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再生可能エネルギー固定価格買い取り制度の曲がり角から考える「オフグリッド生活」~田中優さん宅取材動画を視る

今晩(2014年10月12日)配信した「メルマガ金原No.1876」を転載します。

なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
再生可能エネルギー固定価格買い取り制度の曲がり角から考える「オフグリッド生活」田中優さん宅取材動画を視る
 
2014年10月1日 経済産業省 資源エネルギー庁 発表
再生可能エネルギー発電事業者及び関連事業者、並びに発電事業をご検討中の皆
様へ
 http://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/dl/20141001_horyuu.pdf
(引用開始)
 平成26年9月24日に九州電力が、30日に北海道電力東北電力四国電力が、再
生可能エネルギー発電設備の接続申込みに対する回答をしばらく保留する旨、公表しました。
 また、同30日に沖縄電力が、再生可能エネルギー発電設備の接続申込みの接続可能
量の上限に達した旨、公表しました。
 これらの各電力会社の管内で発電事業をご検討される際には、各社のホームページなど
で十分に情報収集し、電力会社とご相談ください。
(引用終わり)
 
2014年10月9日 経済産業省 資源エネルギー庁 プレスリリース
「系統ワーキンググループ」を開催します

 http://www.meti.go.jp/press/2014/10/20141010003/20141010003.html
(抜粋引用開始)
 経済産業省は、再生可能エネルギー発電設備に係る電力会社の接続可能量の検証、
接続可能量の拡大方策等について検討・審議を行うため、総合資源エネルギー調査会エネルギー・新エネルギー分科会 新エネルギー小委員会の下部組織として「系統ワーキンググループ」を設置することとしました。
 第1回会合は10月16日(木)に経済産業省にて開催します。
背景と概要
 2030年に向けて再生可能エネルギーを最大限導入するためには、この受け入れが可能と
なるような系統インフラ(系統設備、系統運用)が整備されていることが必要です。
 他方、固定価格買取制度の導入以降、太陽光発電の急速な導入拡大に伴い、現状
における電力会社の系統設備の容量や電力会社管内全体の需給調整力の限界等から、再生可能エネルギー発電設備を追加的に受け入れることが困難となる事例が発生しつつある状況です。
 こうした接続問題は、今後の再生可能エネルギーの最大限導入に大きな制約となるおそ
れがあることから、電力会社が再生可能エネルギー発電設備を系統に受け入れるために現時点で十分な措置を講じているかしっかりと精査し、早急に対策を検討する必要があります。
(略)
 なお、本ワーキンググループは、年内に3~4回程度開催し、一定の結論を得ることを想定
しています。
(略)
(引用終わり)
 
 
2014年10月12日 東京新聞 朝刊
再生エネ買い取り中断相次ぎ 太陽光発電の参入 経産省が凍結検討
 http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2014101202000112.html
(抜粋引用開始)
 経済産業省再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度で、大規模太陽光発電
(メガソーラー)の認定の一時停止を検討していることが十一日、分かった。想定を上回る事業者が殺到し、買い取り手続きを中断する動きが電力会社に広がっている事態に対応する。
 経産省は十五日に開く総合資源エネルギー調査会新エネルギー小委員会で、これまで委
員から提案があった対応策をまとめて提示する方針だ。認定の一時停止は、再生エネの導入拡大を進める安倍政権の方針に沿わないとして、慎重な意見が出る可能性がある。結論が出るまで曲折が予想される。
 経産省は再生エネの買い取りに伴い、電気料金に上乗せされる国民負担の総額に上限
を設けることも検討する。太陽光に事業者が集中せず、風力や小規模水力といった他の再生エネの増加につながる目標をつくることも考える。
(略)
(引用終わり)
 
 以上が、最近目に付いた再生可能エネルギー固定価格買い取り制度をめぐるニュースの一部です。メガソーラー認定の一時停止まで検討されるという事態(個人家庭からの買い取りは従来通りのようですが)は、専門家から見れば、この制度が導入された時から予想されたことであったのかもしれませんが、それについてどうこう言うような素養は全くないので、「注意深く見守りたい」という官僚答弁のような言葉しか浮かんできません。
 
 実際、自分に素養がないことを自覚している分野について何事か発言するというのは勇気がいるもので、私が、昨日現在で1875号配信した「メルマガ金原」において、再生可能エネルギー固定価格買い取り制度について論じた、というようなレベルではなく、感想を述べたことは1度しかありません。
 
