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wakaben6888のブログ

憲法を大事にし、音楽を愛し、原発を無くしたいと願う多くの人と繋がれるブログを目指します

「明日戦争がはじまる」をあらためて読む

 今晩(2014年10月24日)配信した「メルマガ金原No.1888」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。

「明日戦争がはじまる」をあらためて読む ※追記あり
 
 今さらご紹介するまでもなく広まっている詩ですが、同作を表題とした詩集を一読したのを機に、メルマガ(ブログ)で取り上げようと思います。
 作者自身、この作品については「著作権フリー」を宣言しておられますので、以下に全編引
用します。
 
明日戦争がはじまる
                  宮尾節子
 
まいにち
満員電車に乗って
人を人とも
思わなくなった
 
インターネットの
掲示板のカキコミで
心を心とも
思わなくなった
 
虐待死や
自殺のひんぱつに
命を命と
思わなくなった
 
じゅんび

ばっちりだ
 
戦争を戦争と
思わなくなるために
いよいよ
明日戦争がはじまる

 私がこの詩に気がついたのは、7月9日の朝日新聞に取り上げられた際だったのですが、先行して取り上げたメディアがいくつかあったようです。
 
J-CASTニュース 2014年7月1日 18時06分
「明日戦争がはじまる」という詩が注目されている 「新宿焼身自殺」きっかけにツイッター
で拡散、ラジオも紹介

(抜粋引用開始)
(略)
 「明日戦争がはじまる」は2014年1月22日、詩人の宮尾節子さんがツイッターに投稿した作
品だ。満員電車での移動やネット掲示板のカキコミ、相次ぐ虐待死や自殺により、「人」や「心」、「命」の重みは薄れ、人々の間に無関心が広がる。「じゅんび は ばっちりだ」とばかりに、戦争
を戦争と思わなくなり、「いよいよ 明日戦争がはじまる」という、わずか114文字の詩だ。
 作ったのは07年7月11日だった。「脅すようなタイトル」が気になり一度お蔵入りにしたが、整
理をしていた時に発見し、掲載することにしたそうだ。宮尾さん自身は、特に政治運動や活動はしておらず、詳しくもないという。「ほんとうは、恥ずかしい」と説明しつつ、「ふつうの、ひととして
の、ふつうの、おもい」をつづっていると、ツイッターで語っている。
 宮尾さんは高知県出身で、埼玉県飯能市在住。1993年に詩の出版物では最も有名な思
潮社の女性詩誌「現代詩ラ・メール」第10回新人賞を受賞し、『かぐや姫の開封』(思潮社)、ドストエフスキーの青空』(文游社)などの詩集を出すなど、現代自由詩の分野で活動を続け
ている。
(略)
  発表から半年、この詩がふたたび注目をあびることになったきっかけは14年6月29日、新宿駅
南口で起きた焼身自殺未遂事件だ。歩道橋の上で集団的自衛権について熱弁する男の姿は、ツイッターなどを通じて全国に拡散されたが、画像を見てもあまり関心を持てなかった人は多かっ
たようだ。
 この無関心さを的確に言い当てているとして、あるツイッターユーザーが「焼身自殺にピンとこな
い、じゅんびばっちりな自分に驚いた」と詩を転載すると、リツイートは約1万7800、「お気に入り」
は約1万5000(いずれも7月1日17時現在)と話題になった。
 7月1日朝には連立与党が、集団的自衛権の行使容認に合意した。午後の閣議決定を前
に、詩は午後1時からの「大竹まこと ゴールデンラジオ!」(文化放送)でも紹介され、アシスタ
ントの眞鍋かをりさん(34)が全編を朗読している。
 この詩には「反戦」のイメージが付きつつあるが、宮尾さんが訴えたいのは「戦争」の危機その
ものではないようだ。以前のブログ(2月13日)では、「誤解もされていますが。わたしの言いたかったのは、戦争のことよりひとの『こころの怖さ』なのだ
と思います
と説明していた。「戦争」の部分ばかり注目されていることもあり、宮尾さんはツイッターで1日、「
ほめてもらったり、こづかれたり、せなかをおしたり、ふんづけられたり、いろいろのようですが。だしてしまったら、ひとりあるきを、せねばなりません。ねがわくば、よいしごとを、してくれと、いのるば
かりです。ありがとうございます
と複雑な心境を明かしている。
(引用終わり)
 
【東京新聞・筆洗】 2014年7月2日
(抜粋引用開始)
その日、日本はどんな顔をしていたか。国が何を決めたか、誰が批判したか。事実は刻まれる。半面、空気、匂い、「顔つき」は消えていく▼(略)一日、集団的自衛権の行使を認めることが閣議決定された。この日の澱を残したい▼「明日戦争がはじまる」という詩を人に教えられた。<まいにち満員電車に乗って/人を人とも思わなくなった/インターネットの掲示板のカキコミで/心を心とも思わなくなった/虐待死や自殺のひんぱつに/命を命と思わなくなった/じゅんびはばっちりだ/戦争を戦争と思わなくなるために/いよいよ明日戦争がはじまる>▼宮尾節子さんという詩人が書いた。最近公開されネットで広まったと聞く市井の詩。「戦争のじゅんび」なぞ真っ平だが、昨日の気持ちはあの落書きのようにこの市井の詩に残るかもしれぬ。「人、心、命」が軽く扱われる状況への悲しみと怖(おそ)れ。その歪(ゆが)んだ表情こそ昨日の日本の
顔である。
(引用終わり)
 
