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好き勝手な政府広報を許してはならない~“がれき処理”も“放射線リスコミ”も

 今晩(2014年10月13日)配信した「メルマガ金原No.1877」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
好き勝手な政府広報を許してはならない~“がれき処理”も“放射線リスコミ”も

 自宅で全国紙を定期購読し、しかも一応全ページに目を通す習慣のある人がどれ位いるのか、調べれば統計資料があるのかもしれませんが、少なくとも、私自身がそのような習慣をなくし
てから相当の年数が経過したことは間違いないですね。
 第一、自宅に配達される新聞は、「○○日曜版」だけですから。
 事務所では一応、全国紙1紙と地方紙1紙を購読していますが、昼休みに弁当を食べなが
らちらちら眺めるだけなので、とても読んでいるうちに入りません。
 従って、重要な新聞記事も、ネット経由で知るということが圧倒的に多くなりました。
 
 以上は、私が今日取り上げるシンポジウムのテーマとなった政府広報(全国紙に掲載)に全然気がついていなかった理由の説明(言い訳)なのでした。
 
 問題の政府広報というのは、8月17日に復興庁が出稿した「放射線についての正しい知識を。」というものです。
PDFファイル
 
 細かな文章や図表を除き、見出しだけとばし読みすると、以下のような言葉が目に飛び込んできます。

(政府広報より抜粋引用開始)
放射線についての正しい知識を。
今月3日、政府は福島県より避難されている方々を対象に、放射線に関する勉強会を開催し、放射線に関する様々な科学的データや放射線による健康影響などについて専門家からご講演いただきました。
 
中川恵一氏
 東京大学医学部附属病院 放射線科准教授
放射線について慎重になりすぎることで、生活習慣を悪化させ、発がんリスクを高めている
放射線の影響に関する深刻な誤解
福島で被ばくによるがんは増えないと考えられる
運動不足などによる生活習慣の悪化が発がんリスクを高める
 
レティ・キース・チュム氏
 国際原子力機関IAEA)保健部長
国際機関により設定された科学的な基準に基づく行動をとってほしい
放射性物質は様々な場所に
人体にとって有害な放射線量とは
科学的な根拠に基づいた国際基本安全基準
(引用終わり)
 
 相当遅れてこの政府広報を知った私がただちに連想したのは、復興庁が今年の2月18日に公表した「帰還に向けた放射線リスクコミュニケーションに関する施策パッケージ」でした。
 「帰還に向けた」という政策決定を所与の前提として、その方向に沿うデータや言説だけを動員して(そういうお役に立とうという御用学者はいくらでもいる)国民を洗脳することが「リスクコミュニケーション」と考えているとしか思えないとして、以下のような記事を書いたものでした。
 
 
 上記政府広報に書かれている「福島県より避難されている方々を対象に、放射線に関する勉強会を開催し」というのが、復興庁の「施策パッケージ」の一環であろうということはすぐに分かります。
 そして、IAEA保健部長と並んで政府広報のお役に立つ檜舞台に登場したのが、あの中川恵一氏であっても何ら不思議はありません。復興庁も、どうやら「意外性」などははじめから狙っていなかったということでしょう。
 
 この政府広報を黙視できないと考えた研究者らによって、9月15日に上智大学(四谷)において緊急の記者会見・シンポジウムが開かれたのでした。
 チラシに掲載された概要は以下のとおりです。
 
チラシ文字データから抜粋引用開始)
異議あり! 8.17 政府広報
研究者らが緊急会見 シンポジウム
政府こそ放射線について正しい知識で被災者を救済すべきだ

◆記者会見
あいさつ 
 島薗 進(上智大教授)
問題提起
 松崎道幸(旭川勤医協医院院長)
 岡山 博(元東北大臨床教授)
 生井兵治(元筑波大教授)
発言(予定)
 沢田昭二(名古屋大名誉教授)
◆シンポジウム 参加者による自由討論
(引用終わり)
 
 以上の記者会見・シンポジウムについては、OurPlanet-TVとIWJがユーストリーム中継を行っていました。
 USTRAM・Asiaの方針によって、アーカイブ消滅の危機に直面しているのはIWJだけではない
と思うのですが、とりあえず今日現在は、どちらもアーカイブを視聴できました(IWJは会員専用)。