2013年2月24日
再生可能エネルギー固定価格買取制度と「オフグリッド」生活
 http://blog.livedoor.jp/wakaben6888/archives/23868420.html
(抜粋引用開始)
 以上の固定価格買取制度が、再生可能エネルギー普及のための普遍的政策として諸外
国でも広く採用されており、我が国にとっても重要な政策であることに異論をはさむつもりはありません。
 ただ、私がこの固定価格買取制度に対して若干の「違和感」を持ち続けている理由を書い
てみたいと思います。
 資源エネルギー庁が、固定価格買取制度を広報するために作成したリーフレットの6頁に
「固定価格買取制度の基本的な仕組み」が図示されています。
 つまり、再生可能エネルギーによって発電した事業者や個人は、電気を「電力会社」(電
事業者)に販売し、電力会社はそれを「電力をご利用の皆様」に販売することを「当然の前提」としているのです。
 「当たり前ではないか」と思われるでしょうか?たしかに、今は「当たり前」だと思いますが、そ
れでは、5年先も「当たり前」でしょうか?10年先でも「当たり前」でしょうか?5年、10年くらいでは、やはり大半の人は、従来通り「電力会社」から電気を購入しているかもしれませんが、それでは20年先でも、電気は電力会社から送電されて購入するものなのでしょうか?それとは異なった未来はあり得ないのでしょうか?
 事業所、工場に自家発電が普及していることは周知のことと思います。「エネルギー白書
2011」によれば、「2009年度の大口需要(産業用)全体の自家発比率は約27%となりました。自家発の比率を業種別にみると、製造業で最も自家発の比率が高かったのは、石油・石炭製品製造で81%、以下、紙・パルプ63%、化学51%、鉄鋼34%、窯業・土石27%と続きました」とあります。
 問題は個人の住宅やオフィスです。
 私は、県庁所在地(中核市)の和歌山市に住んでいますが、それでも都市ガス(大阪ガ
ス)の供給は受けておらず、地元のプロパンガス屋さんと契約し、定期的にガスボンベを交換しに来てもらっています。
 さすがに、自宅でプロパンガスを製造するのは無理でしょうが、長大な都市ガス配管設備
など近くに来ていなくても、別段不自由はしていません。
 これに対し、電気は自宅でも造れるのですから、ガスよりよほど各家庭が自立できる条件
が備わっているように思います。
 もちろん、太陽光発電にせよ、燃料電池発電にせよ、エネルギー変換効率の飛躍的向
上をもたらす技術的イノベーションやさらなるコスト低減が望まれますし、蓄電能力の向上も是非必要でしょう。それらを前提として、電力会社に頼らない生活こそ、目指すべき将来像ではないのか?というのが、私が固定価格買取制度に抱く「違和感」の根本的な理由なのです。
 つまり、20年先までの固定価格での買取を保障する(そのための財源として賦課金が電
気料金に上乗せされる)ということは、裏を返せば、再生可能エネルギー由来の電気を「購入」し、利用者に「販売」する主体としての「電力会社」(発送電が分離されたあかつきには「送電会社」ですかね)の存続を「保障」しているとも言えるのではないか?というのが私の印象です。
 もしも、あなたが経済産業省の官僚や電力会社の幹部社員であったらどう考えるでしょう
か?
 原子力発電所の新設や再稼働にしがみつきますか?それとも「原発に未来はない」と見
切りをつけ、再生可能エネルギーに関わって、将来の自らの地位を保障する政策の実現を目指しますか?
 退任間近であれば格別、まだ先の長い中堅・若手であれば、きっと後者のように考えると
思うのですが、どうでしょうか?
 「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」が比較的ス
ムースに国会を通過した背景には、そのような事情があったのではないかと私は推測しているのです(勘繰りと言われてもやむを得ませんが)。
(引用終わり)
 
 1年8ヶ月後の今読み返してみて、検討不足の部分は多々目に付くものの、結論自体を訂正しなければならないとは思いませんでした。
 
 ところで、上記の文章を書き終える寸前に気がついて、リンク先だけ紹介したのが、田中
優さんのメルマガ(2013年2月23日付)の記事『おカネにも、電力会社にも頼らない暮らしを~「オフグリッド」生活~』でした。
 http://tanakayu.blogspot.jp/2013/03/blog-post_8322.html
 
