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放送予告・ETV特集「“核のごみ”に揺れる村~苦悩と選択 半世紀の記録~」(2018年6月2日)

 2018年5月27日配信(予定)のメルマガ金原No.3160を転載します。
 
放送予告・ETV特集「“核のごみ”に揺れる村~苦悩と選択 半世紀の記録~」(2018年6月2日)
 
 興味深いテーマを綿密な取材によって番組化するNHK・EテレのETV特集。これまでも、たびたび本ブログでご紹介してきました。一つには、紹介すると、自分自身が録画予約するのを忘れないから、ということもあるのですが。
 もっとも、私が使っている録画機のハードディスク容量に余裕がなく、限界が近付いているのを「どうしたものか?」と悩んでいるのですが。
 
 ところで、今日ご紹介するのは、6月2日(土)放送予定の「“核のごみ”に揺れる村~苦悩と選択 半世紀の記録~」なのですが、放送まで既に1週間を切ったこの時期になっても、公式サイトに予告編はアップされているものの、番組を案内する文章が1行も掲載されていません。少なくとも、私はこんな案内は初めて見ました。何か事情でもあるのでしょうか?と、つい勘繰りたくなってしまいます。
 
NHK・Eテレ
本放送 2018年6月2日(土)午後11時00分~午前0時00分
再放送 2018年6月7日(木)午前0時00分~1時00分(6日深夜)
ETV特集「“核のごみ”に揺れる村~苦悩と選択 半世紀の記録~」
 
 仕方がないので、まず、公式サイトに掲載された3枚の写真のキャプションをご紹介します。
 
1枚目 「核燃料サイクル施設(青森県六ヶ所村)」
2枚目 「“核のごみ”(高レベル放射性廃棄物)」
3枚目 「元科学技術庁長官」
 
 3枚目に写っているのは田中眞紀子氏であり、田中氏が科学技術庁長官を務めたのは、1994年6月から翌年8月まで、村山内閣の時でした。
 ちなみに、科学技術庁は、2001年1月、省庁再編により、文部省と統合して文部科学省が誕生していますが、田中眞紀子氏は、2012年10月から12月までの短期間、民主党の第3次野田内閣で文部科学大臣を務めています。
 もっとも、省庁再編まで科学技術庁に集約されていた原子力安全局や原子力局の機能は、内閣府資源エネルギー庁に大半移管されましたが。
 
 もう1つ、番組サイトに掲載されている予告編(25秒)を文字起こししておきます。
 
原子力の最大の課題とも言われる“核のごみ”。最終処分地の選定は進まず、青森県六ヶ所村での保管が続いています。
田中眞紀子科学技術庁長官)『国民みんなの問題なのに、おとなしいところがしょわされた。』
“核のごみ”の知られざる歴史に迫るETV特集。6月2日土曜夜11時。」
 
 これで、少しは番組の内容が想像できるようになったでしょうか。和歌山県においても、関西電力によって、使用済み核燃料の中間貯蔵施設が、“パンダの町”白浜町に作られるのではないか?という疑惑が飛び交っていますが、そのような地域であればこそ、青森県六ヶ所村の経験に学ぶ必要が高いのではないかと思います。
 
 六ヶ所村といえば、現在建設中の再処理工場が有名ですが、“核のごみ”との関連でいえば、既に稼働している「低レベル放射性廃棄物埋設センター」と「高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センター」が重要です。
 原子力資料情報室ホームページの中の「とめよう!六ヶ所再処理工場」から、以下の部分をご紹介しておきます。
 
(抜粋引用開始)
 六ヶ所村は本州の一番北、青森県の太平洋側、下北半島の付け根に位置しています。南方約30キロメートルには三沢市があります。六ヶ所村には再処理工場も含めて核燃料サイクル基地と呼ばれる4つの核施設があります。
 「ウラン濃縮工場」は天然のウランを濃縮する施設です。天然のウランは約99.3%の核分裂しにくいウラン、約0.7%の核分裂を起こしやすいウランでできています。この核分裂しやすいウランを約4~5%に濃度を高めた濃度ウランを作り出す施設です。
 「低レベル放射性廃棄物埋設センター」は、原発の運転によって発生する低レベル廃棄物(黄色いドラム缶など)を埋め捨てて最終処分する施設です。
 「高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センター」は、フランスやイギリスに委託した海外再処理(全体で約7100トン)によって発生した廃棄物を一時的に貯蔵する施設です。現在はフランスから日本に返還輸送された高レベルガラス固化体を保管しています。
(引用終わり)
 
(参考サイト)
日本原燃 原子燃料サイクル施設概要
 
原子力資料情報室 とめよう!六ヶ所再処理工場
 
〇映画『六ヶ所村ラプソディー』(鎌仲ひとみ監督/2006年)公式サイト

「連続講座 反安関西憲法セミナー 改憲問題について考える 第1回」(2018年6月7日@龍谷大学響都ホール校友会館)のご案内

 2018年5月26日配信(予定)のメルマガ金原No.3159を転載します。
 
「連続講座 反安関西憲法セミナー 改憲問題について考える 第1回」(2018年6月7日@龍谷大学響都ホール校友会館)のご案内
 
 私のブログでは、憲法、平和、原発をはじめ、私が関心を寄せているテーマを中心に、様々な企画の案内を掲載することも多いのですが、当然のことながら、その大半は和歌山県下、それも私が住む和歌山市で行われる企画に偏ってしまうことは避けられません。
 とはいえ、時には例外もある訳で、私自身が参加できそうもない県外の企画であっても、ひょんなことでも何でも、私のブログを通して企画の存在を知り、参加してくださる方が1人でもおられるなら幸いだと思えるものをご紹介することもあります。
 今日ご紹介する、6月7日(木)に京都市で開かれる「連続講座 反安関西憲法セミナー 改憲問題について考える 第1回」(主催:安保法制に反対する関西圏大学有志の会)も、そのようなものの1つです。
 実は、この連続講座のご案内は、私も法学部卒業生として賛同者に名前を連ねている「違憲安全保障法に反対にする大阪市立大学有志の会(略称:反安市大)」からの久しぶりのメールで知ったものです。
 そういえば、「反安市大」からのお知らせに基づいて、私がブログでご紹介した企画が1つあったことを思い出しました。それは、最近惜しくも訃報に接したジャーナリストの岸井成格(きしいしげただ)さんと、和歌山県みなべ町出身で、元原子力安全基盤機構(JNES)在職中に公益通報を行いながら無視されて3.11を迎えたという藤原節男さんが講演されるという興味深い企画でした(報道の自由とは何か(9/13)岸井成格氏講演会@大阪大学会館のご紹介(付/6・9「安倍政権と報道の自由」集会アピール)/2016年8月30日)。
 
 あれからもう2年近くが経ったのですね。その2年近くの間に何が変わったかといえば、その最大のものは、2017年5月3日の安倍改憲メッセージに端を発して、9条改憲自衛隊明記)がいよいよ具体的政治日程にのぼろうとしていることでしょう。
 ということで、「違憲安全保障法に反対にする大阪市立大学有志の会」もその一員である「安保法制に反対する関西圏大学人の会(反安関西)」が、「改憲問題を考える」連続講座を開催することになったのでしょう。
 以下に、「安保法制に反対する関西圏大学人の会」ホームページに掲載された開催案内を転記します。
 
(開催案内から引用開始)
連続講座 反安関西憲法セミナー
改憲問題について考える 第1回
 
「国体」化する憲法
福家崇洋(ふけ たかひろ)
京都大学教員、日本思想史。主な 著書に『戦間期日本の社会思想―「超国家」へのフロンティア』(人文書院
 
戦時と平時のあいだ
藤原辰史(ふじはら たつし
京都大学教員、農業史・ドイツ現代史。主な著書に『ナチスのキッチン』(共和国)
 
日時 2018年6月7日(木)18:00~20:00
場所 龍谷大学響都ホール校友会館(JR京都駅八条東口、アバンティ9階)
入場無料
 
主催 安保法制に反対する関西圏大学有志の会
(引用終わり)
 
 なお、上記情報の他に、チラシには、
〇少女の手から離れて飛んで行く赤い風船の絵と、これに「私たちは 何を手放すことになるのか?」というキャプションが添えられています。
〇「第2回セミナー 7月8日 関学梅田キャンパス」と予告されています。
 
 安保法制の制定阻止を目指して2015年に各地の大学で燃え上がった熱気は、あれから3年間、「同じように」という訳にいかないのは当たり前ですが、今目前に迫ってきた9条改憲は、違憲の安保法制を「違憲でなくす」ために企てられているのですから、少なくとも、あの時立ちあがった者が、今眠っている訳にはいきませんものね。
 ということで、平日の夜、京都まで出かける時間的余裕のないのが残念ですが、京都市近辺にお住まいでご都合のつく方には、是非参加していただきたいと思い、ご案内しました。
 
 なお、「安保法制に反対する関西圏大学有志の会」ホームページの中の「構成団体」のコーナーは「しばらくお待ちください。」となっていました。
 「違憲安全保障法に反対にする大阪市立大学有志の会(略称:反安市大)」は間違いなく構成団体なのでしょうが(だから案内が来た)、私も附属中学校の卒業生として(?)賛同者に名前を連ねるは「安全保障関連法制の廃止を求める和歌山大学有志の会(WAASA)」は、今どうなっているのだろうか?まあ、皆さん忙しいとは思うけれど。

日本弁護士連合会「憲法9条の改正議論に対し、立憲主義を堅持し、恒久平和主義の尊重を求める立場から課題ないしは問題を提起するとともに、憲法改正手続法の見直しを求める決議」を読む

 2018年5月25日配信(予定)のメルマガ金原No.3158を転載します。
 
日本弁護士連合会「憲法9条の改正議論に対し、立憲主義を堅持し、恒久平和主義の尊重を求める立場から課題ないしは問題を提起するとともに、憲法改正手続法の見直しを求める決議」を読む
 
 本日(2018年5月25日)、香川県高松市において、日本弁護士連合会の第69回定期総会が開かれ、2本の総会決議が採択されました。
 
 1つは、「安心して修習に専念するための環境整備を更に進め、いわゆる谷間世代に対する施策を早期に実現することに力を尽くす決議」であり、これも非常に重要な決議ですので、日弁連サイトでお読みいただければと思います。
 
 そして、もう1つが「憲法9条の改正議論に対し、立憲主義を堅持し、恒久平和主義の尊重を求める立場から課題ないしは問題を提起するとともに、憲法改正手続法の見直しを求める決議」です。
 表題をもう少し短くできなかったのかと思われるかもしれませんが、そうならざるを得なかった事情も何となく想像されますので、文句をつける気にもなりません。
 
 安倍9条改憲NO!3000万人署名に取り組んでおられる方々から見れば、「生ぬるい」と思われるかもしれませんが、約4万人の多様な意見の会員を抱える強制加入団体(日本で弁護士の仕事をしようとすれば日弁連の会員にならない訳にはいきません)である日本弁護士連合会としては、過去の議論の積み重ね(憲法に関わるいくつもの決議、意見書、声明などがあります)を踏まえつつ、ぎりぎりの合意点を探る作業の結果、本日の採択に至ったものであり、私としては、「よく頑張ってくれた」と思っています。もっとも、そうは思わない会員も当然いるでしょうが(そうれも色々な立場からの)。
 
 今日の決議の2日前(5月23日)に開かれた日弁連の定例会見の模様を伝える弁護士ドットコム・ニュースの一部を引用します。
 
弁護士ドットコム・ニュース 2018年05月23日 22時16分
日弁連、自民「憲法9条に自衛隊明記案」の問題指摘…議論と見直し求める決議案
(抜粋引用開始)
 日本弁護士連合会は5月23日、東京・霞が関弁護士会館で定例会見を開き、自民党が進めている憲法9条改正について、議論と見直しを求める決議案を明らかにした。決議案は、5月25日に高松市で開始される定期総会で議論され、採決されるという。
 これは、今年3月に自民党憲法改正推進本部が条文イメージを示したことを受けたもの。条文イメージは、憲法9条1項および2項は残しつつ、憲法9条の2を新設、自衛隊等について明記するという案だった。
 今回の決議案では、立憲主義を堅持し、恒久平和主義の尊重を求める立場から、自衛隊を明記することの課題や問題を指摘。憲法改正の手続き法の見直しを求めるとともに、国民に広く議論を呼びかけたいとしている。
 この日の会見で、日弁連の阪本康文副会長は決議案の提案理由について、「国民が熟慮できる機会が保障されること、そして国民の間で憲法改正の意味が十分理解された上で議論が深められるように自らの責務があることを決議するものです」とした。
(引用終わり)
 
 日弁連では、会長(任期2年)を補佐する副会長(任期1年)は今年から15人に増員されていますが、各副会長は、それぞれ所掌する分野が決められており(1人で複数受け持つことになる)、上記ニュースに登場する阪本康文副会長は、憲法問題に関する主担当の副会長ということになります。
 ちなみに、阪本副会長は和歌山弁護士会会員(司法修習37期)ですが、憲法問題の主担当となったということを4月の就任前にうかがい、私は、「それは大変ですね」と同情する一方、「阪本先生なら大丈夫だろう」と安心し、阪本先生を憲法問題の担当とした菊地裕太郎日弁連会長の人事はまさに適材適所だと感心したものでした・・・というようなことは、同じ和歌山弁護士会会員としての仲間誉めのそしりは免れないでしょうから、この辺でやめておきます。
 
 何はともあれ、日弁連総会決議を是非お読みください。
 当初は、引用は決議文だけにして、詳細な「提案理由」はリンクするだけにとどめようかと思ったのですが、結局、全文転載しました。
 ブログに全文転載しようとすれば、日弁連サイトからコピペするだけではなく、書式を整えるため、否応なく全文を読まざるを得ませんから、何より自分の勉強になりますので。
 そして、全文に目を通すことによって、この決議が踏みとどまった一線の先をどう展望するのか、これは国民1人1人が自ら考え、決断しなければならないことだということがのみ込めると思います。
 
 なお、日弁連では、来週の火曜日(5月29日)、東京の弁護士会館2階講堂「クレオ」において、石川健治東京大学法学部教授(憲法学)を招いた特別講演会「憲法改正問題と人権・平和を考える~本当に『何も変わらない』か?~」を開催します。
 おそらく、日弁連が最も頼りにしている憲法学者石川健治先生でしょう。私自身、日弁連会館から中継された石川先生の講演を、和歌山弁護士会館でノートを取りながら聴講したことを(何年前だったか)思い出します。
 「入場無料」「どなたでもご参加いただけます」ということなので、東京近辺の方は是非参加されてはいかがでしょうか。
 