 全部で3時間にも及ぶ映像ですが、非常に有益な知見が得られると思います。特にシンポジウム(自由討論)では、賛同人として名前を連ねた研究者の方からの意見も聞くこともできます(崎山比早子さんも発言されています)。
 
OurPlanet-TV 【ライブ配信】「8.17政府広報」に異議あり!シンポ
異議あり!8/17政府広報(1)
 冒頭~ 司会 生井兵治氏
 1分~ 挨拶 島薗 進氏
 9分~ 松崎道幸氏
 40分~ 岡山 博氏
 1時間4分~ 生井兵治氏
異議あり!8/17政府広報(2)
 冒頭~ 沢田昭二氏
 19分~ 質疑応答
異議あり!8/17政府広報(3)
 冒頭~ シンポジウム(自由討論)
 
 
 ところで、原発問題に関するとんでもない政府広報ということで忘れてならないのは、2012年3月6日に環境省が出稿した「乗り越えなければならない『壁』がある」という震災由来がれき広域拡散推進広告です。しかもこの政府広報はただの全面広告ではありませんでした。見開き全2面フルカラーであり、いったいこのばかげた広告のためにどれだけの国費が蕩尽されたかと思うと、思い出しただけでも怒りが蘇ってきます。

 もしかすると忘れている、あるいは知らなかったという方がおられるかもしれないので、このがれき広告を取り上げたメルマガ金原No.865「3/6「乗り越えなければならない『壁』がある」(環境省)」(2012年3月10日配信)を再配信することにします。
 

3/6「乗り越えなければならない『壁』がある」(環境省
メルマガ金原No.865をお届けします(2012年3月10日現在の読者数191名)。

 去る3月6日(火)の朝日新聞に、見開き2面を使った特大全面広告(カラー)が掲載されました。(追記 読売新聞にも掲載されたとのこと)
 実は、私も事務所で朝日新聞を購読しているのですが、昼食後に事務所でざっと目を通すだけであり、たまたまこの日はランチ・ミーティングがあったこともあって、新聞は読んでいませんでしたので、気がつくのが遅れました。

 この広告の写真を掲載してくれたブログを1つご紹介します(
共産党の横浜市議会議員さんのブログでした)。

復興を進めるために、                 環境省
乗り越えなければならない「壁」がある

      2012.2.24 宮城県 石巻市

                          みんなの力で
                          がれき処理


 この広告出稿にどれだけの税金が投入されたのか知りませんが、これは「恐るべきこと」だと
思いました。
 こういうやり方が「あり」だとすれば、米海兵隊普天間基地の俯瞰写真をバックに(あるいは、中国初の航空母艦北朝鮮テポドン発射の写真をコラボレーションして)、

日本の安全を守るために、              防衛省
乗り越えなければならない「壁」がある

      2012.3.10 沖縄県 宜野湾市

                          みんなの力で
                          辺野古移転

という2面ぶち抜き全面広告がいつ登場しても不思議ではありません。

 民主党政権、特に野田政権になってからの日本政府は「異常」です。
 あるいは「政府の体を為していない」と言ってもよいかもしれません。

 しかし、これを「異常」と思わない国民の層が、どうやら分厚く存在するらしいということにも
目を向ける必要があります。
 今回の意見広告の写真を掲載したブロガーが、上記の共産党横浜市議会議員のようなまともな感覚の人ばかりなどと思ったら大間違いであり、たとえば、こういう反応が「普通」かも
しれないのです(コメント欄もお読みください)。

 そういう中で、この広告を「情緒的」と批判した阿部守一長野県知事の見識には敬服し
ました(それにしても「連合長野」ががれき受入を要請するとは・・・)。

長野知事「情緒的」と批判 がれき処理環境省広告 
2012年3月9日(東京新聞=共同)
(引用開始)
 長野県の阿部守一知事は9日、環境省が一部全国紙に掲載した、東日本大震災がれきの広域処理に理解を求める広告について「国が情緒的な広告を載せるのはいかがなものか」と批判した。がれき受け入れを求める連合長野の中山千弘会長との会談で発
言した。
 広告は山のように積まれたがれきの写真とともに、岩手、宮城両県では処理が長引くとし
て協力を求める内容。福島県を除く全国の朝日新聞6日付朝刊に掲載された。環境省
は6日、岩手、宮城両県の広域処理をめぐるPRを実施すると発表している。
 知事は「国民が知りたいのは、政府が責任持って(がれき処理を)やるということ。それを
伝えなければいけない」と指摘。
(引用終わり)

