wakaben6888のブログ

憲法を大事にし、音楽を愛し、原発を無くしたいと願う多くの人と繋がれるブログを目指します

放送予告・ETV特集「昭和天皇は何を語ったのか~初公開“拝謁記”に迫る~」(89分拡大版/2019年9月7日)

 2019年9月1日配信(予定)のメルマガ金原No.3427を転載します。

放送予告・ETV特集昭和天皇は何を語ったのか~初公開“拝謁記”に迫る~」(89分拡大版/2019年9月7日)

 「今年の夏、NHKは頑張った」という話をよく聞きました。主に、テレビのドキュメンタリー制作部門についてのことですが。
 その中でも、最も注目を集めたのは(NHKも力を入れたのは)、8月17日(土)にNHKスペシャルで初回放送された「昭和天皇は何を語ったのか~初公開・秘録「拝謁(はいえつ)記」~」でしょう。
 初代宮内庁長官であった田島道治(たじま・みちじ)氏が克明に書き残した1949(昭和24)年から4年10か月の記録は、いずれ出版されることは間違いないでしょうし、本格的な研究はこれからですから、あまり早まった評価はすべきではなく、とりあえず、その概略だけでも念頭にとどめておきたいと思います。

 とはいえ、NHKスペシャルでは再放送も終わってしまったし、録画し損なってしまったという方にとって、うってつけの情報がありましたので、久しぶりにブログで放送予告をすることにしました。
 それは、NHKスペシャルで59分枠で放送されたものが、EテレのETV特集で89分拡大版として放送されることになったというものです。
 以下に、番組案内を引用します。

NHK・Eテレ 
本放送 2019年9月7日(土)午後11時00分~午前0時30分
再放送 2019年9月12日(木)午前0時00分~午前1時30分(11日深夜)
ETV特集「昭和天皇は何を語ったのか~初公開“拝謁記”に迫る~」

「占領の時代、昭和天皇のそばにあった田島道治の新資料「拝謁記」が公開された。1949(昭和24)年から、昭和天皇の言葉が克明に記されていた。注目されるのが戦争責任と退位の可能性だ。敗戦の道義的責任を感じていた昭和天皇は、当初退位も考えていた。さらに1952年の独立記念式典の「おことば」で戦争への反省を述べようとする。しかし、最終的に戦争の経緯は削除された。なぜか―。天皇と長官の対話を忠実に再現する。
【出演】片岡孝太郎橋爪功


 この「拝謁記」にNHKが力を入れていることは、「NHK NEWS WEB」に、「昭和天皇「拝謁記」―戦争への悔恨―」という特設ページを設けていることからでも分かります。
 しかもその特設ページ自体、相当気合いを入れて作っていることが、その見出しを読むだけでも伝わってきます。いちいち各ページにリンクはしませんが、「目次」代わりに、見出しだけ紹介しておきます。

昭和天皇「拝謁記」―戦争への悔恨―
 記述内容
   戦争への悔恨 
     昭和天皇 語れなかった戦争の悔恨
     繰り返し語る後悔の言葉
     強くこだわった「反省」
     削除された戦争への悔恨
        専門家「戦後も戦前・戦中を生きていたのではないか」
   退位への言及
     東京裁判後も退位に言及
     「国民が退位を希望するなら少しも躊躇せぬ」
   象徴への模索
     「象徴」への模索も明らかに
     象徴への決意
     政治的発言も
   再軍備改憲
     東西冷戦下 再軍備改憲にも言及
     「軍備の点だけ公明正大に…」
     「旧軍閥の再抬頭は絶対にいや」
      専門家「新たな発見だが旧軍には批判的」
     人間 昭和天皇
       歴代総理大臣の人物評繰り返す
       近衛文麿東條英機
       芦田均吉田茂
       「独自視点から人々を判断」
 「拝謁記」とは
      「生々しい肉声 超一級の資料」
         18冊の手帳とノート
     専門家「生々しい肉声 超一級の資料」
     拝謁の記録は600回 300時間超
     9割は「昭和天皇実録」に記載なし
     「空白期」埋める貴重な資料
     9か月かけ10人超える専門家と分析
    初代宮内庁長官 田島道治
      戦後初めて民間から長官に
     「焼却される寸前だった」
   終戦から独立回復 昭和天皇を取り巻く状況
     「人間宣言」から「象徴」へ
     西側陣営で国際社会復帰へ
     平和条約発効記念式典とは
     平和条約発効式典おことば
   分析に当たった専門家の評価
     「生々しい昭和天皇の本音」(古川隆久日本大学教授)
     「天皇の考えの揺らぎ伝わる」(吉田裕一橋大学特任教授)
     「一言一句の記録 見たことない」(茶谷誠一志學館大学准教授)
     「生身の昭和天皇 衝撃的な資料」(冨永望京都大学大学文書館特定助教
     「昭和天皇の本音がわかる貴重な資料」(瀬畑源成城大学非常勤講師)
 年表

 この「NHK NEWS WEB」特設ページから、特に興味を引かれた「拝謁記」の記載を2カ所引用します。

 1つは、番組告知でも強調されている、1952年(昭和27年)4月28日の「平和条約発効式典」での「おことば」に盛り込もうとして、吉田茂首相の反対によって削除されたという部分です(既に学界では知られたことであったようですが)。

(引用開始)
 吉田総理大臣が削除を求めた一節は、「国民の康福(こうふく)を増進し、国交の親善を図ることは、もと我が国の国是であり、又摂政以来終始変わらざる念願であったにも拘(かか)わらず、勢の赴くところ、兵を列国と交へて敗れ、人命を失ひ、国土を縮め、遂にかつて無き不安と困苦とを招くに至ったことは、遺憾の極みであり、国史の成跡(せいせき)に顧みて、悔恨悲痛、寝食(しんしょく)為(ため)に、安からぬものがあります」という部分です。このうち、「勢の赴くところ」以下は、昭和天皇が国民に伝えたいと強く望んだ戦争への深い悔恨を表した部分でした。
(引用終わり)

 もう1つは「退位(譲位)」についての発言のうち、「それはそうだろうなあ」と思わず同感してしまった部分です。

(引用開始)
 サンフランシスコ平和条約の調印が翌月に迫った昭和26年8月には、「責任を色々とりやうがあるが地位を去るといふ責任のとり方は私の場合むしろ好む生活のみがやれるといふ事で安易である」と、退位した方がむしろ楽だと語ったと記されています。
(引用終わり)

 それから、NHKの委嘱により、「拝謁記」の分析にあたった学者の1人である古川隆久日本大学教授が毎日新聞に寄稿した文章は、この種の資料にどう向き合うべきかを考える上で示唆的であり、是非お読みいただければと思います。

毎日新聞WEB版 2019年8月27日 14時26分
昭和天皇「拝謁記」報道を巡って 注意深い読み解きが必要=古川隆久・日本大教授

(抜粋引用開始)
 裏付けの例としては、52年5月のサンフランシスコ講和条約発効記念式典における「おことば」について、検討の開始時期や、案文の推移はこれまでの研究でわかっていたが、悔恨の意を盛り込むことへの昭和天皇の思いの強さ、途中での修正や吉田茂が削除を要請した具体的理由は、この「拝謁記」で初めてわかったことである。
 新事実としては、日中戦争中の南京事件に関する昭和天皇の認識や、この時期に昭和天皇が防衛軍的な意味での再軍備やそのための憲法改正を強く望んでいたことなどがある。
(略)
 新発見の史料の解釈や評価は、部分的であれその史料を初めて実際に読み解いた歴史研究者の評価が最初の有力な手掛かりとなる。歴史的な文書は、それが書かれた時代、あるいはその中で話題になっている時代の状況は時代背景を踏まえなければ、先入観による全く的外れな解釈や評価が下される危険性が生じるからである。
 比較的近い時代に書かれた「拝謁記」もその例外ではない。特にこの「拝謁記」は、現代日本と共通するような政治問題が話題になっている部分が多いだけに、余計に注意深い読み解きが求められる。当然、研究者の評価や解釈の報道に問題があれば、話の出発点から的外れということになってしまうのである。

(引用終わり)

 最後に、「拝謁記」は1949年2月から53年12月までの記録ですから(田島道治氏が宮内庁の前身・宮内府の長官に就任したのが1948年6月)、あの沖縄・天皇メッセージが発せられた1947年9月の記録は当然ながらありません。
 私としては、それがいささか残念ではあります。

代替わり後はじめての全国戦没者追悼式に注目した~貫徹される「安倍三原則」と新天皇「おことば」

 2019年8月15日配信(予定)のメルマガ金原No.3426を転載します。
 
代替わり後はじめての全国戦没者追悼式に注目した~貫徹される「安倍三原則」と新天皇「おことば」
 
 2013年1月24日から今年(2019年)の1月25日まで、丸6年間にわたって「毎日更新」を続けてきた「弁護士・金原徹雄のブログ」ですが、体調の問題から中断を余儀なくされ、再開後の更新も思うにまかせず、今月に入ってからはまだ一度も更新していないというありさまです。
 ただし、今日(8月15日)という特別な日には、何としてもパソコンに向かってブログを書かざるを得ないと思っていました。そして、幸か不幸か、ちょうど台風10号の西日本襲来のため、予定されていた刑事事件の公判が延期となったため、思わぬ盆休みとなり、ブログを書くための時間的余裕が生まれました。
 
 巻末のリンク一覧をご覧いただければお分かりのとおり、私は、2014年以来過去5年間、毎年8月15日には、その日開催された全国戦没者追悼式での安倍晋三内閣総理大臣「式辞」と天皇陛下「おことば」に注目してきました。
 そして、皇室が代替わりして最初の全国戦没者追悼式での首相「式辞」と天皇陛下「おことば」がどのように変わったのか、あるいは変わらなかったのか、跡づけることが自分の義務であるかのような気持ちもあり、本稿を書いてみることにした次第です。
 
 まず、本日、日本武道館で行われた全国戦没者追悼式の中継動画(THE PAGE)をご紹介しておきます。
 
令和最初の「終戦の日」政府が全国戦没者追悼式(2019年8月15日)(1時間13分) https://www.youtube.com/watch?v=GUGSGFwTDV8
 
17分~ 安倍晋三内閣総理大臣「式辞」
24分~ 天皇陛下「おことば」
 
 以下に、首相官邸及び宮内庁ホームページに掲載された「式辞」と「おことば」を全文引用しますが、何の予備知識もなく読み流してしまえば、私の問題意識も全く通じることはないのではと危惧されます。
 安倍首相「式辞」については、村山富市首相以来(ホームページで確認できるのはその後の橋本龍太郎首相以降)歴代の内閣総理大臣が踏襲してきた「式辞」のどの部分を変更したのか、そして、そのどこが問題なのかを考えながら読まねば意味がありません。
 また、天皇陛下「おことば」については、前代(平成上皇)が30年の在位中、8月15日に何を語ってきたか、その変わったことと変わらなかったことを確認した上で、新天皇がそれをどのように継承したかが関心の焦点となります。
 そのためにも、巻末でリンクしている7本のブログに、ざっとでも良いので目を通した上で、今年の「式辞」と「おことば」を読んでいただければ、より理解が深まることは疑いありません。
 とはいえ、皆さんにそのような準備作業を期待するのは難しいだろうと思いますので、以下に、過去5年の間、私が全国戦没者追悼式での「式辞」と「おことば」を研究した成果(?)の一端をまとめておきますので、参考にしてください。
 
【全国戦没者追悼式「式辞」における安倍三原則】
 第2次安倍政権を発足させた後、初めての戦没者追悼式となった2013年(平成25年)8月15日の「式辞」以来、一貫して堅持している原則を私は「安倍三原則」と名付けています。
 
アジア諸国民に対する加害についての反省と哀悼の意は絶対に表明しない。
②「不戦の誓い」も述べない。
戦没者の犠牲の上に“平和と繁栄”があることを強調しながら、“平和と繁栄”をもたらしたものが「国民のたゆまぬ努力」であるとは言わない。
 
 ①、②はわかりやすいかもしれませんが、③は一読しただけでは何が問題なのかわかりにくい「原則」かもしれませんね。ただし、私はこの③が靖国派による「まやかしの論理」の肝だと思っていますので、私の書いたブログの中の特に2014年に書いた3本をお読みいただければと思います・・・と言っても、読んでくれる人はほとんどいないでしょうから、「“コピペ”でなければ良いというものではない~全国戦没者追悼式での安倍晋三首相の式辞を聴いて。」(2014年8月15日)の一部を引用しておきます。
 
(引用開始)
 このような表現(注:「戦没者の皆様の、貴い犠牲の上に、いま、私たちが享受する平和と、繁栄があります。」)に何の違和感も感じないという方も、もしかするとおられるかもしれません。
 確かに、歴代総理大臣の追悼式式辞のように、このようなフレーズが、加害責任の自覚と反省の言葉とセットで語られているのであれば、(私はもっと適切な表現があると思いますが)まだしも理解できないこともありません。
 しかし、安倍晋三という人間はそうではありません。彼は決して加害責任を認めようとはしません(多くの「靖国派」と同様に)。国会でも、「侵略の定義は定まっていない」と言い張っています。
 そのような人間が「戦没者の皆様の、貴い犠牲の上に、いま、私たちが享受する平和と、繁栄があります」という時、そこに「反省」という契機が抜け落ちている以上、戦没者の犠牲をもたらした「戦争」があったからこそ、今の「平和」があるという倒錯した論理の罠にからめとられることになります。
 安倍首相を盛り立てる「靖国派」や「ネトウヨ」の「まやかしの論理」のポイントはこの点にこそあると私は考えています。
(引用終わり)
 
 それでは、今年の「式辞」を読んでみましょう。
 
(引用開始)
 天皇皇后両陛下のご臨席を仰ぎ、戦没者の御遺族、各界代表、多数のご列席を得て、全国戦没者追悼式を、ここに挙行致します。
 先の大戦では三百万余の同胞の命が失われました。祖国の行末を案じ、戦陣に散った方々、終戦後、遠い異郷の地にあって亡くなられた方々。広島や長崎での原爆の投下、東京をはじめ各都市での爆撃、沖縄における地上戦などで無残にも犠牲になられた方々。今、全ての御霊(みたま)の御前(おんまえ)にあって、御霊安かれと、心より、お祈り申し上げます。
 今、私たちが享受している平和と繁栄は、戦没者の皆様の尊い犠牲の上に築かれたものであることを、私たちは決して忘れることはありません。改めて、衷心より、敬意と感謝の念を捧(ささ)げます。
 未(いま)だ帰還を果たされていない、多くの御遺骨のことも決して忘れません。御遺骨が一日も早く故郷に戻られるよう、私たちの使命として、全力を尽くして参ります。
 わが国は戦後一貫して、平和を重んじる国として、ただひたすらに歩んでまいりました。歴史の教訓を深く胸に刻み、世界の平和と繁栄に力を尽くしてまいりました。
 戦争の惨禍を二度と繰り返さない、この誓いは昭和、平成、そして令和の時代においても決して変わることはありません。平和で希望に満ち溢(あふ)れる新たな時代を作り上げて行くため、世界が直面している様々な課題の解決に向け、国際社会と力を合わせて全力で取り組んでまいります。今を生きる世代、明日を生きる世代のために、国の未来を切り開いてまいります。
 終わりに、いま一度、戦没者の御霊に平安を、ご遺族の皆様には、ご多幸を、心よりお祈りし、式辞といたします。

(引用終わり)

 基調は昨年までのの「式辞」と変わりませんし、もちろん、「安倍三原則」は貫徹されています。参考までに、昨年の「式辞」にリンクしておきます(引用はしませんので、興味のある方はリンク先をご参照ください)。

平成三十年 全国戦没者追悼式式辞

天皇陛下「おことば」の論理と倫理】
 それでは引き続き、天皇陛下「おことば」に注目します。


 資料がないので、昭和天皇がどのような「おことば」を述べていたのか確認できませんので、今上天皇の今回の「おことば」と比較する対象は前代(平成上皇)による30回の「おことば」ということになります。
 平成天皇による30回の「おことば」を通読してみれば、時期的に3期に区分できることが分かります。
 2017年8月15日に書いた「全国戦没者追悼式における「おことば」(平成元年~29年)を通読して見えてくること」のまとめの部分を(平成30年の最後の「おことば」を踏まえて一部改訂)再掲します。

