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千鳥ヶ淵戦没者墓苑に献花したケリー、ヘーゲル両長官が意図したこと

 今晩(2013年10月4日)配信した「メルマガ金原No.1502」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
千鳥ヶ淵戦没者墓苑に献花したケリー、ヘーゲル両長官が意図したこと
 
 10月3日,東京において,日米安全保障協議委員会(「2+2」)等が開催された。
 日本側からは岸田文雄外務大臣及び小野寺五典防衛大臣が,米側からはジョ
ン・ケリー国務長官(The Honorable John F. Kerry, Secretary of State of the United States of America) とチャック・ヘーゲル国防長官(The Honorable Chuck Hagel, Secretary of Defense of the United States of America)が出席した(「2+2」の開催は2011年6月以来。東京に日米の外務・防衛4閣僚が揃って「2+2」が開催されたのは初めて)。
 今回の会合においては,厳しさを増すアジア太平洋地域における安全保障環境踏まえ,中長期的な日米安保協力や在日米軍の再編等について協議され,共発表(概要及び全文)が発出された。
 
 以上は、日米安全保障協議委員会(いわゆる「2+2」)が昨日(2013年10月3日)開催されたことを伝える外務省公式サイトに掲載された文章です。
 
 共同発表「より力強い同盟とより大きな責任の共有に向けて」では、事前報道通り、「日米防衛協力のための指針」(いわゆる「ガイドライン」)について、以下のようにうたわれました。
(引用開始)
 閣僚は,変化する地域及び世界の安全保障環境がもたらす影響を認識し,防衛協力小委員会(SDC)に対し,紛争を抑止し,平和と安全を促進する上で同盟が引き続き不可欠な役割を果たすことを確保するため,1997年の日米防衛協力のための指針の変更に関する勧告を作成するよう指示した。
(略)
 閣僚は,このSDCの作業を2014年末までに完了させるよう指示した。
(引用終わり)
 
 このガイドライン改訂からも目は離せませんが、昨日の午前中、「2+2」のために来日したケリ国務長官ヘーゲル国防長官の2人が、揃って千代田区三番町にある千鳥ヶ淵戦没者墓苑を訪れて献花したことが報じられ、一部で非常に注目を集めています。
 
 もっとも、これを報じる「視点」というものがあります。
 その一方の代表としてmsn産経ニュースを挙げておきましょう。
(抜粋引用開始)
 来日中のケリー米国務長官ヘーゲル米国防長官は3日午前、東京都内の千鳥ケ淵戦没者墓苑を献花のため訪れた。外務省は米の閣僚による同墓苑の訪問は「聞いたことがない」としており、外務、防衛担当閣僚がそろって献花するのは極めて異例の対応という。
 同墓苑は、第2次世界大戦中に海外で死亡した戦没者のうち、身元が分からない「無名戦士」や民間人の遺骨を納めた国の施設。2閣僚の訪問は、日本との同盟強化に取り組む米国の姿勢を示す狙いがありそうだ。
(略)
(引用終わり)
 
 この記事だけを読んだ人は、本当に両長官の献花の目的が、「日本との同盟強化に取り組む米国の姿勢を示す」ためだと信じるのでしょうかね?
 第一、これを書いている産経の記者自身、そんなことは信じていないはずですよ。何しろ上記に引用した箇所に引き続き、「第2次大戦のA級戦犯を含む軍人、軍属らが合祀されている靖国神社の訪問は予定していないとわざわざ書き足しているのですからね(つまり「アリバイ作り」という訳です)。そこまで分かっているのなら(分からなければどうかしていますが)、「日本との同盟強化に取り組む米国の姿勢を示す狙いがありそうだ」などという恥ずかしい文章など書かなければ良いのにと思いますが、「すまじきものは宮仕え」ということでしょうか。
 
 産経の記者のような「配慮」をする必要がないフランスの通信社AFPの記者は、もっと「分かりやすい」記事を書いています。
(抜粋引用開始)
 来日中のジョン・ケリー(John Kerry)国務長官チャック・ヘーゲル(Chuck Hagel)国防長官は3日、東京都千代田区の千鳥ヶ淵戦没者墓苑を訪れ、献花した。安倍晋三(Shinzo Abe)首相が5月に訪米した際、靖国神社を米国のアーリントン国立墓地(Arlington National Cemetery)になぞらえたことに対するけん制とみられる。
(略)
 同行した米国防総省高官は記者団に対し、千鳥ヶ淵戦没者墓苑はアーリントン国立墓地に「最も近い存在」だと説明。ケリー国務長官ヘーゲル国防長官は「日本の防衛相がアーリントン国立墓地で献花するのと同じように」戦没者に哀悼の意を示したと述べた。
 安倍首相は5月、訪米に際して米外交専門誌「フォーリンアフェアーズ(Foreign Affairs)」に対し、米バージニア(Virginia)州にあるアーリントン国立墓地を引き合いに出し、靖国神社は国のために命をささげた人々を慰霊する施設であり、日本の指導者が参拝するのは極めて自然で、世界のどの国でも行っていることだと述べていた。
(引用終わり)
 
 せめてこのレベルの「なるほど、そういうことか」と納得させる記事を日本の新聞でも読みたいものですね。
 ・・・と思っていたら、「Peace Philosophy Centre」に詳しい記事が出ており、日本版よりさらに詳細なAFP英語版の一部が翻訳して紹介されていましたので是非お読みください。
 
 なお、私もそうですが、千鳥ヶ淵戦没者墓苑に行ったことのない人のために、公式サイト環境省)をご紹介しておきます。
 
 トップページでは、墓苑について次のように説明されています。
 
(引用開始)
 先の大戦で海外における戦没軍人及び一般邦人のご遺骨を納めた「無名戦没者の墓」として昭和34年3月28日に創建されました。平成25年5月現在358,260柱が、六角堂内(写真)に安置されています。毎年5月に厚生労働省主催の慰霊行事として拝礼式が、また、年間を通じて各種団体主催の慰霊行事が随時行われています。
(引用終わり)
 
 苑内には、「昭和天皇御製の碑」などもあるようですが、私としては、「今上陛下御製の碑」に刻された歌の方をご紹介したいですね(公式サイト「施設案内」)。
 
いくさなきよを あゆみきて おもひいづ かのかたきひを いきしひとびと
 
 最後に、千鳥ヶ淵戦没者墓苑の紹介ビデオがありました。