 そして、その後の田中優さんの岡山でのオフグリッド生活が気になり、さらに2回、私のメルマガ(ブログ)で取り上げさせてもらいました。
 
2013年7月28日
「女性自身」のレポートと映像で知る田中優さんの“オフグリッド生活”
 http://blog.livedoor.jp/wakaben6888/archives/30050827.html
 
2014年6月22日
田中優さんが先導する“静かな革命”
 http://blog.livedoor.jp/wakaben6888/archives/38778680.html
(抜粋引用開始)
 そこで田中優さんが語っているのは、単に電気を(太陽光パネルとバッテリーで)自給自足
し、電力会社からの配電を切断して電力自立を果たしたというだけのことではなく、そのことをきっかけとして 地域から、未来を見すえた生き方を作り上げていこうという将来像をこそ語っているのだということに気がつきます。
(略)
 脱原発をその重要な一部としながら、人間の生き方そのものを、極力金に頼らない、地域
における共助を大切にしたものに変えていく、言い換えれば、人間を取り戻す、そのための第一歩として、電力会社に頼らないオフグリッド生活を実践する。
 声高にスローガンを叫ぶのではなく、明確な将来ビジョンに向けて自らの責任と行動で社
会を変えていくこと、それを優さんは「静かな革命」と呼んでいるのだと思います。
 すぐに田中優さんのあとに続ける人は少ないかもしれませんが、優さんの実践と講演は、多
くの人に勇気と、そして将来の生き方を考えるための豊富なヒントを与えてくれることでしょう。
(引用終わり)

 以上で、「大規模太陽光発電所(メガソーラー)の認定の一時停止」が検討されていると
いうニュースに接し、私が真っ先に思い出したのが、淡々と「オフグリッド生活」を実践している田中優さんのことであったのも納得していただけるのではないでしょうか。
 もちろん、現在、曲がり角を迎えているのは、直接的には「再生可能エネルギー発電事業及び関連事業者」であって「個人」ではありません。しかし、「見直し」の動きは必ず「個人」からの買い取りにも波及せずにはおかないでしょう(買い取り価格の大幅減額など)。
 そうなった際、「売電」から「オフグリッド」へ、あるいはその中間形態の「ハイブリッド」へというれが動き出すかもしれないという予感(あるいは期待)があります。
 
 さて今日は、優さんのブログ「田中優の‘持続する志’」で紹介されていた動画が、田中優さんの「オフグリッド生活」をとっても分かりやすく、しっかりと取材したものでしたので、是非んに視ていただきたく、ご紹介することとしました。
 「まゆともトーク」というYouTubeチャンネルで、ニューヨーク在住の片岡桜子さんという方が
運営しておられるようです。
Facebookページ https://www.facebook.com/mayutomonetwork
 
 この動画が撮影されたのは昨年(2013年)夏ということで、「女性自身」がレポートを掲載した時期とそれほど離れていない頃ということでしょうね。田中優さん自身、「取材は1年前(2013年夏)のものですが、よくできています。良かったらご覧ください。」とブログに書いておられました。
 全部で3本に分かれており、合わせて42分程度の動画です。
 これを全部見終わった時には、「自分にもオフグリッド生活」が始められるのではないか」と
思う人が出てくるかもしれませんね(田中邸のような500万円コースは無理でも廉価版の100万円コースならとか?)。
 それはともかく、最も効果的で誰にでも出来るエネルギー対策は「節電」だという指摘は重
要です。将来のオフグリッド生活に備えるためにも(バッテリーの必要量を削減してコストが圧縮できる)、「節電」の意識を常に持ちたいものです。
 
田中優さん(Part1)電気は自分で作れる!電力会社に頼らない生活(2014.09.09公開)
 http://www.youtube.com/watch?v=xkNtXWD-ZuI
田中優さん(Part2)ワクワク感のある未来へ向けて(2014.09.21公開)
 http://www.youtube.com/watch?v=MJW79NgE_Ic&list=UUCZNvSojfwRAa1OptMhAt4A
田中優さん(Part3)今いる場所で、今日からできること(2014.10.04公開)
 http://www.youtube.com/watch?v=KC2YnpZh7DI