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自由法曹団第二意見書「戦争法制を批判する―いつでもどこでも切れ目なく戦争へ」(4/30)で学ぶ

 今晩(2015年5月6日)配信した「メルマガ金原No.2082」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
自由法曹団第二意見書「戦争法制を批判する―いつでもどこでも切れ目なく戦争へ」(4/30)で学ぶ
 
 連休最終日の今日5月6日、明日からに備えて1日休養していたといううらやましい人も多いかと思いますが、私は、自分が運営委員を務めている地元の「守ろう9条 紀の川 市民の会」の第11回総会に参加していました。
CIMG3579 第1部の記念講演は、「『戦争する国』を許さない~『安全保障関連法案』を阻止しよう~」という演題で、由良登信(ゆら・たかのぶ)弁護士に講演していただきました。
 ちなみに、この恐ろしげな演題は主催者から提案したもので、講師が付けたものではなかったのではないかと思います(私は講師選定や交渉には関わっていなかったので詳しくは知りませんが)。
 「この演題で新たな聴衆や運動の担い手を呼び込むのは無理ではないか?」というご意見もあろうかとは思いますが、憲法をめぐる切迫した情勢に向き合う企画者の思いがストレートに反映したものとご理解いただければと思います。
 
 由良弁護士は、私より2歳年上、司法修習の3期先輩ですが、この3月で私が和歌山弁護士会憲法委員会委員長を退任させてもらったあおりを受け、実に3回目の同委員会委員長を引き受けざるを得なくなったという、まことにお気の毒というか何というか、弁護士大増員時代などと言っても、結構人材は不足しているところでは不足しているのです(ちなみに、憲法委員会の委員長などやっても、事務所経営の足を引っぱることはあっても、役に立つことなど絶無です/弁護士会活動は多かれ少なかれそうですが)。
 
 なお、今日の講演は、私自身今月末に「どこをどう変える安全保障関連法案~その問題点は何か~」という主催者指定の演題で講演しなければならないため(「九条の会・わかやま」連続講座第1回/2015年5月31日(日)14:00~/和歌山県JAビル11階 会議室11-AB)、その「予習」のつもりで聴講させていただきました。
 その結果分かったことは、限られた時間の中で安全保障関連法案(戦争法案)の内容を分かりやすく説明するというのは容易なことではない、ということです。
 もちろん、今のところ、確定した法案などまだ誰も見た者はいない(何しろまだ閣議決定されていない)のですが、それでも政府筋からマスメディアに流された具体的な資料を基に、ほぼその内容は判明するに至っています。
 本日の講師をお願いした由良弁護士は、日本弁護士連合会憲法問題対策本部委員であるとともに、自由法曹団和歌山支部長でもあり、その双方のメーリングリストから流れてくる最新情報だけでも膨大な量に達しているはずで、それらを咀嚼しながら今日の講演のレジュメや資料を作成されたのですから大変です。
 それだけの下準備をして、しかも分かりやすい語り口で定評のある由良弁護士が解説をして、それでもなお、聴衆に伝えたい内容のうちのどれほどが伝わっただろうか、ということを考えると、それほどのスキルを持たない私のような普通の弁護士が講師を頼まれて話をするためには、大至急、日弁連憲法問題対策本部に「講師用マニュアル(あるいはQ&A)」を作って欲しいと痛切に思いました。
 もっとも、和歌山弁護士会が6月12日に市民集会「安全保障法制の内容と問題点」(午後6時00分~/和歌山市中央コミュニティセンター3F多目的ホール大)の講師としてお招きする井上正信弁護士(広島弁護士会)などが中心となって、着々と作成中なのかもしれませんが。
 しかし、まだ日弁連から「講師用マニュアル」が出来たという連絡はありませんので、近々学習会の講師を務めなければならない者は別の資料を探さねばなりません。
 
 今日は、そのうちの1つをご紹介します。由良弁護士から教えていただいた自由法曹団が発表したばかりの意見書です。
 
 自由法曹団戦争法制に関する意見書としては、去る3月10日に発表した緊急意見書「戦争法制が生み出す国 7.1閣議決定の撤回と法制化の中止を求める」があり、これは私のメルマガ(ブログ)でもご紹介しました(2015年3月13日/続「戦争立法」はどうなるのか?~若い弁護士のための勉学の勧めⅡ)。
 
