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日米軍事情報包括保護協定(GSOMIA)と特定秘密保護法案(付・和大祭での憲法企画展へのお誘い)

 今晩(2013年11月21日)配信した「メルマガ金原No.1550」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
日米軍事情報包括保護協定(GSOMIA)と特定秘密保護法案(付・和大祭での憲法企画展へのお誘い)
 
 NHKの午後7時のニュースが、日比谷野外音楽堂の空撮映像や参加者インタビューを短時間でも放送したのに対し、「まあ流さないよりましか」という「寛大な」気持ちになってしまったのは、おそらく期待値がもともと低過ぎるからでしょうね。
 このように、自分から期待値を下げてしまうこと自体、「あちらの」思う壺なのかもしれないとひとしきり反省しました。
 
 ところで、今週末(23日・24日)、和歌山大学大学祭(和大祭)において、大学関係者有志が「憲法関連企画展・平和の事、憲法の事、一緒に考えませんか?」を備しており、その一部(24日・午後1時~)で私が憲法をめぐる情勢についてお話することになっているということは、11月13日のメルマガ(ブログ)でお伝えし、そのために書いたレジュメを掲載しました。
 
憲法学習会レジュメ(2013年11月・45分ヴァージョン)
 
 今日は、まずそのレジュメの「補訂」を行うとともに、企画展の内容をご紹介しようと思います。
 
 まず、先に書いたレジュメの「1 安倍自民党が目指す改憲スケジュール」において、以下のように記述していました。
 
(引用開始)
 2012年7月に自民党総務会の了承を得た「国家安全保障基本法案(概要)」によれば、「国は、我が国の平和と安全を確保する上で必要な秘密が適切に保護されるよう、法律上・制度上必要な措置を講ずる」(3条3項)として「特定秘密保護法の制定を盛り込んでいる他、第6条の注において、「別途、安全保障会議設置法改正によって、安全保障会議が安全保障基本計画の案を作成し、閣議決定を求めるべきこと、安全保障会議が、防衛、外交、経済その他の諸施策を総合するため、各省の施策を調整する役割を担うことを規定」としている。
 同基本法案(概要)は、個別的集団的自衛権行使容認(10条)、国連の安全
保障措置等への参加(11条)、武器輸出の一般的解禁(12条)など、こと安全保障の分野に関する限り、日本国憲法の「効力停止法」と言うしかないとんでもない内容の法案であり、国家安全保障会議設置法及び特定秘密保護法の制定も、この
国家安全保障基本法を準備するための必須の前提として国会に上程されたと考えるべきである。
(引用終わり)
 
 「補訂」が必要というのは、以上に続けて、以下の文章を「追加」しなければならないということです。
 
(追加開始)
 なお、日本と米国は、2007年8月10日(第一次安倍内閣退陣の1か月余り前)、「秘密軍事情報の保護のための秘密保持の措置に関する日本国政府とアメリカ衆国政府との間の協定」(日米軍事情報包括保護協定)を締結しており、現在、国会で審議中の特定秘密保護法案は、第一次安倍政権が米国に約束した協定
の内容を具体化するという側面を有している。
(追加終わり)
 
 いわゆる軍事情報包括保護協定(General Security of Military Information Agreement、GSOMIAジーソミア)というのは、2国間あるいは多国間において、秘密軍事情報を提供し合う際、第三国への情報漏洩を防ぐために結ぶ協定で、上のとおり、日米間では2007年に締結されており、米国などは60カ国以上とこの協を締結しているそうです。
 
 日米間の協定が締結されて間もない時期に執筆されたと思われる下記論文が、国立国会図書館サイトに掲載されています(国立国会図書館調査及び立法考局「レファレンス」平成19年11月号)。
 
『軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の比較分析』
福好昌治(大阪経済法科大学 アジア太平洋研究センター客員研究員)
 http://www.ndl.go.jp/jp/data/publication/refer/200711_682/068207.pdf
 
 上記論文の「はじめに」には、以下のような注目すべき記載があります。
 
(引用開始)
 ところで、GSOMIAの締結に関しては、1988年5月17日の衆議院内閣委員会で取り上げられている。その際に、外務省の岡本行夫・北米局安全保障課長は「私どもは現在のやり方で十分である、我が国が軍事情報の保全のための一般的な協定を米国と結ぶつもりは全くないという方針で首尾一貫しておったということでございます」と答弁している。
 このような経緯があるにもかかわらず、なぜ政府は米国とのGSOMIAを締結したの
であろうか。GSOMIAの締結によって、我が国の秘密保護体制はどう変わるのだろうか。
(引用終わり)
 
