚する必要があります。
 現に、先の参院選の最中、「選挙に行こうよ」と街頭でアピールしていた女性たちに対し、和歌山県
が「集団示威行為であり、県条例に違反する」と警告したではありませんか(「選挙に行こう」と呼びかけることは集団示威運動か?~市民連合わかやま有志弁護士から和歌山県警に対する申入書(2016年7月1日)
2016年7月4日)。
 
 私たちは、「世界に誇る平和憲法9条を守り、再び戦争の惨禍が起こることのないよう活動」することや、「平和な日本を築き上げてきた憲法9条に感謝しながら、力いっぱい踊」ることが出来て当たり前だと思ってきましたよね。
 そのような「当たり前」が「当たり前」でなくなりつつある世界に私たちは現に生きているのだということを認識した上で、一人一人が今年の「九条連」に参加するかどうを決めて欲しいと切に願っています。
 

災害支援でも高江でも~小口幸人弁護士の活躍

 今晩(2016年7月22日)配信した「メルマガ金原No.2515」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
災害支援でも高江でも~小口幸人弁護士の活躍

 2008年12月に弁護士登録ということですから、まだ実務経験8年弱ですが、これほど濃密な弁護
士経験を積み重ねてきた若手弁護士はそういないでしょう。
 2010年4月に岩手県宮古ひまわり基金法律事務所に赴任、同年11月に前任者からの引継を終えて三代目所長となる、というところまでは、司法過疎地域での法的サービスの提供という、多くの同僚と同じ役割を担う立場であったと思いますが、翌2011年3月に東日本大震災に遭遇し、以後、2013年11月の離任まで、全国初の弁護士による避難所相談を実施したり、被災者支援・立法提言活動に奔走するな
ど、疾風怒濤の日々を過ごし、弁護士としての力量を飛躍的に高めたのではないかと推測します。
 私にとってまだ一面識もないその若手弁護士、今年の2月に第二東京弁護士会から沖縄弁護士会に登録換えし、沖縄県八重瀬町南山(なんざん)法律事務所を開所した小口幸人(おぐち・ゆきひと)さんの名前は、最近さまざまなところで目にするようになりました。
 
 西日本に住んでいる者でこの動画を見た人はそういないかもしれませんが、小口弁護士が2012年に自分のYouTubeチャンネルを開設して(すごい!)、1人でも多くの被災者に知ってもらおうと、「被災ローン減免制度(個人版私的整理ガイドライン)」を分かりやすく解説する映像をアップしています。使命感と意欲があればこそ、ここまで出来たのだろうと感動します。
 
被災ローン減免制度個人版私的整理ガイドラインver240909岩手県版(14分57秒)
 

 今年の4月1日には、恒久的な「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」が施行されましたが、まだこの言葉をキーワードにして動画検索をかけても、これという解説動画は見当たらない・
・・昨日の段階ではそうだったのですが、本日(7月22日)、政府インターネットテレビに約8分の解説ビデオが公開されていました。ご参考までに。
 
 
 以上のようなことから、小口さんも、いわゆる有力な「災害弁護士」の1人と見られていたと思われます。
 昨年来、各所で発言するようになった「大規模災害時に緊急事態条項は不要」というテーマも、その流れ
で理解することができます。
 この関係での注目すべき動画とインタビュー記事などをいくつかご紹介します。
 まず動画としては、今年の4月19日に開催された「さぁ、安倍政治を終らせよう 4.19院内集会」(戦争をさせない1000人委員会・立憲フォーラム共催)でのミニ講演があります。小口弁護士による講演は、動画の11分~31分の20分間です。ちなみに、小口弁護士についで後半の講演を担当したのはIWJの岩上休身さんでした。
 
20160419 UPLAN 「さぁ、安倍政治を終らせよう」4.19院内集会(1時間17分)
 

 次に、マガジン9の「この人に聞きたい」に掲載されたインタビュー記事です。まだ沖縄に移る前の昨年行われたインタビューです。
 
 
 
 さらに、沖縄弁護士会に登録換えした後、小口さんはマガジン9に以下の2本の原稿を特別寄稿しています。いずれも注目すべき論考です。
 
 
 
 そして、今年から居を移した沖縄です。東京生まれの小口さんが、沖縄に登録換えするに至った最初のきっかけは、那覇で司法修習を行うという幸運に恵まれたことであったようです。その辺のいきさつは、IWJの原佑介記者によるインタビュー動画の冒頭でご本人の口から語られています(3本ある動画の2本目が小口弁護士インタビューの部分を抜き出したものです)。
 
抗議行動の強制排除、検問、テント撤去…法律も憲法も無視する国や警察の暴挙! 沖縄・高江ヘリパッド建設を小口幸人弁護士が徹底批判!(インタビュー:IWJ原佑介)

 高江での大量の機動隊を投入しての工事強行についての小口幸人弁護士の発言は、上記インタビューの他、ご自身の事務所(南山法律事務所)ホームページの中の「コラム」に、詳しい意見が掲載されています。
 
 
 
 Facebookでも随時活発に発信されています。
 
 一面識もない若手弁護士の活躍に、思わず引き込まれて注目してしまいました。その理由はこれかな?と思える小口さんのFacebookへの短い投稿を引用して終わりにします。
 
小口幸人Facebook
仕事で嫌々やっている警察と、志しだけで集まっている市民の戦いを目にしています。
こういう場にいて市民の側に立ち、さらに皆さんに頼りにしていただけるのは、本当に弁護士冥利につき
ます。
弁護士になったのにサラリーマンみたいだな、と思っている弁護士もこういう場にくれば弁護士になってよかったと思えますよ(^_^) 

半田滋さんのミニ講演(7/19)を聴き「島を分断する自衛隊配備(私説・論説室から)」(7/20)を読む

 今晩(2016年7月21日)配信した「メルマガ金原No.2514」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
半田滋さんのミニ講演(7/19)を聴き「島を分断する自衛隊配備(私説・論説室から)」(7/20)を読む