 それでは、日本弁護士連合会「憲法9条の改正議論に対し、立憲主義を堅持し、恒久平和主義の尊重を求める立場から課題ないしは問題を提起するとともに、憲法改正手続法の見直しを求める決議」とその提案理由をお読みください。
 

(引用開始)
日本弁護士連合会 第69回定期総会(高松市)決議
憲法9条の改正議論に対し、立憲主義を堅持し、恒久平和主義の尊重を求める立場から課題ないしは問題を提起するとともに、憲法改正手続法の見直しを求める決議
 
PDFファイル
 
 日本国憲法が施行されて71年を迎え、憲法9条の改正に向けた議論が始まりつつある。
 日本国憲法は、アジア・太平洋戦争の惨禍を経て得た「戦争は最大の人権侵害である」との反省に基づき、全世界の国民が平和的生存権を有することを確認し(前文)、武力による威嚇又は武力の行使を禁止し(9条1項)、戦力不保持、交戦権否認(9条2項)という世界に例を見ない徹底した恒久平和主義を採用している。そこには、核の時代における戦争が文明を破壊するおそれがあることも踏まえ、軍事によることなく、国民の安全と生存を「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して」保持しよう(前文)とする決意が込められている。 
 そして憲法9条は、これまで現実政治との間で深刻な緊張関係を強いられながらも、自衛隊の組織・装備・活動等に対し大きな制約を及ぼし、海外における武力行使及び集団的自衛権の行使を禁止するなど、憲法規範として有効に機能してきた。
 2018年3月、自由民主党自民党憲法改正推進本部が方向性を示した条文イメージ(たたき台素案)は、憲法9条1項及び2項は残しつつ新たに憲法9条の2を設け、憲法9条の規定は「我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置」(必要な自衛の措置)をとることを妨げずとし、そのための実力組織として「自衛隊」を憲法上明記する案(自衛隊等明記案)である。同案は、法律の定めるところにより内閣総理大臣自衛隊の最高の指揮監督者とし、自衛隊の行動は法律で定めるところにより国会の承認その他の統制に服するとする。
 「わが国を取り巻く安全保障環境の緊迫化」を理由に検討したとされる自衛隊等明記案は、憲法改正により自衛隊憲法に位置付け、自衛隊違憲論を解消すべきであると説明されている。自民党は、この案をたたき台として、衆参憲法審査会や各党、有識者等の意見や議論を踏まえ、「憲法改正原案」を策定し国会に提出するとしている。
 自衛隊等明記案については、次の課題ないしは問題の検討がなされるべきである。
 
1 自衛隊等明記案では新たに憲法9条の2を設け、憲法9条の規定は「必要な自衛の措置」をとることを「妨げず」と定めており、「必要な自衛の措置」の内容は現在の案では限定されていない。このため、海外における武力行使及び集団的自衛権の行使を禁止するというこれまで憲法9条が果たしてきた憲法規範としての機能が減退ないしは喪失し、「必要な自衛の措置」として、存立危機事態はもとより、それ以外の場面でも集団的自衛権の行使が容認される危惧が生じる。そうであれば、政府がこれまで維持するものとしてきた専守防衛政策に根本的な変化をもたらしかねず、日本国憲法恒久平和主義の内実に実質的な変化を生じさせるおそれがある。
2 自衛隊等明記案は「必要な自衛の措置」としての武力行使の限界を憲法に定めていないため、その判断が内閣又は国会に委ねられることになる。また、自衛隊の行動に対する「国会の承認その他の統制」の具体的な内容は憲法ではなく法律に委ねられている。こうしたことから、自衛隊の行動に対する実効性のある統制を実現することに疑義が生じ、権力の行使を憲法に基づかせ、国家権力を制約し国民の権利と自由(基本的人権)を保障するという立憲主義に違背するおそれがある。
 
 以上のように、自衛隊等明記案には、立憲主義基本的人権の尊重、恒久平和主義など、日本国憲法の理念や基本原理に深く関わり、日本の国の在り方の基本を左右する課題ないしは問題が含まれている。
 そこで、同案により自由や平和の在り方がどのように変わるのか、変わらないのであればなぜかを、国民は明確に理解し判断する必要がある。そのためには、自衛隊等明記案の課題ないしは問題についての情報が国民に対し多面的かつ豊富に提供され、国会の審議や国民の間の検討に十分な時間が確保されるなど、国民が熟慮できる機会が保障されなければならない。
 
 さらに、実際に憲法改正手続がとられる場合には、国民投票が公正・公平な手続を通じて実施されることが必要である。
 憲法改正手続法(国民投票法)に関して、当連合会は、「憲法改正手続法の見直しを求める意見書」(2009年11月18日)の中で8項目の見直すべき課題を提示している。とりわけ国民投票の14日前までのテレビ・ラジオ等における国民投票運動としての有料意見広告放送に何らの規制が加えられていないことや、最低投票率の定めがなされていないことについては、参議院も同法成立時の附帯決議において本法施行までに検討を加えることを求めていた。しかし、現在までこれらの点の検討はなされていない。国民投票に付する憲法改正の発議の前までに、これらの点も含め見直すべき課題について必要な検討をした上で国民投票がなされるべきである。
※「憲法改正手続法の見直しを求める意見書」
 
 よって、当連合会は、今般の憲法9条の改正をめぐる議論において、上記に指摘した課題ないしは問題について国民が熟慮できる機会が保障されること、そして、憲法改正の発議の前に憲法改正手続法の見直しを行うことを求める。
 また、当連合会は、立憲主義を堅持し、恒久平和主義の尊重を求める立場から、国の将来を大きく左右する憲法9条の改正議論に当たり、その課題ないしは問題を明らかにすることにより、国民の間で憲法改正の意味が十分に理解され、議論が深められるよう、引き続き自らの責務を果たす決意である。
 以上のとおり決議する。
 
                           2018年(平成30年)5月25日
                           日本弁護士連合会
 
提案理由
第1 はじめに
 2017年5月3日、安倍晋三自由民主党自民党)総裁は、民間団体主催の集会に寄せたビデオメッセージにおいて、憲法9条1項及び2項は残しつつ自衛隊の存在を憲法上明記する憲法9条に関する憲法改正構想を公表した。
 その後、自民党憲法改正推進本部で憲法改正問題について検討がなされ、2017年12月20日には、①自衛隊、②緊急事態、③合区解消・地方公共団体、④教育充実という4項目について論点取りまとめが行われた。そして、本年3月、自民党憲法改正推進本部はこれら4項目について方向性を示した「条文イメージ(たたき台素案)」を決定した。①の自衛隊については、「条文イメージ(たたき台素案)」を基本とすべきとの意見が大勢を占めたとされる。今後、自民党は、この案をたたき台として、衆参憲法審査会や各党、有識者等の意見や議論を踏まえ、「憲法改正原案」を策定し、国会に提出するとしている。同年3月25日に開催された自民党大会では、自主憲法の制定を党是とし、国民との議論を深めることや、建設的な議論を重ね、改正案を示し、憲法改正の実現を目指すことが表明された(平成30年党運動方針)。
 自民党憲法改正推進本部が自衛隊の明記について方向性を示した条文イメージ(たたき台素案)は、次のとおりである(以下、同案を「自衛隊等明記案」という)。これは「わが国を取り巻く安全保障環境の緊迫化」を理由に検討したとされており、憲法改正により自衛隊憲法に位置付け、自衛隊違憲論を解消すべきであると説明されている。
 
「第九条の二 前条の規定は、我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを妨げず、そのための実力組織として、法律の定めるところにより、内閣の首長たる内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする自衛隊を保持する。
② 自衛隊の行動は、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する。」
 
 憲法9条をめぐる改正については、いかなる方法により、平和を実現し、自衛隊の活動を統制するのかという課題が問われることになる。それは、日本国憲法の基本理念である立憲主義や、基本原理である基本的人権の尊重、恒久平和主義などに深く関わり、日本の国の在り方の基本を左右する極めて重要な課題ないしは問題である。
 そこで、当連合会は、今般の憲法9条をめぐる改正議論に対し、国民の間で憲法改正の意義が十分に理解され、議論が深められるようにするために、本決議において、立憲主義を堅持し、恒久平和主義の尊重を求める立場から、自衛隊等明記案の課題ないしは問題を明らかにするものである。
 また、当連合会は、憲法改正手続法について、8項目にわたり見直しを求めているところであり、憲法改正の発議の前に、これら8項目の課題の見直しを求めるものである。
 
第2 日本国憲法の平和主義
1 日本の平和主義の意義
(1) かつて戦争は国家の主権的自由に委ねられていたが(無差別戦争観)、総力戦として戦われた第一次世界大戦を経て、国際連盟規約(1919年署名)や不戦条約(1928年署名)に見られるように、国家の政策として行われる戦争は違法とされるようになった(戦争の違法化)。さらに第二次世界大戦後は、国際連合憲章は紛争の平和的解決(前文)をうたい、武力行使を原則として禁止した(2条4号)。例外的に武力行使が認められるのは、集団安全保障体制における軍事的措置(42条)と個別的自衛権及び集団的自衛権の行使(51条)などに限られ、戦争の違法化が徹底された。
(2) 日本国憲法は、この世界の平和主義を継承すること(98条2項)に加えて、全世界の国民が平和のうちに生存する権利を有することを確認し(前文)、武力不行使(9条1項)、戦力不保持、交戦権否認(9条2項)を定めたところに特徴があり、世界の平和主義の系譜において最も徹底した平和主義を基本原理とするものである。そこには、原子爆弾の出現により、「文明が速やかに戦争を全滅しなければ、戦争がまず文明を全滅する」おそれがあることへの真剣な憂いも含めて(1946年8月27日貴族院本会議における幣原喜重郎国務大臣の答弁)、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して」国民の安全と生存を維持しようという強い決意が込められている。
(3) このような徹底した日本の平和主義(恒久平和主義)は、人権保障の基底的権利である平和的生存権を確認したことや、世界で初めて戦力不保持を憲法に明記するなど先駆的な意義を有している。
 また、憲法9条は、現実政治との間で深刻な緊張関係を強いられながらも、自衛隊の組織・装備・活動等に対し大きな制約を及ぼし、海外における武力行使及び集団的自衛権行使を禁止するなど、憲法規範として有効に機能してきた(2008年10月3日人権擁護大会「平和的生存権および日本国憲法9条の今日的意義を確認する宣言」(富山宣言))。2015年に安全保障法制が採決されたことで憲法9条との緊張関係は続いているが、現在においても、憲法規範としての機能は失われておらず、依然として憲法9条は今日的意義を有している。
※「平和的生存権および日本国憲法9条の今日的意義を確認する宣言」
2 日本の平和主義の内容
(1) 日本の平和主義に関しては、日本国憲法制定当時から今日に至るまで、自衛権の有無及び憲法上許された自衛権行使の範囲が争点とされてきた。
 とりわけ、国防を主たる任務とし武力行使権限を有する自衛隊が1954年に創設された後、自衛隊憲法9条2項が保持を禁じる「戦力」に該当し違憲ではないかということが問題とされてきた。そこでの中心的な論点は、自衛権の有無及び憲法上許された自衛権行使の範囲であった。
 自衛隊は、現状では、常備自衛官が約22万5千人おり、戦車・護衛艦・戦闘機などの装備を備え、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約日米安保条約)等の下で、米軍その他の国の軍隊と共同訓練を行っており、軍事的な組織であることは否定できない。
 そして、自衛隊の任務・権限に関わる憲法上許された自衛権行使の範囲について、個別的自衛権の行使に限定されるのか、国際連合憲章51条が定める個別的自衛権及び集団的自衛権と同じ範囲の自衛権行使が認められるのか、安全保障法制が問題とされた以降は存立危機事態における集団的自衛権の行使まで認めるのかが議論されてきた。
(2) 自衛権の有無及び憲法上許される自衛権行使の範囲に関する日本政府の見解は、次のとおり変遷してきた。
① 日本国憲法が制定された1946年当時、日本政府は、平和的生存権、戦力不保持、交戦権否認という徹底した平和主義を採用している日本国憲法の下では、自衛戦争も含めて一切の戦争を放棄したと説明していた(徹底平和主義)。
 この徹底した平和主義は、個別的自衛権及び集団的自衛権が認められるとしても、いずれも憲法上行使できないと理解されていた。
② しかし、その後1954年に自衛隊が創設されると、日本政府は、平和的生存権(前文)や幸福追求権(13条)を根拠に、日本国憲法は、「自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛の措置」をとることまで禁じていないとし、自衛のための必要最小限度の実力組織である自衛隊は「戦力」に該当しないと説明するようになる。
 ここでの「自衛の措置」とは、国際法上は自衛権と称されているが、その範囲は、①我が国に対する武力攻撃が発生した場合、②それを排除するのに適当な手段がないときに、③それを排除するために必要最小限度の範囲に限定して認められるものとされてきた。したがって、他国に加えられた武力攻撃を阻止することをその内容とするいわゆる集団的自衛権の行使は、上記①の要件を欠くため憲法上許されないとされた(これは、1972年(昭和47年)10月14日参議院決算委員会に日本政府から提出された資料「集団的自衛権憲法との関係」を要約したものである。以下この資料を「昭和47年見解」という。)。
 すなわち、昭和47年見解によれば、憲法上許される自衛権の行使の範囲は、必要最小限度の個別的自衛権の行使に限定されるのであり、日本の平和主義の内容もそのように理解されていた(専守防衛型平和主義)。
③ その後2014年7月1日の閣議決定で、日本政府は、昭和47年見解を次のように改めた。すなわち、我が国に対する直接の武力攻撃が発生した場合のみならず、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合(存立危機事態)において、他に適当な手段がないときに、必要最小限度の実力を行使することは許されるとする見解である(以下「7.1閣議決定」という。)。以後、この見解に基づき、2015年に安全保障法制が採決され、自衛隊に存立危機事態における武力行使権限など新たな任務・権限が認められることとなった。
 7.1閣議決定及び安全保障法制によれば、憲法上許される自衛権の行使の範囲は、存立危機事態における集団的自衛権の行使まで認められるものとされており、日本の平和主義の内容もそのように理解されている(存立危機事態型平和主義)。
(3) 以上のとおり、自衛権の有無及び憲法上許される自衛権行使の範囲をめぐり日本政府によって3つの見解が示されてきたが、それらとは別に、そもそも、日本国憲法9条1項が放棄したのは侵略戦争であり、自衛のための戦争は放棄していないこと、同条2項の「前項の目的を達するため」とは、侵略戦争放棄の目的を達するためという意味であり、そのための戦力不保持、交戦権否認であると解し、現行の日本国憲法の下でも、個別的自衛権及び集団的自衛権のいずれの行使も認められていると解する見解がある(芦田修正説)。
 この見解によれば、日本の平和主義は、世界の平和主義とほぼ違いはなく、国際連合憲章51条に定められているものと同じ範囲内において自衛権行使が許されるのであり、日本の平和主義の内容もそのように理解されることになる。
(4) 在日米軍の駐留の合憲性について争われた砂川事件や、自衛隊の合憲性について争われた長沼ナイキ基地訴訟、百里基地訴訟などでも、自衛権の有無や憲法上許される自衛権行使の範囲などが争点となっていた。
 この点、砂川事件において、最高裁判所は、憲法9条の下でも、「わが国が主権国として持つ固有の自衛権は何ら否定されたものではなく、わが憲法の平和主義は、決して無防備、無抵抗を定めたものではない」、「わが国が、自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛のための措置をとりうることは、国家固有の権能の行使として当然のことといわなければならない」と述べ、日本が自衛権を持つことを認めている。
 しかし、日本が自衛のための戦力を持つことの是非については、「同条(注:憲法9条)2項がいわゆる自衛のための戦力の保持をも禁じたものであるか否かは別として」と述べており、自衛権の行使として憲法上許される武力行使の範囲については判断していない。
 また、長沼ナイキ基地訴訟、百里基地訴訟など自衛隊の合憲性を争う訴訟がいくつか提起されたが、下級審の裁判所は別として、最高裁判所は一貫して自衛隊の合憲性に対する判断を回避しており、今までのところ、この問題についての最高裁判例は存在しない。
(5) このように、憲法上許される自衛権行使の範囲について、司法判断がなされておらず、政府見解にも変遷が見られる中で、憲法9条を維持することで自衛権行使の範囲を制限しようとする憲法改正を行おうとするのであれば、自衛権行使の限界を明確に定めることが求められることになる。
 すなわち、それは、国民の安全と生存を守るために、憲法において自衛隊武力行使を認めるべきか、仮に認めるとすればどの範囲まで認めるかという、日本の平和主義の在り方が根本から問われる問題である。
 したがって、憲法改正の必要性とともに、平和主義について何がどのように変わるのか、変わらないとすればなぜかということを、国民が明確に理解して選択できるように、自衛権の有無及び憲法上許される自衛権行使の範囲について明確な説明がなされ、条文上も自衛権行使の限界を明確に定めることが求められる。
 