(引用開始)
第1期 平成元年~平成6年
 昭和天皇が「全国戦没者追悼式」で読み上げていた「おことば」が見つからないかと思って探しているのですが、まだ見つけられていません。けれども、即位直後からいきなり内容を変えるとは思いにくいので、この第1期の文章は、前代を基本的に踏襲しているような気がします(確言できませんけど)。
第2期 平成7年~平成26年
 村山富市内閣が成立して1年以上が経過した平成7年の「全国戦没者追悼式」で、初めて第3節に、「歴史を顧み,戦争の惨禍が再び繰り返されぬことを切に願い,全国民とともに」という言葉が挿入され、以後、これが踏襲されています。
第3期 平成27年~平成30年
 政権に復帰した安倍晋三内閣と皇室の対立が外信でも(だからこそ?)報道される中、いわゆる安保法制審議中の平成27年の「おことば」には、異例とも言える表現が盛り込まれました。
 とりわけ特徴的なのは第2節であり、「終戦以来既に70年,戦争による荒廃からの復興,発展に向け払われた国民のたゆみない努力と,平和の存続を切望する国民の意識に支えられ,我が国は今日の平和と繁栄を築いてきました。戦後という,この長い期間における国民の尊い歩みに思いを致すとき,感慨は誠に尽きることがありません。」に、今上天皇の平和への思いが凝縮していると見るべきでしょう。
 残念ながら、第2節におけるこの表現は、翌年からまた元に戻ってしまいましたが、同じく平成27年「おことば」から第3節に付加された「さきの大戦に対する深い反省と共に」という部分のうち、「深い反省とともに」は生き残り、平成28年、29年、そして最後となった30年の「おことば」に引き継がれています。
(引用終わり)

 その父平成上皇の蹟を襲った徳仁天皇の初の「おことば」として注目していました。動画を視聴したところでは、やや緊張の色が見えましたが、その内容は、前代による最後の(平成30年)の「おことば」を基本的に踏襲したものでした。

全国戦没者追悼式
令和元年8月15日(木)(日本武道館)

(引用開始)
 本日,「戦没者を追悼し平和を祈念する日」に当たり,全国戦没者追悼式に臨み,さきの大戦において,かけがえのない命を失った数多くの人々とその遺族を思い,深い悲しみを新たにいたします。
 終戦以来74年,人々のたゆみない努力により,今日の我が国の平和と繁栄が築き上げられましたが,多くの苦難に満ちた国民の歩みを思うとき,誠に感慨深いものがあります。
 戦後の長きにわたる平和な歳月に思いを致しつつ,ここに過去を顧み,深い反省の上に立って,再び戦争の惨禍が繰り返されぬことを切に願い,戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し,全国民と共に,心から追悼の意を表し,世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります。

(引用終わり)

 昨年の平成天皇による最後の「おことば」と対照してみましょう。

全国戦没者追悼式
平成30年8月15日(水)(日本武道館)


第1節
(平成30年)
 本日,「戦没者を追悼し平和を祈念する日」に当たり,全国戦没者追悼式に臨み,さきの大戦において,かけがえのない命を失った数多くの人々とその遺族を思い,深い悲しみを新たにいたします。
(令和元年)
 本日,「戦没者を追悼し平和を祈念する日」に当たり,全国戦没者追悼式に臨み,さきの大戦において,かけがえのない命を失った数多くの人々とその遺族を思い,深い悲しみを新たにいたします。
※一字一句同じです。
第2節
(平成30年)
 終戦以来既に73年,国民のたゆみない努力により,今日の我が国の平和と繁栄が築き上げられましたが,苦難に満ちた往時をしのぶとき,感慨は今なお尽きることがありません。
(令和元年)
 終戦以来74年,人々のたゆみない努力により,今日の我が国の平和と繁栄が築き上げられましたが,多くの苦難に満ちた国民の歩みを思うとき,誠に感慨深いものがあります。
※主旨同一でやや修文したといったところでしょう。
第3節
(平成30年)
 戦後の長きにわたる平和な歳月に思いを致しつつ,ここに過去を顧み,深い反省とともに,今後,戦争の惨禍が再び繰り返されぬことを切に願い,全国民と共に,戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し,心から追悼の意を表し,世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります。
(令和元年)
 戦後の長きにわたる平和な歳月に思いを致しつつ,ここに過去を顧み,深い反省の上に立って,再び戦争の惨禍が繰り返されぬことを切に願い,戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し,全国民と共に,心から追悼の意を表し,世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります。
※この結びの節も前代の「おことば」が踏襲されました。私は「戦後の長きにわたる平和な歳月に思いを致しつつ」がそのまま残されたことにも注目しました。このフレーズは、実は平成30年の最後の「おことば」に至ってさりげなく付け加えられたものだったからです。この部分について、私は昨年こう書きました

(引用開始)
第3節の冒頭に「戦後の長きにわたる平和な歳月に思いを致しつつ」を付加したのには、それなりの思いがあってのことだろうと思います。私は、平成27年8月15日(あの「安保法制」法案が国会で審議されているただ中でした)の異例の「おことば」で述べられ、翌年から繰り返されることのなかった「戦争による荒廃からの復興,発展に向け払われた国民のたゆみない努力と,平和の存続を切望する国民の意識に支えられ,我が国は今日の平和と繁栄を築いてきました。」を(分かる者は分かってくれるだろうと)凝縮した表現が「戦後の長きにわたる平和な歳月に思いを致しつつ」なのではないか、と思います。
(引用終わり)

 果たして、今上天皇が平成上皇の意図をそのようにくみ取ったかどうかは知るよしもありませんが、私としては、まずはほっとしたというのが偽らざる気持ちです。

(弁護士・金原徹雄のブログから/全国戦没者追悼式関連)
2014年1月14日
「日本傷痍軍人会」最後の式典での天皇陛下「おことば」と安倍首相「祝辞」(付・ETV特集『解散・日本傷痍軍人会』2/1放送予告)

※「全国戦没者追悼式」ではありませんが、十分「関連」がありますので。
2014年8月15日
“コピペ”でなければ良いというものではない~全国戦没者追悼式での安倍晋三首相の式辞を聴いて
2014年8月18日
続 “コピペ”でなければ良いというものではない~“平和と繁栄”はいかにして築かれたのか
2015年8月15日
全国戦没者追悼式総理大臣「式辞」から安倍談話を読み返す(付・同追悼式での天皇陛下「おことば」について)
2016年8月15日
全国戦没者追悼式で今年も貫徹された“安倍3原則”(付・天皇陛下「おことば」を読む)
2017年8月15日
全国戦没者追悼式における「おことば」(平成元年~29年)を通読して見えてくること
2018年8月15日
平成最後の「全国戦没者追悼式」~安倍内閣総理大臣「式辞」と天皇陛下「おことば」を読む

平和と戦争を考えるテレビ番組 2019年夏

 2019年7月24日配信(予定)のメルマガ金原No.3425を転載します。

平和と戦争を考えるテレビ番組 2019年夏

 日本では、毎年7月の終わりから8月にかけて、NHKと民放とを問わず、「平和と戦争を考える番組」を、他の時季よりも数多く放送する傾向が明らかに認められます。
 この時季だからこそ企画が認められやすい番組もあるでしょうから、この現象を「夏の風物詩」などと揶揄するのは正しい態度ではなく、一つ一つの番組をそれ自体として真摯に受け止めるべきでしょう。
 ところで、例年、6月の終わりか7月はじめになると、どこからともなく「平和と戦争を考えるテレビ番組(NHK編)」という放送予定一覧表が流れてきて、大変重宝させていただくのですが、もともとどなたがまとめられたものか、私は知りません。
 今年の「平和と戦争を考えるテレビ番組 2019年夏(NHK編)」については、三多摩平和交流ネットワークというサイトに転載されていますので、そちらをご参照ください。
 なお、そこでも注記されているとおり、番組の題名が変わることもありますし、放送日程が変更されることもあり得ますので、視聴・録画等される場合には、放送局(この場合はNHK)のホームページ等でご確認ください。

 また、どこからともなく流れてきた情報ではなく、NHK広報局が6月19日付で発表したリリース「“戦争と平和”を考える番組」には、番組数は絞られていますが、より詳しい情報が掲載されていますので、こちらもご参照ください。
 特に、ドラマとドキュメンタリーの両方で取り上げる「マンゴーの樹の下で」にはNHKも相当力を入れているようです。岸惠子さんが主演されるドラマ版は、総合TVで放映されるヴァージョン(73分版)よりもBSで放送されるもの(89分版)の方が長くなっています。

 それから、(民放編)のまとめ情報が流れてこないかと期待しているのですが、なかなか入手できませんので、在阪キー局を通じて視聴できる、NNNドキュメント、テレメンタリー朝日放送テレビ)、映像(MBS)、ザ・ドキュメント(関テレ・不定期)に限定して自分で調べてみました。
 結局、見つかったのはNNNドキュメントの3本だけでしたが、他に、映像’19で放送予定(7/28)の「ある徴用工の手記より~日韓の間に何が起きているのか~」に注目しました。
 これは正しく現在の問題であるとともに戦争の問題でもある訳で、「“戦争と平和”を考える番組」として紹介するのにふさわしいと判断しました。
 ディレクターがどなたかまでは分かりませんが、今この時期にこの番組を放送するというのは、ジャーナリストとしての「気骨」を感じますね。
 以上、ご参考までに。

2019年7月28日(日)24時50分~25時50分
映像’19(毎日放送)
ある徴用工の手記より~日韓の間に何が起きているのか~

1991年に日本で出版された「朝鮮人徴用工の手記」という本がある。1944年11月に朝鮮で徴用された鄭忠海(チョン・チュンヘ)さんが、戦後書いた手記だ。鄭さんは広島の工場で小銃を作る仕事をさせられた。
労務環境はそれほど悪くはなかったが、日本が米軍の空襲で受けた惨状などを見る目は、怨恨に貫かれている。「罪のない市民たちが犠牲になったのだから哀しいことだけれど、彼ら自らが招いた災いであり、誰も恨むことはできないだろう」。
番組では、この本の内容を映像化して、当時の徴用工の暮らし・思いはどんなものだったかを伝える。また、鄭さんという一人の徴用工の後ろには、何十万という数の徴用工たちがいて、中には強制的な連行や危険な労働環境をとおして、命を落としたり、心身に傷を負ったりした人もいる。去年10月の韓国大法院の判決をきっかけに日韓両国の関係が悪化する中、日本での取材以外にも韓国でこの問題に関りのある人々にも直接話を聞く。一次資料に当たるなど、事実に基づいて番組を制作・放送することで、関係改善の一助としたい。

2019年7月28日(日)24時55分~25時25分
NNNドキュメント’19(日本放送系列)
色彩の記憶~よみがえるヒロシマ~

広島市平和公園はかつて、4400人が暮らす町でした。
理髪店や写真館で生まれ育った人たち...。
被爆前、今と変わらぬ日常がありました。
被爆者の平均年齢は82歳を超え、記憶の継承が課題となる中、
写真を使って継承しようと取り組む人たちがいます。
広島の高校生と東京大学大学院の教授です。
それは被爆前の白黒写真をカラー化するというもの。
人工知能「AI」を活用します。広島にはかつて普通の日常がありました。
カラー化写真を見た被爆者の思いとは...。
語り/戸田菜穂  制作/広島テレビ  放送枠/30分
再放送
8月4日(日)11:00~ BS日テレ
8月4日(日)5:00~/24:00~ CS「日テレNEWS24

2019年8月4日(日)24時55分~25時25分
NNNドキュメント’19(日本放送系列)
原爆の絵 高校生が描く“ヒロシマ

原爆投下から74年。被爆者の平均年齢は82歳を超えた。原爆で369人が亡くなった基町高校では12年前から被爆者の体験談を絵で残す取り組みを続けている。今年も5人の生徒が祖父母を探すため入市被爆した男性の話を絵で表現することになった。想像もつかない当時のヒロシマに苦悩する生徒たち。その中には祖父が被爆者という被爆3世の生徒も...。"原爆の絵"を通じて、被爆を継承する高校生の思いに迫る。【制作:広島テレビ
再放送
8月11日(日)11:00~ BS日テレ
8月11日(日)5:00~/24:00~ CS「日テレNEWS24

2019年8月11日(日)24時55分~25時25分
NNNドキュメント’19(日本放送系列)
海は知っている 詫間海軍航空隊(仮)

「こんな飛行機で本当に特攻出撃したのか?」その機体は、偵察機として使われた古い水上飛行機です。瀬戸内海をのぞむ小さな町に残された滑走路。太平洋戦争末期、訓練部隊だった詫間海軍航空隊は、水上特攻の一大拠点となり、訓練の浅い学生たちが、爆弾とともに次々と突入。特攻兵57人、誘導部隊も含め300人以上が戦死しました。彼らはなぜ死ななければならなかったのか。戦後、置き去りにされた基地の歴史をたどります。【制作:西日本放送
再放送
8月18日(日)11:00~ BS日テレ
8月18日(日)5:00~/24:00~ CS「日テレNEWS24

こどもピースフェスタ2019(8月10日@和歌山ビッグ愛1階展示ホール)のご案内~今年で3回目!

 2019年7月19日配信(予定)のメルマガ金原No.3424を転載します。

こどもピースフェスタ2019(8月10日@和歌山ビッグ愛1階展示ホール)のご案内~今年で3回目!

 回を重ねて3回目のとなる「こどもピースフェスタ2019」、今年も和歌山ビッグ愛1階展示ホールで開催されます。
 一昨年が7月30日、昨年が9月2日、今年が8月10日ということで、「夏にやる」というだけ決めているということで、開催時期については割合フリーな感じです。

 普通の参加者で、5時間びっしり詰め切る人はいないと思いますが、ご都合のつく時間だけでも、とても楽しく豊かな時間が過ごせること請け合いです。

 今年、私がチラシに記載されたプログラムを眺めながら注目した点をいくつか挙げてみましょう。

〇紙芝居「せんそうのおはなし『わかやまのくうしゅう』」が、昨年は作者の山本喜美子さんが上演されましたが、今年は、山本さんご自身から後継指名を受けた池田香弥さんに引き継がれて上演されます。今年の憲法記念日、山本さんの代理として「第5回 わかやま平和賞」受賞式に出席された後、西の丸広場のブースで『わかやまのくうあしゅう』を演じてくださった池田さんですが、いささか周辺の音に妨げられたりして、万全の状態ではありませんでしたので、「こどもピースフェスタ」での上演が楽しみです。

〇去年もブースを出展されていた国際協力機構(JICA)関西ですが、今年のテーマは「ファッションショー、私たちのSDGs宣言」。SDGs(エスディージーズ)の推進に力を入れるJICAならではの企画で、これも興味深いですね。ところで、ファッションショーのモデルはこどもたちが務めるんだろうか?

〇合唱構成「ぞうれっしゃがやってきた」の公演が7月27日(土)に行われますが、そのために結成された「2019ぞうれっしゃ合唱団和歌山」の有志が、その抜粋をステージで披露してくれるそうです。公演を聴いた人も行きそびれた人も、是非ご期待ください。

〇チラシに「あの有名なパン屋さんのパンも♪」とあるのが気になりますね。去年会場で買って昼食にしたパンはたしかにとっても美味しかったけど。

 それでは、以下にチラシ記載情報を完全転記します。
 是非お誘いあわせの上足をお運びください。
 ※写真は、昨年の会場内スナップです。

(チラシ記載情報から引用開始)
-チラシ表面-
こどもピースフェスタ 2019

2019年8月10日(土)10:00⇒15:00
県民交流プラザ和歌山ビッグ愛 1階 展示ホール
 (和歌山市手平2丁目1-2)

入場無料

こどもピースフェスタ ってなぁに?
こどもたち一人ひとりが大切にされ、それぞれが自分らしく歩んでいってほしい・・・そんな願いを持った人々が集まり、企画しました。毎年大盛況で、今回で3回目の開催となります。ステージあり、体験ブースあり、ワークショップあり、飲食ブースあり。見て、遊んで、学んで、食べて・・・
こどもが主役のとっても楽しいイベントです!
皆さまのご来場をお待ちしております!