 戦争をさせない1000人委員会と立憲フォーラムの共催で開催されてきた「さぁ、安倍政治を終らせ
よう院内集会」シリーズに再び半田滋さん(東京新聞論説兼編集委員)が登壇されました(7月19日)。たしか、昨年の11月19日以来でしょうか半田滋さんのミニ講演「安保法で自衛隊はどう変わるのか」(11/19)に注目した/2015年11月20日)。
 今年3月29日の安保法制施行、7月10日の参院選での改憲勢力2/3超の議席確保という事態をうけての講演です。
 相変わらず、歯切れ良く、熱気あふれる話しぶりで、非常に分かりやすい講演です。時間の制約からわずか30分足らずのミニ講演であることに物足りなさを感じる方も多いとは思いますが、短く凝縮されて
いる良さもありますので、是非視聴されますようお勧めします。
 半田さんの講演は以下の動画の28分~56分、事前に予告されていた演題は「安倍政権で自衛
隊は『軍隊』に変わる-あふれる危険な海外活動」というものでした。
 
20160719 UPLAN 「さぁ、安倍政治を終らせよう」7.19院内集会 参院選かく戦えり、次は安倍改憲をさせない第一歩を(2時間32分)

 
 なお、三輪祐児さん(UPLAN)による動画の後半は、激しい雨の中の「戦争法廃止・憲法改悪を許さない 7.19総がかり行動」の模様です。
 
 ところで、半田さんのお話が28分だけではどうしても物足りないという方は(都合がつけばですが)、7月30日(土)午前10時~12時、和歌山勤労福祉会館プラザホープ4階ホールで行われる半田滋さん講演会に是非お越しください。もっとも、「2016平和のための戦争展わかやま」のオープニングも兼ねており、コーラスや紙芝居もあるようですから、まるまる2時間の講演という訳ではありませんが、それでも講演が1時間以内ということはないでしょう。
 なお、「2016平和のための戦争展わかやま」を告知した以下のブログの巻末に、過去私が半田さんや自衛隊について書いたブログの主なものにリンクしていますので、参考にしていただければ幸いです。 
 
2016年7月12日
予告7/30&31「2016平和のための戦争展わかやま」~半田滋さんの講演(7/30)もあります
(抜粋引用開始)
2016平和のための戦争展わかやま
日程 2016年7月30日(土)/31日(日)
会場 和歌山勤労福祉会館プラザホープ
   (和歌山市市北出島1丁目5-47)
主催 2016平和のための戦争展わかやま実行委員会
後援 毎日新聞和歌山支局、リビング和歌山、わかやま新報(6月28日現在)
連絡先 和歌山市湊通丁南1丁目1-3 名城ビル2F 平和委員会内 
      (電話)073-488-7355
【オープニング&講演会/4Fホール】
7月30日(土)10:00~12:00
オープニング
 生協コーラス み ら い
 紙芝居 池田光子さん
講演会
「戦争法」で変貌する自衛隊!!
 講師 半田 滋 氏(東京新聞論説委員編集委員
(引用終わり)
 
 最後に、半田さんが昨日(7月20日)、東京新聞の「私説・論説室から」に書かれた「島を分断する自衛隊配備」をご紹介します。
 本文自体は、リンク先の東京新聞サイトでお読みいただきたいのですが、その文章の中で取り上げた与那国島の猪股哲(いのまたてつ)さんご自身が、半田さんの文章をきっかけに書かれた長い文章を、半田
さんがまたFacebookでシェアされていました。
 猪俣さんの「日本の一番端の島からの、問いかけがどこに行くのかわかりませんが、小さな新聞記事と
夕日をセットに私たちがどこから来てどこに行くのか、最西端の孤島から問いかけたいと思います。」というメッセージをどれだけ私たちは受け止められるでしょうか。

 

放送予告7/24深夜『避難計画で原発やめました 違いは何だ?伊方と米・ショアハム』(NNNドキュメント)

 今晩(2016年7月19日)配信した「メルマガ金原No.2512」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
放送予告7/24深夜『避難計画で原発やめました 違いは何だ?伊方と米・ショアハム』(NNNドキュメント

四国電力プレスリリース 平成28年4月19日
伊方発電所3号機の新規制基準への適合性に係る保安規定変更認可について

(引用開始)
 
当社は、平成25年7月8日の新規制基準の施行に伴い、同日、伊方発電所3号機の新規制基準への適合性確認に係る申請書類を原子力規制委員会に提出いたしました。
 このうち、保安規定変更認可申請について、本日、原子力規制委員会より、認可をいただきましたので、お知らせいたします。
 当社は、今後とも、原子力規制委員会による検査に真摯かつ丁寧に対応し、伊方発電所3号機の再稼働に向けたステップを安全最優先で確実に進めてまいります。
(引用終わり)
 
四国電力プレスリリース 平成28年5月25日
伊方発電所3号機の安全対策工事の完了について

(抜粋引用開始)
 その後、原子炉設置変更許可申請の補正内容や審査会合での審査結果等を反映して、新規制基準適合のための設備の設計見直しを行い、これまで、伊方発電所の安全確保を最優先に、安全対策工事を進めてまいりました。
このたび、竜巻防護対策が今月中に完了する見通しとなり、燃料装荷後に実施可能となる一部工事を除いて、伊方発電所3号機の再稼働までに必要な工事がすべて終了することとなりましたので、お知らせいたします。
 当社といたしましては、引き続き、原子力規制委員会による使用前検査に真摯かつ丁寧に対応し、安全対策設備が新規制基準に適合しているとの評価をいただけるよう、最善の努力を尽くしてまいります。
(引用終わり)
 
四国電力プレスリリース 平成28年6月27日
伊方発電所3号機の燃料装荷の終了について

(引用開始)
 
伊方発電所3号機は、6月24日より原子炉への燃料装荷作業を実施しておりましたが、本日、10時29分に、終了しましたのでお知らせします。
○燃料装荷実績
   開始:6月24日 9時00分
   終了:6月27日 10時29分
(引用終わり)
 