 今日ご紹介しようとする意見書(第二意見書)は、政府・与党協議の成立、日米ガイドラインの改定という事態の展開を踏まえ、3月10日の第一意見書を全面改定した第1部「戦争法制が生み出す国(改訂版)/田中隆弁護士執筆」(2~26頁)と、第2部「戦争法制を告発する(論考集)」(27~100頁)からなっています。
 戦争法制批判の理論的枠組みは第1部で学び、自由法曹団に所属する全国各地の弁護士が寄せた27本の論考(第2部)は、この危機的事態に個々の法律家がどのように立ち向かうのかということをあらためて自覚するためにこそ読むべきではないかと、私自身は自由法曹団の団員ではないものの、そのように思います。
 従って、今日のタイトルは、
   続々「戦争立法」はどうなるのか?~若い弁護士のための勉学の勧めⅢ
としても良かったのです。
 それでは、以下に、戦争法制に関する自由法曹団の第二意見書を目次とともにご紹介します。
 
自由法曹団 2015年4月30日
戦争法制を批判する―いつでもどこでも切れ目なく戦争へ
 
発表にあたって
第1部 戦争法制が生み出す国(改訂版)
 共同文書の発表(3月20日)、政府・与党協議への主要法文の提示(4月24日)、「日米防衛協力の指針」(ガイドライン)改定(4月27日)などを踏まえて、3月10日に発表した同名の自由法曹団第一意見書(緊急意見書)に全面改訂を加えたものである(田中 隆)。
戦争法制への道程
 1 安保法制懇から戦争法制へ
 2 安全保障戦略の全面再編と戦争法
 3 戦争法制の全体像
Ⅱ 米国の戦争にはもれなく参戦・・・集団的自衛権有事法制の拡張
 1 武力の行使の3要件(新3要件)
 2 存立危機事態の実像・・・「新3要件」の射程
 3 事態対処法と存立危機事態
  4 存立危機事態と自衛隊法・個別法
 5 集団的自衛権の行使と国民
Ⅲ 3つのチャンネルでやりたい放題・・・自衛隊海外派兵の拡大
  1 自衛隊海外派兵をめぐる憲法的制約と撤廃
  2 3つの海外派兵法制
  3 重要影響事態法
  4 国際平和支援法(海外派兵恒久法 一般法)
  5 国際平和協力法(PKO法)
  6 6 3つのチャンネルがもたらすもの
Ⅳ 警察と外交の領域に自衛隊を投入・・・グレーゾーン事態
  1 有事・平時・グレーゾーン
  2 治安出動と海上警備行動・・・発令の迅速化
  3 米軍部隊等の防護のための武器の使用
  4 在外邦人の救出・奪還
 5 自衛隊投入の意味するもの
戦争法制が問いかけるもの
  1 いつでも切れ目なく戦争へ
  2 日本国憲法の否定
  3 「戦後という時代」の否定
  4 軍事力で平和はつくれるか
  5 往くべきは平和の道
第2部 戦争法制を告発する(論稿集)
戦争法制と安全保障戦略
《1》安倍政権による安全保障戦略の再編成と戦争法制 松島 暁(東京)
《2》国家安全保障戦略・防衛大綱と戦争法制 横山 雅(東京)
《3》戦争法制と秘密保護法 森 孝博(東京)
《4》「防衛装備移転三原則」と戦争法制 本田伊孝(東京)
《5》ODA大綱改定と戦争法制 枝川充志(東京)
《6》宇宙基本計画と宇宙の軍事利用 尾﨑彰俊(京都)
戦争法制がもたらすもの
《7》戦争法制と教育・教科書 小林善亮(埼玉)
《8》戦争法制と雇用政策・労働法制 今村幸次郎(東京)
《9》戦争立法と国会の空洞化 長澤 彰(東京)
《10》集団的自衛権行使・国防軍化と自衛隊員の人権 佐藤博文(北海道)
《11》情報保全隊戦争法制 小野寺義象(宮城)
《12》市民運動から見た戦争法制と秘密保護法の危険性 中谷雄二(愛知)
《13》安保法制改正と日米同盟 井上正信(広島)
《14》安全保障法制論議の視点 内藤 功(東京)
集団的自衛権の行使容認
《15》集団的自衛権容認と恒久平和主義の破壊 藤岡拓郎(千葉)
《16》集団的自衛権容認と立憲主義の破壊 辰巳創史(大阪)
《17》新3要件と国際法ニカラグア判決 久保田明人(東京)
《18》「存立事態」における自衛攻撃とは何か 藤本 齊(東京)
《19》「存立事態」と経済的な損失 齊藤園生(東京)
《20》集団的自衛権と戦費 石坂俊雄(三重)
Ⅳ 「基地のまち」からの告発
《21》北海道の基地と戦争法制 石田明義(北海道)
《22》地域からの告発 -北富士演習場- 加藤啓二(山梨)
《23》横田基地における日米両軍の一体化 吉田健一(東京)
《24》戦争法制が神奈川に与える影響 近藤ちとせ(神奈川)
《25》京丹後・米軍基地問題 尾﨑彰俊(京都)
《26》佐賀空港オスプレイ配備に反対する 稲村蓉子(佐賀)
《27》沖縄から戦争立法を批判する 仲山忠克(沖縄)
年表