主催:こどもピースフェスタ実行委員会
後援:和歌山県和歌山市和歌山市教育委員会
協賛:家庭的保育園なないろ

-チラシ裏面-
Stage
◇こどもたちの学習発表会
◇けん玉パフォーマンス(日本けん玉協会 和歌山県支部
◇民舞:演目『大森みかぐら』(わかやま民舞クラブ「鼓と羽」)
◇朝鮮の歌、民族楽器(和歌山朝鮮初中級学校)
◇沖縄ってどんなところ?(和歌山大学 社会科学研究会)
◇ファッションショー、私たちのSDGs宣言(国際協力機構(JICA)関西)
◇せんそうのおはなし『わかやまのくうしゅう』(語り 池田香弥、作 山本喜美子)
◇韓国語すがたり・英語で狂言・英語の歌(ラボ小倉パーティ)
◇こども落語(わかやま楽落会)
◇合唱『ぞうれっしゃがやってきた』より(ぞうれっしゃ合唱団 有志)
◇みんなで一緒に歌おう\(^o^)/♪(Vo.たかいあい、Pf.森本麻子)
 ★出演団体・内容は一部変更になる場合があります。

Floor
・アフリカ布で遊ぶ、「SDGs」ってなあに?(国際協力機構(JICA)関西)
・沖縄クイズ(和歌山大学 社会科学研究会)
ナチュラルクラフトの素材(NCEG自然・子ども・教育の会)
・エコ遊び:身近なもので楽しく遊ぼう☆(サスティナブルフォーラムわかやま)
・ドミノあそび、雑貨販売(和歌山みなみ子ども劇場)
・てづくりおもちゃ(NPO法人 和歌山こどもの広場 わかば♪)
・ポズック雑貨店(社会福祉法人一麦会 Po-zkk)
・「戦中・戦後のくらし」の展示と解説(昭和館和歌山市立博物館 協力)
・“りぃぶる”おすすめ絵本(和歌山県男女共同参画センター“りぃぶる”)
・マフィン・ポップコーン・ジュース(NPO法人 花咲か)
・キンパ販売 など(和歌山朝鮮初中級学校)
・学習発表展示(こども塾、他)
こども店長のお店(ミャンマー民族衣装体験、絵本の販売など)

飲食ブースあります!
あの有名なパン屋さんのパンも♪
会場内のクイズ&シールラリーにチャレンジするとプレゼントがもらえるよ!

お問合せ先:こどもピースフェスタ実行委員会
 https://www.facebook.com/kodomopeacefesta/
連絡先:TEL&FAX 073-419-0450 090-9166-1633
(引用終わり)

(弁護士・金原徹雄のブログから)
2017年6月4日
開催予告7/30こどもピースフェスタ2017@和歌山ビッグ愛1階展示ホール~チラシ記載情報から
2018年7月8日
こどもピースフェスタ2018(9月2日@和歌山ビッグ愛1階展示ホール)のご案内~今年も楽しそう!
2018年9月2日
こどもピースフェスタ2018@和歌山ビッグ愛1F展示ホール 大盛況!

f:id:wakaben6888:20180902104650j:plain

f:id:wakaben6888:20190719124755j:plain

 

「2019 平和のための戦争展わかやま」のご案内(2019年7月27日・28日@プラザホープ)

 2019年7月17日配信(予定)のメルマガ金原No.3422を転載します。

「2019 平和のための戦争展わかやま」のご案内(2019年7月27日・28日@プラザホープ

 毎年恒例となっている「平和のための戦争展わかやま」ですが、今年も7月27日(土)・28日(日)の両日、和歌山県勤労福祉会館プラザホープを会場として開催されます。和歌山県平和委員会の里﨑正さんからチラシが届き、Facebook第2部ブログ(あしたの朝 目がさめたら)では簡単にチラシ記載内容を紹介しましたが、こちらのブログでもご案内しておこうと思います。

 実は、そのチラシを見て驚いたのですが、今年の戦争展は、「ビキニ事件」にフォーカスするという思い切った企画になっており、「ゴジラ」展示や伊藤宏先生(和歌山信愛女子短期大学教授)がパネルディスカッションのコーディネーターを務められるというのも、その文脈からのことと思われます。
 時あたかも、戦争展の4週間後の8月25日(日)には『ゴジラ』第1作(1954年)デジタルリマスター版上映と同作主演俳優・宝田明さんの講演が行われることになっており(和歌山市民会館小ホール)、まるで今年の戦争展がそのプレ企画のようにも見える・・・などと言っては、老舗の戦争展に失礼なので言いませんが。

 8月25日に「市民会館に絶対行こう」と決めておられる方には、「是非戦争展(出来れば27日の午後)にも参加して欲しい」とお薦めしたいと思います。
 もっとも、27日(土)の午後といえば、ぞう列車合唱団の公演ともろにバッティングしているのですよね(市民会館小ホール)。困ったものです。

 それでは、以下にチラシ記載情報を転記します。

(チラシから引用開始)

2019 平和のための戦争展わかやま

日時=2019年7月27日(土)⇒28日(日)
     10時~17時(28日は13時まで)

入場無料

[展示 2階ギャラリー]
27日〈土)10:00~17:00、28日(日)10:00~13:00
ビキニ水爆実験で誕生した「ゴジラ」展示
その他のパネル展示
「広島高校生が描いた原爆の絵」・「第五福竜丸」・「和歌山大空襲」など

[講演会 4階ホール]
27日(土)13:30~16:00
(オープニング 13:00~ TOY・BOX)
「ビキニ事件」と日本の戦後~消されたマグロ漁船員たち~
講師:岡村啓佐(おかむら・けいすけ)氏(高知平和資料館・草の家 副館長)
パネルディスカッション
コーディネーター
伊藤宏氏(和歌山信愛女子短期大学教授)
パネリスト
伊藤宏氏⇒ビキニ水爆実験とゴジラ誕生
岡村啓佐氏⇒「ビキニ事件」隠ぺいに抗う元漁船員たち
仲江高丸氏(紀州語り部の会)⇒第五福竜丸串本町
※岡村啓佐氏プロフィール 1951年生まれ、高知市在住。1999年に写真集『高知の被爆ヒロシマナガサキそしてビキニ』を発刊し、同名の写真展を高知県立美術館で開催。2001年には広島平和祈念資料館で開催。2007年『高知の被爆者 未来への伝言』(高知新聞社)を発刊。2008年『731部隊と高知』を発表。2015年、写真展反戦三部作『731部隊と高知』『沖縄戦と高知』『高知の被爆者』と『フクシマの今』を同時開催。2013年からは平和資料館・草の家副館長を務め、小・中学校での平和学習や、沖縄問題、731部隊、ビキニ事件、フクシマと原発問題などをテーマに、各地で講演を行っている。

[和大・社研の報告 4階ホール]
27日(土)11:00~12:00

[市民参加企画 3階会議室1・2]
28日(日)10:00~12:30
紀州昔話・・・アラオの会
紙芝居・・・つくしんぼ
語り部・・・「私の戦争体験」
  小田哲郎さん(和歌山市在住)
  光吉敏郎さん(田辺市在住)

・・・みなさんへのお願い・・・
戦争中の資料をご提供ください。
賛同募金にご協力ください。
  1口500円から 団体6口3000円から

[主催]2019 平和のための戦争展わかやま実行委員会
[お問い合わせ先]
 和歌山市松原通3-20 教育会館 和歌山県平和委員会内
 TEL 073-488-3095 FAX 073-488-3096
[後援]朝日新聞和歌山総局/毎日新聞和歌山支局/読売新聞和歌山支局/(株)和歌山放送/(株)テレビ和歌山/わかやま新報/ニュース和歌山(株)/(株)和歌山リビング新聞

(弁護士・金原徹雄のブログから/「平和のための戦争展わかやま」関連)
2015年8月7日
「2015平和のための戦争展わかやま」(8/1)でピースライブを堪能する
2016年7月12日
予告7/30&31「2016平和のための戦争展わかやま」~半田滋さんの講演(7/30)もあります
2016年7月30日
戦地からの“最愛の妻”への手紙~「2016平和のための戦争展わかやま」から
2017年7月16日
「平和のための戦争展わかやま2017」(7/29・30プラザホープ)のご案内
2018年6月28日
「平和のための戦争展わかやま2018」のご案内(2018年7月28日・29日@プラザホープ)

7/27(土)ぞう列車が走って70年 つながれ!!明日の夢へ ぞうれっしゃコンサート@和歌山市民会館小ホールのご案内

 2019年7月18日配信(予定)のメルマガ金原No.3423を転載します。

7/27(土)ぞう列車が走って70年 つながれ!!明日の夢へ ぞうれっしゃコンサート@和歌山市民会館小ホールのご案内

 昨年末に予告記事(ぞう列車が走って70年和歌山ぞうれっしゃ合唱団 団員募集!(公演予定日:2019年7月27日)/2018年12月19日)をブログに書いたものの、その後、体調不良のために「ブログ毎日更新」を断念したという事情も重なり、なかなか続報を書けなかった「ぞうれっしゃ」ですが、先日(7月15日)、正式なチラシをようやく入手しました。和歌山市民会館大ホールで開催された和歌山県第九合唱団「夏の合唱」のプログラムに挟み込まれていたものです。こんなに素敵なチラシが出来ていたのなら、もっと早くに誰かが届けてくれていたら、Facebookやブログで宣伝したのに(もっとも大した効果はないかもしれませんが)と思わないでもありませんが、まだ9日ある、ということでご紹介することとしました。関心のある方に「是非に」とお勧めしたいと思います。

 もっとも、7月27日(土)午後といえば、昨日のこのブログでご紹介した「平和のための戦争展わかやま」(於プラザホープ)の1日目、「「ビキニ事件」と日本の戦後~消されたマグロ漁船員たち~」ともろに日程がバッティングしているのですよね。私自身、正直「どちらに行こうか?」というハムレットの心境です。

(チラシ記載情報から引用開始)
-チラシ表面-
つながれ!! 明日の夢へ ぞうれっしゃコンサート

 今年はぞう列車が走ってからちょうど70年になり、全国で「ぞうれっしゃ」コンサートに取り組まれています。

 和歌山では5年ぶりの公演。全国のみなさんと心をつないで、子どもたちも、お父さんもお母さんも、ジィジもバァバも精いっぱい歌います。

2019年7月27日(土)午後1時開場 1時30分開演
和歌山市民会館小ホール

【第1部】 チェロとピアノでこんにちは
       チェロ/大町 剛 ピアノ/辻 恵子
【第2部】 合唱構成「ぞうれっしゃがやってきた
       2019和歌山ぞうれっしゃ合唱団
       指揮/由井 勝 ほか

入場整理券
 大人 1000円程度の協力金をお願いします。
 高校生以下 500円程度をお願いします。

主催/2019和歌山ぞうれっしゃ合唱団
後援/和歌山市教育委員会
事務局/和歌山市元寺町3-27 中北幸
      TEL:090-8826-5664 mail:spgcn608@yahoo.co.jp

-チラシ裏面-
【第1部】チェロとピアノでこんにちは
 2012年、2014年のぞうれっしゃコンサートに続き、3回目の出演となります。
 チェロの大町剛さんは、関西フィルハーモニー管弦楽団のチョロ奏者で、楽団の活動以外にも、アレンジ、作曲など幅広く活動されています。
 ピアノの辻恵子さんは、ピアニストであり作曲家。ミュージカル、合唱曲など作品は多数。
 お二人は2000年に共演して以来、毎年「楽しく」をモットーに小規模なコンサートを続けておられます。息の合った演奏は、音楽の楽しさを存分に伝えてくれることでしょう。

【第2部】合唱構成「ぞうれっしゃがやってきた
合唱/2019和歌山ぞうれっしゃ合唱団
指揮/由井 勝
ピアノ/大川求実
フルート/岡田睦子
ソロ・園長/藤田和巳
ソロ・ぞう使いの娘/蟹井理央

 和歌山での「ぞうれっしゃ」の公演は、1990年12月に始まり、今回は21回目の公演にります。

 平和・命の尊さ、音楽の素晴らしさ、歌う者も聴いてくれる人も、いっしょに感動を共有してきました。

「ぞう列車」は実際にあったお話です
 1937年日中戦争がはじまり、その年の12月、名古屋の東山動物園は、木下サーカスからキーコ(メス22歳)、マカニー(メス20歳)、エルド(メス17歳)、アドン(オス16歳)の4頭の像を譲り受けました。
 戦局が悪化した1943年、空襲で動物が逃げ出したら危険だと、全国の動物園に動物の殺処分の命令が下ります。東山動物園でも、猛獣に対して毒殺や銃殺が行われました。
 しかしなんとかゾウは助けたいと、動物園の中に穀物の畑をつくりエサの確保に努めました。軍の命令に、北王園長は「ゾウを殺すのなら私を殺してかれにしてくれ」と嘆願しゾウを守りました。
 しかし1944年2月、キーコが寒さに耐えられず亡くなり、翌年1月にアドンが栄養失調で亡くなりました。
 1945年8月15日ようやく戦争が終わりました。東山動物園は東洋一の飼育数を誇っていましたが、ぞう2頭、チンパンジー1頭、カンムリヅル2羽、カモ20羽、白鳥1羽しか残っていませんでした。それでもマカニーとエルドの2頭は生き残ったのです。
 1946年動物園再開。しかし動物がいないので獣舎の前に絵や写真を展示しました。
 1947年、東京都台東区の子どもたちが子ども議会を開き、そこで生き残っているゾウがいることを知り、ゾウを貸してくださいと子ども議会の代表東山動物園を訪れます。
 しかし、弱った2頭に長旅をさせることはできませんし、2頭のきずなは強く引き離すこともできません。北王園長は仕方なく断りました。
 子どもたちの願いを知った大人たちは、ならば子どもたちを名古屋の東山動物園に運ぼうと、特別仕立ての「ぞう列車」の運行に取り組みます。これには国鉄労働組合のみなさんをはじめ、大勢の大人が力を合わせました。
 1949年6月18日、彦根から1000名の子どもたちを乗せて第1号のぞう列車が名古屋へ走りました。6月25日には東京から。その後、大阪・京都・草津、埼玉・千葉・神奈川、石川・福井、津などから名古屋へぞう列車が走りました。
 近鉄は8月3日から約3ヶ月間、大阪~名古屋へ毎日500人ずつ約4万5000人の子どもたちを運びました。
(引用終わり)

 詳しくは上記チラシのとおりなのですが、考えてみると、合唱構成「ぞうれっしゃがやってきた」の作者については何の説明もありませんので、以下に記載しておきます。参照したのは「うたごえサークルおけら」です。

原作:小出隆司
絵:箕田源二郎
台本:清水則雄
作曲:藤村記一郎

 とりわけ有名な「ぞうれっしゃよはしれ」は様々な動画がアップされていますが、ここでは、2008年11月3日、徳島市文化センターで開催された「九条のつどい」での演奏をご紹介します。


ぞう列車がやってきた

長峯信彦氏(愛知大学教授)「安倍改憲のトリックを斬る~憲法制定過程の真実と平和憲法を守る歴史的責任~」講演レジュメを読む(守ろう9条 紀の川 市民の会 第15回総会)」

 2019年6月5日配信(予定)のメルマガ金原No.3420を転載します。

 

長峯信彦氏(愛知大学教授)「安倍改憲のトリックを斬る~憲法制定過程の真実と平和憲法を守る歴史的責任~」講演レジュメを読む(守ろう9条 紀の川 市民の会 第15回総会)」

 

 私も運営委員を務める地域9条の会「守ろう9条 紀の川 市民の会」は、2005年1月に結成総会を開いて以来、概ね毎年春に総会を、秋に憲法フェスタを開催してきました。

 そして、県内の他の地域9条の会と比較して、当会の大きな特色が、上記総会と憲法フェスタでの記念講演に多くの憲法学者の皆さんをお招きしてきたことであることは、これまでも度々ご紹介してきました。

 先日(6月2日)開催した第15回総会での記念講演をお願いした長峯信彦先生(愛知大学教授)が、当会で講演されたちょうど10人目の憲法研究者となります。その10人は以下の方々です。

 

吉田栄司関西大学教授(2012年憲法フェスタ)

森英樹名古屋大学名誉教授(2014年総会)

清水雅彦日本体育大学教授(2014年憲法フェスタ)

高作正博関西大学教授(2015年憲法フェスタ)

石埼 学龍谷大学教授(2016年総会)

植松健一立命館大学教授(2017年総会)

本 秀紀名古屋大学大学院教授(2017年憲法フェスタ)