1 立憲主義の意義
 立憲主義の概念は多義的であるが、少なくとも、個人の人権を守るために憲法により権力を縛る(統制する)ということは、近代立憲主義の基本である。
 日本国憲法の根本にある立憲主義は、近代立憲主義の考え方を継承し発展させ、「個人の尊重」と「法の支配」原理を中核とする理念であり、国民主権基本的人権の尊重、恒久平和主義などの基本原理を支えている。
2 自衛隊に対する立憲的統制
(1) 前述のとおり、憲法9条を維持しながら憲法上許された自衛権行使の限界を画しようとするのであれば、自衛権行使の限界が憲法上明確に定められなければならない。そうでなければ、憲法上の統制を受けずに自衛権行使の範囲の判断が内閣又は国会に委ねられ、実効性ある統制が十分に働かなくなることが危惧され、自由や平和を守る上で危険であるといわざるを得ない。
 したがって、立憲主義の観点からも、憲法上許された自衛権行使の範囲について明確な説明がなされ、条文上も自衛権行使の限界が明確に定められることが求められることになる。
(2) 自衛隊憲法に明記するのであれば、立憲主義の観点からは、自衛隊の行動を統制する新たな制度を憲法上構築することの可能性も課題ないしは問題となる。
 一般に、軍に対する統制の在り方として文民統制シビリアンコントロール)が指摘されるが、文民統制とは、政治と軍事を分離し、軍事に対する政治の優越(文民優越)を確保すること、またその政治が民主主義の原理に基づいていることを基本原則とする(民主的な文民統制の確保)。その目的は、武力を背景とした軍の政治介入を予防し、民主主義とは異なる組織原理による軍事支配から国民の人権を守ることにある。
 しかし、国民の支持により民主的なプロセスを経て軍が台頭することがあることに見られるように、文民統制にも限界がある。
 自衛隊憲法に明記するのであれば、より根本的には、憲法により自衛隊の組織や行動を縛るという立憲主義の観点からの統制の在り方が検討されなければならない。
(3) このような観点から、以下の課題ないしは問題について解決することが可能かが慎重に検討されるべきである。
① 自衛隊憲法に明記することになれば、自衛隊には、衆議院参議院最高裁判所会計検査院などと並ぶ憲法上の組織として位置付けられることになる。それにより、自衛隊は強い正統性と権威が与えられ、自衛隊の権限を拡大強化する憲法上の根拠が認められたと解されるおそれはないか。
② 行政機関や国会による民主的統制の制度については、特定秘密の保護に関する法律(秘密保護法)が軍事機密に関する情報開示を規制する機能を持ち得る状況の下で、実効性ある民主的統制をどのように実現するか。
 また、民主的統制の実効性を確保するための制度的担保が憲法上ないままで自衛隊の活動に対する民主的統制が可能か。例えば、ドイツ連邦共和国基本法は、民主的統制の実効性を確保するための制度的担保として、防衛委員会に少数派の申立てによる調査権限を認めたり(同法45条a2項)、議会の補助機関として国防専門員を確保したりしている(同法45条b)。
③ 裁判所による司法的統制については、砂川事件最高裁判決などにみられるようないわゆる統治行為論に基づき、自衛隊の行動などへの司法判断が避けられてしまうのではないか。
④ 司法的統制に関連するものとして、戦時国際法(国際人道法)に基づき軍人・軍属の義務違反を処罰する法である軍法及び軍事裁判所制度の整備を求める見解があるが、日本の平和主義との関係で、そもそも軍法及び軍事裁判所制度を整備する必要があるか。仮に軍法を定めるとした場合には、戦時国際法(国際人道法)とされている憲法9条2項の交戦権の否認規定を維持することと整合するのか。軍事裁判所を設けることは、「特別裁判所は、これを設置することができない」とされている憲法76条2項と整合するのか。
⑤ 憲法83条は、国の財政を処理する権限を国会に委ねているが、憲法83条以下の財政の章(第7章)の規定だけで歯止めのない軍備拡張を抑制することができるか。さりとて、憲法上防衛予算を統制する制度を新たに構築することは可能か。軍備拡張の例として、第二次世界大戦時における国家財政に占める軍事費の割合は、70%台が続き、終戦前年の1944年には85.3%というピークを迎えていたことが挙げられる。一度戦争が起きれば国民生活を犠牲にして戦争遂行を優先するおそれがある。平時においても防衛力を整備するため軍備拡張が続くことによる国民生活への圧迫や、それにより日本の社会構造が軍事重視へと大きく変化することへの懸念もある。
(4) 仮に憲法9条を改正するのであれば、少なくとも、これらの課題ないしは問題について検討した結果を国民に説明し、その検討結果を踏まえた具体的な条項案が提示されることが必要である。そうすることにより、国民は初めて、現状のまま憲法9条を維持するのがよいか、それとも憲法9条を改正すべきかを検討することが可能となるといえるのである。
 
第4 自衛隊等明記案の検討
1 自衛隊等明記案の特徴
 自衛隊等明記案の特徴として、①憲法9条1項及び2項を維持していること、②憲法9条の規定は「必要な自衛の措置」をとることを「妨げず」と明記したこと、③「必要な自衛の措置」をとるための実力組織としての自衛隊の保持を明記したこと、④自衛隊の最高指揮監督者を「内閣の首長たる内閣総理大臣」としたこと、⑤自衛隊の行動は「国会の承認その他の統制」に服するとしたこと、⑥自衛隊の行動に対する統制は「法律の定めるところにより」としたことを挙げることができる。
2 憲法9条憲法9条の2との関係
 自衛隊等明記案は、憲法9条の2で「前条の規定は、…必要な自衛の措置をとることを妨げず」と定めている。この点、憲法9条において「必要な自衛の措置」をとることが認められていることを、憲法9条の2で念のために確認したものであると説明されている。しかし、この条文に対しては、「必要な自衛の措置」に関し、憲法9条の2は憲法9条の例外規定と捉え、憲法9条の規定に優先すると解することも可能である。
3 「必要な自衛の措置」の内容
(1) 自衛隊等明記案は、「我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置」と定めている。
 この文言は、「自国の平和と安全を維持し、その存立を全うするために必要な自衛の措置」(昭和47年見解、7.1閣議決定。なお、7.1閣議決定では、「自国の」が「我が国の」とされている。)、「わが国が、自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛のための措置」(砂川事件最高裁判決)とほぼ同じ内容である。また、自民党が2012年(平成24年)4月27日に決定した「日本国憲法改正草案」(以下「自民党憲法改正草案」という。)の国防軍に関する規定は、「我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全を確保するため、内閣総理大臣を最高指揮官とする国防軍を保持する。」(9条の2)と定めているが、そこに用いられている「我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全を確保するため」という文言と上記の文言はほぼ同じである。
 7.1閣議決定は、「自衛の措置」については、あくまでも「外国の武力攻撃によって国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されるという急迫、不正の事態に対処し、国民のこれらの権利を守るためのやむを得ない措置として初めて容認されるものであり、そのための必要最小限度の「武力の行使」は許容される。」と説明している。
(2) しかし、自衛隊等明記案における「前条の規定は…妨げず」(憲法9条の2第1項)との規定を憲法9条の例外規定と解するならば、憲法9条のこれまでの解釈にとらわれることなく、「必要な自衛の措置」の解釈を展開することが可能となる。
 そして、「必要な自衛の措置」には「我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つため」との目的が定められているが、この目的の定めにより「必要な自衛の措置」の範囲が一義的に確定できるものではなく、必要最小限度という文言も削除され、他にその内容を限定する定めもない。したがって、その内容として、我が国に対する直接の武力攻撃を排除するための必要最小限度の実力行使を超える武力行使や、当連合会がその違憲性を指摘してきた7.1閣議決定及び安全保障法制に基づく「存立危機事態における自衛の措置」としての集団的自衛権の行使はもとより、それ以外の場面での集団的自衛権の行使を容認するとの解釈を導くことにもなりかねない。
 それは、芦田修正説(第2・2(3))が理解している平和主義の内容へと近づくことであり、日本の恒久平和主義の内実に実質的な変化を生じさせるおそれがある。
 また、憲法上の統制を受けることなく「必要な自衛の措置」の判断が内閣又は国会に委ねられることになり、自衛隊の行動に対する実効性のある統制を実現することに疑義が生じ、権力の行使を憲法に基づかせ、国家権力を制約し国民の権利と自由を保護するという立憲主義に違背するおそれがある。
 もとより、これまで日本国憲法恒久平和主義が果たしてきた役割を評価しつつも、今日の安全保障環境を理由に、日本の恒久平和主義の在り方を変更させるべきであるとの見解もある。
 しかし、その場合には、日本の恒久平和主義の内容を変更させるために憲法を改正する必要があるのかを厳格かつ慎重に検討されなければならないし、憲法上許される自衛権行使の範囲についても明確に提示されなければならない。
 そして何よりも、主権者である国民が、憲法改正により何がどのように変わるのか、変わらないとするならなぜかを明確に理解して選択できるような内容の憲法改正条項案でなければならないが、現在の自衛隊等明記案はそうした内容にはなっていない。
4 憲法9条2項の戦力不保持・交戦権否認規定との関係
 自衛隊等明記案は、「必要な自衛の措置」をとるための「実力組織」として「自衛隊を保持する」と定めている。憲法9条2項が維持されていることをもって、自衛隊は、「戦力」ではなく「実力」であるとして憲法9条2項に定める「陸海空軍その他の戦力」に該当しないか、該当するとしても例外として許容されることになる。
 一方、憲法上その存在が正当化された自衛隊が、憲法9条の例外として許容された「必要な自衛の措置」として武力行使を行うことができるとの解釈が許されるのであれば、それにより生じた武力紛争に関して国際人道法が適用されたとしても、それも憲法9条2項の「交戦権」否認規定の例外として憲法上許容されることになりかねない。
 このような解釈によれば、憲法9条2項の規定が維持されていたとしても、ほとんど意味をなさなくなる可能性がある。
5 「国会の承認その他の統制」の法律への委任
 自衛隊等明記案は、自衛隊の行動は、「法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制」に服するとされていることから、統制手段は「国会の承認」に限定されていない。すなわち、国会の承認の対象となる事項や、その他の統制手段の内容について憲法に定めはなく、専ら法律に委ねられている。
 一般に、軍隊は兵器を有する組織であるため、その権限が濫用されたときの人権侵害は計り知れないものがある。そのため、諸外国では、憲法上軍隊の活動を統制するための規定を設けている国がある。特に、ドイツ連邦共和国基本法は、戦前の歴史への反省から憲法に防衛に関する詳細な規定を設けている。
 それら諸外国の規定に比べると、自衛隊等明記案は、自衛隊の行動に対して、自衛隊の編制、武力行使の開始・継続・終了の事項など統制制度の規定が憲法上置かれておらず、包括的に法律に委任されている。この点においても、自衛隊の行動に対する実効性のある統制を実現することに疑義が生じる。
6 自衛隊等明記案と恒久平和主義・立憲主義との関係
 以上のとおり、自衛隊等明記案は、日本国憲法恒久平和主義の内実に実質的な変化を生じさせるおそれがある。
 また、憲法9条1項及び2項が残されているとはいえ、「必要な自衛の措置」の限界の判断は内閣又は国会に委ねられており、しかも自衛隊の行動を統制する制度の具体的内容も憲法ではなく法律に委ねられている。このため、自衛隊の行動に対する実効性のある統制を実現することに疑義が生じ、権力の行使を憲法に基づかせ、国家権力を制約し国民の権利と自由を保障する立憲主義に違背するおそれがあると言える。   
 
