wakaben6888のブログ

憲法を大事にし、音楽を愛し、原発を無くしたいと願う多くの人と繋がれるブログを目指します

その後の長谷部恭男教授(早稲田大学)~TBSラジオと高知新聞インタビューから

 今晩(2015年6月11日)配信した「メルマガ金原No.2118」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
その後の長谷部恭男教授(早稲田大学)~TBSラジオと高知新聞インタビューから

 今日(6月11日)は、第12回「憲法の破壊を許さないランチTIMEデモ」があり、あいにくの雨の中、前回を大きく上回る120人以上の皆さんが参加してくださいました。私も、デモの直前に近くのホームセンターで購入しためちゃくちゃ目立つライトグリーンの雨合羽(レインスーツ)に身を包み、写真を撮ったり、参加人数をカウントしたりしておりました。次回のランチTIMEデモは、あの「非立憲」の象徴である閣議決定からちょうど1年目の7月1日(水)です(「非立憲」については、6月6日に
開催された「立憲デモクラシーの会」主催シンポをご覧ください/IWJ全編公開中!)。

 ところで、今日のランチTIMEデモの出発前、和歌山県平和フォーラムの藤原慎一郎さんから、映画上映会のチラシをいただきました。戦争法案の審議が始まり、戦後70年談話における歴史認識がどのようなものになるかに注目が集まる中、名作『ブリキの太鼓』のフォルカー・シュレンドルフ監督が手がけた『シャトーブリアンからの手紙』を上映することには大きな意義があるという判断だと思います。
 
(上映会概要/チラシから)
映画『シャトーブリアンからの手紙』上映会
 監督:フォルカー・シュレンドルフ
 2011年 独仏合作 91分
日時 2015年6月22日(月)18時30分~(開場18時00分)
場所 和歌山県勤労福祉会館プラザホープ4階ホール
和歌山市北出島1丁目5-47
上映協力券 500円
主催 和歌山県平和フォーラム(電話073-425-4180)
後援 戦争をさせない和歌山委員会
 
映画『シャトーブリアンからの手紙』予告編
 

 さて、以上2つの話題の他に、今日も6月4日(木)衆議院憲法審査会における参考人質疑の余波を記録しておきます。
 本論の前にこういう報道もあったことに気がつきましたのでご紹介しておきます。本当のところがどうだったのかはよく分かりませんが。
 
時事ドットコム(2015/06/08-21:51)
長谷部氏推薦は自民のみ=衆院憲法審

(引用開始)
 自民党船田元衆院憲法審査会幹事は8日、同審査会で4日に参考人として招いた早大教授の長谷部恭男氏について、自民、公明、次世代の3党が推薦したとの従来の説明を訂正し、自民党のみの推薦だっ
たとのコメントを発表した。
 船田氏はコメントで「私が(3党推薦と)発言したが不正確で、誤解を与えた。自民から提案したのは事実だが、公明には推薦することを連絡したものであり、次世代の党に至っては連絡もしていない」と説
明した。
 4日の審査会で長谷部氏は、集団的自衛権の行使容認を可能にする安全保障関連法案を「違憲」と明言
していた。
(引用終わり)
 
 Facebookをやっていると、様々な情報が流れており、とても一々に目を通している時間などありませんが、それでも「この人が推奨しているサイトなら、のぞいてみる価値はあるだろう」ということはあるもので、私の場合、映画監督の想田和弘さんが推奨しているサイトにまず外れはないと信頼しています。
 この「憲法審査会問題」についても例外ではなく、今日も、想田さんから教えられた2つのサイトを、聴き、かつ読んだところ、これは他の方にも是非お勧めした方が良いと思い、メルマガ(ブログ)で取り
上げることにしました。
 それは、今話題の長谷部恭男氏(早稲田大学教授)をゲストに招いたラジオ番組のポッドキャスティング(音声配信)と、高知新聞による長谷部教授インタビューの記事です。
 