三宅裕一郎三重短期大学教授(2018年総会) ※現・日本福祉大学教授

飯島滋明名古屋学院大学教授(2018年憲法フェスタ)

長峯信彦愛知大学教授(2019年総会)

 

 なお、過去の記念講演の内容については、「九条の会・わかやま」にその要旨が掲載される例となっており、レジュメなどをご紹介した私のブログと併せ、巻末に、過去の9人の先生方の講演内容をご紹介した「九条の会・わかやま」と私のブログにリンクしておきますのでご参照ください。

 

 今回の長峯信彦先生の講演について事前告知した私のブログ(長峯信彦愛知大学教授(憲法学)講演会のご案内(2019年6月2日@和歌山市河北コミセン/守ろう9条 紀の川 市民の会)/2019年5月16日)もご参照いただければと思います。

 http://blog.livedoor.jp/wakaben6888/archives/53365666.html

 

 さて、今回の長峯先生から事前にお送りいただいたレジュメは、ワープロ専用機で印刷した紙ベースのものであったため(来場者にはこの全12頁のレジュメを印刷して配布)、そのまま私のブログに掲載することは無理だろうと諦めていたのですが、当会運営委員で、「九条の会・わかやま」事務局も兼ねる南本勲さんが、そのレジュメをスキャニング(及び修正作業)をしてデータとして提供してくださり、長峯先生からも、それを全文私のブログに掲載するお許しをいただきましたので、みなさまにお読みいただけることとなりました。

 講演時間は約1時間50分といったところであり、これだけのレジュメの内容をお話いただくにはとても十分とはいえず、天皇制についての部分は全面カットとなったのは残念でした。

 いずれにせよ、長峯先生がこれだけ詳しいレジュメを書かれたのは、「この日私の話を聴かなかった方にも、後日臨場感をもってご理解いただけるようにと願って書いたものです(もし、後日、皆さんのあいだでこれをネタの一つにして熱く議論していただければ、それはもう望外の喜びです。)」(当会役員へのメールから)ということですから、私のブログへの転載がそのような議論の一助となればと願っています。

 

 ふんだんにユーモアを交えながら、熱く、かつ分かりやすく語りかけてくださった長峯先生の講演を、(最近の当会の総会にしては)多くの参加者に聴いてもらえたのは幸いでした。ただ、年齢層が著しく高めに偏っているのは、いずこの「9条の会」も共通の悩みの種ではあるのですが。

 

 ちなみに、長峯先生の講演終了後の第2部は総会議事ですが、その議案書(全6頁)をPDF化しましたのでご参照いただければと思います。

 

「守ろう9条 紀の川 市民の会」2019年度 第15回総会 議案書

 http://web2.nazca.co.jp/rituko31/kinokawasiminnokaisoukaigiansyo20190602.pdf

 

 それでは、以下に長峯信彦先生の講演「安倍改憲のトリックを斬る~憲法制定過程の真実と平和憲法を守る歴史的責任~」のレジュメ全文をご紹介します。

 なお、PDF版も併せて掲載しますが、これは、南本勲さんがスキャニングした上で、極力オリジナルに近づけて整理してくださったものです。

 

PDF(レジュメ本体)

 http://web2.nazca.co.jp/rituko31/nagaminerejumepdf20190602.pdf

PDF(レジュメ資料)

 http://web2.nazca.co.jp/rituko31/nagaminesiryoupdf20190602.pdf

 

2019年6月2日(日)

和歌山市河北コミュニティセンター

 

守ろう9条 紀の川 市民の会 第15回総会 記念講演

安倍改憲のトリックを斬る

憲法制定過程の真実と平和憲法を守る歴史的責任―

 

長峯 信彦

 

≪ニーメラー牧師の警句≫

ナチスは最初、ユダヤ人を攻撃した。私はユダヤ人ではなかったから黙っていた。

そして彼らは共産党を攻撃した。私は共産主義者ではなかったから黙っていた。

更にナチスは、社会民主党自由主義者を攻撃し始めた。この時は少し怖いと思ったが、自分は聖職者だから大丈夫だろうと思っていた。

最後にナチスは、キリスト教の教会を攻撃した。私は牧師だったので、この時はさすがに声を上げたが、もうその時、一緒に声を上げてくれる者は残っていなかった。」

 

≪「憲法」とは≫

普段は憲法のありがたみや重要性はほとんど意識できないかも。しかし(たとえば阪神・東北の大震災で空気・水・電気のありがたみがわかったように)、いざそれが本当になくなってしまう時、その重要性は初めて身に染みてわかることだろう。

憲法=空気や水のような、私たちにとって必要不可欠の存在

憲法は、国や社会の基本的な「あるべき姿」を定める法規範

 

憲法や法律を真剣に勉強するには、社会における「人の痛み」を理解(想像)できるような「人の心」が必要。条文だけを暗記して人の痛みを理解できない“アタマでっかち”な人間が裁判官や弁護士になったりすると、社会は暗くて冷たいものに・・

憲法学や法律学ほど、人の心を必要とする「血の通った学問」はない(渡辺洋三)

 

【第1部】改憲主張「憲法アメリカが作った」のトリック(嘘と危険性)と憲法制定過程の真実―天皇を護る避雷針として日本の権力者はGHQ草案を選択した―

 

・1945年7月26日 ◆ポツダム宣言(米・英・中/後にソ連も)

「日本国民の自由に表明せる意思に従い、平和的傾向を有し且つ責任ある政府が樹立」されること(第12項)

「日本国民の間における民主主義的傾向の復活強化に対する一切の障害を除去」

「言論・宗教・思想の自由並びに基本的人権の尊重」の確立(第10項)

鈴木貫太郎首相「ただ黙殺するだけ」⇒連合国側「ignore無視・拒否」と理解、ポツダム宣言拒絶と解して態度を硬化

★8月6日 広島へ原爆投下/8月9日 長崎へ原爆投下

 

当時の日本政府(鈴木貫太郎内閣)はかなり迷ったあげく、「天皇の国家統治の大権」を変更しない可能性があればポツダム宣言を受諾しようとしたが、連合国側からは「日本国の最終的な政治形態は日本国民の自由に表明せる意思により決定されるべきもの」との回答だけ⇒★結局、原爆が落ちるまで戦争を止めなかった日本政府

 

・1945年8月14日 日本政府がポツダム宣言を正式に受諾【「八月革命」成立】

・8月15日 敗戦/昭和天皇のラジオ放送

 

Part Ⅰ】現憲法に結実した日本人の憲法草案―輝きを失わない鈴木安蔵らの「憲法研究会」草案―

・1945年11月5日 憲法研究会が初会合←既にこの頃GHQでは鈴木安蔵の論文を英訳して一定の注目!〔原秀成『日本国憲法制定の系譜Ⅲ』563(2006年)〕

・1945年12月26日 ◆憲法研究会の憲法草案公表(GHQ草案の約2ケ月前)

・1946年 1月11日 ◆憲法研究会案を分析し高く評価した「ラウエル文書」(GHQ民政局の内部文書)

★「民主主義的で、受け容れ可能。」(democratic and acceptable)

国民主権、差別禁止、労働者の権利など「著しく自由主義的な諸規定」(Outstanding Liberal Provisions)

★不可欠な規定が若干欠如 ラウエルはこれを綿密に列挙した⇒なぜ?

 ⇒憲法最高法規性、違憲立法審査権、刑事被告人の権利、地方自冶etc.

〔高柳賢三・田中英夫ら『日本国憲法制定の過程Ⅰ』P.27-39(1972年)〕

◆ラウエルの列挙こそ、GHQ草案作成にあたって憲法研究会秦を下敷きにした証左

★ラウエル中佐の肉声証言録音が現存(I did use, We did use that draft.)

 

≪現在の象徴天皇制につながった憲法研究会草案≫

◆①「日本国の統治権は日本国民より発する」

◆②「天皇は国政を親(みずか)らせず、国政の一切の最高責任者は内閣とする」

◆③「天皇は国民の委任により、専ら国家的儀礼を司る」

◆④「天皇の即位は議会の承認を経るものとする」

 

敗戦前後、日本政府が一番こだわったのは

◆国体の護持=「神権的君主(主権者)としての天皇」の救済延命

他方GHQは、連合国側(アメリカ本国、ソ連、オーストラリアetc)から天皇を裁判にかけるよう圧力を受けていた。

そんな中で、英国の立憲君主制(法的主権者はあくまでも国王)よりも安全な「儀礼的存在としての天皇」を早々と提唱した憲法研究会案はGHQの注目を浴び、起草の下敷きとされた。

★ラウエル中佐の肉声証言

NHK-ETV「焼け跡から生まれた憲法草案」2007.2.10放送〕

 

・1946年1月21日 幣原(しではら)喜重郎(きじゅうろう)首相がマッカーサーと会談⇒◆戦争放棄の方向で意気投合

大平(おおだいら)メモ「マッカーサーは立ち上がって、感動して幣原の手を握った」云々〔田中英夫憲法制定過程覚え書』P.92(1979年)〕

 

・2月1日 当時日本政府が作成中の保守的な憲法草案を毎日新聞がスクープ

↓(なんと)

◆日本政府の憲法草案は、明治憲法と変わらない古色蒼然としたもの

明治憲法≫ ⇒ ≪1945年当時の日本政府の諸案≫

天皇神聖にして侵すべからず⇒★天皇は至尊にして侵すべからず

天皇は国の元首にして統治権を総攬⇒★日本国は万世一系天皇統治権を総攬(そうらん)

大日本帝国万世一系天皇が統治⇒★日本国は君主国とし、万世一系天皇を以て君主となす

 

・2月3日 マッカーサー3原則発表(マッカーサーノート)

天皇は国の頭部(at the head of the state) ②戦争放棄、軍備撤廃、交戦権否認

封建制度の撤廃、貴族特権の廃止(国民の平等)

・1946年2月4日~13日 GHQ内部で憲法草案【GHQ草案】の起草

 

憲法起草をしたGHQ民政局では弁護士資格を持つ3人が中枢の運営委員(♪)となり、他に法学・政治学を修めた人も多い。中には国会議員や高位行政官の経験者もいた。かのベアテ・シィロ夕(22歳)は民政局通訳だったが、女性の人権条項を担当。

①♪ケーディス大佐(40歳) Harvard Law School卒、弁護士。合衆国の法務職員を歴任

②♪ラウエル中佐(42歳) Stanford L.S.卒、弁護士。法学博士。合衆国法務官。保守的な人、民政局では数少ない共和党員。主に司法権部分を担当

③♪ハッシー中佐(44歳) Virginia L.S.卒、弁護士。準裁判官、自治体行政官を歴任

④スウォウプ中佐(53歳) 合衆国下院議員、準州知事、合衆国内務省の局長などを歴任

 

・2月8日  当時の日本政府作成の憲法草案【松本案】がGHQに提出される

・2月13日 GHQは政府草案【松本案】を否定、逆に日本政府にGHQ草案を提示

・1946年3月6日 日本政府が新しい憲法原案【3月6日案】を発表(=政府原案)

・1946年4月10日 衆議院総選挙 ◆日本史上初の男女平等の普通選挙(45年12月成立の新選挙法下)。選挙後、幣原内閣退陣、吉田茂内閣発足。この選挙により誕生した議員たちこそ、まさに「日本国民の自由に表明せる意思」(ポツダム宣言)に相当。この意思に基き、日本政府原案に対する審議が国会で正式に行なわれることに。◆事実上の憲法制定議会

 

・6月8日 枢密院(すうみついん)本会議【天皇も出席】(枢密院は天皇による諮詢(しじゅん)/明治憲法56条)

 三笠宮崇仁昭和天皇の末弟/皇族委員)の発言「戦争放棄については、・・結構な規定と考へ賛意を表する。・・皇室典範については、皇族としてば遺憾なことと思ふ。・・新憲法については大体賛成であるが、・・反対もしないが賛成もしかねるので、本官は棄権したいと思ふ。」〔『帝国憲法改正案審議録』P.190(1986年 国書刊行会)〕

 

PartⅡ】憲法制定過程における日本の国会審議―日本人の手による「日本国憲法」の完成―

・1946年6月20日 日本政府、第90回帝国議会に「明治憲法改正案」を正式に提出(日本国憲法の政府原案が正式に日本の国会に提出された)

「第90回帝国議会」というのは、形式的には明治憲法下での議会

◆日本人自身の手による審議により、「国民主権」や「社会権」の明記などの重大修正も行なわれて新憲法

 

【1】「国民主権」の明記

憲法制定過程における最大の論点は「主権」はどこにあるのか、であった。

明治憲法と同様に「天皇」なのか(内閣は天皇を輔弼ほひつするだけの補助的存在に過ぎない)、それとも「国家全体」(天皇と国民が共有するという「君民同治」説)か、あるいは「国民」のみか、で議論は熾烈を極めていた。

【2】「生存権」の明記(現行憲法25条)

◆「社会権」は憲法研究会の森戸辰男(衆議員/後に文部大臣)が、自ら国会議員となり(社会党)、国会内の憲法制定小委員会(委員は14人のみ)で主張して実現

【3】無償・義務教育を「中学段階まで含む」ことに(現行憲法26条)

GHQ草案や日本政府原案には「初等教育」とだけしか書いてなかったが、これを中学校まで延ばし、「普通教育」と修正するように猛烈に連動した中学校教師たちが全国にいた。特に、名古屋市の守山青年学校(現・中学校)の校長であった黒田穀(つよし)は、最も中心的に運動した人として知られている。〔NHK憲法誕生」2007.4.〕

 

・1946年 8月24日 衆議院本会議において政府提出の憲法改正案を修正の上、可決

・1946年10月6日 貴族院本会議において憲法改正案を修正の上、可決

・1946年10月7日 衆議院本会議において貴族院から回付された憲法改正案を可決

・1946年10月19日 枢密院本会議【天皇は欠席】

・1946年10月21日 枢密院本会議【天皇も出席】にて憲法改正案を全会一致で可決

・1946年11月3日 「日本国憲法」を明治憲法の改正として天皇の名で公布

・1947年5月3日  日本国憲法施行

 

【第1部 憲法制定過程 まとめ】

日本国憲法は本当に私たち国民に押しつけられたのか―

◆無謀な「中国アジア侵略戦争」の遂行主体は日本の権力者たちだったという事実(1931~45年の「15年戦争」)

◆日本の権力者たちは原爆が落ちるまで戦争を止めようとしなかったという事実

◆日本政府は天皇の救済延命を図るために自らポツダム宣言受諾を選択したという事実

◆当時の日本政府の憲法案は「天皇主権」にこだわる極めて保守的なものだったという事実

◆「国民主権」「人権」を唱えていた日本人は既に明治期から存在し(自由民権連動)、戦後直後には「象徴天皇制」を唱えた日本人グループさえ存在していたという事実

日本国憲法は、初の男女平等選挙により誕生した日本人議員たちによって審議され、「国民主権」「社会権」明記など重大修正も経て国会で成立した、という事実

 ↓(しかし)

もし、それでも「憲法は押しつけられた」「自主憲法を!」と云うのであれば・・

★日本の近代化【洋服・洋食・TV・携帯などの西洋近代文明】も、最初は全て黒船来航によって西洋列強から「押しつけられた」もの。これらも全てダメなのか?

★「日曜日」などは元々キリスト教安息日。“日本国有”にこだわる方々は当然返上して、ガムシャラに働くんでしょうね!(現在のカレンダーは1582年にローマ教皇が制定した、強度にカトリック色の濃いもの)

 

【第2部】改憲主張「憲法9条は現実に合わせて変えろ」のトリック(嘘と危険性)

イイ・ワルイといった「価値判断」vs 判断の根拠となる「認識」

「パチン子的状況」に陥る日本⇒◆認識と価値判断の混濁

⇒「憲法9条は現実に合わせて変えろ」という論(に対し)

★「法の姿」と“現実”とがズレた時、なぜ“現実”に合わせるのですか?

―もし「現実に合わせて」法を変えるのなら―

・路駐だらけの道路の駐禁措置は、すぐに解禁せねばならないですよネ?

・麻薬や拳銃が国内に満ち溢れたら、「現実に合わせて」解禁するのですか?

★そもそも“現実”“現実”って、一体何を指すのですか?

