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憲法学習会用標準レジュメ(2013年6月版) 後編

 今晩(2013年6月30日)配信した「メルマガ金原No.1403」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
憲法学習会用標準レジュメ(2013年6月版) 後編
 
 3回に分載してきた「憲法学習会用標準レジュメ(2013年6月版)」も今日が最終回「後編」です。
 ここまで来ると中身も相当手抜きになっており、「緊急事態」など、書かねばと思って見出しだけは付けたものの、1行も書いていません。
 正直、補充している時間的余裕がないので、不備な部分は、伊藤真先生が書かれた「自由民主党日本国憲法改正草案』について」をご参照願います。
 
 ご紹介してきたレジュメは、あくまで(2013年6月版)です。憲法をめぐる情勢は刻と動いています。参議院議員選挙の後には、また改訂版を作ることになるだろうと思います。
 憲法を守る闘いは、選挙後も(その結果如何にかかわらず)ずっと続くのですから、「憲法学習会」についても、各地で開催方法に工夫をこらした企画を次々と立てていただければと期待しています。
 私でお役に立てることがあれば、出来るだけのご協力は惜しみません。
 みんなで絶対にあきらめずに頑張りましょう。
 
【本日のお話の構成】
1 はじめに
2 目前に迫る2つの「危機」
(1)集団的自衛権容認の動き(解釈改憲と立法改憲)
(2)憲法96条改悪の動き
 ※以上「前編」
  http://blog.livedoor.jp/wakaben6888/archives/28935557.html
3 自民党「日本国憲法改正草案」は何が問題なのか
(1)自民党「日本国憲法改正草案」の最大の問題点-立憲主義の危機-
(2)9条(平和主義)の危機
 ※以上「中編」
(3)自民党「日本国憲法改正草案」のその他の問題点
4 終わりに(様々な「危機」に立ち向かうために)
 ※以上「後編」
 

 
(3)自民党「日本国憲法改正草案」のその他の問題点
① 国民主権の危機
 
(自民党改憲案)
前文「日本国は、長い歴史と固有の文化を持ち、国民統合の象徴である天
戴く国家であって、国民主権の下、立法、行政及び司法の三権分立基づいて統治される」
(天皇)
第一条 天皇は、日本国の元首であり、日本国及び日本国民統合の象徴
であって、その地位は、主権の存する日本国民の総意に基づく。
(国旗及び国歌)
第三条 国旗は日章旗とし、国歌は君が代とする。
2 日本国民は、国旗及び国歌を尊重しなければならない。
(元号)
第四条 元号は、法律の定めるところにより、皇位の継承があったときに制定
する。
 
 
 「国民主権」という言葉こそ残しているが、「国民」の上に「天皇」を置く(戴く)ことに固執している。
 誰が、何のために「天皇制」を強化したいのだろうか?
 少なくとも今上陛下ではない(2004年10月の園遊会での今上陛下と米
長邦雄 東京都教育委員との日の丸・君が代をめぐるやりとりを想起せよ)。
 
 
② 基本的人権の危機
 「公益及び公の秩序」の位置付けに注意して読まれたい。
 
 
(現行憲法)
第十二条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努
力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。

(自民党憲案案)
(国民の責務)
第十二条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努
力により、保持されなければならない。国民は、これを濫用してはならず、自由及び権利には責任及 び義務が伴うことを自覚し、常に公益及び公の秩序に反してはならない。

(現行憲法)
第十三条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追
求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

(自民党改憲案)
(人としての尊重等)
第十三条 全て国民は、人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に
る国民の権利については、公益及び公の秩序に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大限に尊重されなければならない。
 
 
 「個人」と「人」は違う!
 「個人」を尊重するということは、1人1人違った個性を持つ「個人」の価値を何よりも大事にし、その個人の価値を十全に生かすために「国家」をどう構成するかを考えるという思想である。
 対して、自民党が尊重するという「人」とは、「公益及び公の秩序に反しないり」で認められる権利を与えられた抽象的な存在に過ぎない。
 既に前文で明らかになっているとおり、自民党改憲案は、徹頭徹尾「個人」よりも「国家」の価値が高い(上位にある)とする抜きがたい思想によって貫かれている。
 
(自民党改憲案)
(個人情報の不当取得の禁止等)
第十九条の二 何人も、個人に関する情報を不当に取得し、保有し、又は利
用してはならない。
 
 
(現行憲法)
第二十一条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これ
保障する。
2 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

(自民党改憲案)
(表現の自由)
第二十一条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、保障
る。
2 前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動
行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない。
3 検閲は、してはならない。通信の秘密は、侵してはならない。
 
