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井上正信氏『国家安全保障戦略、新防衛計画大綱、中期防衛力整備計画を憲法の観点から読む』を通じて学ぶ

 今晩(2014年2月9日)配信した「メルマガ金原No.1632」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
井上正信氏『国家安全保障戦略、新防衛計画大綱、中期防衛力整備計画を憲法の観点から読む』を通じて学ぶ
 
 2013年12月17日、国家安全保障会議及び閣議の決定により、我が国の防衛画に関わる重要な3つの文書が同時に決定されました。
 
国家安全保障戦略
平成26年度以降に係る防衛計画の大綱
中期防衛力整備計画(平成26年度~平成30年度)
 
 非常に重要な文書であり、しっかりとその内容に目を通し、問題点を把握すべきだとは思うのですが、それぞれかなりの分量がある上に、専門的な用語も多用され、また、「どこがどのように変わったのか」は、これまでの経緯についての知識が不可欠であるなど、本格的に読み込むことは容易なことではありません。
 
 もちろん、防衛省自衛隊の公式サイトの中の「防衛計画の基本」というページに、ほんの簡単な説明がありますが、ほとんど何の役にも立ちません。
 ただ、このページの後ろの方をながめていると、「3.その他の基本政策」として、
(1)専守防衛
(2)軍事大国とならないこと
(3)非核三原則
(4)文民統制の確保
の4項目が(一応いまだに)挙げられているのに目がとまりました。
 この項目の前に書かれているのは「1.国家安全保障戦略」と「2.防衛計画の大綱及び中期防衛力整備計画」なのですから、このページを担当した防衛官僚の意識としては、「国家安全保障戦略」、「防衛計画の大綱」、「中期防衛力整備計画」という重要3文書には、「専守防衛」以下の「その他の」4つの基本政策は定められていないが、これまで「基本政策」として掲げてきたのだし、一応残しておくか、というようなことだったのでしょうか?
 
 さて、この重要3文書をどう読むかですが、とにかく最初から最後まで通読してみて自分で考える、というのが一つの正攻法であることは間違いないのですが、多分、途中で挫折する人が多いと思いますし、何とか読み通せたとしても、本筋を外さずに「読解」できるかどうかの保障はありません。
 このような時には、仁和寺の法師の轍を踏まぬよう、過去の実績などから考えて信頼できる「先達」の導きを頼りに読み進めるのが、おそらくもっとも確実な「読み方」であろうと思います。
 
 そこでお勧めする「先達」が、井上正信弁護士(広島弁護士会)です。こと、この分野に関しては、(少なくとも弁護士の中で)井上先生の右に出る者がいないことは間違いないでしょう。
 その井上弁護士が、不定期連載されている「NPJ通信 憲法9条と日本の安全を考える」に、以下の論考が掲載されました(3回分載)。
 
国家安全保障戦略、新防衛計画大綱、中期防衛力整備計画を憲法の観点から読む(1)
 http://www.news-pj.net/npj/9jo-anzen/20140124.html
国家安全保障戦略、新防衛計画大綱、中期防衛力整備計画を憲法の観点から読む(2)
 http://www.news-pj.net/npj/9jo-anzen/20140203.html
国家安全保障戦略、新防衛計画大綱、中期防衛力整備計画を憲法の観点から読む(3)
 
 詳細は、上記論考を直接お読みいただきたいのですが、新しい「防衛計画の大綱」(25大綱)を読み解くキーワードを指摘された部分、及び論考の結論の部分を抜粋してご紹介します。
 
