今晩(2014年4月16日)配信した「メルマガ金原No.1698」を転載します。
なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
安保法制懇「報告書」に直ちに反撃するために~井上正信弁護士の論考を参考に
連休明けにも提出されるとされていた安保法制懇の報告書について、今日の北海道新聞は、5月13日(火)に提出する方向で調整に入ったと伝えています。
(抜粋引用開始)
安倍晋三首相の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)は15日、集団的自衛権の行使を可能にする憲法解釈の変更を提言する報告書を、5月13日に提出する方向で最終調整に入った。複数の政府関係者が明らかにした。首相が第1次政権以来の念願としてきた行使容認に向け、政府・与党が本格的に協議する環境が整うことになり、今後は慎重論が根強い公明党と折り合えるかが焦点となる。
報告書は、集団的自衛権の行使に《1》日本と密接な関係にある国が攻撃を受けた場合《2》放置すれば日本の安全に重大な影響を及ぼす場合―など六つの条件を課す。一方、国連平和維持活動(PKO)や国連決議などに基づく多国籍軍に参加する自衛隊が、戦闘地域でも活動できるように憲法解釈の変更を提言する見通し。(後略)
(引用終わり)
(抜粋引用開始)
-報告書の柱は。
集団的自衛権の行使を禁止する(憲法)解釈を見直すことだ。今や個別的自衛権では日本を守れない。大阪夏の陣で内堀を埋められてから反撃するようなものだ。(憲法9条が認める)「必要最小限度」は集団的自衛権を排除しているという考えは改めるべきだ。
-集団的自衛権行使に際しての歯止めは。
(1)密接な関係にある国が不当な攻撃を受ける(2)放置すれば日本の安全に重大な影響を及ぼす(3)攻撃を受けた国からの明示的な支援要請がある(4)首相が総合的に判断する(5)国会承認を受ける(6)第三国の領域を通過する場合の当該国の同意を得る-の6条件だ。
国会承認は、緊急事態なので実際は事後の方が多いだろう。事後でも否決されたら内閣不信任決議(と同じ)だ。
国会承認は、緊急事態なので実際は事後の方が多いだろう。事後でも否決されたら内閣不信任決議(と同じ)だ。
-6条件は歯止めになるか。
「放っておけば日本に重大な影響が及ぶか」と「どれくらい自衛隊出動にコストがかかり、効果があるか」の2点における首相の総合判断が肝だ。
(略)
-密接な関係にある国とは。
米国に限定しない。価値観を共有しない国でも、戦略的利害が同じなら(いい)。
-集団安全保障や「グレーゾーン」に関する記述は。
憲法9条1項により、国連平和維持活動(PKO)(での武器使用)が厳重に制限されているのは間違いだ。
また、「多国籍軍に参加することに憲法上の制約はない」と判断する。
「グレーゾーン」事態に自衛隊が対処する法律がなく、在外邦人救出のための法整備も不備だ。
また、「多国籍軍に参加することに憲法上の制約はない」と判断する。
「グレーゾーン」事態に自衛隊が対処する法律がなく、在外邦人救出のための法整備も不備だ。
(略)
(引用終わり)
北岡座長代理が「各マスコミの取材に積極的に答えている」と書きましたが、「答え過ぎて」います。
そもそもこの懇談会が、多様な意見の持ち主を集めて議論を闘わせることなど最初から考えてない「茶番懇談会」であることは、(始めから分かっていることですが)明白であり、そうであるからこそ、座長代理が首相のスポークスマンよろしく、「報告書」提出前にもかかわらず、好き勝手にしゃべり散らしていられる訳です(それに異論を述べるような者は始めから委員にしていないということです)。
(引用開始)
安倍内閣は14日、集団的自衛権の行使容認を議論している安倍晋三首相の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)について、「わが国が集団的自衛権を行使できるようにすべきではないといった意見は表明されていない」との答弁書を閣議決定した。
(引用終わり)
間もなく姿をあらわす安保法制懇「報告書」ですが、始めから結論ありきの出来レースとはいえ、一応6回にわたる会議は開催しており、その「議事次第」「配布資料」「議事要旨」「記者ブリーフ要旨」は、首相官邸WEBサイトの安保法制懇・開催状況のコーナーから読むことができます。
とはいえ、やみくもに最初から読み始めても、問題の在処からして見当違いの方向に探しに行くことになりかねず、やはり信頼できる先達を頼りにしたくなるもので、こういう問題について私が一番信頼しているのが、弁護士の井上正信さん(広島弁護士会)なのです。
井上正信 「安保法制懇はどのような議論をしているのか(1)」
井上正信 「安保法制懇はどのような議論をしているのか(2)」
井上正信 「安保法制懇はどのような議論をしているのか(3)」
かなり長い論考ですが、あらかじめ「反撃の準備」をするためには必読だと思いますので、ご自分だけではなく、危機感を共有する周りの方にも是非「拡散」し、1人でも多くの人が共通認識を持つことにご協力をお願いします。
最後に、井上さんの論考の末尾の部分を引用します。
(抜粋引用開始)
前掲の『外交』(外務省のオピニオン誌)で北岡座長代理は、なぜ憲法改正ではなく解釈見直しなのかという質問に対して、憲法改正には10年はかかる、10年先には中国の軍事力は今の4倍になる、日本の安全にとってそれで間に合うのか、と述べています。これが解釈改憲論者の本音だと思いました。安保法制懇の議論は、私の目には「不安神経症に取り憑かれた軍事オタクの非現実的な戦争シミュレーションのような議論」に思えて仕方がないのですが、すこし言い過ぎでしょうか。
最後に、安保法制懇の構成を指摘しなければなりません。憲法解釈を見直すと言いながら、懇談会14名の内、憲法学者と言える委員は西修氏のみです。あとは国際政治学者や元統幕議長、元外務官僚などです。このような構成で憲法解釈、それも、一つの提案というのではなく政府解釈を見直すというのですから、安保法制懇には、およそその能力と資格はないと言わざるを得ません。
安保法制懇の報告書は5月連休明けにも提出されるのではないかと報道されています。それを受けて9条解釈について政府方針を出し、その後解釈変更の閣議決定に持ち込もうというスケジュールのようです。安保法制懇報告書が発表されれば、直ちにその内容を批判して、憲法解釈見直し論に対して先制的な反撃を開始しなければなりません。この3回シリーズはそれに向けての準備作業としてまとめてみました。お読みいただき多くの方に議論していただきたいと願っています。
安保法制懇の報告書は5月連休明けにも提出されるのではないかと報道されています。それを受けて9条解釈について政府方針を出し、その後解釈変更の閣議決定に持ち込もうというスケジュールのようです。安保法制懇報告書が発表されれば、直ちにその内容を批判して、憲法解釈見直し論に対して先制的な反撃を開始しなければなりません。この3回シリーズはそれに向けての準備作業としてまとめてみました。お読みいただき多くの方に議論していただきたいと願っています。
(引用終わり)