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戦争法案 早分かりの術~「どこをどう変える安全保障関連法案~その問題点は何か~」(5/31)序論

 今晩(2015年5月24日)配信した「メルマガ金原No.2100」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
戦争法案 早分かりの術~「どこをどう変える安全保障関連法案~その問題点は何か~」(5/31)序論

 5月31日(日)には、「九条の会・わかやま」連続学習会「戦争しない国をいつまでも」和歌山県JAビル11階)第1回の後半で講師を務めねばならず、しかも指定されたテーマが「どこをどう変える安全保障関連法案~その問題点は何か~」というもので、5月14日に閣議決定されてようやく全貌が公表されたばかりの、新法案1つと新旧対照表だけでも130ページを超える現行法(20の法律)一括改正法案のポイントをどうやってまとめれば良いのかと悩みつつ、とりあえず序論から書き始めていたところに、「九条の会・わかやま」事務局から、26日の午前中までにレジュメ送って欲しいというメールが着信。
 これまでと同じように、講演用台本に近い文章体のレジュメを書き、メルマガ(ブログ)に流用したりすることを考えていたものの、実質、明日までということであれば、とてもそんなものを書いている時間的余裕はなく、急遽方針を転換し、今回は骨だけ、項目だけのレジュメにせざるを得ないと決心しました。

 とはいえ、こんなドタバタをやっていたので、メルマガ(ブログ)で取り上げる材料も用意しておらず、また、書きかけていたレジュメの序論部分をこのまま破棄するのも勿体ないということで、肉付けは甚だ不十分ですが、以下に貼り付けてご紹介します。
 一応、私の構想としては、全体で1時間15分程度でお話する内容を、以下のような順序で述べるつもりで目次を作っていました(本当に話せるだろうか?4か5あたりで時間が尽きそうだが)。
 
1 戦争法案 早分かりの術
2 法的な視点から考える(日本国憲法日米安保条約
3 武力攻撃事態等と存立危機事態(個別的自衛権集団的自衛権
4 重要影響事態(世界中どこへでも)
5 国際平和共同対処事態(兵站って戦争じゃないの?)
6 PKOはどう変わる?(国際連携平和安全活動)
7 グレーゾーン事態(現場の判断でいつの間にか戦争に?)
8 殺すな 殺されるな(自衛隊員の命を何だと思っているのか)
9 今からでも遅くはない
 
 上記の内、2は法案の解説をした直後に持ってくる方が論理的かとも思いながら、新ガイドライン憲法、条約からの逸脱ぶりを論じるには、やはりここかなと考えています。 もっとも、実際に31日に聴きにきてくださった方が、「予告された内容と違う」と抗議されても私は責任を負いませんので悪しからず。以上はあくまで現時点での構想であり、1週間の間には気が変わることは十分にあり得ます。
 
 前置きはこの程度にしておきましょう。
 タイトルはどうしようかな。やはり最初に考えた「戦争法案 早分かりの術」でいくか。
 

「どこをどう変える安全保障関連法案~その問題点は何か~」
序論 戦争法案早分かりの術
 

 一括法では、自衛隊法、武力攻撃事態法周辺事態法など、実に20もの法律の改正案を1本の法案にしているため、実にわかりにくくなっています。
 それに、どの条項をどのように改正するという新旧対照表はあっても、「改正されない」部分は同表には掲載されていません。しかし、実は改正されない部分にも大きな影響があるということが分かりにくい。
 例えば、東京新聞の半田滋さんが指摘していることですが、現在、武力攻撃事態、武力攻撃予測事態を前提として、様々な軍事利用優先、中央省庁や地方自治体、指定公共機関の協力義務など、国民を動員する制度が存在しますが、ここに「存立危機事態」なる新たな概念を付け加えるだけで、他の条項を改正せずとも、新3要件に該当すると政府が判断しさえすれば、たちまち他国防衛のための「国家総動員」が可能な法体系が出現しようとしているというようなことなどが分かりにくいという問題点があります(半田滋さんの論説『よみがえる国家総動員』を読む/2015年5月20日)。
 