 
 パーソナリティの荻上チキさんとアシスタントの南部広美さんに加え、長谷部ゼミ出身者である木村草首都大学東京准教授(憲法学)も加わり、様々な話題が展開されます。
 時間がたっぷりある、ということもあって、6月4日の参考人質疑からその後の自民党関係者(安倍首相を含む)らの反応まで丁寧にたどりながら、長谷部恭男氏と木村草太氏にコメントを求めていますので、6月4日以降の状況を細切れにしか知らなかった人でも、この録音を聴くだけで、状況がどのように進展し(4日から9日までの状況が詳しくフォローされています)、何が問題となっているのか、それらについて長谷部氏の意見やや学界の通説的見解はどのようなものかが、誰にでも分かるように語られて
います。
 長谷部教授の、立憲主義集団的自衛権についての意見は、ここ最近の私のメルマガ(ブログ)でかなり詳しくご紹介していると思いますので、ここでは2点ばかり、この録音を聴いた上での私の感想を述べておきます。
 
 まず第一は、昨年7月1日の閣議決定について、木村草太氏が「安倍政権は、武力行使の条件を拡大しようという意図があるようですが、昨年7月の閣議決定の文言上は、日本の防衛以外に軍事活動はしないという現行憲法の枠組みを超えていません。個別的自衛権集団的自衛権には重なり合っている部分があります。閣議決定は、個別的自衛権の行使として説明、対処できる範囲に限り、それが集団的自衛権と重なる場合に、自衛の措置を行使してもよいと確認したにすぎません。文言を法的に丁寧に読めば、そんな内容になっています」(2015年3月26日/沖縄タイムス)という解釈をとっていることは何度かこのメルマガ(ブログ)でも取り上げてきましたが、この番組の中で木村准教授は、6月4日の衆議院憲法審査会における北側一雄氏の発言を聴けば、公明党は上記のような解釈ではなく、日本が攻撃を受けていない場合にも集団的自衛権を行使できる場合があるという立場であることが確認されたという趣旨の発言をされていることに注目しました。
 
 二つめは、自民党が合憲の根拠にまたぞろ砂川事件最高裁判決を引っ張り出してきたことに対し、決してあなどらずにすぐさま適切な反撃が必要であることを再認識しました。6月8日にミュンヘンで行われた安倍首相記者会見の一部が番組でも流れたのですが、明らかに質問を想定して事前に作成された原稿を読み上げているとおぼしい発言を聞きながら、そのように思いました。
 
平成27年6月8日 安倍晋三首相 内外記者会見
(抜粋引用開始)
 今回の法整備に当たって、憲法解釈の基本的論理は、全く変わっていません。この基本的論理は、砂川
事件に関する最高裁判決の考え方と軌を一にするものであります。
 この砂川事件最高裁判決、憲法自衛権に関わる判決でありますが、この判決にこうあります。我が国が自国の平和と安全を維持し、その存立を全うするために必要な自衛の措置を取り得ることは、国家固有の権能の行使として当然のことと言わなければならないとあります。これが、憲法の基本的な論理の一
つであります。
 こうした憲法解釈の下に、今回、自衛の措置としての武力の行使は、世界に類を見ない、非常に厳しい、新三要件の下、限定的に、国民の命と幸せな暮らしを守るために、行使できる、行使することといたし
ました。
 その三要件とは、我が国に対する武力攻撃が発生したこと、又は我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること。そして、これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないこと。つまり、外交的な手段はやり尽くす。やり尽くした上で、国民の命を守るため
には、これ以外に手段がないという状況になっているということであります。
 そして、その上において、必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと、という新三要件があるわけであります。この新三要件を満たさなければ、国民の命を守るため、そして幸せな暮らしを守るため、武力行使は、それ以外にはもちろんできないわけでありますが、そのための武力行使におきましても、この三
要件を満たさなければならないという、この三要件があるわけです。
 先ほど申し上げた憲法の基本的な論理は貫かれていると私は確信しております。これは、今正にこの三要件を聞いてくださった皆様には、理解していただいたと思いますが、これは他国の防衛を目的とするの
ではなく、最高裁判決に沿ったものであることは明確であると思います。
 政府としては、こうした議論を十分に行った上で、昨年7月に閣議決定を行いました。
(引用終わり)
 
 どうやら以上の発言用の原稿は、その文体から考えて、スピーチライターの谷口智彦氏によるものではなく、官僚の手になるもののようですが、とにかく、速やかに日本の善男善女にこのまやかしを明らかにする必要があるでしょうね。
 こうなれば、権威主義と言われようが何と言われようが、まともな憲法学者は全くこのような論理に与していないということを広めるのが一番の早道かもしれません。
 
 さて、想田和弘さんのFacebookで知ったもう一つのインタビュー記事をご紹介しておきます。是非お読みください。