◆日本の軍事費は世界で約第7~8位(約5兆円)。自衛隊武装レベルは世界最高水準。海自は(1700億円イージス艦に象徴されるように)英海軍をも凌ぐほど高性能。他方、陸自ソ連上陸対策の90式戦車(10億円)をなぜか2007年まで300両も製造。 3000億円もの巨額の無駄遣い!〔水島朝穂『徹底分析 集団的自衛権』P.285 岩波2015〕

◆ステルス性能の最新鋭戦闘機F35-Bは一機180億円。日本は今後147機配備し(中期防)、併せて日米両方のF35-Bを発艦させるべく、護衛艦イズモを空母化する。歴然とした戦力そのものを日本は蓄え過ぎていないか!〔井上哲士議員の鋭い追及 2019.2.7参予委〕

◆その“現実”とは、私たち一般市民が本当に望んでいるものなのか?戦争や軍事行動によって利益を得る勢力が望んでいるだけではないのか

◆「もし攻められたら?」という抽象的で架空の問いは無意味。なぜなら、戦争有事や軍事衝突は、地震のような偶発的自然現象ではないからだ。戦争は、貧困・大失業・経済破綻などの非軍事的要因を引き金とする人為的災厄だ。これらを除去・緩和できるのは、軍事力の安易な発動ではなく、人間の努力以外にないのである。(長峯「憲法有事法制」『月刊 自治研』(2002年7月号))

◆もし、日本政府(安倍政権)がホントに本気で「北朝鮮がミサイル攻撃して来る」と信じているのならば、原発の再稼働は絶対に許されないはずである。しかし奇怪なことに、日本海側の原発(泊・柏崎・敦賀・大飯・高浜等)を中心に再稼働申請されている。なぜか?政府自身、北朝鮮がミサイル攻撃して来ないと確信しているからである!〔豊下楢彦&古関彰一『集団的自衛権と安全保障』岩波新書2014 P.67-71〕

 ↓(まさに)

①ミサイルの脅威から国民を守るため集団的自衛権解禁と説く安倍政権が、原発がミサイルで狙われた際の対策として「屋内退避」ぐらいしか考えていないなんて不真面目すぎて許せない!と厳しく批判〔山本太郎議員の鋭い追及 2015.7.29参特委〕

②仮に万万が一、北朝鮮が狂ったように日本を攻めるとすれは、それは日米が人為的に北朝鮮を「窮鼠(きゅうそ)猫を噛(か)む」状態に追い込み、日本攻撃に大儀名分を与えてしまったような場合だ。しかしそうさせないのが外交努力であり政治の責任のはず。

 

【第3部】憲法違反の戦争法制

【1】◆戦争法制(2015.7.15衆院特委で強行採決/7.16衆院採決強行)(15.9.17参院特委「聴取不能」状況下で“採決”偽装/9.19未明 参院採決強行)

(1)武力攻撃事態法・自衛隊法の改定【2015年戦争法制】

⇒“日本の安全”のためだから、国会承認は事前も事後もOK

◆2015年戦争法制では、朝鮮有事?を想定した「公海上での米軍艦船防護」等?を口実に自衛隊の直接的な武力行使が“集団的自衛権”の名の下に正当化される。実際に日本が攻撃された事態ではないにも拘らず、日本有事との関連を大きな口実するのが特徴

 ↓(もし「安倍改憲」になれば)

憲法に「自衛隊自衛権」を明記すれば、単純に“自衛”の名の下にこれらの軍事行動(戦争活動)が野放図に拡大してゆくことは、火を見るよりも明らか!

★存立危機事態:高村(こうむら)自民党副総裁「もしホルムズ海峡が通行不能となり、石油が入って来なくなって日本の寒冷地で凍死者が出たら、国民の生命・自由・幸福追求の権利が根底から覆される事態じゃないですか!」(2015.5.3 NHK憲法記念日討論)

★安保法制懇報告書(2014.5.15)安倍首相「紛争国から逃れ出る際にお父さんお母さんや子どもたちが、紛争国から出る時に乗る米軍の船を守ることができない!」

・しかし民間機での脱出例はあるが「米軍に救出された例は聞いたことない」(防衛省

★(しかも)安倍首相の掲げる事例はリアリティーがない。通常は、戦争状態に突入するずっと前の段階で現地の大使館が日本人に退避勧告を出して帰国を徹底させるので、「米軍艦船に乗って日本人が退避する」例など、あまりにも非現実的な想定。〔柳沢協二・元内閣官房副長官補(防衛省出身)NHKスペシャル2014.5.16〕

 ↓(しかも!)

★在韓米軍が行なう非戦闘員避難救出作戦は航空機なので、艦船という想定がそもそも間違い。しかも救出対象は在韓の米国民を筆頭に英・加・豪等の欧米系に限定される。日本国民が米軍艦船で救出されることは絶対にあり得ないシナリオだ。(豊下稔彦&古関彰一「集団的自衛権と安全保障」岩波新書 2014 P11)

◆絶対にあり得ない架空のシナリオ、人を欺くトリック(豊下稔彦)

◆国民に対して総理大臣自らが行なう「出る出る詐欺」(長峯)

安倍晋三は「一日総理大臣」を毎日やっているような人!(笑)

 

(2)重要影響事態法の新設【周辺事態法からの衣替え/2015年戦争法制】

1999年の周辺事態法は、当時から戦争法と呼ばれた悪法だったが、一度も発動されずに「重要影響事態法」案に衣替えする。周辺事態法すら違憲なのに、更に異常な内容に。“日本の安全のため”を口実に、日本への攻撃はないにも拘らず、

・米軍および(今回は)他国軍の戦争行為にも軍事支援を拡げる内容

・地理的制約の撤廃⇒米軍と他国軍への軍事支援が地球規模・グローバルに

◆出撃準備中の米軍戦闘機に日本の税金で給油:憲法上疑義があるから周辺事態法では見送られていたのに(当時の大森政輔法制局長官)、今回の内容は明確に違憲ではないか!〔共産党塩川鉄也(6/26)&本村伸子(7/2)鋭い追及 2015衆特委〕

 ↓(これに対し)

安倍晋三「出撃前の戦闘機への給油は、それ自体は「燃料補給」行為であって武力行使ではない。また給油場所は、実際の攻撃行為が行われる場所から遠く離れているので問題はない。」←エッ本当ですか!〔共産党塩川鉄也 15.6.26衆特委〕

 ↓(長峯流に翻訳すると)

★もし仮に「これから名古屋で人を殺す」と明言する殺人鬼に、安倍晋三が東京で「このお握り食べて元気出してネ。この切符で新幹線乗ってネ」と言い、食料・交通費を提供しても、ただの「エネルギー補給/燃料補給」ですか? 実際の殺人が名古屋で行なわれても「遠く離れている」から殺人共犯に問われないのですか? アホな!

 ↓(しかも)

◆法案が成立していない現時点で既に、日米軍事訓練は「敵地制圧」内容。明らかに専守防衛の逸脱だ。また今まで輸送不可とされた弾薬を「武器ではない」として法案では可としているなど違憲極まりない!〔社民党福島瑞穂の鋭い追及 2015.7.30参特委〕

 ↓(更に)

自衛隊統合幕僚監部作成の内部資料では、法案が成立した前提で部隊編成計画まで詳細に書かれており、大問題だ。〔共産党小池晃の鋭い追及 2015.8.11参特委〕

自衛隊陸自教範 兵站(へいたん)」:「兵站はできるかぎり前方で、主攻撃の支援に便利なように配置する。・・(戦場での)戦闘力を維持・増進して作戦を支援する」と明記。

米軍海兵隊教科書も「兵站武力行使と一体不可分」と明記。

兵站武力行使と一体不可分の軍事行動であることは明らかではないか!

共産党小池晃の鋭い追及 2015.7.29参院特委〕

 

(3)国際平和支援法【垣久法/2015年戦争法制の中の新法】

⇒日本の安全のためでないから「例外なき国会の事前承認」(??)

一見厳しそうな条件だが、実際には「重要影響事態」などと接続すればホゴにできる

・他国のテロ等「世界の」有事の際、他国の戦争行為に自衛隊が軍事支援する内容

・既に「補給・輸送・基地警備」などという違憲性の強い項目(テロ特措法)を行なってきた“実績”を背景に、今回は◆「弾薬提供」を付加

 ↓

★中谷防衛相「核兵器もミサイルも≪弾薬と同様、消耗品≫であるから武器ではない。だからその輸送は今回の法案上は除外されない」と答弁〔2015.8.5参院特委〕

◆補給・輸送の兵站部隊こそ、戦時国際法上では確実に攻撃対象たり得るのであり、文字通り武力行使と一体である。〔共産党志位和夫の鋭い追及 2015.5.27衆院特委〕

・「現に戦闘をしている現場」でなければ、必ずしも「非戦闘地域」(イラク特措)でなくても派兵可能に。歯止めなき戦争法制の実態がますます明らかに!

 ↓(しかも驚くべきことに)

◆昨日激戦だった場所も、今日銃声が≪現に≫聞こえてなければ、戦闘現場に近い場所でも「ハイ日本製の弾薬ど~ぞ!」「ミサイル運びましたよ~」なのか?アホな!

 

【2】“集団的自衛権”― 長峯流まとめ(笑)

あるところにアベさんという人が、「コベ」という犬を一匹飼っていました。そこへリカさんという大好きな女性から「ねぇ、うちの可愛いライオンの赤ちゃん、ぜひ飼って(買って)くれない?」と優しく頼まれ、アベさんは喜んで飼うことに決めました。ちなみにリカさんの苗字は「天(あめ)」です(笑)アベさんにとってリカさんの言葉は、いつも、文字通り「天の声」なのでした。

でも、近所のヤトウさんは、家族総出で警告に。「この赤ちゃんライオン、今は可愛いけど、数年経ったら手に負えなくなっちゃうよ!」アベさんは自信たっぷり反論。「大丈夫!だってライオンの赤ちゃんって、犬と同じだよ!ちゃんと限定的かつ安全に飼うから大丈夫!ヤトウの皆さんはホント心配症だよなぁ」

アベさんは赤ちゃんライオンに「シンゾー」と名付けました。そしてアベ・コベとアベ・シンゾーは一緒の檻で飼われることに。が数年後、アベさんが帰宅すると、コベはシンゾーに噛み殺されてしまってるではありませんか!アベさんは驚愕、落胆。そこへシンゾーが、かつての可愛いさとは似ても似つかぬ横暴な態度で現れました。「アベさん、今日からオレに従ってもらうよ!人間がこの檻に入って、オレ様が檻の外に出るからね!」それを物陰から見ていた天(あめ)リカさん、こっそりシンゾーにウィンク。「あぁ、これじゃあ、本当にあべこべじゃないかぁ・・」アベさんは檻の中で、悲しく嘆き続けました、とさ。おしまい(笑)

【出演】アベさん=愚かな政治指導者 ヤトウさんの家族=野党の皆さん 

犬・ワンちゃん(コベ)=個別的自衛権文民統制の効いた自衛力

ライオン(シンゾー)=集団的自衛権/コントロール不能となって暴走する軍事力

檻=国家権力と軍事力をきちんと拘束する憲法憲法による制約

 

【第4部】日本国憲法の先進的な価値原理

【1】“普通の国”より「普遍的価値の国」へ

【人権】と【民主主義】

つい200年余前の西欧でも70年前の日本でも、人権も民主主義も反体制の危険思想

今、どうか? ⇒「人権」も「民主主義」も今や世界共通の価値理念

【徹底した平和主義】

・90年前(パリ不戦条約)までは、侵略戦争禁止の約束など実現不可能と思われていた

・ほんの70年前まで日本では、天皇の統帥大権を否定するあり得ない危険思想だった

今、どうか? ⇒「侵略戦争禁止」程度の平和主義は多くの憲法で採用

◆「戦争放棄・戦力不保持・交戦権否認」(9条)や「平和的生存権」(前文)まで明記したのは日本だけ

◆戦争や軍事行動は国家権力の発動なしにはあり得ない。憲法9条はまさに世界で先駆的にそれを厳しく禁止してきたのである。

憲法9条こそは、日本全体を戦争から遠ざけ、私たち日本の市民に対する世界の信頼と安心を醸成させた、最大の「国際貢献」をしてきた功労者だ。この第9条こそ、世界共通の価値理念にしてゆくべきではないだろうか。

◆もし憲法に「自衛隊自衛権」を明記すれば、“自衛”の名の下に軍事行動(戦争活動)が野放図に拡大してゆくことは必至!

⇒しかも、軍事費の増大は火を見るよりも明らか!

2019年度:日本の軍事費5兆3000億円←年間の文教科学予算とはば同額

しかし、文教科学予算のうち1兆3000億円は「科学」関係予算。

「教育」予算は年間4兆円しかない!(義務教育賞はその中の1兆3000億円デス)

◆日本の軍事費は世界で第7~8位。しかしジェンダーギャップ指数(世界経済フォーラム )はなんと世界第110位前後。世界全体を150ヶ国とし、これを学校の一学年になぞらえると、「日本は軍事費では学年順位1ケタ!しかし男女平等に関しては学年順位110番前後の成績不良者」ということになる。この逆でなければならない!

 

【2】憲法は空気や水みたいに最も大切なもの

★2005年4月25日JR福知山線脱線事故は107名もの犠牲を出した大惨事。1分半の遅れにこだわって猛スピード出したことが原因。犠牲は、出て初めてその大きさに気づくもの

★今「自衛隊の明記」「国際環境の変化」等、多種のこだわりが改憲論を支配する。が、それらに強くこだわり続けることが、結果として、大切な憲法の「命」を失う―角を矯めて牛を殺す―ことになりはしないだろうか

日本国憲法は、近代立憲主義150年の歴史を満載した「完全装備の豪華客船」だ。

米国憲法になかった「社会権」「性別による差別の禁止」「女性参政権」は当然完備。しかも世界で最も先駆的な「戦争放棄・戦力不保持・平和的生存権」まで装備済み。

◆戦争も原発もTPPも、個人の尊厳と幸福追求からは隔絶した権力者や財界の保身・利益の象徴。そしてそれらは“国家の威信/電力安定/経済の国際化”といった耳触りの良い言葉でいつも本質が隠されてきた。しかし、もう騙されてばいけない。

◆戦争も原発も、「現実の結果」という≪答え≫をまざまざと人類に示した。あとは我々が本質をきちんと直視し、真に人類にとって必要な価値は何か、真に未来に向けた責任ある選択は何か、という≪正解≫を実現してゆくだけではないだろうか(終)

(ながみね・のぶひこ 愛知大学法学部教授・憲法

 

 

【付録】≪現行の象徴天皇制の問題点≫

【1】現行皇室典範で、生前退位を認めていない点

⇒しかし、生前退位を認めるか否かは憲法問題ではなく、あくまでも立法政策の問題。憲法には、生前退位を禁ずる規範内容も具体的規定も存在しない。

◆ただし「天皇にも人権があるから生前退位認めるべき」という理由付けには問題あり!

 ↓(なぜなら)

◆そもそも「人権」という考え方は、どんな血筋の人であれ、人一般が全て、同じ立場で憲法上の権利を享受するという原理。それは元来、身分制社会における「君主・貴族等の特権」に対抗して主張された概念である。

 ↓(それゆえ)

◆君主の血筋として認められてきた人々(天皇・皇族)が、その血筋であることの表明を一切辞めて「人一般(人間一般、一般の人)」になることなしに「人権」主体になることは、原理的にあり得ない。

◆「特定の血筋でしか継承できない特別の地位(天皇、国王等)」という考え方は、明らかに身分制概念そのもの。これは人権概念に全く逆行する。

この点をまず認識しなければ、天皇制関係の議論はぐちゃぐちゃに混乱してしまう。

 

①「天皇・皇族にだって最低限の人権はあるはずだ」という言い方はよくされるが、これは原理的には矛盾した主張だ。もし天皇や皇族が本当に「人権主体」ならば、その血筋であることの表明を辞めて「人一般(一般の人)」になったんデス、と表明しているに等しいからだ。

②あるいはもし、天皇や皇族に“人権があるはず”ならば、現在の状況は、特定の人々にだけあまりにも重大な人権制約を憲法の下で認めることになってしまい、それ自体重大な憲法違反になってしまうからだ。

 ↓(それはあたかも)

和歌山県民と三重県民にだけは、政治的な言論・表現の自由も、職業選択の自由も一切認めない、というのと同じ。

・両県民の結婚は全て、カップルごとに県議会で審議し、許可するかどうかは個別に決定する。今後結婚するカップルには、男子が誕生するまで、不妊治療も含め、諸々のことを一生懸命“頑張って”もらう、というのと同じ。

③「天皇・皇族にだって人権はあるはずだ」という言い方は、正しくは、「天皇・皇族といえども、人間としての尊厳はあるはずだ」と言うべき。

一方、人間としての尊厳の話は、裁判所を通じて実現可能な「人権(一般人の権利・自由)」の話とは異なることに注意。

天皇・皇族への特別扱い(良くも悪くも)をどのように減らしていくべきかという議論は、「天皇・皇族にだって人権はあるんだから」という俗っぽい前提から出発してはならない。その議論はあくまでも、

象徴天皇制を含む統治機構の制度が、日本国憲法上の原理原則【憲法上の公序の要請】にどこまで合致しているかいないか、という観点から行われるべきである。〔樋口陽一憲法(第3版)』P.179 (2007年)〕

 

【2】国民主権の下で、元号が「一世一元の制」になっている点

天皇死亡or天皇交代と同時に元号も変えるという「一世一元の制

◆日本の歴史上、実はたったの150年間しかない!