日本経済新聞WEB刊 2016/7/14 19:24
伊方原発、事故時の避難経路を明確化 国や愛媛県

(引用開始)
 国や愛媛県は14日、四国電力伊方原子力発電所愛媛県)で事故が起きた際の対応策を拡充した。道路が寸断された場合に船で逃げるルートを明確にしたり、道路幅に見合った大きさのバスを用意したりする。四国電は14~15日、伊方原発の重大事故を想定した訓練を実施。新規制基準施行後では3カ所目となる再稼働は26日にも実現する見通しだ。
 内閣府原子力規制庁愛媛県、同県伊方町、四国電などの幹部が14日、都内で協議した。船による避難を巡っては、伊方原発の対岸にある大分県の中津港や別府港臼杵港などを避難先として選べるようにした。ヘリコプターからの映像で渋滞を把握し、避難誘導に生かすしくみも取り入れる。
(引用終わり)
 
四国電力プレスリリース 平成28年7月17日
伊方発電所3号機 1次冷却材ポンプの第3シール部のリークオフ流量増加について

(引用開始)
 
定期検査中の伊方発電所3号機(加圧水型、定格電気出力89万キロワット)においては、1次冷却材ポンプの調整運転を実施していたところ、1次冷却材ポンプ3Bの第3シールリークオフ流量が増加するという事象が認められました。
 このため、第3シールのシート状態を改善するための調整作業を行ないましたが、運転状態を改善することができなかったため、本日9時20分、当該シールを予備品と取り替えることとしました。
 なお、1次冷却材ポンプ3Bの第1、第2シールの運転状態は良好です。
 本事象による環境への放射能の影響はありません。
 本事象は、国の法律・通達に基づく報告事象に該当するものではありません。
(参考)第3シールリークオフ流量
 1次冷却材ポンプの軸封部は、第1、第2、第3シールの3段で構成されており、1次冷却材の系統水は第2シールでシールされる。第3シールは、第2シール下流に供給しているシール部洗浄用の純水をシールするもので、第3シール出口から漏れ出る流量を第3シールリークオフ流量という。
 なお、第3シールのリークオフ水は専用の配管を通じて格納容器内のタンクに回収される。
(引用終わり)
 
高知新聞 2016.07.19 08:00
伊方原発3号機の再稼働は8月以降に 冷却水ポンプ不具合

(引用開始)
 
四国電力は17日、伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の1次冷却水を循環させるポンプに不具合が見つかった、と発表した。分解点検や部品の取り換えが必要となったため、7月下旬を目指していた再稼働時期が遅れることも明らかにした。四国電力の広報担当者は「少なくとも7月中の再稼働は難しい」とし、8月以降にずれ込むとの見通しを示している。
 四国電力によると、原子炉内部を通る1次冷却水のポンプを調整運転していた16日午前、ポンプから専用の配管に漏れ出た水の量が基準値を超えた。その後、調整を続けたが改善されなかったため、17日になって、水漏れを防ぐ部品の取り換えを決めた。
 漏えいした水はポンプ内装置の洗浄用。基準値の毎時0・02リットルに対し、毎時30リットルも漏れた時があった。漏水自体は放射性物質を含んでおらず、通常通り原子炉格納容器内のタンクに回収したため、作業員の被ばくや環境への放射能の影響はない、としている。
 問題の部品はこの春に交換したばかりで、過去に同様のトラブルはなかった。部品の交換には通常、1週間程度を要するが、交換作業の開始日時はまだ決まっていないという。
 同様のポンプは伊方原発3号機に3台ある。分解点検で究明した原因によっては、他のポンプでも対応が必要となる可能性がある。このため、四国電力の担当者は「再稼働時期が具体的にどれほど遅れるかは未定」としている。
 伊方原発3号機の再稼働をめぐっては、四国電力が14、15両日に実施した重大事故の対応訓練に関し、一部の手順が確認できなかったとして原子力規制庁から再訓練を要請されている。
 伊方原発3号機は2015年7月に原子力規制委員会の審査に合格し、地元の伊方町長、愛媛県知事による再稼働の同意を経て、2016年4月に最終的な手続きとなる使用前検査が始まった。6月27日には原子炉への核燃料の装塡(そうてん)を完了している。
(引用終わり)
 
毎日新聞 2016年7月19日20時14分(最終更新 7月19日20時14分)
再稼働に向けた事故対応訓練を再実施

(引用開始)
 
四国電力は19日、伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の再稼働に向けた事故対応訓練を再実施した。14日の訓練が作業員の熱中症で中断したため、原子力規制委員会が一部やり直しを指示していた。
 再訓練には協力会社を含む約20人が参加し、原子力規制庁の検査官5人が立ち会った。四電は規制委の指摘を受け、暑さ対策として作業員の服装や装備を簡素化し、作業手順を見直したうえで、格納容器内の水素濃度監視や冷却用海水の取水など3項目を確認した。この日も14日同様、猛暑の中の訓練となったが、トラブルは起きなかった。
 伊方3号機は1次冷却ポンプに不具合が見つかり、交換作業のため再稼働は8月以降にずれ込む見通しとなっている。【渕脇直樹】
(引用終わり)
 
 四国電力のプレスリリースと新聞報道で読む伊方原子力発電所愛媛県西宇和郡伊方町)の「今」ですが、再稼働が目前に迫っているということはお分かりいただけたことり思います。
 実は、今日のメルマガ(ブログ)の主題は、今度の日曜日(7月24日)深夜に放映されるNNNドキュメント『避難計画で原発やめました 違いは何だ?伊方と米・ショアハム』をご紹介することにあります。
 上記コラージュの中の7月14日付・日本経済新聞の記事の中で「新規制基準施行後では3カ所目となる再稼働は26日にも実現する見通しだ。」とある、まさにその「再稼働」直前のタイミングで放送しようとしていたのですから、番組制作者の心意気はひしひしと伝わってきますよね。
 以下に、番組案内を引用します。
 
日本テレビ系列 2016年7月24日(日)24時55分~(25日0時55分~)
NNNドキュメント
『避難計画で原発やめました 違いは何だ?伊方と米・ショアハム』