 なお、この「広告」にとどまらず、環境省は、「広域処理情報サイト」(追記 現在では「災害廃棄物処理情報サイト」と名称変更されています)という専用ホームページさえ作っています(このサイトの運営にも多大の税金を投入しているはずです)。

 ちなみに、この「広告」に言及した政治家の発言も紹介しておきます。最もまともな見解を述べたのは田中康夫氏でしょう。

12/03/08 笑止千万!「みんなの力で瓦礫処理」◆日刊ゲンダイ
(引用開始)
 「みんなの力で、がれき処理 災害廃棄物の広域処理をすすめよう 環境省」。数千万円の税金を投じた政府広報が昨日6日付「朝日新聞」に出稿されました。それも見開き
2面を丸々用いたカラー全面広告です。
 “笑止千万”です。何故って、環境省発表の阪神・淡路大震災瓦礫は2000万トン。
東日本大震災は2300万トン。即ち岩手・宮城・福島3県に及ぶ後者は、被災面積当た
りの瓦礫(がれき)分量は相対的に少ないのです。
 「静岡や大阪等の遠隔地が受け入れるべきは『フクシマ』から移住を望む被災者。岩手や宮城から公金投入で運送費とCO2を拡散し、瓦礫を遠隔地へ運ぶのは利権に他なら
ず。良い意味での地産地消で高台造成に用いるべき。高濃度汚染地帯の瓦礫&土壌
は『フクシマ原発周囲を永久処分場とすべき」。
 「『広域処理』なる一億総懺悔・大政翼賛の『絆』を国民に強要する面々こそ、地元首長の発言を虚心坦懐に傾聴せよ!」。
 ツイッターで数日前に連続投稿した僕は、その中で戸羽太・陸前高田市長、伊達勝身・岩泉町長、両名の“慧眼”発言も紹介しました。
 「現行の処理場のキャパシティーを考えれば、全ての瓦礫が片付くまでに3年は掛かる。そ
こで陸前高田市内に瓦礫処理専門のプラントを作れば、自分達の判断で今の何倍ものスピードで処理が出来る。国と県に相談したら、門前払いで断られました」。
 「現場からは納得出来ない事が多々有る。山にしておいて10年、20年掛けて片付けた方
が地元に金が落ち、雇用も発生する。元々、使ってない土地が一杯あり、処理されなくても
困らないのに、税金を青天井に使って全国に運び出す必要がどこに有るのか?」。
 阪神・淡路大震災以前から、産業廃棄物も一般廃棄物も「持ち出さない・持ち込ませない」の域内処理を自治体に行政指導してきた政府は何故、豹変したのでしょう? 因(ちな)みに東京都に搬入予定の瓦礫処理を受け入れる元請け企業は、東京電力が95.5%の
株式を保有する東京臨海リサイクルパワーです。
 これぞ産廃利権!仙谷由人氏と共に東電から献金を受け(朝日新聞1面既報)、父君
が北関東の産廃業界で重鎮の枝野幸男氏、同じく東電が重用する細野豪志氏に「李下
に冠を正さず」の警句を捧げねば、と僕が慨嘆する所以です。
 「復興を進めるために、乗り越えなければならない『壁』がある。」と件の全面広告には大
書きされています。呵々。乗り越えるべき「壁」は、「業界の利権が第一。」と信じて疑わぬ
「政治主導」の胡散臭さではありますまいか?!
(引用終わり)

 ちなみに、エネルギー政策については傾聴に値する見解を披瀝している自民党河野太郎氏は、がれき広域処理推進派です(このQ&Aで論点がかなり整理されているのが取柄でしょう)。

 最後に、この「広告」を出稿した先が、「読売新聞」ではなく「朝日新聞」であったことに、何らかの「意図」を読み取るべきかどうか、考えているところです。(追記 これは考え過ぎで、読売にも同時に掲載されていました。ちなみに、後日、このモノクロ版が順次ブロック紙・地方紙に掲載されたということです)