(2)戦争法案 早分かりの術
 政府(内閣官房)のホームページに掲載されている「平和安全法制整備法」についての新旧対照表は全部で132頁。しかも、上に述べたとおり、「改正されない部分」にどのような影響があるのかが分かりません。
 そこで、この際やや安直ではあるものの、安倍自民公明連立政権が目指す戦争法制の全貌を「早分かり」する方法を伝授します。
 それは、去る4月27日にニューヨークにおいて合意された新日米ガイドライン(日米防衛協力のための指針)を読むことです。さらに、改訂前の旧ガイドライン(1997年)も併せて読むことができればなお良いでしょう。
 
 
 もちろん、これを読むだけでも相当のボリュームがあるのですが、日本が行う軍事関連行動は、一挙手一投足、全て米国の指示と了解の下にあるということが一目瞭然となります。
 そして、今回の戦争法案を一言で評すれば、旧ガイドラインでは出来なかったことを出来るようにするための法案ということに尽きます。例えば、一例としてそれぞれの「目的」を説明した部分を比較してみましょう。
 
(旧)「指針の目的」
 平素から並びに日本に対する武力攻撃及び周辺事態に際してより効果的かつ信頼性のある日米協力を行
うための、堅固な基礎を構築することである。
(新)「防衛協力と指針の目的」
 平時から緊急事態までのいかなる状況においても日本の平和及び安全を確保するため、また、アジア太
平洋地域及びこれを超えた地域が安定し、平和で繁栄したものとなるよう、日米両国間の安全保障及び防
衛協力は、次の事項を強調する。
・切れ目のない、力強い、柔軟かつ実効的な日米共同の対応
・日米両政府の国家安全保障政策間の相乗効果
・政府一体となっての同盟としての取組
・地域の及び他のパートナー並びに国際機関との協力
・日米同盟のグローバルな性質     
 
 安倍首相が日本国民や日本の国会よりも、オバマ大統領や「2+2」や米国上下両院に対する約束を優先させた内容がここ(新ガイドライン)にまとめられているのですから、現在衆議院に係属中の法案は、結局、この新日米ガイドラインを実現するために上程されたと理解すれば良いのです。
 
(3)全ては米国の命じるままに
 ところで、昨年7月1日の閣議決定以降、今回の新日米ガイドラインに至る流れを俯瞰すれば、大筋で安倍自民公連立政権が、米国のジャパン・ハンドラーの指示書である「第3次アーミテージ報告」に忠実に従っていることは明らかです。
 例えば、アーミテージレポートの以下の部分などを読めば一目瞭然となります。
 
“The U.S.-Japan Alliance anchoring stability in asia”(Richard L. Armitage .Joseph S. Nye
 A change in Japan’s prohibition of collective self-defense would address that irony in full.Ashift in policy should not seek a unified command, a more militarily aggressive Japan, or a change in Japan’s Peace Constitution. Prohibition of collective self-defense is an impediment to the alliance.3-11 demonstrated how our two forces can maximize our capabilities when necessary. It would be a responsible authorization to allow our forces to respond in full
cooperation throughout the security spectrum of peacetime, tension, crisis, and war.
「米日同盟―アジアの安定を保持する―」リチャード・L・アーミテージ、ジョセフ・S・ナイ 筑紫建彦訳(前半後半
 日本の集団的自衛の禁止における一つの変化は、その皮肉に十分に対処することになるだろう。政策の転換は、司令部の統一や、より軍事的に攻撃的な日本、あるいは日本の平和憲法の変更を求めるべきではない集団的自衛の禁止は、この同盟にとって障害物である。3・11は、われわれの両軍が、必要な場合にはその能力を最大化できることを示した。われわれの軍隊が平和時、緊張、危機、そして戦争という安全保障の全領域で完全に協力して対応することを許すのは、それぞれの政府当局であるだろう。

「九条の会・わかやま」連続講座チラシ表 


























「九条の会・わかやま」連続講座チラシ裏