(引用開始) 
こんな避難計画では命を守れない!と廃炉になったアメリカの原発がある。ショアハム原発だ。間もなく再稼働する伊方原発と似た、細長い島の真ん中に建設された。だが原発からメインの避難道路までは16キロ、一方、伊方原発はわずか1キロと至近距離。しかも、そこを通り住民を避難させるバスは運転手が1ミリ以上被ばくする場合は出さないという協定が県と結ばれている。福島の様に爆発などで汚染が急速に進んだら伊方町民は一体...
ナレーター / あおい洋一郎 制作 / 日本テレビ 放送枠 / 30分
再放送
7月31日(日)11:00~ BS日テレ
7月31日(日)24:00~ CS「日テレNEWS24
(引用終わり)
 
 「避難」というキーワードで伊方を考えるのであれば、その地形についての知識があった方が当然理解が深まるだろうということで、四国電力伊方発電所」ホームページの「所在地」というコーナーを見てみました。
 そこには、「四国の西北端から九州に向かって細長く伸びた佐田岬半島伊方発電所はその瀬戸内海側にあります。」とあるとおりですが、えらく狭苦しいところにある原発のようですね。
 それに、立地自治体の伊方町(いかたちょう)というのは、すっぽり佐田岬半島を区域とする自治体であり、その根本付近に伊方原発があることが分かります。
 番組を見る際には、こういう地形を頭に入れてご覧になることをお勧めします。
 
 先ほど、伊方原発を「えらく狭苦しいところにある」と評しましたが、これは大飯原発や高浜原発でも同じことなので(Googleで「画像」検索をかけてみればすぐに分かります)、東京電力福島第一原発のような広大な後背地を持つところが極めて例外的な存在なのです。大飯や、高浜や伊方で福島第一並みの過酷事故が起きたとしたら、福島並みの収束作業が出来るとは到底思えません。
そういうことも考えながら、番組を視聴したいと思います。

島崎邦彦氏(東大名誉教授)から田中俊一原子力規制委員会委員長宛の申入書を読む

 今晩(2016年7月18日)配信した「メルマガ金原No.2511」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
島崎邦彦氏(東大名誉教授)から田中俊一原子力規制委員会委員長宛の申入書を読む

日本経済新聞Web刊 2016/7/15 20:38
大飯原発の地震想定再計算 規制委元委員「納得できない」

(引用開始)
 
関西電力大飯原子力発電所福井県)で想定する最大級の地震の揺れ(基準地震動)が過小評価されている可能性があると指摘している島崎邦彦・東京大学名誉教授が15日、都内で記者会見した。同氏の要請を受けて再計算した結果をもとに、原子力規制委員会地震動の見直しは不要との見解を示したことに対し、「結論がおかしい。納得できない」と訴えた。
 島崎氏は14日付で規制委の田中俊一委員長あてに、再度計算が必要だと記した文書を送付したことも明らかにした。
 規制委の再計算では、地震の揺れは最大で644ガル(ガルは加速度の単位)で、現在想定する856ガルを下回った。一方、島崎氏の推定では最大1550ガル程度に膨らむ可能性があるという。島崎氏は「(地震動が)かなり大きく、現在の数字を超えるのは間違いない」と話した。
 島崎氏は規制委の前委員で地震の審査を担当していた。田中委員長らと6月に面談し、地震動の再計算を求めた経緯がある。規制委は19日に改めて島崎氏から話を聴き、翌20日の定例会合で対応を議論する方針だ。 
(引用終わり)
 
 7月15日に行われた島崎邦彦東大名誉教授(前原子力規制委員会委員長代理)による記者会見はマスコミの関心を集め、多くのメディアが報道しましたが、私の目に触れた中では、上にご紹介した日本経済新聞の記事が、短い分量の中で過不足なく、必要な情報を伝えていると思いましたので引用しました。
 
 そもそも今なぜ、島崎邦彦氏の学説がこれほど注目を集めているかといえば、現在、国が(安倍自民・公明連立政権が)やっきになって進めようとしている原発再稼働の動きに、結果としてブレーキをかける働きを持ち得るかもしれないからでしょう。
 そのことを端的に物語る資料として、去る2016年6月8日、名古屋高裁金沢支部で開かれた大飯原発3・4号機差し止め請求訴訟控訴審の第8回口頭弁論において、原告(被控訴人)側が行った「準備書面(20)、(24)、(25)について 主に島崎氏の学会発表と熊本地震について」というパワーポイントを用いたプレゼンのスライド資料が、「福井から原発を止める裁判の会」ホームページからダウンロードできますので、関心のある方は是非ご参照ください(パワーポイントを読み取るソフトが必要ですが、ビューアーなら無料でダウンロードできます)。
 また、裁判終了後の弁護団原告団による報告集会・記者会見の動画も参考になります。
大飯原発3・4号機差し止め請求裁判/控訴審・第八回口頭弁論報告集会(2016.6.8)(46分)
 
 
 それでは、7月15日に行われた記者会見をより良く理解するための資料を、日本経済新聞の記事と関連付けながら、以下にご紹介しておきます。
 
【田中委員長らと6月に面談し、地震動の再計算を求めた経緯がある。】
 本年6月16日(木)14時から実施された、田中俊一委員長・石渡明委員と、島崎邦彦前原子力規制委員会委員長代理との面会の様子が、原子力規制委員会原子力規制庁の公式YouTubeチャンネルで公開されています。
島崎邦彦 前原子力規制委員会委員長代理との面会(56分)

 田中委員長らとの面会の後(多分そうでしょうね)、島崎邦彦氏に対する記者会見が行われました。OuePlanet-TVの動画でご紹介します。
島崎邦彦氏記者会見~ 元規制委の島崎氏が田中委員長と面談(32分)
 
 
【同氏の要請を受けて再計算した結果をもとに、原子力規制委員会地震動の見直しは不要との見解を示した】
 7月13日に開催された第20回原子力規制委員会では、議題1として、「大飯発電所の地震動の試算結果について」が議論されました。
 同委員会の中継動画はこちらです。議題1については、冒頭3分過ぎから議論が始まります。
第20回原子力規制委員会(平成28年07月13日)(2時間02分)

 また、委員会終了後の田中俊一委員長による定例会見の動画はこちらです。
原子力規制委員会定例記者会見(平成28年07月13日)(55分)