 
 何が「公益」であり「公の秩序」であるかを決めるのは誰なのか?自民党改憲が想定しているのは「国家」であるとしか考えられない。
 民主主義社会を成り立たせる前提条件である「表現の自由」でさえ、国家に
とって不都合なものであればいくらでも規制できることになる。
 自民党は、よほど「北朝鮮」や「中国」(いかに改革開放しても共産党一党独
は手放さない)のような国柄が好きなのだろう。
 
 
(現行憲法)
第二十四条 婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利
を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
2 配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族
に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。

(自民党改憲案)
(家族、婚姻等に関する基本原則)
第二十四条 家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される。家
族は、互いに助け合わなければならない。
2 婚姻は、両性の合意に基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを
基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
3 家族、扶養、後見、婚姻及び離婚、財産権、相続並びに親族に関するそ
の他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。
 
 
 「家族は、互いに助け合わなければならない」という規定は、単に「自助」を強調し生活保護等の「公助」を切り捨てようというだけではなく、「憲法」が、国家を縛る制限規範ではなく、国民を教え諭す、いわば「教育勅語」や「軍人勅諭」のごとき道徳規範であるという思想があらわになった規定と言わなければならない。
 
 
(自民党改憲案)
(勤労者の団結権等)
第二十八条 勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする
権利は、保障する。
2 公務員については、全体の奉仕者であることに鑑み、法律の定めるところに
より、前項に規定する権利の全部又は一部を制限することができる。この場合においては、公務員の勤労条件を改善するため、必要な措置が講じられなければならない。
 
 
③ その他、「第九章 緊急事態」など
 

4 終わりに(様々な「危機」に立ち向かうために)
(1)憲法を取り巻く様々な「危機」の具体的内容をしっかりと見定める必要があ
る。そのためにも学習を怠らないようにしなければならない。
(2)とりわけ、「集団的自衛権」と自民党「日本国憲法改正草案」については、
集中的に理解を深める必要がある。
(3)そして、学んだ者は、自らが改憲阻止のための「伝道師」としての役割を果
たす自覚を持たなければならない。まずは家族、親戚から。さらに自らの周囲へ。憲法に関心の薄かった者を1人でも説得できれば、立派な「護憲の伝道師」である。
(4)「伝道」の方法は、1人1人が最も得意とするところで力を発揮すべきである。
対面による話し合いが効果的だとは思うが、それが不得手な人は手紙やメールでもよい。
 また、伊藤真弁護士の語りおろしDVD『憲法ってなあに?憲法改正ってどういうこと?』(55分/頒価500円)を活用して、知人とこれを視聴する会を企画するというのも非常に良いと思う。
(5)橋下徹Twitter のフォロワーが100万人を突破したというのに、食わず嫌
でソーシャルメディアを敬遠するような態度は許されない。護憲派を自認する者は、みんなTwitterFacebook での情報発信に挑戦すべきである。その情報発信のためにも、「学習」は重要である。
(6)憲法の「伝道師」となる際に絶対に心がけておかねばならないことがある。そは「人は理屈では動かない」ということである。

  とはいえ、「理屈がどうでもよい」訳では決してない。「情理兼ね備える」という言葉があるように、「理論的な正しさ」は絶対に必要であり、理論武装は前提として不可欠である。しかしそれだけでは足りない。「情」が必要である。これには公式はない。自らの経験(人生と言いかえても良い)を土台として、各自が工夫するしかない。

(7)来るべき7月の参議院議員通常選挙に向けての目標は明確である。「改憲三派連合」(自民、維新、みんな)の獲得議席を1議席でも少なくすることに尽きる。
 昨年12月総選挙の結果は、大量の(1000万人以上の)有権者が投票所か
ら「逃避」したことによってもたらされた。そのうちのどれだけの有権者を投票所に回帰させることができるかが勝敗を分ける。ただし、自民党に不満をいだく人が、投票所に足を運んで「維新」や「みんな」に投票してはどうしようもない。それをどう阻止すればよいか。
 「維新」「みんな」が自民党の補完勢力であり、憲法を危機に陥れている張本
人であることが、有権者に直感的に分かるような方法を工夫すべきだと思う。
 私がこのレジュメで、カギ括弧付きで「改憲三派連合」という呼称を使っているの
も意図してのことである(政党が公的にこの呼称を使うのは難しいだろうが、個人や私的団体であれば遠慮することはない)。
(8)比例区では、政党名を書かず、護憲派の候補者名を書くようにということも、
特に党内に改憲派を抱えている政党については重要である。
(9)現実の情勢は冷静に分析しなければならないが、とはいえ、いかに情勢が厳
しくとも、絶対にあきらめないように1人1人が仲間を鼓舞するという意識を常に持つことが必要である。間違っても、「上から目線」と受け取られるような言動をしてはならない。