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国連人権理事会・特別報告者(アナンド・グローバー氏)による「調査報告書」

 今晩(2013年5月28日)配信した「メルマガ金原No.1370」を転載します。
 
国連人権理事会・特別報告者(アナンド・グローバー氏)による「調査報告書」
 
 国連人権理事会から、福島第一原発事故に関する「健康に対する権利に関する特別報告者」というミッションを与えられたアナンド・グローバー氏(インド人弁護士)が来日して関係者からのヒアリングを重ねたのが昨年(2012年)11月のことであり、同月26日、日本記者クラブにおいて記者会見が開かれ、あわせてプレス・ステートメントも発表されたことをメルマガNo.1183でお伝えしたことをご記憶の方もおられると思います。
 
日本記者クラブ You Tube チャンネル (1時間07分17秒)

記者会見(文字書き起こし)「みんな楽しくHappy♡がいい♪」
 後半(質疑応答) http://kiikochan.blog136.fc2.com/blog-entry-2576.html  
 
国連人権理事会 特別報告者のプレス・ステートメント(全文)
 そのグローバー氏による「調査報告書」(暫定版)がWEBサイト上で公開されました。
 
 そして、ヒューマンライツ・ナウが急遽「仮訳」を行い、サイトにアップしてくれました(原文とも)。
 
 まだ「確定版」ではないようですが、取り急ぎ「仮訳」によって報告の全体像をつかむことができると思います。ここでは、末尾の「提言」の部分のみ引用しておきます。
 
(引用開始)
勧 告
76. 特別報告者は、日本政府に対し、原発事故の初期対応の策定と実施につい
て以下の勧告を実施するよう求める。
(a) 原発事故の初期対応計画を確立し不断に見直すこと。対応に関する指揮命
令系統を明確化し、避難地域と避難場所を特定し、脆弱な立場にある人を助けるガイドラインを策定すること
(b) 原発事故の影響を受ける危険性のある地域の住民と、事故対応やとるべき措
置を含む災害対応について協議すること
(c) 原子力災害後可及的速やかに、関連する情報を公開すること
(d) 原発事故前、および事故後後可及的速やかに、ヨウ素剤を配布すること
(e) 影響を受ける地域に関する情報を集め、広めるために、Speediのような技術を
早期にかつ効果的に提供すること
 
77. 原発事故の影響を受けた人々に対する健康調査について、特別報告者は日本政府に対し以下の勧告を実施するよう求める。
(a) 全般的・包括的な検査方法を長期間実施するとともに、必要な場合は適切
な処置・治療を行うことを通じて、放射能の健康影響を継続的にモニタリングするこ
(b) 1mSv以上の地域に居住する人々に対し、健康管理調査を実施すること
(c) すべての健康管理調査を多くの人が受け、調査の回答率を高めるようにするこ

(d) 「基本調査」には、個人の健康状態に関する情報と、被ばくの健康影響を悪
化させる要素を含めて調査がされるようにすること
(e) 子どもの健康調査は甲状腺検査に限らず実施し、血液・尿検査を含むすべ
ての健康影響に関する調査に拡大すること
(f) 甲状腺検査のフォローアップと二次検査を、親や子が希望するすべてのケース
で実施すること
(g) 個人情報を保護しつつも、検査結果に関わる情報への子どもと親のアクセス
を容易なものにすること
(h) ホールボディカウンターによる内部被ばく検査対象を限定することなく、住民、避
難者、福島県外の住民等影響を受けるすべての人口に対して実施すること
(i) 避難している住民、特に高齢者、子ども、女性に対して、心理的ケアを受ける
ことのできる施設、避難先でのサービスや必要品の提供を確保すること
(j) 原発労働者に対し、健康影響調査を実施し、必要な治療を行うこと
78. 特別報告者は、日本政府に対し、放射線量に関連する政策・情報提供に関し、以下の勧告を実施するよう求める。
(a) 避難地域・公衆の被ばく限度に関する国としての計画を、科学的な証拠に基
づき、リスク対経済効果の立場ではなく、人権に基礎をおいて策定し、公衆の被ばくを年間1mSv以下に低減するようにすること
(b) 放射線の危険性と、子どもは被ばくに対して特に脆弱な立場にある事実につ
いて、学校教材等で正確な情報を提供すること
(c) 放射線量のレベルについて、独立した有効性の高いデータを取り入れ、そのな
かには住民による独自の測定結果も取り入れること
 
79. 除染について特別報告者は、日本政府に対し、以下の勧告を採用するよう求める
(a) 年間1mSv以下の放射線レベルに下げるよう、時間目標を明確に定めた計画
を早急に策定すること
(b) 汚染度等の貯蔵場所については、明確にマーキングをすること(c) 安全で適切な中間・最終処分施設の設置を住民参加の議論により決めるこ

80. 特別報告者は規制の枠組みのなかでの透明性と説明責任の確保について、日本政府に対し、以下の勧告を実施するよう求める。
(a) 原子力規制行政および原発の運営において、国際的に合意された基準やガ
イドラインに遵守するよう求めること
(b) 原子力規制庁の委員と原子力産業の関連に関する情報を公開すること
(c) 原子力規制庁が集めた、国内および国際的な安全基準・ガイドラインに基づ
く規制と原発運営側による遵守に関する、原子力規制庁が集めた情報について、独立したモニタリングが出来るように公開すること
(d) 原発災害による損害について、東京電力等が責任をとることを確保し、かつそ
の賠償・復興に関わる法的責任のつけを納税者が支払うことかないようにすること
 
81. 補償や救済措置について、特別報告者は政府に対し以下の勧告を実施するよう求める
(a) 「子ども被災者支援法」の基本計画を、影響を受けた住民の参加を確保し
て策定すること
(b) 復興と人々の生活再建のためのコストを支援のパッケージに含めること
(c) 原発事故と被ばくの影響により生じた可能性のある健康影響について、無料
の健康診断と治療を提供すること
(d) さらなる遅延なく、東京電力に対する損害賠償請求が解決するようにすること
82.特別報告者は、原発の稼働、避難地域の指定、放射線量限界、健康調査、補償を含む原子力エネルギー政策と原子力規制の枠組みら関するすべての側面の意思決定プロセスに、住民参加、特に脆弱な立場のグループが参加するよう、日本政府に求める。
                                            以上

(引用終わり)
 
 日本政府は、早速、「(5月)27日、東京電力福島第1原発事故による住民らへの被ばく問題に関する国連人権理事会のアナンド・グローバー特別報告者の勧告に多くの誤解があるとして、文書で反論した。勧告の公表前に誤りを指摘したものの、一部しか修正されなかったという」(時事2013/05/28-07:00)と報じられています。

 

 まあ、「さもありなん」ですが、どちらの言い分に合理性があるかは、「報告書」自体をよく読んだ上で、自ら判断するしかありません。