※6分ちょうど~の田中委員長の発言、担当者の説明に島崎氏が「結果を見て非常に安心した」と言っていたという報告を受けている、をYouTubeで視聴した島崎氏が、これは放置できないと考えて、14日付の田中委員長宛の書簡を発送し(たのでしょうね)、15日に記者会見を開くことになったということでしょう。
 
【規制委の再計算では、地震の揺れは最大で644ガル(ガルは加速度の単位)で、現在想定する856ガルを下回った。一方、島崎氏の推定では最大1550ガル程度に膨らむ可能性があるという。島崎氏は「(地震動が)かなり大きく、現在の数字を超えるのは間違いない」と話した。】
 正直、活断層地震動についての数値が飛び交っても、どこに問題点があるのかを理解するだけでも、それなりの予備知識が必要だろうと思います。
 まずは、島崎邦彦氏自身の説明に耳を傾けるべきでしょうが、今のところ、15日の記者会見の動画で見つかったのは、短いニュース用映像以外では、IWJだけです。
 完全版は会員登録した上で視聴できるようになりますが、約7分のダイジェスト動画もあります。
前原子力規制委員会委員長代理 島崎邦彦氏 記者会見 2016.7.15
同ダイジェスト動画(7分26秒)
 

 この記者会見を報じたレポートの中で(私が読み得た中で)一番詳しかったのは、ジャーナリストの「まさのあつこ」さんがYahoo!ニュースに発表した記事でした。もっとも、よく理解できたか?ということになると自信はありません。ただ、島崎氏と原子力規制委員会とのやりとりの経緯が、時系列順に整理されており、その点は分かりやすいと思います。
大飯原耐震性「規発の制庁の結論、納得いかない」:島崎教授、19日に再面会へ
(抜粋引用開始)
 
また、規制庁に説明された場は、自分が意見を言う場でなかったので何もコメントしなかったが、安心したというのは誤解であり、「納得していない」というのが会見の主旨である。なお、筆者が島崎委員の手紙をもとに表に整理した数字は、島崎氏があくまで規制庁の計算方法から求めた加速度比による概算であり、「1550ガルが1人歩きしないように気をつけて欲しい」というのが会見で島崎氏が強調したことだ。
 このことについて19日に規制庁で再度面会が行われることとなる。
(引用終わり)
 
【島崎氏は14日付で規制委の田中俊一委員長あてに、再度計算が必要だと記した文書を送付したことも明らかにした。】
 島崎邦彦氏が15日に記者会見を開いた上で公表した(のでしょう)田中俊一原子力規制委員会委員長宛の書簡(PDFファイル)が、複数のML経由で私のところにも届きました。そして、非常に信頼できる発信者からの「以下の情報(添付も含め)全て転送・転載可能です。是非、拡散よろしくお願い致します!」というメッセージに応え、この書簡を紹介しようと思い立ったのですが、そこで「待てしばし」といったん思いとどまり、本当にこの書簡を公開しても良いのだろうか?検証してみようということで調べてきた結果を記録したのが今日のメルマガ(ブログ)の実態なのです。
 13日の記者会見で、田中俊一委員長が「(島崎氏が)結果を見て非常に安心した」と言っていたという報告を受けている、と発言したことが決定的な引き金となって、14日付の委員長宛書簡や15日の記者会見に発展したことが確認できたこと、当然、15日の記者会見では、全てのメディア、参加者に書簡のコピーが配布されたはずであること、内容的にも、単なる私信ではなく、「この際、関西電力の基本ケースがほぼ再現できるような設定で、上記推定値に替わる計算値が得られるよう、再計算をすべきだと思います。」という申し入れを主眼としていることな
どの確認がとれましたので、私が入手した書簡の内容を公表することに問題はないと判断した次第です。
 入倉・三宅式も一つの学説なら、それを批判する島崎邦彦説も一つの学説です。どちらの方により高い科学的合理性が認められるのか、地震学についての基礎的素養を欠く現在の私には判断がつけかねます。
 しかし、ことは原子力発電所の安全性に重大な影響を及ぼす基準地震動に直接かかわる論点についての問題提起であり、原子力規制委員会においても、裁判所においても、最大限に真摯な検討が求められていると言うべきでしょう。
 
(島崎邦彦氏から田中俊一原子力規制委員会委員長宛申入書から引用開始)
                                       2016 年7 月14 日
 
原子力規制委員会委員長
田中俊一様
 
 先日は、震源の大きさが過小評価されているという問題提起に対し、速やかに対応して頂き、誠にありがとうございました。委員会および規制庁のみなさまににお手紙差し上げた通り、感謝の念で一杯です。
 
 昨日の委員長記者会見のYou Tube を拝見したところ、私が規制委員会の議論や結論を納得し、承諾したと、誤解されているように見えますので、お手紙を差し上げて、小生の見解を述べさせて頂きます。
 
 規制庁の計算結果の説明を受ける場は、小生が意見表明をする場として設けられたものではありませんので、結果に対するコメントは致しませんでした。また、試算の結果については強震動の専門家の意見を尊重すべきであると私は思いますので、積極的発言は避けてきました。しかし、このことが逆に誤解を招いているようですので、見解を公表させて
頂きます。
 
 今回の規制委員会の議論および結論は納得できません。
 
 理由を次に述べます。大飯の基準振動が過小評価されていることは、今回の試算の結果、明らかだと思います。
 規制庁広報室から、規制庁の計算結果の数字が入倉・三宅による基本ケース(破壊開始点3)で、東西、南北、上下方向の加速度(周期0.02秒)が、それぞれ、356、346、233 ガル。
 同じ条件で、武村式を適用すると、東西、南北、上下の加速度(周期0.02秒)が、それぞれ、644、632、405 ガルと伝えられたと聞いております。
 
 武村式の結果を入倉・三宅式の結果で割ると、東西、南北、上下の加速度の比はそれぞれ1.81、1.83、1.74 と求まります。
 
 一方、関西電力による基本ケース(破壊開始点3)では、東西、南北、上下方向の加速度(周期0.02 秒)は、それぞれ、596、428、347 ガルです。これは重要なデータですが、昨日私が受けた説明にはありませんでした。規制庁の計算と関西電力の結果が一致しないこと、その理由としてパラメターが十分把握できていないためとは昨日伺いました。しかし上記基本ケースについては、資料に含まれておらず、実際の値も提示されておりません。
 