 福好論文の目次を以下に掲げておきます。
 
はじめに
Ⅰ 我が国の秘密軍事情報保護法制
 1 自衛隊法
 2 MSA秘密保護法
 3 日米刑特法
Ⅱ GSOMIAの具体例
 1 GSOMIAとは何か
 2 オーストラリアとのGSOMIA
 3 フランスとのGSOMIA
 4 イスラエルとのGSOMIA
 5 NATO諸国とのGSOMIA
 6 アジア諸国とのGSOMIA
 7 各GSOMIAの共通点と相違点
Ⅲ 日米間のGSOMIA
 1 なぜ、GSOMIAが必要なのか
 2 協定の具体的内容
おわりに―何が論点になるか

 同論文の「おわりに」では、以下のように「将来像」が予想されていました。
 
(引用開始)
 我が国とのGSOMIAで最大の論点となるのは、第7条と第16条であろう。つまり、政府職員と契約企業従業員の秘密軍事情報取扱資格をどのような方法で付与するか、という問題である。
(略)
 このように現在、秘密軍事情報取扱資格の付与に関する規定は存在しないが、G
SOMIAに基づいて、秘密軍事情報を取り扱う政府職員と契約企業従業員の身上調査を実施することになれば、個人情報保護との兼ね合いが問題になるであろう。この点に関連して、防衛省の「平成20年度業務計画」では、各自衛隊の情報保全隊
を統合し、情報保全機能を集約化した自衛隊情報保全隊の新設と、防衛省カウン
ターインテリジェンス委員会の新設が計画されている。
 将来的には、罰則の強化も課題になるかもしれない。今のところ、GSOMIAの締結に伴う国内法の改正は予定されていないが、前述したように、MSA秘密保護法に基づく罰則の最高刑が懲役10年なのに対し、自衛隊法に基づく秘密漏洩の罰則は最高刑5年である。両者のバランスを取るため、自衛隊法の罰則強化が課題になるかもしれない。
 なお、GSOMIAに拘束されるのは、政府職員と契約企業の従業員だけで、それ以
外の者(報道関係者等)は対象にならない。したがって、GSOMIAの締結は、報道の自由、言論・表現の自由の制約に直接的には関係しない。
(引用終わり)
 
 6年前のこの論文の末尾の「予測」を読む者は、何とも言えない感慨を覚えざるを得ません。
 とりあえず、問題の日米協定の問題部分を読んでおくことにしましょう。

 

 
「秘密軍事情報の保護のための秘密保持の措置に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定」
(抜粋引用開始)
第二条 秘密軍事情報の保護
 一方の締約国政府により他方の締約国政府に対し直接又は間接に提供される秘密軍事情報は、この協定の規定が当該情報を受領する締約国政府の国内法令に合致する限り、当該規定に基づき保護される。
第四条 秘密軍事情報の秘密指定及び表示
 アメリカ合衆国政府にあっては、秘密軍事情報は、「Top Secret」、「Secret」又は「Confidential」と表示される。日本国政府にあっては、自衛隊法に従って「防衛秘密」に指定される秘密軍事情報は、「防衛秘密」と表示され、「防衛秘密」に指定されない他の秘密軍事情報は、当該情報の機微の程度に従って「機密」、「極秘」又は「秘」と表示される。
 「防衛秘密」であって追加的な表示である「機密」が付されるものには、合衆国の「Top Secret」と同等の保護が与えられる。「防衛秘密」には、合衆国の「Secret」と同等の保護が与えられる。(後略)
第六条 秘密軍事情報を保護するための原則
 両締約国政府は、次の事項を確保する。
(b)秘密軍事情報を受領する締約国政府は、自国の国内法令に従って、秘密軍事情報について当該情報を提供する締約国政府により与えられている保護と実質的に同等の保護を与えるために適当な措置をとること。
(e)秘密軍事情報を取り扱う政府の各施設が、秘密軍事情報取扱資格を有し、かつ、当該情報にアクセスすることを許可されている個人の登録簿を保持すること。
(f)各締約国政府は、秘密軍事情報の配布及び当該情報へのアクセスを管理するために、当該情報の識別、所在、目録及び管理の手続を設定すること。
第七条 秘密軍事情報への職員のアクセス
(a)いかなる政府職員も、階級、地位又は秘密軍事情報取扱資格のみにより、秘密軍事情報へのアクセスを認められてはならない。
(b)秘密軍事情報へのアクセスは、政府職員であって、職務上当該アクセスを必要とし、かつ、当該情報を受領する締約国政府の国内法令に従って秘密軍事情報取扱資格を付与されたものに対してのみ認められる。
(c)両締約国政府は、政府職員に秘密軍事情報取扱資格を付与する決定が、国家安全保障上の利益と合致し、及び当該政府職員が秘密軍事情報を取り扱うに当たり信用できかつ信頼し得るか否かを示すすべての入手可能な情報に基づき行われることを確保する。
(d)秘密軍事情報へのアクセスを認められる政府職員に関して、(c)に規定する基準が満たされていることを確保するために、適当な手続が、両締約国政府により自国の国内法令に従って実施される。
(e)一方の締約国政府の代表者が他方の締約国政府の代表者に対し秘密軍事情報を提供する前に、当該情報を受領する締約国政府は、当該情報を提供する締約国政府に対し次の事項についての保証を与える。
(i)当該情報を受領する締約国政府の代表者が、必要な水準の秘密軍事情報取扱資格を有すること。
(ii)当該情報を受領する締約国政府の代表者が、公用の目的でアクセスを必要とすること。
(iii)当該情報を受領する締約国政府は、自国の国内法令に従って、当該情報について当該情報を提供する締約国政府により与えられている保護と実質的に同等の保護を与えるために適当な措置をとること。
第十六条 契約企業への秘密軍事情報の提供
 秘密軍事情報を受領する締約国政府は、当該情報を提供する締約国政府から受領する当該情報を契約企業(下請契約企業を含む。以下同じ。)に対し提供する前に、自国の国内法令に従って、次の事項を確保するために適当な措置をとる。
(a)いかなる個人も、階級、地位又は秘密軍事情報取扱資格のみにより、秘密軍事情報へのアクセスを認められないこと。
(b)契約企業及び契約企業の施設が、秘密軍事情報を保護する能力を有すること。
(c)職務上秘密軍事情報へのアクセスを必要とするすべての個人が、秘密軍事情報取扱資格を有すること。
(d)秘密軍事情報取扱資格が、第七条に規定する方法と同様の方法により決定されること。
(e)秘密軍事情報へのアクセスを認められる個人に関して、第七条(c)に規定する基準が満たされていることを保証するために、適当な手続が、実施されること。
(後略)
(引用終わり)
 