第5 憲法改正手続法(国民投票法)の改正
1 はじめに
 当連合会は、2009年11月18日の「憲法改正手続法の見直しを求める意見書」において、憲法改正手続法に関して、①投票方式及び発議方式、②公務員・教育者に対する運動規制、③組織的多数人買収・利害誘導罪の設置、④国民に対する情報提供(広報協議会・公費によるテレビ、ラジオ、新聞の利用・有料意見広告放送のあり方)、⑤発議後国民投票までの期間、⑥最低投票率と「過半数」、⑦国民投票無効訴訟、⑧国会法の改正部分という8項目の見直しを求める意見を公表した。また、2014年に憲法改正手続法の一部改正が行われたときも、「改めて憲法改正手続法の見直しを求める会長声明」(2014年6月13日)を公表し、改めて見直しを求めている。   
 特に、国民投票の14日前までのテレビ・ラジオ等における国民投票運動(憲法改正案に賛成又は反対の投票をし又はしないよう勧誘する行為)としての有料意見広告放送に何らの規制も加えられていないことや、最低投票率の定めがなされていないことについて、参議院が同法成立時の附帯決議において、「本法施行までに」と期限を限定して必要な検討を加えることを求めている。しかし、現在までこれらの点の検討はなされていない。
 これらの点も含めて、当連合会が見直しを求めている8項目については、憲法改正の発議の前に見直しを行うべきである。
※「憲法改正手続法の見直しを求める意見書」
※「改めて憲法改正手続法の見直しを求める会長声明」
2 テレビ・ラジオ等における有料意見広告規制
 憲法改正手続法によれば、国民投票の14日前まで、国民投票運動の一環としての有料の意見広告をテレビ・ラジオ等に自由に表明することが認められている。他方、憲法改正案に対し賛成又は反対の投票をし又はしないように勧誘するのではなく、単に、憲法改正案に賛成・反対の意見をテレビ等で表明する有料意見広告放送は、規制を受けることなく国民投票日にも自由に行うことができる。
 表現の自由の保障の重要性に照らせば、自由な意見広告が認められるべきであるが、他方で、テレビ広告等には膨大な費用がかかるため、財力のある者でなければテレビ広告等を利用することができず、そこに不公平な事態が生じるおそれがある。
 そこで、憲法改正案への賛成意見と反対意見との間に実質的な公平性を確保するために、国民投票に関する有料意見広告に何らかの規制を及ぼすこと、ないしは配慮を求めることが必要なのではないかが問題となる。
 憲法改正手続法104条は、放送事業者に対して、放送番組の編集に当たり政治的に公平であることや、意見が対立する問題ではできるだけ多くの角度から論点を明らかにすることなどを定める放送法4条1項の規定の趣旨に留意するように求めている。
 この規定は、放送事業者の編集権に対する配慮規定であり、国民投票に関する有料意見広告放送に直接関連するものではない。しかし、憲法改正案の賛成意見と反対意見との間の実質的公平を確保するために、放送事業者に慎重な配慮を求めることは必要であり、この点について実効性のある措置が可能かを検討すべきである。
 それに加えて他に何らかの規制が必要か、その規制は法的な規制かそれ以外の別の方法によるべきかという課題がある。この点、例えば、全面禁止した上で公費による公平な意見表明の機会を保障したり、団体が使える費用に上限を設けたりするなどの規制案が提案されているが、それらも含めて検討すべきである。
3 最低投票率について
(1) 最低投票率の定めがないこと
 憲法の改正は、国会が国民に提案してその承認を経なければならず、この承認には、国民投票において、その過半数の賛成を必要とする(憲法96条1項)。
 しかし、憲法改正手続法は、国民投票に関して、最低投票率の定めをおいていない。最低投票率の定めがないと、過半数の賛成の数も少ないことがありえ、投票権者の一部の賛成により憲法改正が行われる可能性があり、その場合に改正条項の正当性にも影響が出てくるおそれがある。
 最低投票率を定めることに対しては、ボイコット運動が起きるとしてこれを否定する見解がある。しかし、投票をボイコットする運動も、憲法改正問題に対する国民の対応の一つである。そのことが最低投票率の創設を否定する根拠にはなり得ない。
 また、最低投票率を設けるとした場合、その割合が問題となる。これに対して、当連合会は、全有権者の3分の2とする立場を表明している。これは、最低投票率を全有権者の3分の2にしなければ、過半数の賛成が3分の1を下回ることとなり、全有権者の3分の1以下の賛成で憲法が改正されることになり、それでは妥当でないという考え方によるものである。このような考え方も参考にして、憲法改正に対する全国民の意思が十分に反映されたと評価できる最低投票率が定められるべきである。
(2) 「過半数」について
 憲法改正手続法は、憲法96条1項の「過半数」について、「憲法改正案に対する賛成の投票の数及び反対の投票の数を合計した数」、すなわち有効投票数を「投票総数」とし、その2分の1を超える場合であるとしている(憲法改正手続法98条2項)。これによれば、無効票等が過半数基礎票から排除されることになる。
 しかし、国民投票は、国の最高法規である憲法改正という極めて重要な問題を問うのであるから、少なくとも改正に明白かつ積極的に賛成する者が、改正の是非・当否について投票した全ての者の2分の1を超えるか否かにより決めるべきであり、それが厳格な要件を課した憲法の趣旨に適うものである。
 白票や無効票を投じた者は、投票所に赴いて投票し、憲法を改正すべきか否かについての意思表示をしたものであり、改正に賛成の意思を表明したものではないから、これらの者は、改正に賛成しなかった者として「過半数」算定の基礎票に加えるべきである。
 以上から、「過半数」の基礎票は、有効投票数ではなく、少なくとも無効票等も加えた投票総数とすべきである。
4 憲法改正手続法の速やかな見直しを
 以上のとおり、憲法改正手続法には、見直すべき課題が存在しているのであるから、国会は、憲法改正の発議の前に、当連合会が指摘している8項目について憲法改正手続法の見直しを行うべきである。
 
第6 まとめ
 以上から、当連合会は、今般の憲法9条の改正をめぐる議論について、前記に指摘した課題ないしは問題について、国民が熟慮できる機会が保障されること、そして憲法改正の発議の前に憲法改正手続法の見直しを行うことを求める。
 また、当連合会は、立憲主義を堅持し、恒久平和主義の尊重を求める立場から、国の将来を大きく左右する憲法9条の改正議論に当たり、その課題ないしは問題を明らかにすることにより、国民の間で憲法改正の意味が十分に理解され、議論が深められるよう、引き続き自らの責務を果たす決意である。
(引用終わり)

放送予告・NNNドキュメント「見えない被災者 熊本地震2年 孤立する暮らし」(2018年6月3日)

 2018年5月24日配信(予定)のメルマガ金原No.3157を転載します。
 
放送予告・NNNドキュメント「見えない被災者 熊本地震2年 孤立する暮らし」(2018年6月3日)
 
 昨日に続いて、「災害」カテゴリーに分類する内容でお届けします。私のブログは、1つの記事について、2つまでカテゴリー分類できる設定になっていますが、今日は、「災害」+「報道」ということになります。
 
 テーマは「熊本地震」です。2年前の4月、震度7地震に二度にわたって(14日、16日)見舞われた熊本地方。地震直後はともかく、1年経ち、2年経つと、被災地の状況についての関心がどうしても薄れていってしまいがちです。
 そのような意味から、「今何が問題なのか」「何が起きているのか」を伝えてくれる報道が重要となります。
 以下に、これから放送されるNNNドキュメントと、既に放送されたハートネットTV(のまとめ)をご紹介します。
 まず、NNNドキュメントの番組予告から。
 
2018年6月4日(月)午前0時55分~1時25分(3日深夜)
見えない被災者 熊本地震2年 孤立する暮らし
(番組案内から引用開始)
熊本地震から2年。仮住まいを続ける被災者は今も約3万6000人いる。その中には住まいの再建のめどが立たないまま、支援を打ち切られようとする人や、慣れない環境で孤独を募らせる人が少なくない。本来の居住地から遠く離れて、行政からの支援や情報が届きにくくなっているケースや、復興の陰で周囲から孤立し、被災の実態が見えづらくなっているケースを取材し、時が経つとともに新たに浮き彫りになった課題を探る。【制作:くまもと県民テレビ】
再放送
6月10日(日)11:00~ BS日テレ
6月10日(日)5:00~/24:00~ CS「日テレNEWS24
(引用終わり)
 
 以上の簡単な番組予告だけで内容を推測することは困難ですが、制作が地元放送局ですので、じっくりと腰を据えた取材の成果が放送されることを期待したいと思います。
 
 それから、以下は、NHK・EテレのハートネットTVで放送された熊本地震関連の番組のうち、内容を文字化して先月公開された3本です。
 実際の放送に準拠して、写真なども交えて内容を振り返れるように文字化されており、非常に有益だと思い、ご紹介しました。
 
熊本地震 取り残される障害者
放送日 2016年05月31日「緊急報告 熊本地震(5)取り残される障害者」
公開日  2018年04月12日(情報は放送時点でのものです)
(抜粋引用開始)
 災害の際に支援から取り残された障害者を見つけ、支える活動。こうした取り組みの課題を佐藤さんは3つ指摘します。
「まず1つは、支援者をどう継続して見つけていくか。長期化するかもしれないので、それを確保していくのが課題です。2つ目は、行政の福祉サービスについて、ぜひ柔軟に運用していただきたい。震災によって生活状況が変わってしまったり、障害の程度もさまざまになっているので、画一的に運用するのではなく必要な人が使えるようにしていただきたいと思います。3つ目は、仮設住宅や復興住宅、復興の町づくりで、バリアフリーにしていただきたい。障害者だけではなく、高齢者も使えるユニバーサルなデザインにして、みんなが住みやすい町にしていただきたい。皆さんに考えていただきたいのは、周りに必ず障害者はいるということです。そして、そういう人たちを見つけたら、声をかけてほしい。声をかけることによってつながり、新たなネットワークができることで、孤立させないようにしていけると思います。」(佐藤さん)
 災害がいつ、どこで起きてもおかしくない日本。避難所に行けず、自宅にとどまるしかない障害者が支援から取り残されることがないよう、対策を考えていくことが求められています。しかし同時に、災害になってから慌てるのではなく、普段から障害のある人たちの顔が見える地域をつくっていくこと、障害者自身もその地域づくりに参加していくこと、こそが大切かもしれません。
(引用終わり) 
 
熊本地震 「また、取り残されるのか」被災地での障害者支援の実状 
放送日 2016年09月01日「シリーズ 熊本地震(9)また、取り残されるのかー障害者支援・東俊裕さんー」
公開日  2018年04月13日(情報は放送時点でのものです)
(抜粋引用開始)
 熊本地震から4か月たった2016年8月。被災地障害者センターくまもとをたずねると、スタッフが被災した障害者から寄せられる相談の電話に対応していました。
 センターの事務局長は、東俊裕さん。足に麻痺があり、車いすを使用しています。30年以上もの間、障害者の支援に携わってきた熊本出身の弁護士でもあります。センターでの支援を通じて見えてきたのは、想像をはるかに超えて障害者が孤立している状況でした。
(略)
 支援を必要とする人たちはまだまだいる。現場を回り続けた東さんの実感です。
「災害の支援に入っているとやっぱり普段のサービスの貧しさというのをつくづく思いますよね。精神障害がある人が地域で孤立している状況があるんだなというのが今回、初めて分かりました。基本的には、何らかの支援を受けているんだろうなと思っていたんですが、全然そうではなかった。だから僕もそういう意味では現実に対してやっぱり無知だったと思います。ただこれは熊本市だけの話じゃなくて、恐らくほとんどの全国的な状況じゃないのかなと思うわけですよね。だからもう一度やっぱり福祉って何なのかってね。制度全体として考え直さないとならない状況かなというのは思いました。」(東さん)
(引用終わり)
 
熊本地震 散り散りになった被災者の“孤立”
放送日 2018年04月12日「孤立させないために ~みなし仮設に暮らす人たち~」
公開日  2018年04月12日(情報は放送時点でのものです)
(抜粋引用開始)
 熊本地震から2年。今、支援者の間で課題となっているのが“孤立”をどう防ぐかです。避難所はすべて閉鎖され、避難を続ける人は今も4万人近く。そのうちの7割は、自分でアパートなどを探し、行政に借り上げてもらういわゆる“みなし仮設”で暮らしています。住み慣れた場所を離れ、身寄りのない場所に散り散りになって暮らすみなし仮設の人たち。その孤立の問題とどう向き合えばいいのかを考えます。
(略)
 孤立しがちなみなし仮設での暮らし。その日々を支えるのは十人十色の多様なつながりだと高木さんは言います。
「そもそも人と交わるのが嫌いだという人がたくさんいらっしゃるのは自然なことです。その人らしいつながりのあり方って何だろうと、その人に提案してもらえる形で、それを僕らが後押しするという形のつながりを探していけるのが一番の理想だと思います。」(高木さん)
 多くの人があと2年ほど、仮の住まいで暮らし続ける見込みです。一人一人の歩調に合わせた、息の長い見守りが、今後ますます大切になっていきます。
(引用終わり)

日本弁護士連合会「災害救助法の一部を改正する法律の早期成立及び被災者支援制度の早期の抜本的な改善を求める会長声明」を読む

 2018年5月23日配信(予定)のメルマガ金原No.3156を転載します。
 
日本弁護士連合会「災害救助法の一部を改正する法律の早期成立及び被災者支援制度の早期の抜本的な改善を求める会長声明」を読む
 
 弁護士会の活動の中心を担うのは、日弁連でも各単位会でも、各分野ごとに設けられた委員会ですが、特に比較的会員数の少ない地方の弁護士会の場合(和歌山弁護士会もそうです/現在会員数146名)、1人の会員が、いくつもの委員会をかけ持ちすることになります。
 当然私もいくつかの委員会に配属されていますが、その1つに災害対策委員会があります。
 別に希望もしていないのに、執行部の判断で配属された委員会もありますが、この災害対策委員会については、自ら配属を希望しました。
 私自身、これまで災害対策に特段熱心に取り組んだおぼえはなく、強いて言えば、福島第一原発事故からの避難者を支援する活動を少しお手伝いしてきたくらいです。
 けれども、南海トラフ地震も近いと言われる中、災害時に弁護士として何が出来るのか、何をやらなければならないのか、ということをしっかりと考え、準備する必要を思い、希望して配属してもらいました。もっとも、今のところ、自分として委員会活動にこれといった貢献もできていませんけどね。
 ちなみに、和歌山弁護士会災害対策委員会は、他の単位会(大規模被災地の単位会を除く)の同種委員会と比べて著しい特色があります。それは、正副委員長がいずれも3.11東日本大震災の「被災者」であるということです(3.11当時、九鬼委員長は福島県弁護士会の、柳川副委員長は岩手弁護士会の会員でした)。
  
 今日ご紹介する日本弁護士連合会「災害救助法の一部を改正する法律の早期成立及び被災者支援制度の早期の抜本的な改善を求める会長声明」も、皆さんの理解を求めたいということと併せて、自分自身の勉強のために取り上げたという側面もあります。
 まず、その会長声明をご一読ください。
 