 規制庁の結果と関西電力の結果とは、平均値と中央値の代表波で異なるとのご説明がありますが、細かな数値の違い以上の問題があると思います。本来、両者の結果が同一となるような設定をすべきであり、そのような設定での計算によって、武村式の効果を推定すべきです。しかしながら、それができないという条件下で最良の推定は、上記の加速度比
関西電力の加速度に掛けて得られる値を、近似値として使用することです。その結果、武村式使用の場合の基本ケース(破壊開始点3)では、東西、南北、上下方向の加速度(周期0.02 秒)は、それぞれ、1080、780、600 ガルと推定されます。ここでは精度を考慮して10 ガル単位としました。東西動の値は、基準地震動の856 ガルを越えております。
 
 実際には、これに加えて短周期1.5 倍ケースなどを計算する必要があります。Ss-4 は破壊開始点3で短周期1.5 倍のケースです。これを例として武村式使用の場合の推定をします。関西電力によると、この場合の東西、南北、上下の加速度(周期0.02 秒)は、それぞれ856、546、518ガルであると、頂いた資料に書かれています。
 厳密には上述のように、関西電力の基本ケース(破壊開始点3)と、規制庁の計算結果が同じとなるように設定した上で、武村式を使用し、短周期1.5 倍のケースを計算すべきです。しかしながら、それができないという条件下での最良の推定は、既に求めた加速度比を関西電力の短周期1.5 倍ケース(破壊開始点3)の値に掛けて得られる値を、近似値として使用することです。その結果、武村式使用の場合の短周期1.5 倍ケース(破壊開始点3)では、東西、南北、上下方向の加速度(周期0.02 秒)は、それぞれ、1550、1000、900 ガルと推定されます。ここでは精度を考慮して10 ガル単位としました。
 
 これらの推定は必ずしも高い精度の推定ではありません。しかしながらそのような精度でも、現在の基準地震動が過小評価されているのは間違いないと思います。
 この際、関西電力の基本ケースがほぼ再現できるような設定で、上記推定値に替わる計算値が得られるよう、再計算をすべきだと思います。
 
                                         島崎邦彦拝
(引用終わり)

 
(付記) 
7月31日(日)13:45(開場 13:30)~17:00
同志社大学 烏丸キャンパス 志高館 SK112
チラシ
資料代:500円(学生:無料)
主催:原発地震の過小評価を考える集い・連絡会
問い合わせ:グリーン・アクション
京都市左京区田中関田町 22-75-103. E-mail: info@greenaction-japan.org
Tel: 075-701-7223 Fax: 075-702-1952 HP: http://www.greenaction-japan.org/

「天皇退位」問題を考えるためのいくつかの参考資料(メモとして)

 今晩(2016年7月17日)配信した「メルマガ金原No.2510」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
天皇退位」問題を考えるためのいくつかの参考資料(メモとして)

 7月13日にまずNHKが報じた「天皇陛下 「生前退位」の意向示される」というニュースに接し、多くの国民と同様、私も驚くとともに、まずはこのニュースをどう受け止めるべきか、考えあぐねていまし
た。
 その間、参院選の結果、改憲勢力が2/3以上の議席を確保したという情勢を受け、改憲の動きを阻止するため、皇室典範改正について議論せざるを得ない状況を作り出そうとした陛下の素晴らしいご決断であると持ち上げる意見や、それとは逆に、官邸のコントロール下にあるNHKを利用し、政府が何らかの意図をもってこのタイミングで報道させたのだという観測が流れるなど、正直、右顧左眄していても仕方がないという印象で、もう少し冷静に考えられるようになるまで、静観するしかないかなとは思っていま
す。
 ただ、この問題を考えるための参考資料だけは蓄積しておいた方が良いと思い、いくつかご紹介してお
くことにしました。
 まずは、第一報を伝えたNHKの報道と、外紙の反応の一例として、7月14日付ルモンドの記事を内田樹さんが翻訳されたものにリンクしておきます。
 
NHK 7月13日 
天皇陛下 「生前退位」の意向示される

(抜粋引用開始)
天皇陛下が、天皇の位を生前に皇太子さまに譲る「生前退位」の意向を宮内庁の関係者に示されていることが分かりました。数年内の譲位を望まれているということで、天皇陛下自身が広く内外にお気持ちを表
わす方向で調整が進められています。
天皇陛下は、82歳と高齢となった今も、憲法に規定された国事行為をはじめ数多くの公務を続けられています。そうしたなか、天皇の位を生前に皇太子さまに譲る「生前退位」の意向を宮内庁の関係者に示さ
れていることが分かりました。
天皇陛下は、「憲法に定められた象徴としての務めを十分に果たせる者が天皇の位にあるべきだ」と考え、今後、年を重ねていくなかで、大きく公務を減らしたり代役を立てたりして天皇の位にとどまることは
望まれていないということです。こうした意向は、皇后さまをはじめ皇太子さまや秋篠宮さまも受け入れられているということです。
天皇陛下は、数年内の譲位を望まれているということで、天皇陛下自身が広く内外にお気持ちを表わす方
向で調整が進められています。
これについて関係者の1人は、「天皇陛下は、象徴としての立場から直接的な表現は避けられるかもしれ
ないが、ご自身のお気持ちがにじみ出たものになるだろう」と話しています。
海外では、3年前、皇室とも親交の深いオランダの女王やローマ法王などが相次いで退位を表明して注目
を集めました。
日本でも、昭和天皇まで124代の天皇のうち、半数近くが生前に皇位を譲っていますが、明治時代以降、天皇の譲位はなくされ、江戸時代後期の光格天皇を最後におよそ200年間、譲位は行われていません

皇室制度を定めた「皇室典範」に天皇の退位の規定はなく、天皇陛下の意向は、皇室典範の改正なども含
めた国民的な議論につながっていくものとみられます。
(引用終わり)
 
内田樹の研究室 2016年7月15日
ルモンドの記事から(天皇退位について)
 