(引用開始)
 25大綱を22大綱と比較しながら読んだ最も強い印象は、25大綱は中国との武力紛争を本気で想定し、戦う態勢を急速に作ろうとしているということです。
25大綱を読み解く一つのキーワードは 「グレーゾーン事態」 と思います。25大綱では7回登場します。 その意味は 「領域主権や権益等をめぐり、純然たる平時でも有事でもない事態」(安保戦略10頁)です。 ちなみに大綱には 「事
態」 という言葉が多用されていますが、「紛争」と読み替えたほうが理解しやすいでしょう。 22大綱は1回しか出てこず、それも一般的な国際情勢として述べているだけなのです。平時でも有事でもないグレーな事態を、日本の基本的防衛政策のキーワードにすれば、それこそ明確な防衛政策ではなく、グレーなものになります。有事でなければ防衛力の出番ではなく、警察力の出番になるはずですが、防衛政策にこれを位置づけるのですから、防衛力行使の限界がきわめて曖昧になります。
(略)
結論
 22大綱策定からわずか3年経過した今、なぜ新しい防衛大綱なのかという
最初の疑問の答えは明らかになったと思います。安保戦略、25大綱、中期防はいずれも安倍内閣が目指す解釈改憲、立法改憲を安保防衛政策の分野
で準備、先取りをするものだということです。それはすなわち、憲法自衛隊などの防衛法制にも反して、立憲主義原理も否定するものです。25大綱も安保戦略も国会で審議されるものではありません。内閣が閣議決定するだけですから、市民の関心もそれだけ薄いものがあります。今年は憲法改正を巡る重要な正念場になるはずです。その中心が集団的自衛権行使の憲法解釈見直しと、国家安全保障基本法の制定です。そのような事態になる前から既にその先取りが始まっています。国会審議のなされない安保戦略や25大綱に反対してそれを撤回させるということはできないでしょう。しかし、集団的自衛権行使の憲法解釈見直しと、国家安全保障基本法の制定への反対運動を準備する上で、安保戦略と25大綱の中身をしっかり理解して、批判することは重要と思います。
(引用終わり)
 
 実は、今日のメルマガ(ブログ)で井上弁護士の論考をご紹介しようと考えたのも、井上先生が最後に書かれていること、「集団的自衛権行使の憲法解釈見直しと、国家安全保障基本法の制定への反対運動を準備する上で、安保戦略と25大綱の中身をしっかり理解して、批判することは重要と思います。」という問題意識からに他なりません。
 是非ともに学びましょう。
 
(参考サイト)
 今日のメルマガ(ブログ)を書くために、防衛省自衛隊公式サイトを調べていたところ、こういうページがあるのを見つけました。
防衛省の取組」→「防衛省の政策」→「防衛政策の基本」→「憲法と自衛権」
 ここには、これまでの政府の公権解釈が要約して掲載されています。そして、今まさにこれらの「解釈」が風前の灯火となっているのです。そのような時期だからこそ、これまでの政府解釈を再確認するために是非お読みいただきたいと思います。そして、これを読む際には、単に「集団的自衛権」の項目だけを読むのでは真の理解が得られないことに注意し、必ず最初から最後まで通読してください。歴代内閣法制局が、憲法体系の中で法的・論理的に説明可能な解釈として導き出してきた総合的な結論の集大成がここにあります。
 

(付録)
『名護んちゅ肝心(チムグクル)』 作詞作曲:松原洋一
※松原さんは「紀宝9条の会」(三重県南牟婁郡紀宝町)の事務局長をめるかたわら、アマチュア・フォークグループ「わがらーず」でも活躍される音楽愛好家です。最新作『名護んちゅ肝心(チムグクル)』は、名護市長選挙の歴史的勝利をきっかけに作られたものだそうです。
(歌詞)
1.ジュゴンの遊ぶこの海に
  命どぅ宝の在り処見る
  金と脅しに屈しない
  名護んちゅ清しゃ 肝心(チムグクル)
2.デイゴの花咲くこの丘で
  平安願う祈り聴く
  新たな基地は作らせない
  名護んちゅ清しゃ 肝心(チムグクル)
3.オジイオバアのテント小屋
  未来を手渡すカギがある
  朝まで踊ろうカチャーシー
  名護んちゅ清しゃ 肝心(チムグクル)
4.嫌なものみんな押し付けて
  米軍は必要とすまし顔
  さてさて本土(ヤマト)はどないする?
  名護んちゅ清しゃ 肝心(チムグクル)
  名護んちゅ清しゃ 肝心(チムグクル)