災害救助法の一部を改正する法律の早期成立及び被災者支援制度の早期の抜本的な改善を求める会長声明
(引用開始)
 政府は、本年5月8日、大規模災害時の避難所運営や仮設住宅整備などの都道府県の権限を指定都市の中から指定された救助実施市に移すことなどを内容とする「災害救助法の一部を改正する法律案」(以下「改正案」という。)を閣議決定し、国会に改正案を上程した。この改正により、全国20指定都市の総人口である最大2、700万人の被災者の救助を迅速かつ円滑に行えるようになるなどの効果が期待できる。
 当連合会は、2012年4月20日付け「防災対策推進検討会議中間報告に対する意見書」の中で、市町村の「地域防災計画の独自性の尊重」を提言している。現場主義の見地に鑑みれば、市町村が災害救助の実施権限を持つことは支持されるべきであり、改正案は、上記意見書中に述べている内容と同趣旨の内容となっており、高く評価できる。早急にかかる改正を果たした上、次なる抜本的な制度改革の作業に着手すべきである。
 また、被災者生活再建支援法は、公布から本日で20年が経過した。同法は阪神・淡路大震災の教訓を踏まえた被災者の生活再建に資する法律として成立し、災害救助法及び災害弔慰金の支給等に関する法律と共に、被災者支援の基本的な法制度として定着している。
 しかし、これらの法制度には課題も多い。当連合会は、東日本大震災発生直後から、多数の法律相談から浮き彫りになった問題を解決するために、上記3法の制度改善を求める意見書を公表するとともに、2016年2月19日付けの「被災者の生活再建支援制度の抜本的な改善を求める意見書」では、一人ひとりの被災者に対する災害ケースマネジメントの実施を提言したところであるが、今なお抜本的な制度改善は行われていない。被災者生活再建支援法は5年ごとの見直しが行われないまま既に6年以上経過している。災害関連死や災害援護資金に関する諸問題を改善するため、災害弔慰金の支給等に関する法律についても見直しを図らなければならない。
 当連合会は、被災者支援制度が改善されないまま首都直下地震南海トラフ地震などの大災害が起きると、被災者が制度の不備による無用の苦難を背負う事態が繰り返されるのではないかとの懸念を抱いている。制度改善の取組に一刻の猶予もなく、被災者支援制度の早期の抜本的な改善を求めるものである。
 
  2018年(平成30年)5月22日
 
    日本弁護士連合会      
      会長 菊地 裕太郎
(引用終わり)
 
 以上の会長声明の前段で言及されている災害救助法改正案については、何がどう変わるのかを押さえておきましょう。
 
 現行の災害救助法の第2条は、以下のように規定しています。
 
災害救助法(昭和二十二年法律第百十八号)
 (救助の対象)
第二条 この法律による救助(以下「救助」という。)は、都道府県知事が、政令で定める程度の災害が発生した市町村(特別区を含む。)の区域(地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市にあっては、当該市の区域又は当該市の区若しくは総合区の区域とする。)内において当該災害により被害を受け、現に救助を必要とする者に対して、これを行う。
 
 つまり、災害救助法に基づく救助の原則的実施主体は「都道府県知事」なのです。
 
 そして、今回の改正案は、この第2条の次に、以下の二条を追加しようとしています。 http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/houan/g19605065.htm
 
 (救助実施市の長による救助の実施)
第二条の二 救助実施市(その防災体制、財政状況その他の事情を勘案し、災害に際し円滑かつ迅速に救助を行うことができるものとして内閣総理大臣が指定する市をいう。以下同じ。)の区域内において前条に規定する災害により被害を受け、現に救助を必要とする者に対する救助は、同条の規定にかかわらず、当該救助実施市の長が行う。
2 前項の規定による指定(以下この条において「指定」という。)は、内閣府令で定めるところにより、同項の救助を行おうとする市の申請により行う。
3 内閣総理大臣は、指定をしようとするときは、あらかじめ、当該指定をしようとする市を包括する都道府県の知事の意見を聴かなければならない。
4 内閣総理大臣は、指定をしたときは、直ちにその旨を公示しなければならない。
5 前各項に定めるもののほか、指定及びその取消しに関し必要な事項は、内閣府令で定める。
 
 (都道府県知事による連絡調整)
第二条の三 都道府県知事は、救助実施市の区域及び当該救助実施市以外の市町村の区域にわたり発生した第二条に規定する災害に際し、当該都道府県知事及び当該救助実施市の長が行う救助において必要となる物資の供給又は役務の提供が適正かつ円滑に行われるよう、当該救助実施市の長及び物資の生産等(生産、集荷、販売、配給、保管又は輸送をいう。以下同じ。)を業とする者その他の関係者との連絡調整を行うものとする。
 
 なお、上記第2条の2第1項を読むだけでは、「救助実施市」は「市」でありさえすればよいように読めますが、内閣府の公表した「災害救助法改正案の概要」によれば、「※指定都市を指定、具体的な基準は内閣府令で規定。」とされていますので、救援実施市としての指定を求めることができる「市」は、「指定都市(政令指定都市)」に限るという内閣府令を制定予定なのでしょう。
 
 なお、内閣府「防災情報のページ」の中の「平成30年度災害救助法等担当者全国会議」のページに、本件災害救助法改正案についての資料を始め、災害弔慰金及び災害援護資金貸付金に関する実務、避難行動要支援者名簿及び被災者台帳、避難所運営などについての豊富な資料が集積されていますので、とても参考になると思います。
 
平成30年度災害救助法等担当者全国会議
 
 今、衆議院には、「環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律の一部を改正する法律案」、「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案」、「特定複合観光施設区域整備法案」などの重要問題案件が目白押しで審議中であり、与野党の攻防が激化しています。場合によっては、強行採決のオンパレードという事態もあり得るかもしれません。そのあおりを受けて、与野党対決でも何でもない災害救助法改正案が廃案などにならないよう、日弁連も会長声明を出したのかもしれません(でもないかな?)。
 
(参考サイト)
 日弁連会長声明で言及された法律、日弁連意見書にリンクしておきます。
 
災害弔慰金の支給等に関する法律(昭和四十八年法律第八十二号)
 
被災者生活再建支援法(平成十年法律第六十六号)
 
日本弁護士連合会「防災対策推進検討会議中間報告に対する意見書」
 
日本弁護士連合会「被災者の生活再建支援制度の抜本的な改善を求める意見書」
 
(弁護士・金原徹雄のブログから)
2018年1月12日
日本弁護士連合会「大規模災害に備えるために公職選挙法の改正を求める意見書」を是非読んで欲しい

司法に安保法制の違憲を訴える意義(24)~東京・国家差止請求訴訟(第6回口頭弁論)における原告訴訟代理人による陳述

 2018年5月22日配信(予定)のメルマガ金原No.3155を転載します。
 
司法に安保法制の違憲を訴える意義(24)~東京・国家差止請求訴訟(第6回口頭弁論)における原告訴訟代理人による陳述
 
 半年余り更新を怠っていた「司法に安保法制の違憲を訴える意義」シリーズも、5月14日と同月16日の配信によって、東京・国家賠償請求訴訟については追いつきました。
 
 今日は、今年の2月5日に行われた東京・差止請求訴訟の第6回口頭弁論の模様をフォローします。同訴訟の次回(第7回)期日は6月20日ですので、これで、ようやく差止請求訴訟も追いつくことになります。
 
 そもそも、差止請求訴訟が「何の差止めを求めているのか?」再確認するため、当初の提訴(2016年4月26日)における「請求の趣旨」と、追加提訴(2017年8月10日)の「請求の趣旨」をあらためて引用しておきます。
 
2016年4月26日 請求の趣旨
1 内閣総理大臣は,自衛隊法76条1項2号に基づき自衛隊の全部又は一部を出動させてはならない。
2 防衛大臣は,重要影響事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律の実施に関し,
(1) 同法6条1項に基づき,自ら又は他に委任して,同法3条1項2号に規定する後方支援活動として,自衛隊に属する物品の提供を実施してはならない。
(2) 同法6条2項に基づき,防衛省の機関又は自衛隊の部隊等(自衛隊法8条に規定する部隊等をいう。以下同じ。)に命じて,同法3条1項2号に規定する後方支援活動として,自衛隊による役務の提供を実施させてはならない。
3 防衛大臣は,国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律の実施に関し,
(1) 同法7条1項に基づき,自ら又は他に委任して,同法3条1項2号に規定する協力支援活動として,自衛隊に属する物品の提供を実施してはならない。
(2) 同法7条2項に基づき,自衛隊の部隊等に命じて,同法3条1項2号に規定する協力支援活動として,自衛隊による役務の提供を実施させてはならない。
4 被告は,原告らそれぞれに対し,各金10万円及びこれに対する平成27年9月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
5 訴訟費用は,被告の負担とする。
との判決並びに第4項につき仮執行の宣言を求める。
 
2017年8月10日 請求の趣旨
1 防衛大臣は、国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律9条4項に基づき、自衛隊の部隊等に、同法3条5号ト若しくはラに掲げる国際平和協力業務又は同号トに類するものとして同号ナの政令で定める国際平和協力業務を行わせてはならない。
2 防衛大臣は、自衛隊法95条の2に基づき、自衛官に、アメリカ合衆国の軍隊その他の外国の軍隊の部隊の武器等の警護を行わせてはならない。
との判決を求める。
 
 要するに、
 ①存立危機事態における防衛出動(当初1項)
 ②重要影響事態対処法に基づく後方支援活動(当初2項)
 ③国際平和共同対処事態法に基づく協力支援活動(当初3項)
 ④PKO協力法に基づく駆け付け警護等(追加1項)
 ⑤自衛隊法に基づく米軍等武器防護(追加2項)
の5項目がとりわけ、違憲性の程度が高いということで、差止請求の対象となっている訳です。
 なお、慰謝料請求(当初4項)は、いわゆる「おさえ」というものでしょう。
 
 2月5日の第6回口頭弁論では、この日陳述した原告ら「準備書面(14)」(違憲審査制と裁判所の役割)について伊藤真弁護士が、同「準備書面(15)」(被害論その2)を古川(こがわ)健三弁護士が、それぞれ口頭で内容を説明しました(報告集会で配布された陳述書を末尾に転載します)。
 
 なお、この日の裁判所前集会、裁判後の記者会見、報告集会の模様が、UPLAN(三輪祐児)さんのYouTubeチャンネルにアップされていますのでご紹介します。
 
20180205 UPLAN 東京地裁103号法廷を満席に! 安保法制違憲訴訟 第6回差止訴訟・口頭弁論期日(2時間20分)
冒頭~ 裁判前集会(東京地裁正門前)
21分~ 裁判後の記者会見
44分~ 報告集会(参議院議員会館B107)
 44分~ 挨拶 寺井一弘弁護士(安保法制違憲訴訟の会共同代表)
 56分~ 陳述した代理人から(1) 伊藤 真弁護士
 1時間08分~ 陳述した代理人から(2) 古川(こがわ)健三弁護士
 1時間16分~ 福田 護弁護士
 1時間42分~ 質疑応答
 
 実は、差止請求訴訟の第6回口頭弁論が東京地方裁判所(民事第2部)で開かれる5日前の1月31日、東京高等裁判所(第12民事部)が、現役の陸上自衛官が提起した「命令服従義務不存在確認請求控訴事件」について、自衛官の請求を却下した1審判決を取り消し、東京地方裁判所に差し戻す判決をくだしたことが注目を集めていました(陸上自衛官が提起した「命令服従義務不存在確認請求控訴事件」についての東京高等裁判所(第12民事部)の判決要旨を読む/2018年2月1日)。
 2月5日の報告集会でも、この判決をどう受け止めるかということについて、福田護弁護士からコメントが述べられていますので、ご注目ください。
 ちなみに、国は、この東京高裁判決を不服として、2月14日、最高裁判所に上告受理申立てを行ったそうです。
 

原告ら訴訟代理人 弁護士 伊 藤   真
 
違憲審査制と裁判所の役割
 違憲審査権の意義と裁判所の役割について、新安保法制法の制定過程を踏まえ、諸外国と対比しながら述べる。
 
1 民主的な政治過程との関係について
 違憲審査権(憲法81条)を行使する際には、私権保障型の付随的審査制を基本としながらも、それが憲法保障機能を持つべきであることも十分に配慮しなければならない。
 その配慮とはすなわち、必要な場合に合憲性の統制に積極的になることである。その「必要な場合」かどうかの判断は、代議的自治の政治過程によって悪法を矯正できない状況にあったかどうかが、1つの指標となる。
 では、新安保法制法の審議過程において、国民の声が反映されていたかといえば、全くそうではなかった。むしろその不十分さと異常さが顕著な国会というほかはなかった。首相らの答弁が二転三転し、適法な委員会決議がないままに採決が強行された。このように、新安保法制法の審議過程における不十分さと異常さに照らせば、国民の声がそこに届いていたとは言いがたく、そうだとすると、裁判所は、合憲性の統制に積極的に乗り出さねばならない。
 
2 統治行為論について
 仮に統治行為論を概念として肯定したとしても、本件訴訟は司法判断がなされるべき事案である。まず、砂川判決の統治行為類似の理論に従って今回の新安保法制法を判断するのであれば、「一見極めて明白に」違憲無効か否かの判断を避けて通ることはできない。
 そもそも、統治行為論は、政治問題については、裁判所よりも国民の意思が直接反映されている国会で判断するほうが民主主義に適合するという考えに支えられている。ところが、新安保法制法は先に述べたように不十分な審議経過と異常な議決によって成立したものであり、統治行為論の前提を欠く。仮にこうした民主政の過程が機能しない場合であるにもかかわらず、統治行為論によって司法審査を避けようとするのであれば、それは司法にとって自己否定と言わざるを得ない。
 また、統治行為論は、この理論の母国であるフランスでさえ制限されてきているし、アメリカ法における「政治的問題の法理」も、砂川判決に影響を及ぼした時代とは異なり、かなり制約された領域に関するものと解されている。仮に、裁判所が本件で違憲審査を回避した場合には、憲法9条の法規範性が失われ、単なる理想条項になりかねないと園部逸夫・元最高裁判事は指摘し、「解釈改憲の果てしない継続は、日本における『法の支配』原理の終焉をもたらす。」と警鐘を鳴らしている。
 
3 憲法判断の回避について
 憲法判断回避の準則によって裁判所が自己抑制をすることがある。しかしこれは、絶対的なルールではない。むしろ、類似の事件が多発する恐れがあり、明確な憲法上の争点があるような場合に憲法判断することは学説上も是認されてきた。この点について、芦部信喜教授は、憲法判断回避のルールによらず、憲法判断に踏み切る際に総合的に考慮すべき要素として「事件の重大性」、「違憲状態の程度」、「その及ぼす影響」、「権利の性質」をあげる。これらの要素を当てはめてみたとしても、新安保法制法の憲法適合性にかかわる本件訴訟については「憲法判断回避の準則」を適用できる場合ではない。
 