(抜粋引用開始)
 天皇は退位の意向を持っていないと7月13日水曜日夕刻に宮内庁は断言した。同日の早い時間に、公
共放送NHK共同通信は数年以内に明仁が退位する可能性があることを報じた。
 1989年に即位し、現在82歳になる天皇は、政府筋によると、以前から「この地位にあるものが果
すべき責務」を十全に担い得る者に譲位したいという意向を洩らしていた。
「退位はない」と同日夜に宮内庁の山本信一郎次長は述べた。だが、観測筋によると、これほどのニュースが確かな筋からの裏づけなしにNHK共同通信から報道されることはありえないという。さきに五月に宮
内庁は君主の公務の削減を発表していた。
(略)
 皇室典範の改定には全党派が支持している。ただし、共産党小池晃書記長が退位の声明はまだ公式な
ものではないと述べて態度を保留している。
 今上天皇は日本の125代天皇で、歴史上はじめて平民(日清製粉という食品業者の社長の娘)を皇后
に迎えた。彼は率直で国民に親しい天皇というイメージを作り上げて、日本国民には非常に人気がある。
(略)
 退位についての情報は7月10日の参院選における安倍晋三総理大臣陣営の圧勝の三日後にリークされた。参院選の当日、安倍氏は日本経済の難問への取り組みを後回しにして、1947年制定の平和憲法
改定に言及した。
 2012年に起草された自民党改憲草案によれば、天皇の地位は現行憲法における「国家と国民の統
合の象徴」から「国家元首」になる。
 天皇には政治的権威はないが、天皇安倍氏の政策選択に必ずしも同意していない。
 第二次世界大戦時の役割についていまだに議論されている裕仁の後継者として、明仁は世界平和と、軍
国主義日本の犠牲となった国々とりわけ中国と韓国との和解をつよく求めて来た。
 2015年に明仁は終戦70年記念に際してさきの大戦に対する「深い反省」の意を表明した。後継者である徳仁皇太子も憲法に対する愛着と、「平和のはかりしれない価値を心に刻む」との意志を約束して
いる。
(引用終わり)
 
 次に、日本国憲法と「退位(譲位)」について。現行の日本国憲法には、旧皇室典範を引き継ぎ、生前退位に関する規定はありません。想定していないということですね。第2条に「皇位は、世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する。」とありますので、普通の憲法学説では、皇室典範を改正して「退位による皇位継承」を認めるかどうかは立法政策の問題だと解釈していると思いますが、憲法上生前退位は認められないという学説、ありますかね?(私は知らない)
 
日本国憲法(昭和二十一年十一月三日憲法)
  
第一章 天皇
第一条 天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民
の総意に基く。
第二条 皇位は、世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する

第三条 天皇の国事に関するすべての行為には、内閣の助言と承認を必要とし、内閣が、その責任を負ふ

第四条 天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない。
2 天皇は、法律の定めるところにより、その国事に関する行為を委任することができる。
第五条 皇室典範 の定めるところにより摂政を置くときは、摂政は、天皇の名でその国事に関する行為を
行ふ。この場合には、前条第一項の規定を準用する。
第六条 略
第七条 略
第八条 略
 
 皇位継承に関する現行の皇室典範の規定も読んでおきましょう。誰が皇位を継承するかを定めているのが1条~3条、どういう場合に皇位継承がなされるかを定めているのが4条です。
 
皇室典範(昭和二十二年一月十六日法律第三号)
最終改正:昭和二四年五月三一日法律第一三四号

  
第一章 皇位継承
第一条 皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する。
第二条 皇位は、左の順序により、皇族に、これを伝える。
一 皇長子
二 皇長孫
三 その他の皇長子の子孫
四 皇次子及びその子孫
五 その他の皇子孫
六 皇兄弟及びその子孫
七 皇伯叔父及びその子孫
2 前項各号の皇族がないときは、皇位は、それ以上で、最近親の系統の皇族に、これを伝える。
3 前二項の場合においては、長系を先にし、同等内では、長を先にする。
第三条 皇嗣に、精神若しくは身体の不治の重患があり、又は重大な事故があるときは、皇室会議の議に
より、前条に定める順序に従つて、皇位継承の順序を変えることができる。
第四条 天皇が崩じたときは、皇嗣が、直ちに即位する。
 
 ここで、大日本帝国憲法下の皇室典範も読んでおきましょう。なお、戦前の皇室典範は法律ではなく、帝国議会は関与できませんでした。旧皇室典範63条「将来此ノ典範ノ条項ヲ改正シ又ハ増補スヘキノ必要アルニ当テハ皇族会議及枢密顧問ニ諮詢シテ之ヲ勅定スヘシ」の規定に基づき、2回増補がなされています。
 なお、現行皇室典範と旧皇室典範皇位継承の部分を読み比べてみると、主な違いといえば、旧典範では、嫡出と庶子を区別して皇位継承の順位に差を設けていたことくらいでしょう。
 
旧 皇室典範
明治22(1889)年2月11日制定、明治40(1907)年2月11日増補、大正7(1918)年11月28日増補、昭和22(1945)年
5月3日廃止

  
第一章 皇位継承
第一条 大日本国皇位ハ祖宗ノ皇統ニシテ男系ノ男子之ヲ継承ス
第二条 皇位ハ皇長子ニ伝フ
第三条 皇長子在ラサルトキハ皇長孫ニ伝フ皇長子及其ノ子孫皆在ラサルトキハ皇次子及其ノ子孫ニ伝フ
以下皆之ニ例ス
第四条 皇子孫ノ皇位ヲ継承スルハ嫡出ヲ先ニス皇庶子孫ノ皇位ヲ継承スルハ皇嫡子孫皆在ラサルトキニ
限ル
第五条 皇子孫皆在ラサルトキハ皇兄弟及其ノ子孫ニ伝フ
第六条 皇兄弟及其ノ子孫皆在ラサルトキハ皇伯叔父及其ノ子孫ニ伝フ
第七条 皇伯叔父及其ノ子孫皆在ラサルトキハ其ノ以上ニ於テ最近親ノ皇族ニ伝フ
第八条 皇兄弟以上ハ同等内ニ於テ嫡ヲ先ニシ庶ヲ後ニシ長ヲ先ニシ幼ヲ後ニス
第九条 皇嗣精神若ハ身体ノ不治ノ重患アリ又ハ重大ノ事故アルトキハ皇族会議及枢密顧問ニ諮詢シ前数
条ニ依リ継承ノ順序ヲ換フルコトヲ得
  第二章 践祚即位
第十条 天皇崩スルトキハ皇嗣即チ践祚シ祖宗ノ神器ヲ承ク
第十一条 即位ノ礼及大嘗祭ハ京都ニ於テ之ヲ行フ
第十二条 践祚ノ後元号ヲ建テ一世ノ間ニ再ヒ改メサルコト明治元年ノ定制ニ従フ
 