日本に「大王(オオキミ)/天皇」と呼ばれた最高主権者が存在した全時代約1600年間のうちの僅か10分の1にも満たない、という客観的事実

・「大化」「元禄」といった元号は存在しても、「大化天皇」「元禄天皇」はいない

・「令和」への変更は天皇の生死とは関係なく行なわれたが、一世一元の制墨守

 ↓

◆このような一世一元の制国民主権原理と調和的であるはずがない

 

【3】現行皇室典範で、女系天皇はおろか、女性天皇すら一切認めていない点

皇室典範1条「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する。」

論点A:女性天皇を認めないことは、憲法14条の「男女平等」に反するか?

論点B:「女性天皇を認めないこと」と「女系天皇を認めないこと」は同じか?

古来より、天皇になるには男性であれ女性であれ、「皇統に属する男系男子か男系女子」であることが絶対条件だった。⇒女系男子も女系女子も即位不可とされてきた

 

女性天皇天皇家血統 こぼれ話≫(★は女牲)

①古代の推古(すいこ)天皇★(在位592~628年)と敏達(びだつ)天皇はどちらも欽明(きんめい)天皇の子(異母兄妹)だが、推古は敏達の皇后になっている。二人の間には実子もいた。古代における異母兄妹問の結婚は珍しくない。

推古天皇★の同母兄は用(よう)明(めい)天皇。用明の息子が、有名な聖徳太子(厩(うまや)戸(ど)皇子(のみこ))。聖徳太子は叔母である推古天皇に仕えていたが、推古より先に死亡。推古は74歳まで36年もの長期にわたり異例の在位(当時の天皇は10年前後で交代している)。現在なら90歳近くの高齢になるまで、大きな政変もなく政権を維持したことになる。驚異!

蘇我入鹿(そがのいるか)を討伐した中大兄皇子(なかのおおえのみこ)で有名な天智(てんぢ)天皇は、敏達(びだつ)天皇の曾孫。大海人(おおあま)皇子(のみこ)はその同母(?)弟で、後の天武(てんむ)天皇。彼は壬申じんしんの乱で権力を掌握。

天智の娘は叔父天武の皇后となり、天武の死後、天皇になった。それが持(じ)統(とう)天皇★。

④天武と持続★の間に生まれた草壁皇子(くさかべのみこ)は、天武の次の天皇と期待されたが若くして病没(即位せず)。草壁の正妃は、天智の娘にして持続の16歳下の妹、元明(げんめい)天皇★。元明は、1歳年下の甥と結婚した姉さん女房だった。(妻は叔母、夫は甥、の関係)

天武の死後は、皇后(草壁の実母)の持統が即位。持統は天武の皇后だったから天皇になれたのではなく、父親が天皇で自分は「男系女子」だったから即位の資格があったという点に注意!持統も元明も天智の娘。後に即位する元正天皇★(文武天皇の姉、聖武天皇の伯母)も草壁・元明の娘。皆れっきとした「皇統に属する男系女子」であった。天皇になるには男性であれ女性であれ、「皇統に属する男系の男子・女子」であることが絶対条件だった。→女系男子も女系女子も即位不可

⑤他方、「皇統に属する男系男子」であれば全員に即位の資格があったかと言えば、全然そうではない。基本的に生母の血筋で即位ランキングが決まってしまい、選挙予想みたいに「当選確実」から「当落線上」「ほぼ無理」まで多岐に分かれていった。

⑥「鳴くよ(794)鶯(うぐいす)平安京」で有名な桓武(かんむ)天皇は、生母が朝鮮半島百済(くだら)からの渡来人の血筋の高野新笠(たかののにいがさ)★という身分の低い女性だったため、即位は難航した。しかも桓武の父の白壁王(しらかべのみこ)【光仁(こうにん)天皇】という人は、天智の男系の孫ではあったが、当初は即位ランキングから完全に外れていた官人(大納言)でしかなかった。以前、平成天皇が「桓武の母は朝鮮系」とわざわざ述べたことは、興味深い。

しかし政変が重なり、当時61歳の白壁王に突然白羽の矢が立ち光仁天皇として即位。今なら、有名でない80歳近くの“窓際族”官僚が突然総理大臣になる感じ。桓武はその11年後、遅めの44歳で天皇に。桓武は天智の血を引く男系男子(曾孫)だったので、これ以降の天皇家男系の血統は天武系ではなく、全て天智系に転換した。

 

【陛下・殿下】元来は敬称ではなく、逆の意味。殿下は宮殿の下の意、陛下は宮殿の下の長い大きな階段の下の意。元々中国の皇帝が住む、高い階段の上に在る宮殿に由来する語。日本には陛が存在しないので陛下という言葉は使われて来なかった。中国で陛下に立つ番兵(下っ端役人)に対し、「陛下の方にまで申し上げます」と言って取り次いでもらい、その番兵の許可を得たら、今度は大きな階段を登って宮殿の下まで行き、殿下にいる役人に「殿下の方にまで申し上げます」と言って宮殿内の貴人に取り次いでもらう。もし皇帝等が許可したら宮殿内に入れる(が、皇帝との直接対話は不可)。日本では「昇殿」と言い武士は長く昇殿できず。昇殿の初例は1098年源義家(頼朝の祖父の祖父)、内昇殿は1132年の平忠盛(清盛の父)が初という。(終)

 

 

【資料】GHQの中枢で憲法草案起草にあたったラウエルは法学博士号を持つ弁護士で、合衆国法務官も経験したことのある実務家でした。

 

憲法研究会草案に対してラウエルが詳細に書いたコメント(重要文書)

 

連合国最高司令部民政局行政部

1946年1月11日(GHQ草案作成の1ヶ月前)

 

幕僚長に対する覚え書き←マッカーサーの側近に提出

〔案件〕私的グループ(※憲法研究会)による憲法改正草案に対する所見

 

4.一般原則、第1条-第5条。主権に関するこれらの諸条項には、憲法が国の最高法規であること、および他の法規は憲法に抵触してはならないことを明確に規定する一条を追加するのがよいと考える。

5.国民の権利および義務、第6条-第18条。これらの諸条項は、権利章典をなすものであって、現行憲法明治憲法)におけるそれよりもはるかに実効的である。言論、出版、教育、芸術および宗教の自由は保障され、かつその他の社会的諸原則もその中に包含されており、そのすべては、民主主義と両立しうるものである。

14.いちじるしく自由主義的な諸規定。

a 国民主権が認められている。

b 出生、身分、性、人種および国籍による差別待遇が禁止されている。貴族制度が廃止されている。

c 労働者に認められなければならぬとされている利益には、一日8時間労働制、有給休暇、入院無料制および老齢年金が含まれている。

d 国民がその意思を直接立法に表明することができるレフェレンダム〔国民投票制度〕が規定されている。

e 皇室経費を含む財政全般に対する支配権が、国会に与えられている。繰越予算は禁止されている。会計検査が必要とされ、会計検査院の長は選挙によるものとされている。

f 財産所有の権利は、公共の福祉に役立つものでなければならぬという要件によって制限されるとされている。

g 土地は、公共の利益に最も良く合致するよう用いられなければならないとされている。

h 新憲法が、10年以内に制定されなければならないとされている。

15.要約 この憲法草案中に盛られている諸条項は、民圭主義的で、賛成できるものである。しかし、若干の不可欠の規定が入っていない。いかなる憲法も、承認を受けるには、以下に示す原理をおりこんでいなければならないと考える。

a 憲法は国の最高法規であることを、明確に宣明すること

b 国民の権利〔に関する規定〕を追加し、以下のことを実現すること

(1)人身保護令状により実現されるのと同様の諸権利を認めること

(2)刑事事件における迅速かつ公開の裁判を保障すること

(3)刑事被告人が、同一犯罪について二重の危険にさらされることを禁止すること

(4)自己負罪(self-incrimination)についての保護を確立すること

(5)刑事被告人が自己に不利益な証人のすべてと対決する権利を保障すること

(6)刑事被告人が弁護人に弁護を依頼する権利を保障すること

(7)不当な捜索および押収に対し国民を保障すること

c 立法についての専属的権限が国会に帰属する旨を明確にするよう、第19条の規定をはっきりさせること

d 第34条を修正し、内閣は国会の不信任決議があれば辞職しなければならないものとすること

e 裁判所が立法を違憲と宣言する権限をもつ旨を明確に規定し、かつ、それは、国会による再審査に服し、国会は両院の3分の2の議決により〔裁判所の判断を〕破棄できるものとすること

f 第44条を削除すること

g 憲法の改正は、国民の過半数の投票による承認をえて、はじめて有効になるものとすること

h 国の機関で国会または内閣に対し責任を負わないものは、憲法改正によるのでなければ、創設されることはないものとすること

i 都道府県および市町村の主要職員の公選を規定する条項を設けること

 

       陸軍准将

       民政局局長

        コートニー・ホイットニー

              ラウエル陸軍中佐起草

 

憲法研究会草案を熟読したラウエルが「高く評価できる所」と「欠けている所」の両方を詳細に記していることは、この草案を実際に下敷きにすれば一国の憲法が完成できる、と確信したからに他なりません。

 

(参考動画)

 長峯先生は、「守ろう9条 紀の川 市民の会」第15回総会に2週間先立つ5月19日(日)、三重県鈴鹿市で、「九条の会すずか」第15回総会で記念講演されました。

 主催者がチラシに記載していた演題は「今こそ憲法、安倍九条改憲にNO!を」であったようですが、その講演動画を紹介した「九条の会すずか」のブログの記載によれば、長峯先生が用意された演題は「安倍改憲のトリックを斬る~憲法制定過程の真実と9条を守るべき歴史的責任~」という、「紀の川 市民の会」と同じものであったようです。

 http://blog.livedoor.jp/suzuka_9jyou/archives/53387594.html

 6月2日の講演終了後、「九条の会すずか」の講演動画のことを話題にしたところ、長峯先生から、「こういう動画がアップされると、他のところで同じジョークが使いにくくなって困る」という述懐をお伺いし、「さもありなん」と納得した次第です。

  まあ、それはさておき、「守ろう9条 紀の川 市民の会」のレジュメと「九条の会すずか」の動画とを併せ学んでいただければ、とても有益だろうと確信します。

 

2019 5九条の会すずか長峯さん講演(2時間04分)

 https://www.youtube.com/watch?v=lypB93CDlvk

 

(付記・9人の憲法研究者の講演録を読む)

 過去「守ろう9条 紀の川 市民の会」の総会もしくは憲法フェスタで講演された憲法研究者は9人に及びます。

 各講演については、同会及び「九条の会・わかやま」の事務局を兼ねる南本勲(みなもと・いさお)さんが、会紙「九条の会・わかやま」に講演要旨を通常3回に分けて掲載する例となっています。

 私のブログと併せ、過去何度かご紹介していますが、10人目の憲法研究者・長峯信彦教授をお招きした講演会の内容をご紹介する機会に、過去の9人の憲法研究者の皆さんの講演要旨をまとめてご紹介します。

 

【9人の憲法研究者の講演録を読む~「守ろう9条 紀の川 市民の会」で語られたこと(吉田栄司氏、森英樹氏、清水雅彦氏、高作正博氏、石埼学氏、植松健一氏、本秀紀氏、三宅裕一郎氏、飯島滋明氏)】

 

2018年11月11日(日) 第15回 憲法フェスタ

飯島滋明氏(名古屋学院大学教授)

自民党改憲案にどう向かい合うか~私たちの具体的な対抗策は~

講演録① 会紙「九条の会・わかやま」363号

  http://home.384.jp/kashi/9jowaka/kikansi7/kikansi363.htm

講演録② 会紙「九条の会・わかやま」364号

  http://home.384.jp/kashi/9jowaka/kikansi7/kikansi364.htm

講演録③ 会紙「九条の会・わかやま」365号

 http://home.384.jp/kashi/9jowaka/kikansi7/kikansi365.htm

金原ブログ「飯島滋明さんの講演「自民党改憲案にどう向かい合うか~私たちの具体的な対抗策は~」レジュメ紹介~第15回 守ろう9条紀の川市民の会 憲法フェスタにて」

 http://blog.livedoor.jp/wakaben6888/archives/52677035.html

 

2018年3月24日(土) 第14回 総会

三宅裕一郎氏(三重短期大学教授 ※現・日本福祉大学教授)

憲法9条が果たしてきた役割~「自衛隊」の明記によって何が変わるのか?~

講演録① 会紙「九条の会・わかやま」346号

  http://9jowl.mikosi.com/kikansi6/kikansi346.htm

講演録② 会紙「九条の会・わかやま」347号

  http://9jowl.mikosi.com/kikansi6/kikansi347.htm

講演録③ 会紙「九条の会・わかやま」348号

  http://9jowl.mikosi.com/kikansi6/kikansi348.htm

金原ブログ「三宅裕一郎氏(三重短期大学教授)「憲法9条が果たしてきた役割-「自衛隊」の明記によって何が変わるのか?-」講演レジュメを読む(守ろう9条 紀の川 市民の会 第14回総会)」

 http://blog.livedoor.jp/wakaben6888/archives/51740965.html

 

2017年11月3日(金・祝) 第14回 憲法フェスタ

本 秀紀氏(名古屋大学大学院教授)

安倍政権の9条破壊を許さない~海外で戦争する『自衛隊』は認められない~

講演録① 会紙「九条の会・わかやま」336号

  http://9jowl.mikosi.com/kikansi6/kikansi336.htm

講演録② 会紙「九条の会・わかやま」337号

  http://9jowl.mikosi.com/kikansi6/kikansi337.htm

講演録③ 会紙「九条の会・わかやま」338号

  http://9jowl.mikosi.com/kikansi6/kikansi338.htm

金原ブログ「2日連続 名古屋大学大学院教授(本秀紀氏&愛敬浩二氏)から学ぶ憲法をめぐる動向」

 http://blog.livedoor.jp/wakaben6888/archives/51030439.html

 

2017年4月1日(土) 第13回 総会

植松健一氏(立命館大学教授)

安倍首相はなぜ憲法(constitution)を変えたいのか

講演録① 会紙「九条の会・わかやま」321号

  http://9jowl.mikosi.com/kikansi6/kikansi321.htm

講演録②  会紙「九条の会・わかやま」322号

  http://9jowl.mikosi.com/kikansi6/kikansi322.htm

講演録③ 会紙「九条の会・わかやま」323号

  http://9jowl.mikosi.com/kikansi6/kikansi323.htm

金原ブログ「植松健一氏(立命館大学教授)「安倍首相はなぜ憲法(constitution)を変えたいのか」講演レジュメを読む(守ろう9条 紀の川 市民の会 第13回総会)」

 http://blog.livedoor.jp/wakaben6888/archives/49789095.html

 

2016年4月2日(土) 第12回 総会

石埼 学氏(龍谷大学法科大学院教授)