4 外国の違憲審査制
 日本国憲法違憲審査制のあり方について考える際に、日本と同様に立憲主義、法の支配、権力分立、民主主義、司法権の独立、そして基本的人権の保障などの憲法価値を重視している諸外国の違憲審査制のあり方が参考になる。
 アメリカやフランス、ドイツでは「人権保障」のために裁判所が積極的に違憲審査権を行使し、憲法違反との判決を下すことに躊躇しない現実がある。アメリカでは最近でもトランプ大統領が出した入国禁止令に対し、さまざまな裁判所が積極的に違憲判断を下している。
 本件訴訟は、新安保法制法が違憲であるか否かという憲法問題を問うものであり、こうした重要な法律問題を解決するために裁判所が積極的にその権限を行使するべき事案であることは、アメリカにおける政治問題の法理の展開を見ても明らかである。
 フランスやドイツでも、「憲法院」や「連邦憲法裁判所」の積極的な人権擁護の判断は、多くの国民の支持を得ている。
 なお、近時は「付随的違憲審査制」(アメリカ型)と「抽象的違憲審査制」(ドイツ型)の両者がお互いに歩み寄る「合一化傾向」があることも忘れてはならない。例えば、アメリカ型では、個々の権利救済が違憲審査制の一義的な機能とされ訴訟要件が制限されていたことが改められ、しだいに当事者適格等を緩和するような運用が認められる。それによってドイツ型のような客観的な憲法秩序保障に近いものが導入されつつある」と指摘されている。
 
5 裁判所と裁判官の職責
 新安保法制法をめぐっては、日本の裁判所は「人権保障」の職責を自覚し、違憲判断を行うべき緊急性がアメリカやフランスの事例以上に高いものとなっている。
 南スーダンにおいては、自衛官は遺書を書かざるを得ないような状況に追い込まれても、安倍内閣自衛隊南スーダンから撤退させなかった。自衛官その人は「平和的生存権」、「人格権」を侵害されているし、自衛官の家族や関係者、戦争体験者などの原告の中には自衛隊が人を殺傷し、そして殺傷されることに強い恐怖などを感じる人も少なくない。海外での武力行使を認める新安保法制法を憲法違反と判示することは、自衛官やその家族や関係者などの「平和的生存権」や「人格権」を裁判所が擁護し、その職責を果たしたことになる。
 一方、裁判所が新安保法制法に対して憲法判断を避けることにより、違憲の既成事実が積み重ねられることを黙認したり、あるいは誤った合憲判断を下したりした結果、新安保法制法が存続することになれば、多くの自衛官が海外での戦闘で殺傷されるような事態を招くことになろう。その場合には、新安保法制法を成立させた安倍内閣と同様、裁判所自身も「自衛官が人を殺傷し、殺傷される」ことへの共同責任を免れないと言わざるを得ない。そして安倍内閣に忖度するような判決を下すのであれば、国民の裁判所への不信は募り、ワイマール共和国時代の裁判所と同様、後世において批判の対象となることを免れないであろう。日本の裁判所もアメリカ、フランス、ドイツの裁判所と同様に、人権、そして憲法価値を守る存在であることを明確な判決で示し、日本にも「法の支配」が存在することを内外に明らかにする職責が裁判所にはあるのである。
 そもそも、「人権保障」と「憲法保障」という目的は、「水と油」のような相いれない関係ではない。むしろかなり重なり合う。「人権保障」のためには、「私権保障型」の違憲審査制を固守するのではなく、「憲法保障機関」としての裁判所でもあるべきなのである。
 いうまでもなく、戦争は最大の人権侵害である。国家が戦争に近づくことを阻止することは、最大の人権侵害を未然に防ぐことを意味する。
 だからこそ、人権保障のためには、憲法9条や前文の平和主義が要請する平和国家としての憲法秩序の維持が不可欠である。そして、この憲法秩序を保障するために、裁判所が「憲法保障機関」としての役割を果たすことが人権保障の観点から要請される。原告らの精神的苦痛を無視して、具体的な権利侵害がないから違憲審査権を行使しないなどとして「憲法保障」のための裁判所としての役割を放棄してはならない。
 さらに、内閣法制局が、内的批判者たる法律家としての役割を自ら放棄してしまった今回のような事態においては、政治部門の外にいる裁判所が、立憲主義の擁護者としてその役割を積極的に果たす以外に、日本の立憲主義を維持貫徹する方途はない。
 そもそも裁判所は政治部門の判断を追認するために存在するのではない。主権者国民が政治部門に委ねた憲法の枠組みに沿った国家運営がなされているのか否かを厳格に監視するためにその存在が認められているのである。裁判所が、今回の新安保法制法の違憲性についての判断を避け、自らその存在意義を否定するようなことがあってはならない。よって、たとえ被告が争点とするまでもないとして(争点とすることを避けるため)、反論をしなかったとしても、裁判所としては、新安保法制法の違憲性について、原告の主張を受け止め、十分な審理を尽くして、憲法が裁判所に課した職責を全うするべきである。そしてこれは憲法制定権者たる国民から裁判所に負託(付託)された使命であり、裁判官にはこれに応える憲法上の義務(憲法尊重擁護義務については99条)があるのである。
 これまでもそれぞれの時代における、その時代固有の司法の役割、裁判官が果たすべき役割があった。今の時代は、政治部門が憲法を尊重し敬意を払っているとは思えない状況にあり、政治部門内での抑制・均衡が機能不全に陥っている。これまでにないほどに立憲主義、平和主義、民主主義といった憲法価値が危機に直面している。こうした時だからこそ、果たさなければならない司法の役割、裁判官の使命があるはずである。
 私たちは、裁判所にあえて「勇気と英断」などは求めない。この歴史に残る裁判において、裁判官としての、法律家としての職責を果たしていただきたいだけである。憲法を学んだ同じ法律家として、司法には、政治部門に対して強く気高く聳え立っていてほしい。このことを切に願う。
                                                                             以上
 

原告ら訴訟代理人 弁護士 古 川(こがわ)健 三
 
第1 深まる戦争の危機と被害の蓋然性の高まり
 2018 年1月1日、朝鮮労働党金正恩委員長は、「米本土全域がわれわれの核攻撃の射程圏にあり、核のボタンが私の机の上に常にある」と述べた。すると米国トランプ大統領は翌日「私の(核のボタン)は、彼のよりももっとずっと大きく、パワフルだ」とすかさずツイッターに書き込んだ。米国と北朝鮮は互いに軍事的威嚇に終始しており、核戦争の危機はこれまでになく高まっている。
 新安保法制制定後、日本政府はより一層米国に追随する姿勢を明確にしている。昨年5 月、新安保法制にもとづき自衛隊護衛艦「いずも」等は米空母「カール・ビンソン」に対する米艦防護を行った。この行動は、北朝鮮から見れば明らかに米国の戦争への参加として映る行動であり、武力による威嚇を禁ずる憲法9条と明らかに相矛盾する行動である。現に、北朝鮮は、「取るに足らない日本列島の4つの島を核爆弾で海中に沈めるべきだ。日本はもはや、われわれの近くに置いておく存在ではない」などとする公式声明を発表して威嚇している。新安保法制は日本が軍事攻撃の対象となる危険性を高めたのである。
 新安保法制制定後の自衛隊の軍備増強に向けた動きも急速に進んでいる。昨年12月、イージス・アショアの導入が閣議決定された。しかし日本のイージス・アショア導入に対し、ロシアは以前から強い懸念を表明しており、この導入決定に対しても「米露中距離核戦力全廃条約に実質的に違反する」と強く反発している。日本の軍備増強は北朝鮮のみならず、周辺諸国との大きな摩擦を生み出している。
 目を国内に向けると、米軍機の墜落、不時着、部品落下が相次いでいる。2016年12月のオスプレイの空中給油訓練中の墜落大破事故をはじめとして、オスプレイの事故は多発している。
 しかし2017年1月から木更津駐屯地においてオスプレイの定期機体整備が始まっており、日本国内各地にオスプレイは飛来し、横田基地への配備も今後予定されている。
 さらに、2017年12月から2018年1月にかけて、沖縄では米軍ヘリコプターの部品落下や不時着が相次いでいる。特に2017年12月13日の宜野湾市普天間第二小学校校庭への窓枠落下事故では、当時約50名の児童が校庭におり、児童1名が落下の衝撃で飛んだ小石が当たって軽傷を負っている。
 新安保法制による自衛隊と米軍のさらなる一体化と情勢の緊迫は、基地の利用増加をもたらす。これらの事故はその延長線上にあるものとして、沖縄のみならず本土にある基地周辺の住民にも、多大な不安と恐怖を与えている。
 このような状況のもと、原告らが新安保法制制定により受けている権利侵害は、一層顕著で深刻なものに発展している。
 
第2 原告らの被害の個別的検討
1.準備書面15では、原告らのうち、厚木基地周辺住民である原告5名、子を持つ母な
どである原告4名、運輸機関労働者である原告3名、被爆者である原告4名、計16名の具体的な被害を述べる。ここでは、それぞれの類型につき原告らが主張している被害の概要を紹介することとする。
2.厚木基地周辺住民
 厚木基地は、米軍唯一の海外展開航空団である第5空母航空団の基地である。この航空団はアジアや中東での有事の際には、米国本土よりも素早く即応体制をとることができる。また海上自衛隊の航空集団司令部等、海上自衛隊にとっても非常に重要な部隊が集中する基地である。その基地の周辺で原告らはこれまでも爆音と隣り合わせの生活を余儀なくされており、心臓病を抱えて暮らす原告もある。沖縄で相次ぐ事故は決して他人事ではなく、横浜でも米軍機が墜落して死傷者が出た事故が起きている。新安保法制により自衛隊が米軍の指揮下に入り、後方支援すれば、安全な場所はない。
 ある原告は、「戦時中、真珠湾攻撃の戦果を大得意で母に話したら、母にポツリと『日
本は負けるよ』と言われた。大人たちは戦争の行き着く先を知っていたが誰もそれが言えずに止められなかった。同じことが起きる前に、止められない流れになってしまう前に行動しなければならない」と述べ、差止めの必要性を強く訴えている。
3.子を持つ母など
 子を思う母の愛は深く、それゆえ母たちは命の問題に最も敏感である。新安保法制は、最愛の子どもたちや孫たち、次世代の若い命が国家の利益のために奪われる社会を出現させ、母たちに深い精神的苦痛をもたらした。
 ある原告は、その母から「戦争しない国に生まれてよかったね」と言われて育ってきたが、新安保法制の成立により、社会が戦争する国に変貌したことに戦慄し、息子が銃を担ぐ姿を思い描いては涙し、またアメリカ軍の戦闘機に青い目の兵士が乗っている夢を見るようになってしまった。
 またある祖母は我が子のようにして育ててきた孫が新安保法制が審議されていたその頃「戦争はしたくないよ」と話すのを聞き、胸を痛めると同時に大人の次世代に対する責任を痛感した。
 新安保法制制定後、現実に南スーダン自衛隊の若者たちが送られたことはまぎれもない事実であり、原告らは、同じことが最愛の子や孫たちに降りかかるであろうという強い危機感に襲われたのである。
4.運輸機関労働者
 運輸機関労働者は、新安保法制の制定により、テロの標的として危険にさらされる。
 国際線に就航する民間航空パイロットであったある原告は、南スーダンへの自衛隊派遣の際、日航機がチャーターされて自衛隊員を輸送したとし、今後、日本の民間航空機がテロの標的とされる危険性が新安保法制の制定により飛躍的に高まったことに大きな危機感を覚えている。
 また、船員である原告は、新安保法制制定後に民間フェリー2隻が防衛省にチャーターされた事実を指摘する。このチャーター契約は、自衛隊員や武器弾薬等を常時輸送することを目的としており、防衛省によりチャーターされたフェリーは、防衛省との契約により、有事の際には「自衛隊法により海上自衛隊が運航」し、2隻のうち1隻の船員は「予備自衛官またはその希望者であることを確認して雇用する」とされている。また船舶自体も弾薬の積載に耐えうることや船橋前、側部防護板を有すべきものとされ、実弾の飛び交う戦場へ赴くことが想定されている。
 海戦法規によれば、民間商船であっても、武器弾薬や兵員を輸送する船舶は敵国の軍事目標となる。新安保法制法は、民間商船が軍事目標となる道を開いたものであって、船員たちにとっては極めて危険な法制なのである。
5.被爆
 新安保法制法制定は、この世の地獄を体験し、その体験ゆえに平和を切実に望んでいる被爆者である原告たちの心の拠り所である平和憲法を奪った。
 ある原告は、被爆当時10歳だった妹が「母ちゃん、早う戦争が済めばね」と言い残して息をしなくなったことやそれを母が繰り返し語っては涙していた様子を思い出す。そし
て新安保法制法の成立に、当時のあまりにもむごい、頭から離れない風景が浮かんできて
は涙が止まらない。
 またある原告は、新安保法制法の成立に、再び日本が戦争の時代に逆戻りしていることを実感し、たくさんの同級生や友人知人の亡骸を目の前で焼いたその異臭、川に浮かぶ数え切れないほどたくさんの死体など、被爆の夏の忌まわしい記憶が再び蘇っている。
 このように新安保法制法の制定は、原告らに現実の被害を与えており、また被害のさらなる拡大を防ぐためには、集団的自衛権等の事前差し止めが認められなければならない。
                                                                             以上
 