朝日新聞デジタル 2014年7月9日 15時44分
ネット上で共感 平和願う詩「明日戦争がはじまる」

(抜粋引用開始)
 「明日戦争がはじまる」と題された詩が、インターネット上で話題になっている。安倍政権が集団的自衛権の行使容認に突き進むのと時を同じくして、ツイッターで拡散した。人の命に無関
心になった社会への危惧をストレートに表現した言葉に、共感が広がっている。
(略)
 この詩を書いたのは7年前。ネットの掲示板で見かけたののしり合いや、満員電車の無表情
な人々、連日耳に入る自殺や虐待死のニュースに心を痛め、直感で筆を走らせた。「戦争に結びつけたのは詩特有の飛躍ですが、不穏な空気への不安と、無意識にイメージがつながった
のだと思う
 今年1月、7月末に出版する詩集を準備していたところ、引き出しの中から再発見した。いま
の世相とつながっていると感じ、自分のツイッターに載せた。
 6月29日、JR新宿駅南口付近で、集団的自衛権の行使容認に反対する演説をしていた
男性が焼身自殺を図り、重傷を負った。新聞などマスコミでは大きく報じられなかったが、あるツイッター利用者が宮尾さんの詩を転載してこう書き込んだ。「焼身自殺にピンとこない、じゅんび
ばっちりな自分に驚いた」
 これをきっかけにネット上で拡散。宮尾さんの元には3万件を超えるリツイート(転載)や引用
の知らせが届いた。ラジオで朗読され、メロディーを付けて歌にする人も現れた。
 抗議の自殺を称賛するわけではない。だが、人の死に関心が持てず、戦争や平和に関する
政治の動きにも反応が鈍い世相に、漠然とした不安を持つ人たちに共感されている。
 これほどの注目を浴びるのは慣れないことで、はじめは戸惑った。でも、近所の知り合いに「あ
の詩だったら俺だって書けそう」と言われて肩の力が抜けた。
 今月2日、この詩の著作権を放棄した。そのことを宣言したツイッターのつぶやきには、こうつづ
った。「みなさんの拡散や引用がなければ、このように読まれることのなかった詩です。(中略)どうぞご自由にお使いください。願わくば平和のために」(板垣麻衣子)
(引用終わり)
 
 私は、子ども時代、学生時代から本好きではありましたが、現代詩の世界にはほぼ無縁の読書生活を送ってきたため、宮尾節子さんと聞いても、全く何も連想するものはなく、ただ単に話題となっている「明日戦争がはじまる」という1編の詩が目の前にあるだけでした。

 朝日新聞で知ったこの詩を何度か読み返しながら、
  第1連 人を人とも
  第2連 心を心とも
  第3連 命を命と
  第5連 戦争を戦争と
というたたみ込みの中で、第1連と第2連にある「も」が、第3連、第5連では落とされていることも、詩の流れからすれば必然だと気がついて感心したりしながら、その時はまだ、J-CASTニュースが引用した「誤解もされていますが。わたしの言いたかったのは、戦争のことよりひとの『こころの怖さ』なのだと思います」というtweetは未読であったものの、いわゆる「反戦詩」ではないという受け止めはしていたように思います。
 とはいえ、朝日新聞が伝えた「戦争に結びつけたのは詩特有の飛躍ですが、不穏な空気への不安と、無意識にイメージがつながったのだと思う」ということも、そのとおりだろうと素直に感じられました。
 7年前(2007年)の7月という世相が詩人の筆先から「いよいよ 明日戦争がはじまる」という言葉をほとばしらせたことは間違いないと思います(言うまでもなく、当時の首相も安倍晋三氏でした)。
 
 J-CASTニュース東京新聞朝日新聞があいついでこの詩を取り上げたのが、日本の戦後史の「終焉」を告げたかもしれない閣議決定に触発されたためであったことは間違いなく、それも、いったん世に出た作品自身の吸引力によるものでしょう。
 
 最後に、7月28日に発行された宮尾節子さんの最新詩集『明日戦争がはじまる』(思潮社)の「円周率と詩の話(あとがきにかえて)」の末尾の部分を引用したいと思います。
 


(引用開始)
 ネットに掲載した短詩「明日戦争がはっじまる」が大変反響を頂き、ツイッターフェイスブックのリツイートやリアクション、シェアを頂いた数が一万件(公式・非公式含め)を超えて驚いていま
す。詩は生きていました。
 それはたくさんの人の中のなかで詩が生きている知らせに思えました。読者がいなければ詩は
生きることができません。生かしてくださってありがとうございます。はじめは、この詩集のタイトルは他のものにするつもりでした。けれど、こうして読んでくださった知らせを届けてくださる方々のご厚意にお応えしたく、この詩を詩集名と致しました。実は七年前の作品ですが、この詩が、今日み
なさまに届いている事をよかったと思えますように―。
 二〇一四年四月某日 桜散る日に―感謝をこめて   宮尾節子
(引用終わり)
 
(付記)
 詩集『明日戦争がはじまる』は4章構成となっており、表題作「明日戦争がはじまる」は最終章の冒頭に収められていますが、私は特に第2章に注目しました。そこには、東日本大震災に直接、間接にインスパイアされた一群の詩が収録されています。詩人の体験を綴ったと思われる長詩「石巻ボランティア日誌」の他、震災で息子を失った母親のつぶやきを伝えた新聞記事を題材とした「きれいに食べている」など、心打たれる多くの詩が収録されています。
 1つだけ、「つけてください」という詩の冒頭のみ引用します。
 
ただひとつ
お願いがあります
 
福島第一原発
東電をつけてください
東電福島第一原発にしてください
 
つくのと
つかないのとでは
大きくちがいます
 
(以下、略)

(追記 2014年11月26日)
 宮尾節子さんが、岩上休身さんの勧めにより、IWJブログに特別寄稿されました。これから何回か掲載されるようですが、まずは第1回をご紹介します。
「明日戦争がはじまる」の作者です。こんにちは。(第1回) 詩人・宮尾節子