戦争法は廃止、憲法9条が輝く日本を取り戻そう~今、私たちにできること~

講演録① 会紙「九条の会・わかやま」296号

  http://9jowl.mikosi.com/kikansi5/kikansi296.htm

講演録②  会紙「九条の会・わかやま」297号

  http://9jowl.mikosi.com/kikansi5/kikansi297.htm

講演録③ 会紙「九条の会・わかやま」298号

  http://9jowl.mikosi.com/kikansi5/kikansi298.htm

金原ブログ①「石埼学龍谷大学法科大学院教授の講演をレジュメから振り返る~4/2「守ろう9条 紀の川 市民の会」第12回総会から」

 http://blog.livedoor.jp/wakaben6888/archives/47245589.html

金原ブログ②「石埼学龍谷大学法科大学院教授の【設問】に答える~「安保法制」講師養成講座2」

 http://blog.livedoor.jp/wakaben6888/archives/47269693.html

 

2015年11月3日(火・祝) 第12回 憲法フェスタ

高作正博氏(関西大学教授)

「戦争法制」で日本はどんな国になるのか~私たちはどう対抗すべきか~

講演録① 会紙「九条の会・わかやま」285号

 http://9jowl.mikosi.com/kikansi5/kikansi285.htm

講演録②  会紙「九条の会・わかやま」286号

  http://9jowl.mikosi.com/kikansi5/kikansi286.htm

講演録③ 会紙「九条の会・わかやま」287号

  http://9jowl.mikosi.com/kikansi5/kikansi287.htm

講演録④ 会紙「九条の会・わかやま」288号

  http://9jowl.mikosi.com/kikansi5/kikansi288.htm

金原ブログ「「第12回 憲法フェスタ」(11/3 守ろう9条 紀の川 市民の会)レポートと11月中の和歌山での取組予定のお知らせ」

 http://blog.livedoor.jp/wakaben6888/archives/45947345.html

 

2014年11月8日(土) 第11回 憲法フェスタ

清水雅彦氏(日本体育大学教授)

ちょっと待った!集団的自衛権~日本を戦争する国にさせない~

講演録① 会紙「九条の会・わかやま」260号

 http://9jowl.mikosi.com/kikansi5/kikansi260.htm

講演録②  会紙「九条の会・わかやま」261号

  http://9jowl.mikosi.com/kikansi5/kikansi261.htm

講演録③ 会紙「九条の会・わかやま」262号

  http://9jowl.mikosi.com/kikansi5/kikansi262.htm

金原ブログ「『脱走兵』が日本の現実とならないように~11/8守ろう9条紀の川市民の会「第11回 憲法フェスタ」」

 http://blog.livedoor.jp/wakaben6888/archives/41187120.html

 

2014年3月30日(日) 第10回 総会

森英樹氏(名古屋大学名誉教授)

「国家安全保障基本法」は戦争体制を作りあげるもの

講演録① 会紙「九条の会・わかやま」243号

 http://9jowl.mikosi.com/kikansi4/kikansi243.htm

講演録②  会紙「九条の会・わかやま」244号

  http://9jowl.mikosi.com/kikansi4/kikansi244.htm

講演録③ 会紙「九条の会・わかやま」245号

  http://9jowl.mikosi.com/kikansi4/kikansi245.htm

金原ブログ「森英樹氏講演会を開催しました(守ろう9条 紀の川 市民の会・第10回総会)」

 http://blog.livedoor.jp/wakaben6888-3745ta/archives/37269182.html

 

2012年11月3日(土・祝) 第9回 憲法フェスタ

吉田栄司氏(関西大学教授)

改憲派憲法を変えて日本をどんな国にしようとしているのか

講演録① 会紙「九条の会・わかやま」205号

 http://9jowl.mikosi.com/kikansi3/kikansi205.htm

講演録②  会紙「九条の会・わかやま」206号

  http://9jowl.mikosi.com/kikansi3/kikansi206.htm

講演録③ 会紙「九条の会・わかやま」207号

  http://9jowl.mikosi.com/kikansi3/kikansi207.htm

講演会「風力発電の低周波音問題について」(5/25@ビッグ愛/風力発電の被害を考える会・わかやま)のご案内

 2019年5月20日配信(予定)のメルマガ金原No.3419を転載します。
 
講演会「風力発電低周波音問題について」(5/25@ビッグ愛/風力発電の被害を考える会・わかやま)のご案内
 
 「風力発電の被害を考える会・わかやま」世話人代表の松浦攸吉さんから、今週末(5月25日)に迫った同会主催の講演会広報への協力依頼のメールが届きましたので、ご紹介することとします。
 実は、5月3日の“HAPPY BIRTHDAY 憲法 in Wakayama 2019”の会場で、松浦さんからチラシを受け取りながら、忘れるともなく忘れてしまっていたものです。以前のように「ブログ毎日更新」を続けていれば、いつも「何か取り上げるべき材料はないだろうか?」と考えていましたので、早速紹介していたはずなのですが、いかんせん、「毎日更新」を止めてしまったため(5月になってからまだ3本しか書いていない)、こういう事態となってしまったのでした。
 
 さて、松浦さんから、この講演会にいての参加要請書の文書ファイルも送られてきましたので、それをまずお読みいただくことにしましょう。
 
(引用開始)
                              講演会開催のお知らせ
 
 平素は私たちの活動にご理解ご協力をいただき誠にありがとうございます。
 皆様もご承知のとおり生石山高原周辺に巨大風力発電建設計画が発表されて1年半が経過しました。その間、環境影響評価の配慮書、方法書等について事業者から当該地域に対しての住民説明会が開催されました。
 今年3月26日にはパシフィコ・エナジー株式会社からパシフィコ・エナジー和歌山西部洋上風力発電事業に係る計画段階環境配慮書が提出され、5000KW~12000KW級の風力を御坊市日高町美浜町海上に150基建設したいとの案が出されています。
 地域住民が風力発電建設で心配しているのは、環境破壊や景観問題もさることながら、最も心配しているのは風車周辺住民の健康被害問題です。
 しかし、環境省が2017年度に作成した「風力発電施設から発生する騒音等への対応について」の中身では、「風力発電施設から発生する超低周波音・低周波音と健康影響については、明らかな関連を示す知見は確認できなかった」ということになっており、風力発電施設から発生する低周波音20HZ以下については配慮する必要がないとなっています。
 低周波音被害と騒音被害の症状は全く異なっており、対策も異なります。
 和歌山県では風力発電施設近辺の方たちが被害を受け、低周波音被害特有の症状を訴えておられます。低周波音域20HZ以下を配慮しなくてよいということは風力発電の周辺で低周波音被害に苦しんでおられる方たちには配慮しなくてもよいということになります。
 事業者の説明会でも低周波音被害が無いかのごとく説明が進められてきています。
 住民が間違った判断をしないためには、本当のことを知る以外にないと考えています。
 このたび、医学的な立場からと工学的な立場から低周波音問題を考察していきたいと別紙の日程で講演会を企画しました。
 一人でも多くの方に講演会にご参加いただけるよう、お知り合いの方にお声かけを
よろしくお願いいたします。
                  風力発電の被害をを考える会・わかやま
                          世話人代表 松浦攸吉
                          電話 073-451-5960
(引用終わり)
 
 それでは、その講演会の内容については、チラシ記載情報を転記してご紹介しましょう。
 
(チラシ記載情報から引用開始)
講演会「風力発電低周波音問題について」
 
2019年5月25日(土)13時~16時
会場 県民交流プラザ・和歌山ビッグ愛9階会議室C
     和歌山市手平2丁目1-2(☎073-435-5200)
 
講師 翁長 博(おなが ひろし)氏
     工学博士
     元近畿大学建築学建築学科教授
     住環境の低周波音問題研究会 代表
 
講師 汐見幹夫(しおみ みきお)氏
     医学博士
     近畿大学医学部関西国際空港クリニック教授・所長
 
主催:風力発電の被害を考える会・わかやま
連絡・問い合わせ先:☎073-451-5960(松浦)
(引用終わり)
 
 私にしても、これ以上の情報の持ち合わせはないのですが、さらに関連情報を集めたいという方のために、リニューアルされた「風力発電の被害を考える会・わかやま」ホームページをご紹介しておきます。

20190520163624_00001

『日本国憲法』(長谷部恭男解説/岩波文庫)を読む~入院読書日記(3)

 2019年5月18日配信(予定)のメルマガ金原No.3418を転載します。
 
日本国憲法』(長谷部恭男解説/岩波文庫)を読む~入院読書日記(3)
 
 お待たせしました。待っていた人がいたかどうかはともかく、こう言わないと恰好がつかないので。
 3月23日に配信したブログ「『いま 日本国憲法は 原点からの検証(第6版)』(小林武・石埼学編)を読む~入院読書日記(1)」で予告した続編2編のうち、「『「表現の自由」の明日へ 一人ひとりのために、共存社会のために』(志田陽子著)については連休中の4月30日に配信し、5月半ば過ぎに何とか最後の『日本国憲法』(長谷部恭男解説/岩波文庫)にたどり着きました。
 
 簡単におさらいすると、私は、今年の1月から3月にかけて、左肺の自然気胸のため、
  2019年1月26日~1月30日
  2019年2月15日~2月19日(再発)
  2019年2月28日~3月5日(手術)
と3回の入院を繰り返したのですが、その2回目の入院時に読んだ『いま 日本国憲法は 原点からの検証(第6版)』(小林武・石埼学編)と、3回目の入院に際して読んだ『「表現の自由」の明日へ 一人ひとりのために、共存社会のために』(志田陽子著)及び『日本国憲法』(長谷部恭男解説/岩波文庫)の3冊について、「入院読書日記(1)~(3)」としてブログに読後感を発表しようと計画したものです。
 
 もともと、1月の入院直前まで、丸6年と2日間(2,193日間)ブログ毎日更新を続けていましたので、その当時であれば、3本のブログを書くのに足かけ3か月を要することなどあり得なかったのですが、翻って考えてみると、入院していなければこれらの本を読み通す機会も、無かったとは言いませんが、ずっと時間がかかった可能性は十分にあり、良いとも悪とも、何とも言えません。
 
 さて、前置きはこれくらいにして、「入院読書日記」の最終編をお送りします。これまでの2編と同様、敬体ではなく常体で書くことにします。
 

入院読書日記(3)
 
長谷部恭男 解説
2019年1月16日 第1刷発行
定価 680円+税
 
 過去、「入院読書日記」として取り上げてきた2冊の内、『いま 日本国憲法は 原点からの検証(第6版)』(小林武・石埼学編)は、11人の研究者・実務家が共同執筆した憲法教科書であり、『「表現の自由」の明日へ 一人ひとりのために、共存社会のために』(志田陽子著)は、1人の憲法研究者による「表現の自由」という単一テーマについての入門的解説書であったが、シリーズ最終作として取り上げる『日本国憲法』(長谷部恭男解説/岩波文庫)は、これら2冊とは大いに趣を異にする本である。
 どのような本であるかを知っていただくため、以下に目次を引用しよう。
 
目次(3~5頁)
日本国憲法(7~64頁)
大日本帝国憲法(65~80頁)
パリ不戦条約(戦争抛棄ニ関スル条約)(81~85頁)
ポツダム宣言(87~91頁)
降伏文書(93~97頁)
日本国との平和条約(99~131頁)
解説(長谷部恭男)(149~201頁)
索引(逆29~逆36頁)
英文 日本国憲法(逆1~逆28頁)
 
 以上の目次をご覧いただければ分かるとおり、本書は、日本国憲法の条文自体を読むための本であり、その理解に資するための関連資料と専門家(長谷部恭男早稲田大学教授)による解説を組み合わせるというオーソドックスな構成となっている。
 
 もっとも、うっかり「オーソドックス」と書いてしまったが、これは、必ずしも類書においても同じような構成がとられているということを意味しない。
 
 日本国憲法の条文を読むための本といえば、1982年に「写楽」編集部編による、条文と写真が交互に配列された『日本国憲法』(小学館)が話題を集め、この本は刊行から30数年が経った今も新版を出したりしてなお現役版であるが、付録として「大日本帝国憲法」と「英訳 日本国憲法」を収録するものの、英訳は字が小さ過ぎてとても読む気にならず、憲法についての解説は一切ない(29枚の写真説明はしっかり付いているが)。
 
 そこで、他の文庫から刊行されている類書2冊と比較してみることとした。
 なお、文春文庫から出ている『一日一条 読むための日本国憲法』東京新聞政治部/2014年4月)については、「「一日一条」読むだけでも、三か月で完全読破、完全理解。」「すべての条文を現役の政治部記者が豊富なエピソードを交えて、丁寧に解説。」(文藝春秋ホームページより)とあるとおり、著者(東京新聞政治部)による解説記事をメインとした編集となっており、ここでは取り上げない。
 
 
『新装版 日本国憲法』 学術文庫編集部 編
2013年8月29日 第1刷発行
定価 400円+税
 
 1985年3月に刊行された旧版は未見のため、どこが新しくなったのかは不明であるが、新装版の構成は以下のとおりである。
 
日本国憲法(5~58頁)
大日本帝国憲法(旧憲法)(61~77頁)
教育基本法(昭和22年制定の旧法)(78~82頁)
児童憲章(83~85頁)
英訳日本国憲法(118~87頁)
 
 講談社学術文庫版の特色をいくつか挙げてみよう。
 
〇付録として、児童憲章と併せ、「改正」前の教育基本法をそのまま掲載している(もしかしたら、旧版から入れ替える手間を惜しんだだけかもしれないが)。
〇解説が全く付いていない。だから定価を低く抑えられたのだろうが(私が購入した新装版第1刷は300円+税だった)。
大日本帝国憲法の「告文(こうもん)」は総ルビが振られているが、憲法発布勅語と本文に全くルビが振られていないのは物足りない。
 
 そして、もう1冊は角川ソフィア文庫版。
 
 
『ビギナーズ 日本国憲法』 角川学芸出版 編
株式会社KADOKAWA(角川ソフィア文庫
2013年12月25日 初版発行
定価 440円+税
 
 こちらの構成は一層シンプルなものである。
 
日本国憲法(7~80頁)※脚注・補注付き
大日本帝国憲法(81~103頁)
皇室典範(105~118頁) 
 
 いくつか特色を列記しよう。
 
〇旧憲法だけではなく、日本国憲法皇室典範についても、全ての漢字にルビが振られていて便利である。特に、大日本帝国憲法の総ルビ版は貴重。
〇「文庫版で唯一、「皇室典範」を収録」と初版の帯にうたっていた。ただし、特例法が制定されて生前譲位が実現した今となっては、改訂を要するところであるが。
日本国憲法については、脚注及び補注が付されている(凡例に「大西洋一氏(弁護士)の協力をあおいだ。」とある)。
 
 それでは、以上の講談社学術文庫版と角川ソフィア文庫版と比較して、今年1月に岩波文庫から刊行された『日本国憲法』の特色はどのような点にあるかを考えてみよう。
 
 まず第一に、長谷部恭男氏(早稲田大学教授)による53頁に及ぶ詳細な解説が付されていることが、類書との大きな違いである。
 長谷部教授による解説の構成は以下のようになっている。
 
1 大日本帝国憲法の成立と運用
(1)大日本帝国憲法の成立
(2)君主制原理と憲法の運用
2 日本国憲法の成立
(1)憲法成立の経緯
(2)「押しつけ憲法」論
(3)憲法成立の法理-八月革命説
3 天皇
(1)日本国の象徴
(2)国事行為・私的行為・公的行為
(3)皇位の継承
4 九条と平和主義
(1)不戦条約とグロティウス的戦争観
(2)個別的自衛権の行使
5 国民の権利及び義務
(1)近代立憲主義と基本権保障
(2)天皇および皇族と基本権
(3)外国人と基本権
(4)基本権の限界と制約
6 国会と内閣
(1)議院内閣制
(2)投票価値の較差と参議院選挙区の合区
(3)衆議院の解散
(4)緊急事態
7 裁判所
(1)法の権威と基本権の役割
(2)裁判官の良心と裁判員制度
(3)違憲判断の過少?
8 制度の保障
9 憲法の改正
参考文献 
  
 以上は、文庫の解説としては詳細であっても、これをもって日本国憲法全体の概説というには躊躇せざるを得ない。
 とはいえ、「入院読書日記(1)」で取り上げた『いま 日本国憲法は 原点からの検証(第6版)』(小林武・石埼学編)の「第1部 日本国憲法をデッサンする」(小林武氏執筆)について、「わずか100頁の中に、憲法全体のエッセンスを一貫した基準点に立ちながら叙述するという、一種の「力業」が見事に達成されている」と述べた評言は、長谷部教授の「解説」にもほぼそのまま当てはまると考えている。まさに、大家にして初めて書き得る文章だろう。
 