(弁護士・金原徹雄のブログから/安保法制違憲訴訟関連)
2016年9月3日
東京・安保法制違憲訴訟(国賠請求)が始まりました(2016年9月2日)
※過去の安保法制違憲訴訟関連のブログ記事にリンクしています。
2016年9月6日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(1)~東京・国家賠償請求訴訟(第1回口頭弁論)における原告訴訟代理人による意見陳述
2016年9月10日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(2)~東京・国家賠償請求訴訟(第1回口頭弁論)における原告による意見陳述
2016年10月4日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(3)~東京・差止請求訴訟(第1回口頭弁論)における原告訴訟代理人による意見陳述
2016年10月5日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(4)~東京・差止請求訴訟(第1回口頭弁論)における原告による意見陳述
2016年12月9日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(5)~東京・国家賠償請求訴訟(第2回口頭弁論)における原告代理人による意見陳述
2016年12月10日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(6)~東京・国家賠償請求訴訟(第2回口頭弁論)における原告による意見陳述
2017年1月5日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(7)~寺井一弘弁護士(長崎国賠訴訟)と吉岡康祐弁護士(岡山国賠訴訟)の第1回口頭弁論における意見陳述
2017年1月7日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(8)~東京・差止請求訴訟(第2回口頭弁論)における原告訴訟代理人による陳述
2017年1月8日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(9)~東京・差止請求訴訟(第2回口頭弁論)における原告(田中煕巳さんと小倉志郎さん)による意見陳述
2017年2月14日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(10)~東京「女の会」訴訟(第1回口頭弁論)における原告・原告代理人による意見陳述
2017年3月15日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(11)~東京・国家賠償請求訴訟(第3回口頭弁論)における原告代理人による陳述 
2017年3月16日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(12)~東京・国家賠償請求訴訟(第3回口頭弁論)における原告(田島諦氏ほか)による意見陳述
2017年4月21日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(13)~東京・差止請求訴訟(第3回口頭弁論)における原告代理人による陳述
2017年4月22日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(14)~東京・差止請求訴訟(第3回口頭弁論)における原告による意見陳述(様々な立場から)
2017年6月23日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(15)~東京・国家賠償請求訴訟(第4回口頭弁論)における原告訴訟代理人による陳述
2017年6月25日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(16)~東京・国家賠償請求訴訟(第4回口頭弁論)における原告による意見陳述(野木裕子さん他)
2017年8月7日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(17)~東京・差止請求訴訟(第4回口頭弁論)における原告訴訟代理人による陳述
2017年8月8日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(18)~東京・差止請求訴訟(第4回口頭弁論)において3人の原告が陳述する予定だったこと
2017年8月20日
「私たちは戦争を許さない-安保法制の憲法違反を訴える」市民大集会(2017年9月28日/日本教育会館)へのご参加のお願い
2017年9月30日
市民大集会「私たちは戦争を許さない」(2017年9月28日)で確認されたこと
2017年11月1日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(19)~東京・国家賠償請求訴訟(第5回口頭弁論)における原告訴訟代理人による陳述
2017年11月2日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(20)~東京・国家賠償請求訴訟(第5回口頭弁論)における原告による意見陳述(今野寿美雄さん他)
2017年11月5日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(21)~東京・差止請求訴訟(第5回口頭弁論)における原告訴訟代理人による陳述
2018年5月14日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(22)~東京・国家賠償請求訴訟(第6回口頭弁論)において7人の原告が語ったこと(横湯園子さん他)
2018年5月16日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(23)~東京・国家賠償請求訴訟(第7回口頭弁論)において3人の原告(井筒高雄さん他)と5人の代理人が語ったこと

川崎哲氏講演会「ICANのノーベル平和賞をうけて私たちは、何をどう取りくむか!」(2018年6月30日@和歌山市勤労者総合センター)のご案内

 2018年5月21日配信(予定)のメルマガ金原No.3154を転載します。
 
川崎哲氏講演会「ICANのノーベル平和賞をうけて私たちは、何をどう取りくむか!」(2018年6月30日@和歌山市勤労者総合センター)のご案内
 
 つい一昨日、6月16日(土)に開催される冨田宏治(とみた・こうじ)さん講演会「核兵器禁止条約の意義と課題」(和歌山市あいあいセンター6階ホール)をご紹介したばかりですが、今日は、その2週間後の6月30日(土)に開かれる川崎哲(かわさき・あきら)さん講演会「ICANのノーベル平和賞をうけて私たちは、何をどう取りくむか!」をご紹介することになりました。
 
 まずは、主催団体の核戦争防止和歌山県医師の会から届いたチラシの記載内容を紹介します。
 
(チラシから引用開始)
平和講演会
ICANのノーベル平和賞をうけて
私たちは、何をどう取りくむか!
 
昨年7月、核兵器禁止条約が国連で採択され、今各国での批准作業が進められています。
秋には核兵器廃絶へ向け、条約の成立発効を求める国際NGO組織であるICANが、ノーベル平和賞を受賞しました。この核廃絶に向けた国際的な動きの中、また2020年NPT再検討会議に向け、私たち市民は、この日本で、この地域で何をどう取り組むかを話して頂きます。
 
と き 2018年6月30日(土)午後3時~5時
ところ 和歌山市勤労者総合センター6F文化ホール
        (和歌山市役所西隣 TEL:073-433-1800)
参加費無料
 
講師 川崎 哲(かわさき・あきら)氏
     ピースボート共同代表
     ICAN国際運営委員
プロフィール
1993年東京大学法学部卒業。
1998~2002年、NPO法人「ピースデポ」スタッフ(00~02年、事務局長)
2003年、ピースボートのスタッフとなる。
2008年から広島・長崎の被爆者と世界を回る
「ヒバクシャ地球一周証言の航海」プロジェクトを実施。
他多くのプロジェクト等に携わる。
恵泉女学園大学非常勤講師始め多くの大学で講義を行う。
現在、ピースボート共同代表。
核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)国際運営委員
著書には
核兵器を禁止する』岩波ブックレット2014
『核拡散 軍縮の風は起こせるか』岩波新書2003
他共著多数
 
主催/核戦争防止和歌山県医師の会
連絡先/和歌山市八番丁11番地 日本生命和歌山八番丁ビル8階
 和歌山保険医協会内 TEL:073-436-3766
(引用終わり)
 
 核戦争防止和歌山県医師の会は、毎年の総会開催時に、一般市民向けの平和講演会を無料で開催するのが例となっています。私のブログを振り返ってみると、2011年のアーサー・ビナードさんの講演に深い感銘を受け、2016年の『放射線を浴びたX年後』2部作一挙上映と伊東英朗監督講演会の際は、映画の第1作を見終わった後、市役所前からスタートするサウンドデモに参加し、ゴール地点(多分、南海和歌山市駅前)から会場のあいあいセンターまで急いでとって返して伊東監督講演会に間に合ったということなどがすぐに思い出されます。
 
 ちなみに、核戦争防止和歌山県医師の会は、第2回わかやま平和賞(9条ネットわかやま制定)の受賞団体であり、2012年3月20日、和歌山ビッグ愛1階大ホールで行われた広河隆一氏講演会(憲法9条を守る和歌山弁護士の会、9条ネットわかやま共催)「子どもたちをどう守るか~パレスチナチェルノブイリ、フクシマ~」に先立ち贈賞式が行われたのでした。
 
 さて、今年の平和講演会は、ICAN国際運営委員でもあるピースボートの川崎哲さんですが、私としては、もしも日程的に可能であれば、核戦争防止和歌山県医師の会も後援している6月16日の冨田宏治さん講演会「核兵器禁止条約の意義と課題」とセットで聴講するのがベストではないかと思います。
 
 以下、参考サイトをいくつかご紹介しておきます。
 
ノーベル平和賞授賞式 ICAN事務局長 演説全文(NHK NEWS WEB)
 
サーロー節子さん ノーベル平和賞授賞式 演説全文(NHK NEWS WEB)
 
ピースボート公式WEBサイト
 
東京新聞チャンネル  2017年10月14日公開
ノーベル平和賞決定ICAN川崎哲さんインタビュー(57分33秒)
2017年のノーベル平和賞に決まった国際NGO核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)の川崎哲国際運営委員が東京新聞の単独インタビューに応じました。概要は以下の通りです。
目次
00:26 自己紹介をお願いします
02:01 今回のノーベル平和賞の意義 核兵器禁止条約とは何ですか
05:02 人道主義と平和主義の違いは
09:57 これまで国連で禁止されている兵器は
13:02 条約をめぐる各国の駆け引きで、ICANの貢献は
17:24 先進国にもアプローチするのがICANの戦略だった
19:57 今年7月に核兵器禁止条約が制定された 今後の見通しは
22:26 今後、核兵器に関する国際会議が開かれる
27:04 日本の立ち位置は
31:54 日本の影響力は大きい?
33:56 被爆者は今回条約にどう関わった
36:06 ピースボート被爆者の関わり
39:57 ピースボート被爆者と関わり始めた経緯
46:42 今後の活動は
49:38 ノーベル平和賞が決まった際の日本政府の反応は
52:31 川崎さん個人の今後の活動は
55:22 若い人たちへの思いは
 
(弁護士・金原徹雄のブログから/核戦争防止和歌山県医師の会関連)
2011年7月9日(2013年7月6日に再配信)
アーサー・ビナード氏講演会(in和歌山市)レポート/2011年7月9日
2015年5月23日
予告6/27高原孝生氏を招いた平和講演会(核戦争防止和歌山県医師の会)
2016年4月26日
予告6/11映画『放射線を浴びたX年後』2部作一挙上映と伊東英朗監督講演会へのお誘い(核戦争防止和歌山県医師の会)
2017年5月26日
木戸季市氏(日本被団協事務局次長)講演(7/8プラザホープ)とヒバクシャ国際署名~核戦争防止和歌山県医師の会2017年平和講演会

「9条俳句」東京高裁判決(2018年5月18日)と社会教育の危機

 2018年5月20日配信(予定)のメルマガ金原No.3153を転載します。
 
「9条俳句」東京高裁判決(2018年5月18日)と社会教育の危機
 
 一昨日(2018年5月18日)、東京高等裁判所前の路上に、おそらく若手弁護団員と思われる男女2人から旗出しされた内容を読むと、「勝訴」「市の責任 再び認める」と書かれていました。そして、その下には、「『九条俳句』東京高裁 勝利判決へ! 2018.5.18 『九条俳句』市民応援団」と書かれた横断幕が展開され、さらにその両脇には、「梅雨空に『九条守れ』の女性デモ 『九条俳句』市民応援団」という黄色い幟が立てられていました。
 以上は、「九条俳句」市民応援団ホームページのトップに掲載された写真を描写してみたものです。
  ちなみに、この写真には、「青葉光る 我等の轍 刻みゆく」という俳句と、「1審さいたま地裁につづき、東京高裁でも勝訴!!」という見出しが掲載されていました。この俳句、どなたの作なのだろう?と思っていましたが、後にご紹介する報告集会の動画を視聴したところ、集会の最後でまとめをされた佐藤一子(さとうかつこ)先生(東京大学名誉教授・社会教育学)が作られたのだと分かりました(2時間07分~)。
 
 高裁判決を伝えたニュースの中から、弁護士ドットコムニュースの一部を引用します。
 
弁護士ドットコムニュース 5/18(金) 17:18配信
「9条俳句」不掲載、さいたま市が二審も敗訴 原告側「公民館職員の義務にまで踏み込んだ」と評価
(抜粋引用開始)
 「梅雨空に『9条守れ』の女性デモ 」。さいたま市の公民館が、市内の女性(77)が詠んだ俳句の掲載を拒否したことは、憲法が保障する表現の自由にあたるなどとして争われていた訴訟の控訴審判決が5月18日、東京高裁(白石史子裁判長)であった。白石裁判長は、原告勝訴だった一審に続き、「憲法に保障された住民の思想の自由・表現の自由は最大限に尊重されるべき」として、不掲載を違法と断じるとともに、市に作者の女性に対する慰謝料5000円の支払いを命じた。
●「思想や信条を理由に不当な取り扱いをすることは違法」
 「9条俳句」とは、女性が2014年6月に東京・銀座で集団的自衛権の行使容認に反対するデモを目撃して、詠んだ俳句。女性が参加している俳句会では毎月、地元のさいたま市三橋公民館の「公民館だより」に俳句を掲載していたが、女性の句を掲載しようとしたところ、政治的に中立であるべきとして、公民館側から不掲載とされた。
 女性は思想や信条によって不当な取り扱いを受けたとして、さいたま地裁に提訴。表現の自由や不掲載の正当性などが争われていた。昨年10月の一審判決では、女性が掲載に期待するのは法的保護に値するとして、公民館側の違法性を認めたが、女性があらためて俳句の掲載を申し入れたことをさいたま市が受け入れず、控訴していた。
 控訴審判決では、慰謝料の減額はあったものの、一審判決よりさらに踏み込んだ内容となっている。判決文によると、まず公民館とは、住民の福祉を増進する目的で利用されるための公的施設であることから、地方自治体は「住民が公民館を利用することについて、不当な差別的取り扱いをしてはならない」と前提。公民館の職員は、住民の社会教育活動の実現について、「公正に取り扱うべき職務上の義務を負う」とした。
 そのため、住民が公民館での社会教育活動による学習成果を発表した時、その思想や信条を理由に、他の住民と比べて不当な取り扱いをすることは、「違法」であると指摘。「思想の自由、表現の自由」について、「憲法上保障された基本的人格権であり、最大限尊重されるべきものである」と明記している。
(以下略)
(引用終わり)
 
 上記ニュースの伝えるところによると、弁護団長の佐々木新一弁護士は、「一審の判決では慰謝料5万円だったのに対して、控訴審判決では5000円という減額になりましたが、判決の内容については、むしろ一審よりも前進した側面がある」と評価したそうで、まあ、金額は問題ではないと思いますが、しかし、1審が認めた5万円というのは、わざわざ減額するほどの金額か?と思いますけどね。あるいは、裁判所としては、被告さいたま市の顔も立てて、同市が上告断念をしやすいように「配慮」してあげたのかもしれませんけど。
 
 なお、この18日の判決前後の模様を、UPLAN(三輪祐児)さんが収録してYouTubeにアップしてくださっていますので、ご紹介しておきます。
 
20180518 UPLAN【デモ・記者会見・報告集会】九条俳句裁判高裁判決(2時間11分)
冒頭~ 日比谷公園 デモ参加者集合
7分~ デモ出発
24分~ 弁護団・傍聴者入場
27分~ 旗出し「勝訴」
28分~ 記者会見
51分~ 報告集会
 
 特に、報告集会の発言は聴き取りやすいですし、判決を手許に置いて視聴すれば、よりよく判決の内容を理解できると思います。
 判決のPDFファイル(15ページ)は、「九条俳句」市民応援団のホームページからダウンロードできますので、プリンターをお持ちの方は、印刷されることをお勧めします。
 
 今回の高裁判決の肝となるのは、8頁~11頁「争点(8)について」なので、コピペできないので手間ですが、書き写しておきます。ただ、転記ミスもあるでしょうから、引用するのであれば、PDFファイルから直接お願いします。
 