 以上の協定及び福好論文を読まれて、どう感じられたでしょうか?
 たしかに、特定秘密保護法案は、上記2007年の日米軍事情報包括保護協定(GSOMIA)における合意を履行するための国内法整備を行い、日米軍事情報の共有化、ひいては日米共同軍事行動の前提条件をクリアしようとするものであることは確実です。
 しかし、それだけでしょうか?
 もう一度、福好論文の末尾の部分を読んでみましょう。
 
「なお、GSOMIAに拘束されるのは、政府職員と契約企業の従業員だけで、それ外の者(報道関係者等)は対象にならない。したがって、GSOMIAの締結は、自由、言論・表現の自由の制約に直接的には関係しない」
 
 この協定を読む限り、自衛隊法の改正は必要かもしれないけれども、どうして「特定秘密保護法」が必要なのか?その「立法事実」は何なのか?という疑問が直ちにわいてきます。
 世界的規模での日米共同軍事行動を実現するための体制作りという目標に収斂し切れない、一種どろどろとした「国家主義」「復古主義」、さらには「官僚による国家支配の永続化の野望」までが融合した「混沌」と言うしかないような何物かがこの国を跋扈しており、その象徴として「特定秘密保護法案」があるのではないか、と思わざるを得ません。
 
 さて、最後に、和大祭・憲法関連企画展「平和の事、憲法の事、一緒に考えませんか?」の広報用案内文を引用しておきます。
 
(引用開始)
和歌山大学大学祭で、憲法関連企画展開催 !!
平和の事、憲法の事、一緒に考えませんか?
和歌山大学 基礎講義棟3階 G304室 にて
 
11月23日(土) 
9:00~17:00 憲法に関する展示とDVD上映
 
11月24日(日) 
9:00~13:00 憲法に関する展示とDVD上映
13:00~13:45 講演「今、目の前にある憲法の危機」 金原徹雄 弁護士
13:45~14:30 講師を囲んでフリートーク(17:00まで延長可)
  総合司会:柏原 卓 教授(教育学部
 
上映DVD
「9条を抱きしめて~元米海兵隊員アレン・ネルソンが語る戦争と平和~」
「憲法ってなあに?憲法改正ってどういうこと?」(伊藤真弁護士)
「イラク 戦場からの告発」西谷文和(第3章を中心に)
「戦争のつくり方」九条を守ろう!映像プロジェクト
 
展示資料
自民党の「日本国憲法改正草案」の重要箇所抜粋とコメント
明文改憲までに9条を実質的に無効にする3法案について
 
戦争で1人殺せば3人のテロリストを生む、と言われるこの時代、武力で本当に国を守れるの?
戦争の放棄を世界に宣言することが、
そして世界の各地に人道援助を行うことが、
本当に国を守り、平和を守るのではないでしょうか?
 
護憲派のあなたも、
改憲派のあなたも、
どちらとも言えないあなたも、
まずは憲法の基本を学び、本当に平和を守る方法を一緒に考えましょう!
 
和歌山大学へのアクセス:(当日は公共交通機関でご来場下さい。車は入構できません。)
http://www.wakayama-u.ac.jp/access.html
キャンパスマップ:
http://www.wakayama-u.ac.jp/c-map.html
(引用終わり)