 もっとも、長谷部教授の文章に「力業」という言葉は似つかわしくないようにも思うが、今のところ適当な表現を思いつかない。
 例えば、「押しつけ憲法」論について論じた部分において、長谷部教授は、帝国議会でも活発な議論が行われ、先に紹介したものをはじめ、数多くの修正が加えられている。」という誰もが指摘する説明の後に、さりげなく以下のような文章を付け加えている(161頁)。
 
「少なくとも、ソ連の影響下にあった旧東欧諸国の憲法ほどの典型的な押しつけ憲法ではなかったと考えるべきであろう。」
 
 ここで思わず口許を緩めるかどうかは人それぞれだろうが、この部分に引き続き、長谷部教授は、「そもそも「押しつけ憲法 inposed constitution」という概念は、憲法制定権力が国民にあることを前提として、国民の自立的な意思決定なく成立した憲法を否定的に性格づけるべく用いられる概念である。こうした意味では、大日本帝国憲法をはじめとする君主制原理に基づく憲法も、すべて押しつけ憲法である。」と指摘する。同教授の意図が奈辺にあるかはともかくとして、これを読んだ者の多くは(少なくとも私は)、声高に「押しつけ憲法」論を唱える論者の多くが大日本帝国憲法に強い郷愁を感じているという事実に思い至ることになる。
 
 実は、長谷部教授による53頁に及ぶ解説中には、以上に引用したような箇所がまだまだ発見できる。私が「力業」という表現がふさわしくないのでは、と思う理由がお分かりいただけただろうか。
 
 そして、本書の、類書と比較した上での大きな特色の第2点は、豊富な付属文書とその選択の基準である。
 大日本帝国憲法と英文日本国憲法は、類書の多くも収録しているが、
 
パリ不戦条約(戦争抛棄ニ関スル条約)
降伏文書
日本国との平和条約
 
については、編者(実質的な編者は長谷部教授であろう)の明確な意図が込められている。この点について、長谷部教授は以下のように説明されている(149頁)。
 
「本書は日本国憲法および関係する基本的な文書を収める。基本的な文書としては、大日本帝国憲法から日本国憲法への変化および戦後の憲法体制の骨格の理解を助けるものを選んだ。」
 
 実は私自身、数年前に、戦後の憲法体制を考えるためには、少なくともポツダム宣言以降の重要文書の内容を理解することが必須であることに思い至り、以下のようなブログを書いたことがあった。
 
2014年1月1日
 
2014年8月30日
 
 岩波文庫版『日本国憲法』の基本的文書の選択方針について、私が全面的に賛意を表するのは以上のような経緯による。
 
 単に条文を読む、というだけであれば、インターネットでいくらでも検索して読むことができる。
 試みに、以上に取り上げた3種類の文庫に収録された法令等をネットで読むためのリンクを貼ってみよう。
 
[3文庫共通]
 
 
 
 
 
 以上のように、パソコンやタブレットを使えば、容易に原文あるいは信頼できる訳文を探し出すことができるとはいえ、誰もがそのようにして憲法を理解するための基本的文書を読んでみよう、ということにはならないだろう。
 関連文書どころか、憲法自体、どれだけの国民が全文を読んだことがあるのか、読んでもいないものを「改正すべき」とか「改正すべきでない」などと議論することの危うさ(そういう世論調査がずっと行われてきたのだが)に対する懸念こそ、これまで多くの類書が出版されてきた理由だと思われる。
 今回、満を持して岩波文庫が世に出した『日本国憲法』は、長谷部恭男教授という第一人者による詳細な解説、戦後の憲法体制を理解する上で不可欠な重要文書の多くを収録しており、社会人、学生など、広汎な国民各層の人々が1冊ずつ入手し、折に触れて読んでいただきたいと念願するものである。
 
(弁護士・金原徹雄のブログから/憲法条文掲載書籍関連)
2013年9月24日
2016年7月5日
 
(弁護士・金原徹雄のブログから/長谷部恭男さん関連)
2014年5月16日
2015年6月7日
2015年6月11日
2015年6月16日
2016年2月6日
2016年9月2日
2018年2月18日

長峯信彦愛知大学教授(憲法学)講演会のご案内(2019年6月2日@和歌山市河北コミセン/守ろう9条 紀の川 市民の会)

 2019年5月16日配信(予定)のメルマガ金原No.3417を転載します。
 
長峯信彦愛知大学教授(憲法学)講演会のご案内(2019年6月2日@和歌山市河北コミセン/守ろう9条 紀の川 市民の会)
 
 私も運営委員を務める地域9条の会「守ろう9条 紀の川 市民の会」は、2005年1月に結成総会を開いて以来、概ね毎年春に総会を、秋に憲法フェスタを開催してきました。
 県内の他の地域9条の会と比較して、当会の大きな特色と思われるのは、上記総会と憲法フェスタでの記念講演に多くの憲法学者の皆さんをお招きしてきたことでしょう。憲法研究者以外にも、経済学者や原子力工学の研究者、故・月山桂弁護士(和歌山)、梅田章二弁護士(大阪)、羽柴修弁護士(兵庫)などにも来ていただいていますが、憲法学者に限定しても以下のような豪華ラインナップです。
 
吉田栄司関西大学教授(2012年憲法フェスタ)
森英樹名古屋大学名誉教授(2014年総会)
清水雅彦日本体育大学教授(2014年憲法フェスタ)
高作正博関西大学教授(2015年憲法フェスタ)
石埼 学龍谷大学教授(2016年総会)
植松健一立命館大学教授(2017年総会)
本 秀紀名古屋大学大学院教授(2017年憲法フェスタ)
三宅裕一郎三重短期大学教授(2018年総会) ※現・日本福祉大学教授
飯島滋明名古屋学院大学教授(2018年憲法フェスタ)
 
 なお、過去の記念講演の内容については、「九条の会・わかやま」にその要旨が掲載される例となっていますので、レジュメなどをご紹介した私のブログで併せ、過去の9人の先生方の講演内容をご紹介した「九条の会・わかやま」と私のブログへのリンクを巻末に掲載しておきますのでご参照ください。
 
 さて、今年は例年よりも開催時期が少し遅くなりましたが、第15回総会が来る6月2日(日)午後2時から、いつものように和歌山市河北コミュニティセンター2階多目的ホールで開催されます。
 今年の記念講演は、愛知大学教授の長峯信彦先生をお招きしました。当会がお招きする10人目の憲法学者であり、その内東海地方から来ていただくのはこれで5人目となります。
 入場無料、会員でなくてもどなたでもご参加いただけます。
 1人でも多くの方にご来場いただきたく、よろしくお願いします。
 
 以下に、チラシ記載情報を転記します。
 
(チラシ文字情報から引用開始)
<表面>
9条を守ろう 私たちの手で!!
守ろう9条 紀の川 市民の会 第15回総会
9条をまんなかに ~えがこう平和への道~
 
開催日:2019年6月2日(日)
会 場:河北コミュニティセンター
     (和歌山市市小路192-3 <アクセスは裏面>)
会員でなくても、どなたでもご参加いただけます!
 
【開始】14:00 【終了】16:40頃
 
第1部 講演「安倍改憲のトリックを斬る~憲法制定過程の真実と平和憲法を守る歴史的責任~」
     講師 長峯信彦氏(愛知大学教授・憲法学)
 
 安倍首相は2月の自民党大会で、「いよいよ立党以来の悲願である憲法改正に取り組む時が来た」と述べ、改憲への執念をあらわにしました。そして、自衛官募集に自治体の協力が得られないから、「憲法9条自衛隊の明記が必要だ。災害派遣を受けるなら募集活動に協力しろ」と、国民の自衛隊に対する気持につけ込み、世の中の「空気」を変え、自衛隊の明記によって徴兵制にまでつながりそうな極めて危ういことを述べています。
 安倍首相は、9条改憲への執念を捨てるどころか、ますます煮えたぎらせています。参議院選挙で何としても自民・公明・維新などの改憲勢力に打ち勝ち、安倍改憲を断念させるためには、私たちはどのようにすればよいのか、長峯先生とともにみんなで考えたいと思います。多数のみなさまのご参加をお願いいたします。
 
第2部 総会議事
 
主催:守ろう9条 紀の川 市民の会 
お問合せ先:073-462-0539 原
 
<裏面>
講師のご紹介
☆長峯信彦(ながみね・のぶひこ)さん
 1965年11月名古屋生まれ。早稲田大学法学部・同大学院法学研究科を経て、1994年早稲田大学法学部助手。1998年愛知大学法学部助(准)教授、2009年同大学教授(現職)。専門は憲法学。特に、アメリ憲法における「国旗焼き棄て」「国旗敬礼拒否」などをめぐる思想良心・表現の自由の問題や、日本のマスメディアの問題など。近年は、「憲法9条」改悪反対や(いわゆる)“慰安婦”問題などに関する講演多数。名古屋を中心とする「安倍内閣の暴走を止めよう!共同行動実行委員会」共同代表。
 著書は、樋口陽一他編『憲法の尊厳-奥平憲法学の継承と発展』(2017年)、大須賀明編『社会国家の憲法理論』(1995年)、『憲法未来予想図』(2014年)など多数。
 趣味はヴァイオリン演奏。早稲田大学在学中は早大オーケストラに在籍し、カーネギーホールなどの欧米各地で演奏されたとのことです。
 
日本国憲法を口語訳してみたら』
 「日本人として一度は日本国憲法を読んでおくべきだと思うけど、意味わかんなそうだし!」というあなたに朗報。「上から目線」の憲法を思わず笑い転げそうになる口語訳にしてみました。知らないと国民として損することもあるから要注意。エラい法学部教授もチェックしてるから(長峯信彦さん監修)、内容もお墨付き! 《幻冬社HPより》
<河北コミュニティセンターへのアクセス>
 所在:和歌山市市小路192-3 TEL:073-480-3610 (駐車場あり)
南海本線 紀ノ川駅下車徒歩3分(改札を出て左折し120m、左折し踏切を越え180m、右側)
和歌山バス 六十谷線(川永団地⇔南海和歌山市駅)梶取東バス停下車すぐ
 
<お知らせ>
①6月2日当日、託児のご希望がある場合は5月22日(水)までにご相談ください。
 相談先:090-3709-7136(馬場)
②補聴器を使用されている方がよりクリアにお聞きいだけるように、会場に『磁気ループ』を設置します。使用できるのは「Tモード」「MTモード」がある補聴器です。
 
                      「第15回総会」へのご参加のお願い
                                     「守ろう9条 紀の川 市民の会」代表  原 通範
 私たちの「守ろう9条 紀の川 市民の会」は、9条を中心に日本国憲法を「改正」しようという動きが強まった2005年1月に発足しました。以来14年が経過しました。この間、私たちは憲法「改正」をまだ許しておりませんが、特に、第1次安倍内閣の発足以降、改憲の動きはますます強まり、第2次安倍内閣になって以降、集団的自衛権行使容認、安全保障法制(戦争法)の制定など、憲法9条をないがしろにし、海外でも戦争ができる体制になっています。そして、安倍首相は本命の憲法9条改憲に向けて「いよいよ立党以来の悲願である憲法改正に取り組むときが来た」と述べ、改憲への執念をあらわにしています。安倍9条改憲を絶対に許さず、安倍退陣に追い込むためには、私たちはどのようにすればよいのか、愛知大学教授・長峯信彦さんのお話をお聞きしながらご一緒に考えたいと思います。多数のみなさまのご参加をお待ちいたしております。
(引用終わり)
 

(付記・9人の憲法研究者の講演録を読む)
 過去「守ろう9条 紀の川 市民の会」の総会もしくは憲法フェスタで講演された憲法研究者は9人に及びます。
 各講演については、同会及び「九条の会・わかやま」の事務局を兼ねる南本勲(みなもと・いさお)さんが、会紙「九条の会・わかやま」に講演要旨を通常3回に分けて掲載する例となっています。
 私のブログと併せ、過去何度かご紹介していますが、10人目の憲法研究者・長峯信彦教授をお招きする講演会をご紹介する機会に、過去の9人の憲法研究者の皆さんの講演要旨をまとめてご紹介しておきます。
 
【9人の憲法研究者の講演録を読む~「守ろう9条 紀の川 市民の会」で語られたこと(吉田栄司氏、森英樹氏、清水雅彦氏、高作正博氏、石埼学氏、植松健一氏、本秀紀氏、三宅裕一郎氏、飯島滋明氏)】
 
2018年11月11日(日) 第15回 憲法フェスタ
飯島滋明氏(名古屋学院大学教授)
自民党改憲案にどう向かい合うか~私たちの具体的な対抗策は~
金原ブログ 
「飯島滋明さんの講演「自民党改憲案にどう向かい合うか~私たちの具体的な対抗策は~」レジュメ紹介~第15回 守ろう9条紀の川市民の会 憲法フェスタにて」
 
 
2018年3月24日(土) 第14回 総会
三宅裕一郎氏(三重短期大学教授 ※現・日本福祉大学教授)
憲法9条が果たしてきた役割~「自衛隊」の明記によって何が変わるのか?~
 
2017年11月3日(金・祝) 第14回 憲法フェスタ
本 秀紀氏(名古屋大学大学院教授)
安倍政権の9条破壊を許さない~海外で戦争する『自衛隊』は認められない~
 
2017年4月1日(土) 第13回 総会
植松健一氏(立命館大学教授)
安倍首相はなぜ憲法(constitution)を変えたいのか
講演録① 会紙「九条の会・わかやま」321号
講演録② 会紙「九条の会・わかやま」322号
講演録③ 会紙「九条の会・わかやま」323号
金原ブログ 「植松健一氏(立命館大学教授)「安倍首相はなぜ憲法(constitution)を変えたいのか」講演レジュメを読む(守ろう9条 紀の川 市民の会 第13回総会)」

2016年4月2日(土) 第12回 総会
石埼 学氏(龍谷大学法科大学院教授)
戦争法は廃止、憲法9条が輝く日本を取り戻そう~今、私たちにできること~
講演録① 会紙「九条の会・わかやま」296号
講演録② 会紙「九条の会・わかやま」297号
講演録③ 会紙「九条の会・わかやま」298号
金原ブログ① 「石埼学龍谷大学法科大学院教授の講演をレジュメから振り返る~4/2「守ろう9条 紀の川 市民の会」第12回総会から」
金原ブログ② 「石埼学龍谷大学法科大学院教授の【設問】に答える~「安保法制」講師養成講座2」

2015年11月3日(火・祝) 第12回 憲法フェスタ
高作正博氏(関西大学教授)
「戦争法制」で日本はどんな国になるのか~私たちはどう対抗すべきか~
講演録① 会紙「九条の会・わかやま」285号
講演録② 会紙「九条の会・わかやま」286号
講演録③ 会紙「九条の会・わかやま」287号
講演録④ 会紙「九条の会・わかやま」288号
金原ブログ 「「第12回 憲法フェスタ」(11/3 守ろう9条 紀の川 市民の会)レポートと11月中の和歌山での取組予定のお知らせ」

2014年11月8日(土) 第11回 憲法フェスタ
清水雅彦氏(日本体育大学教授)
ちょっと待った!集団的自衛権~日本を戦争する国にさせない~
講演録① 会紙「九条の会・わかやま」260号
講演録② 会紙「九条の会・わかやま」261号
講演録③ 会紙「九条の会・わかやま」262号
金原ブログ 「『脱走兵』が日本の現実とならないように~11/8守ろう9条紀の川市民の会「第11回 憲法フェスタ」」

2014年3月30日(日) 第10回 総会
森英樹氏(名古屋大学名誉教授)
「国家安全保障基本法」は戦争体制を作りあげるもの
講演録① 会紙「九条の会・わかやま」243号
講演録② 会紙「九条の会・わかやま」244号
講演録③ 会紙「九条の会・わかやま」245号
金原ブログ 「森英樹氏講演会を開催しました(守ろう9条 紀の川 市民の会・第10回総会)」
 
 

2012年11月3日(土・祝) 第9回 憲法フェスタ
吉田栄司氏(関西大学教授)
改憲派憲法を変えて日本をどんな国にしようとしているのか
講演録① 会紙「九条の会・わかやま」205号
講演録② 会紙「九条の会・わかやま」206号