平成29年(ネ)第5012号 九条俳句不掲載損害賠償等請求控訴事件
(原審・さいたま地方裁判所平成27年(ワ)第1378号)
判 決
(抜粋引用開始)
6 争点(8)(本件俳句を本件たよりに掲載しなかったことが、第1審原告の人格権ないし人格的利益を侵害し、国家賠償法上、違法であるか)について
(1) 公民館は、市町村その他一定区域内の住民のために、実際生活に即する教育、学術及び文化に関する各種の事業を行い、もって住民の教養の向上、健康の増進、情操の純化を図り、生活文化の振興、社会福祉の増進に寄与することを目的とした施設であり(社会教育法20条)、国及び地方公共団体が国民の文化的教養を高め得るような環境を醸成するための施設として位置付けられている(同法3条1項、5条参照)。そして、公民館は、上記の目的達成のために、事業として①定期講座を開設すること、②討論会、講習会、講演会、実習会、展示会等を開催すること、③図書、記録、模型、資料等を備え、その利用を図ること、④体育、レクリエーション等に関する集会を開催すること、⑤各種の団体、機関等の連絡を図ること、⑥その施設を住民の集会その他の公共的利用に供することとされ(同法22条)、さらに公民館は、住民の福祉を増進する目的をもってその利用に供するための施設(公の施設)として、普通地方公共団体は、住民が公民館を利用することについて、不当な差別的取扱いをしてはならないと解される(地方自治法244条3項)。
 公民館の上記のような目的、役割及び機能に照らせば、公民館は、住民の教養の向上、生活文化の振興、社会福祉の増進に寄与すること等を目的とする公的な場ということができ、公民館の職員は、公民館が上記の目的・役割を果たせるように、住民の公民館の利用を通じた社会教育活動の実現につき、これを公正に取り扱うべき職務上の義務を負うものというべきである。
 そして、公民館の職員が、住民の公民館の利用を通じた社会教育活動の一環としてなされた学習成果の発表行為につき、その思想、信条を理由に他の住民と比較して不公正な取扱いをしたときは、その学習成果を発表した住民の思想の自由、表現の自由憲法上保障された基本的人権であり、最大限尊重されるべきものであることからすると、当該住民の人格的利益を侵害するものとして国家賠償法上違法となるというべきである(最高裁平成17年7月14日第一小法廷判決・民集59巻6号1569頁参照)。
(2) これを本件についてみると、前提事実(3)及び(5)のとおり、三橋公民館は、本件合意に基づき、平成22年11月から平成26年6月まで3年8か月間にわたり、本件句会が提出した秀句を一度も拒否することなく継続的に本件たよりに掲載してきており、本件たよりに掲載する俳句の選定を基本的に本件句会に委ねていたと認められるところ、従前と同様の選考過程を経て本件句会が提出した本件俳句については、それまでの他の秀句の取扱いと異なり、その内容に着目し、本件俳句の内容が、その当時、世論を二分するような憲法9条集団的自衛権の行使を許容するものであるとの解釈に反対する女性らのデモに関するものであり、本件俳句には、第1審原告が憲法9条集団的自衛権の行使を許容するものと解釈すべきではないという思想、信条を有していることが表れていると解し、これを本件たよりに掲載すると三橋公民館の公平性・中立性を害するとの理由で掲載を拒否したのであるから、第1審被告の上記掲載拒否行為は、第1審原告の公民館の利用を通じた社会教育活動の一環としてなされた学習成果の発表行為につき、第1審原告の思想、信条を理由に、これまでの他の住民が著作した秀句の取扱いと異なる不公正な取扱いをしたものであり、これによって、第1審原告の上記人格的利益を違法に侵害したというべきである。
(3) 第1審被告は、三橋公民館が、本件俳句を本件たよりに掲載することは、世論の一方の意見を取り上げ、憲法9条集団的自衛権の行使を許容すると解釈する立場に反対する者の立場に偏することとなり、中立性に反し、また、公民館が、ある事柄に関して意見の対立がある場合、一方の意見についてのみ発表の場を与えることは、一部を優遇し、あるいは冷遇することになり、公平性・公正性を害するため、許されないから、本件俳句を本件たよりに掲載しなかったことには、正当な理由がある旨主張する。
 しかし、前提事実(3)エのとおり、本件俳句を本件たよりに掲載する場合、原判決別紙俳句目録1記載のように、本件句会の名称及び作者名が明示されることになっていることからすれば、本件たよりの読者としては、本件俳句の著作者の思想、信条として本件俳句の意味内容を理解するのであって、三橋公民館の立場として、本件俳句の意味内容について賛意を表明したものではないことは、その体裁上明らかであるから、本件俳句を本件たよりに掲載することが、直ちに三橋公民館の中立性、公平性及び公正性を害するということはできない。また、前記(1)で説示したとおり、公民館の職員が、住民の公民館の利用を通じた社会教育活動の一環としてなされた学習成果の発表行為につき、その思想、信条を理由に他の住民と比較して不公正な取扱いをすることは許されないのであるから、ある事柄に関して意見の対立があることを理由に、公民館がその事柄に関する意見を含む住民の学習成果をすべて本件たよりの掲載から排除することは、そのような意見を含まない他の住民の学習成果の発表行為と比較して不公正な取扱いとして許されないというべきである。
 以上によれば、本件俳句が詠まれた当時、集団的自衛権の行使につき世論が大きく分かれていたという背景事情があったとしても、三橋公民館が本件俳句を本件たよりに掲載しなかったことにつき、正当な理由があったということはできず、三橋公民館及び桜木公民館の職員らは、本件俳句には、第1審原告が憲法9条集団的自衛権の行使を許容するものと解釈すべきではないという思想、信条を有していることが表れていると解し、これを理由として不公正な取扱いをしたというべきであるから、上記職員らの故意過失も認められ、第1審被告の主張は採用することができない。
(4) したがって、三橋公民館及び桜木公民館の職員らが、第1審原告の思想や信条を理由として、本件俳句を本件たよりに掲載しないという不公正な取扱いをしたことにより、第1審原告は、人格的利益を違法に侵害されたということができるから、三橋公民館が、本件俳句を本件たよりに掲載しなかったことは、国家賠償法上、違法というべきである。
(略)
東京高等裁判所第2民事部
裁判長裁判官 白 石 史 子
      裁判官 大 垣 貴 靖
      裁判官 鈴 木 義 和 
(引用終わり)
 
 報告集会で、佐藤一子先生から、本件判決の意義と併せて、その判決の根拠となっている社会教育(法)自体が危機に瀕しているということが述べられていました。
 「9条俳句」不掲載事件をはじめとする、市民社会を覆う様々な息苦しさと、社会教育の危機とは根は同じところから来ているような気がします。
 是非、上記報告集会の動画を視聴していただければと思います。
 
 なお、報告集会でも紹介されていましたが、佐藤先生と安藤聡彦さん(埼玉大学教授)、長澤成次さん(千葉大学名誉教授)との共編著著『九条俳句訴訟と公民館の自由』(エイデル研究所)が刊行されたばかりですので、ご紹介しておきます。
 刊行前の予約特価でのFAX注文書が見つかりましたが、多分もう「予約受付」はしていないのではと思いますが、詳細目次がこれで分かります。
 
(参考サイト)
 1審さいたま地裁判決についての志田陽子先生(武蔵野美術大学教授・憲法学)による判例評釈をご紹介しておきます。
新・判例解説Watch・憲法No135
社会教育と表現の自由(9条俳句公民館便り不掲載事件)
 
(弁護士・金原徹雄のブログから)
2017年10月13日
「九条俳句」裁判、さいたま地裁が画期的判決~思想・信条を理由とした公民館誌への掲載拒否と認定

冨田宏治氏講演会「核兵器禁止条約の意義と課題」(2018年6月16日@和歌山市あいあいセンター)のご案内

 2018年5月19日配信(予定)のメルマガ金原No.3152を転載します。
 
冨田宏治氏講演会「核兵器禁止条約の意義と課題」(2018年6月16日@和歌山市あいあいセンター)のご案内
 
 和歌山県平和委員会の里﨑正さんからお届けいただいたチラシの内容をご紹介します。もっとも、私自身、チラシに記載されていること以外の情報の持ち合わせはありませんが、それだけでも、是非皆さんに広く知っていただき、参加を呼びかける価値があるものと判断しました。
 
(チラシから引用開始)
講演会「核兵器禁止条約の意義と課題」
 
2018年6月16日(土)14:30~16:30
場所 和歌山市男女共生推進センター6階ホール(あいあいセンター内)
         和歌山市小人町29番地 TEL:073-432-4704
 
同会場にて、和歌山市原水協の総会を13:30より行っています。
参加無料
どなたでもご参加いただけます。
 
講師
冨田宏治氏
 原水爆禁止世界大会実行委員会
 国際会議宣言起草委員長
とみた こうじ 原水爆禁止世界大会実行委員会国際会議宣言起草委員長。毎年、世界大会の開会総会で主催者報告を行っている。名古屋大学法学部卒。同大学院博士課程。関西学院大学法学部政治学科教授・副学長。専門は日本政治思想史、近代日本におけるデモクラシー思想の研究。明治以降、西欧諸国から日本に移入された自由、民主主義といった観念や思想が、どのような変容をうけながら日本近代の代表的思想家の思想の中に定着し、展開していったのか、または、しなかったのか、といった問題を中心に考察を進めている。とりわけ、最近では、丸山真男らのいわゆる「近代主義」について、その再評価の作業を行っている。
 
被爆者が長年にわたり訴え続けてきた核兵器禁止条約が、昨年の7月7日国連で採択されました。これにより核兵器は違法化され「悪の烙印」が押されました。今後、核保有国は法的な拘束力を受けなくても、政治的・道義的責任を問われることになります。現在、
核兵器禁止条約には58か国が調印し9か国が批准しています。核兵器禁止条約は、50カ国目の国が批准してから90日後に発効します。
 
■主催 冨田宏治さんの講演会を成功させる実行委員会
■連絡先 TEL:073-488-3095 里﨑 正(和歌山県平和委員会内)
■後援/核戦争防止和歌山県医師の会・原水爆禁止和歌山県協議会・非核の政府を求める和歌山県民の会・和歌山県民主医療機関連合会・和歌山県平和委員会
(引用終わり) 
 
 昨年の7月7日に国連で採択された核兵器禁止条約の日本語正文というものはなく(正文はアラビア語、中国語、英語、フランス語、ロシア語、スペイン語です/日本やドイツは、国連(連合国)から見れば「旧敵国」ですからね)、日本政府は署名も批准もしていませんので、公定訳というものもありません。
 そこで、以下には、朝日新聞のものと日本反核法律家協会によるものとの2種類の日本語訳及び英語正文にリンクしておきますので、適宜ご参照ください。
 
朝日新聞デジタル 2017年9月21日11時14分
核兵器禁止条約の日本語訳全文 署名50カ国
 
日本反核法律家協会(JALANA)による2017年7月20日現在暫定訳
 
Treaty on the Prohibition of Nuclear Weapons(条約英語正文)
 
 あと、冨田教授の講演動画はないかと探してみたところ、大阪都構想についての発言を伝える動画の他、核兵器禁止条約についての動画も見つけたのですが、残念ながら、昨年7月7日採択の3か月前のものでした。しかし、少し視聴してみたところ、既に昨年4月の時点で、7月7日における採択自体は既定路線であったこと、従って、当時から、問題は「採択以降」であったのだということがよく分かりました。
 従って、これは今からでも見る価値があるものだと思いますので、ご紹介しておきます。
 
市民社会フォーラム第197回学習会 冨田宏治さん「核兵器禁止条約に向けて 国連での交渉会議の到達点と今後の展望」(2017年4月8日@東灘区民センター)(2時間49分)

27人のミュージシャンが集った『真実・事実・現実 あることないこと』(映画『獄友(ごくとも)』主題歌)PVを視聴する

 2018年5月18日配信(予定)のメルマガ金原No.3151を転載します。
 
27人のミュージシャンが集った『真実・事実・現実 あることないこと』(映画『獄友(ごくとも)』主題歌)PVを視聴する
 
 金聖雄(キム・ソンウン)監督による「『SAYAMA みえない手錠をはずすまで』、『袴田巖 夢の間の世の中』に次ぐシリーズ第三弾!」と公式サイトに謳われているドキュメンタリー映画『獄友(ごくとも)』(2018年/115分)の劇場公開が始まるとともに、自主上映も併行してスタートしており、私の周囲でも「『獄友』、何とか上映したいですね」という声を聞いたりしており、実現すればいいな、と私も思っています。
 
映画『獄友』公式サイト
 
映画『獄友』予告編(1分46秒)
 
 ・・・というようなことが頭にあったからでしょうか、この映画『獄友』制作と密接な関連をもって進められた「冤罪音楽プロジェクト  イノセンス」のプロモーションビデオがYouTubeで公開されていることに気がつきました。まずはその映像をご紹介しましょう。金聖雄監督のYouTubeチャンネルで、5月2日に公開されました。
 
冤罪音楽プロジェクト イノセンス PV(7分25秒)
(動画説明文から引用開始)
「We Are The Wold」(1985年・USAフォー・アフリカ)のように、歌で冤罪被害者を支援できないか?そんな無茶な夢想が現実になった。27人のミュージシャンとひとりの詩人が参加して、「真実・事実・現実 あることないこと」が完成。略して、「真ある」。それは、私の夢想をはるかに超える作品に仕上がった。超個性派の方々の叫びが絶妙にひびき合い生まれた歌は普遍的なものになったように感じている。歌は、映画『獄友』の主題歌になった。試写室でエンディングに流れる「真ある」を聞いた時、ただただ圧倒され、歌の力を感じずにはいられなかった。歌の力はさらに進化して、アルバムが誕生。参加したすべての方々を尊敬する。うそのことがほんとうにならない。そんな世の中であることを、ただ願う。
(引用終わり)
 
 金監督の説明によれば、27人のミュージシャンが参加して創られた『真実・事実・現実 あることないこと』という曲が、『獄友』のラストに流れるということで、早く観て、かつ聴きたいものです。
 この「冤罪音楽プロジェクト イノセンス」のホームページもありました。
  『真実・事実・現実 あることないこと』は、谷川俊太郎さんの詩に小室等さんが曲を付け、小室さんから多くのミュージシャンに参加が呼びかけられただということが分かります。このお二人のコンビによって多くの名曲が生まれていますが、昨年の9月には、『プロテストソング2』が発売されて話題を集めましたよね。
 『真実・事実・現実 あることないこと』の歌詞も公開されています。
 
 さて、気になる27人のミュージシャンとは?以下の方々だそうです(敬称略)。
 
ayako_HaLo、アン・サリー、李政美、伊藤多喜雄うじきつよし、及川恒平、大熊ワタル、こぐれみわぞう、河野‘菌ちゃん’俊二、小室等、こむろゆい、坂田明沢知恵、白崎映美、谷川賢作、趙博、トリ音、中川五郎中川敬ソウル・フラワー・ユニオン)、橋本学、POE(朴保)、*はなおと*、牧原正洋、良元優作吉野弘志、四角佳子
 
 数を数えてみて「26人では?」と一瞬思いましたが、*はなおと*が2人組のユニットでした。写真が公式サイトに載っています。
 
 最初にこのプロモーションビデオを観て(まだ参加ミュージシャンのリストを読む前)、私がすぐに誰だか分かったのは、「及川恒平さん、小室等さん、こむろゆいさん、坂田明さん、趙博さん、中川五郎さん、四角佳子さん」だけでした(少ない!)。
 リストに目を通してからもう一度見直したら、さすがにもっと分かるようになりましたけどね。ところで、中川敬さんはワンフレーズだけ、声はすれども姿は見えず(?)だったような気がするけど。
 皆さんは何人分かりましたか?
 
 『真実・事実・現実 あることないこと』のPVを視聴していると、やっぱり『獄友』が観たくなってきました。