 最後に、象徴天皇制に関わる議論の枠組みを考える上で、参考になる一つの見解として、首都大学東京教授(社会学)の宮台真司氏が、ビデオニュースドットコムにおいて、神保哲生氏と語り合った動画(ニュースコメンタリー)をご紹介しておきます。全面的に賛同するかどうかはともかくとして、避けては通れない問題が指摘されています。
 

(番組紹介引用開始)
 今上天皇が、生前に天皇の位を皇太子に譲る意向を示していたことが報道され、大きな議論を呼んでい
る。それは現在の象徴天皇制が、そのような事態を想定していなかったためだ。
 今上天皇は82歳とご高齢なうえ、過去に前立腺がんや心臓のバイバス手術などの病歴もあり、多くの公務を務めなければならない状態が大きな負担になっていた。一方で、長男の皇太子も既に56歳と、今上天皇が即位した時の年齢を超えている。そうした中で、今上天皇天皇の位を生前に皇太子さまに譲る「生
前退位」の意向を宮内庁の関係者に示していたのだという。
 皇位継承などを定めた法律、皇室典範には生前退位に関する定めがない。そのため、今上天皇の意向に
沿って生前退位を可能にするためには、皇室典範の改正が必要になると考えられている。
 皇室典範とて法治国家日本においては法律の一つに過ぎない。国会の承認があれば、その改正は可能だ

 ところが、問題はそれほど簡単ではない。そもそも皇室典範に生前退位の定めがないのは、政府にでき
ればそのような事態を避けたい理由があったからだった。
 現在の皇室典範では天皇崩御した時のみ、皇太子が世襲で即位することが定められており、それ以外の方法で退位や譲位が行われることは想定されていない。一般には生前譲位が可能になると、天皇が退位後も上皇法皇などの地位から政治的な影響力を持つことになる恐れや、逆に本人の意思に反して強制的に天皇が退位させられることも可能になる恐れがあることなどが、指摘されている。また、天皇自身が退
位の意向を示すことは、それ自体が憲法が禁じた天皇による政治権力の行使につながるとの指摘もある。
 そうした懸念が、近い将来、現実に問題化することは考えにくいが、天皇に関する取り決めは国家百年の計にも関わる重い意味を持つ。一度それが可能になれば、何十年、何百年か先の将来に大きな禍根を残
すことになる可能性も真剣に考えなければならない。
 しかし、今回、今上天皇が「生前退位」、あるいは「譲位」の意向を示したことによって、それよりももっと重要な問題がわれわれに投げかけられたと考えるべきだろう。それはそもそも象徴天皇制という現在の制度が、元々孕んでいる大きな矛盾と言ってもいい。われわれは天皇を聖なる存在として尊んでいる。だからこそ、われわれの多くが天皇に対して強い尊崇の念を抱く。陛下が被災地に赴けば、被災者たち
は大きな勇気を与えられ、どんなスポーツでも天覧試合は歴史に残るような名勝負になることが多い。
 ところがわれわれは天皇がそのような聖なる超越的な存在であることを求めながら、もう一方で、政治
的な発言を一切封じたばかりか、事実上人権さえも認めていない。天皇は公務を拒否することもできないし、そもそも憲法天皇世襲と定められている以上、即位を拒むこともできない。職業選択の自由など何もない。しかも、一度即位してしまえば、退位もできず、亡くなるまで天皇としての役割を全うすることを義務付けられる。これがわれわれが象徴天皇制と呼んでいる制度の実態だ。
 これまでは今上天皇がそのようなある意味で理不尽な立場を甘受し、粛々と公務に勤されてきたからこそ、その問題は浮上してこなかった。しかし、同時にわれわれ日本国民はその間、その問題と向き合うことをせず、放置し続けてきた。今上天皇に聖なる存在として国民を包摂したり励ます役割を果たすことは
期待しながら、天皇ご自身がどのような問題を抱えているかについては、いたって鈍感だった。
 今回の問題はその矛盾が、今上天皇ご自身がご高齢の上に健康不安まで抱えるようになった今日、現実
的な問題として浮上したに過ぎない。 
 そもそも何が問題なのか。そして、この問題とわれわれはどう向き合えばいいのか。ジャーナリストの
神保哲生社会学者の宮台真司が議論した。
(引用終わり)
 
(弁護士・金原徹雄のブログから)
2012年3月19日(2013年2月24日に再配信)
3/11天皇陛下の「おことば」とマスコミ報道
2013年4月4日
「主権回復の日」式典と天皇陛下
2013年10月30日
五日市憲法草案を称えた皇后陛下の“憲法観”
2014年1月6日
天皇陛下の“日本国憲法観”(付・「陛下」という敬称について) 
2014年1月14日
「日本傷痍軍人会」最後の式典での天皇陛下「おことば」と安倍首相「祝辞」(付・ETV特集『解散・日本傷痍軍人会』2/1放送予告) 
2014年8月30日
“平和主義と天皇制”~「戦後レジーム」の本質を復習する
2014年12月23日
天皇誕生日に皇后陛下の文章を読み天皇陛下の発言を聴く
2015年5月30日
内閣総理大臣の孤独な闘い~天皇制と日本の若者を救った幣原喜重郎(この仮説は知っておく価値がある
2015年8月15日
全国戦没者追悼式総理大臣「式辞」から安倍談話を読み返す(付・同追悼式での天皇陛下「おことば」について)


(付録)
『世界』 
作詞・作曲:ヒポポ田 演奏:ヒポポフォークゲリラ