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「安全保障関連法案」の慎重審議を求める意見書を否決した和歌山県議会

 今晩(2015年6月29日)配信した「メルマガ金原No.2136」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
「安全保障関連法案」の慎重審議を求める意見書を否決した和歌山県議会

 昨日に引き続き、地元(和歌山)の動向をお知らせするのですが、昨日の
「くまの平和の風コンサート2015」とは違い、あまり元気の出る話題ではありません。
 そうなのですが、このような現実をしつこい位に県民に自覚してもらわないと、いつまでたっても状況が好転することはないでしょうから、いやなニュースから目をそらさないようにしたいと思い、取り上げ
ることにしました。
 それは、先週6月26日に閉会した和歌山県議会の話題です。
 この6月定例会については、悪いニュースだが、取り上げない訳にはいかないと思っている材料が少なくとも2つあります。
 
 1つは、4月の定例記者会見において、福井地裁による昨年5月の大飯原発3号機、4号機の運転差止を命じた判決及び本年4月の高浜原発3号機、4号機の運転差止を命じた決定(仮処分命令)を批判し、物議を醸した仁坂吉伸知事が、6月18日の県議会においても、全く懲りない発言を繰り返したことですが、何の新味もなく同じ陳腐な話を繰り返してるだけなので、なかなか取り上げようという意欲がわいてきませんでした。
 関心のある方は、とりあえず和歌山県議会ホームページの中の本会議中継・録画コーナーの「録画中継はこちらから」をクリックした上で、「平成27年度」→「6月定例会」と進み、「6月18日/奥村規
子議員(日本共産党県議団)」の右横の三角マークをクリックしてください。
 また、概要だけ分かれば良いということであれば、以下の紀伊民報の記事をご参照ください。
 
 
 私が今日取り上げるのはこれではありません。
 6月定例会の最終日である6月26日の県議会を伝えるニュースをお読みください。
 
和歌山放送ニュース 2015年06月26日 19時14分
県議会6月定例会が閉会

(抜粋引用開始)
 また意見書案7件のうち「捕鯨とイルカ漁業への妨害や不当な圧力に対する抗議と地域食文化を継承するための措置を求める意見書案」や「農林水産物の輸出促進に向けた施策の充実を求める意見書案」など
6件が可決されましたが、「安全保障関連法案の慎重審議を求める意見書案」1件は否決されました。
(引用終わり)
 
 その唯一否決された意見書(案)は、和歌山県議会ホームページで読むことができます。
 
平成27年6月26日 否決
和議第5号
「安全保障関連法案」の慎重審議を求める意見書(案)

(引用開始)
 政府は、集団的自衛権の行使を容認する昨年7月の閣議決定にもとづく「安全保障関連法案」を提出し
ている。これは、歴代政府の憲法解釈を変え、戦後日本のあり方を根底から変える重要法案である。
 にもかかわらず、武力攻撃事態法やPKO法など10本の改定案をひとまとめにし、恒久的に自衛隊を海外派遣できるようにする新規立法「国際平和支援法」との2本立てにし簡略化しているが、本来それぞ
れ丁寧に審議すべきものである。
 6月4日の衆議院憲法審査会では、自民党推薦含む3人の憲法学者がそろって、安全保障関連法案は「憲法違反」と断言している。世論調査においては、法案の今国会成立に「反対」や「慎重審議」など否定的な意見が8割を超え、「充分に説明していると思わない」の声も8割を超えている。また、「戦争になるかもしれない」といった国民の不安の声も多く聞かれる。このような状況の下で、法案成立を強行する
ことは、民主主義国家としてきわめて問題である。
 よって、政府においては、世論の把握に努め、関連法案に関する国民の疑問や不安を真摯に受け止め、一方的に採決を行わず、国会での審議を慎重かつ丁寧に進めるよう要請する。
 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。                   

  平成27年6月26日
 
                様
 
                      和歌山県議会議長 前芝 雅嗣    
                        (提出者) 
                         浦口 高典
                         藤本眞利子
                         松坂 英樹
                         雑賀 光夫
 
(意見書提出先)
 衆議院議長
 参議院議長
 内閣総理大臣
 防衛大臣
 外務大臣
 法務大臣
(引用終わり)
 
 ちなみに、共同提案者の松坂英樹議員と雑賀光夫議員は日本共産党和歌山県議団、浦口高典議員は改新クラブ(民主党)、藤本眞利子議員は改新クラブ(無所属)です。

 さて、採決の内訳ですが、和歌山県議会では電子投票は採用されておらず、議会から議員ごとの採否の状況も公表されていないのですが、提案者である松坂英樹議員のブログでは次のように報告されています。
 
松坂ひできです!
6月県議会が閉会 6月26日

(抜粋引用開始)
 意見書では、共産党県議団から安保法制の慎重審議を求める意見書を提案し共同を呼びかけ、他会派と共同提案の形をとることができました。採決では共産党県議団3名と民主党・無所属の「改新クラブ」4名
の計7名が賛成しましたが、自公など34名が反対し否決となりました。
(引用終わり)
 
 採決の様子は、先ほどご紹介した本会議中継・録画コーナーの「6月26日」の右横の三角マークをクリックし、37分40秒頃を視聴してください。一瞬ですから、一時停止ボタンを押さないと誰が起立したか分かりませんが。
 ただ、松坂さんの報告でだいたい分かりました。
 改新クラブは寄り合い所帯の会派であり、所属議員5人の内4人が意見書案に賛成したというのですから、反対したのはおそらく長坂隆司議員でしょう。昨年9月定例会でも憲法改正促進意見書に
賛成していましたし。

 そもそも、今年4月の統一地方選挙を終えた後の和歌山県議会の会派状況は、
  自由民主党県議団  30人
  改新クラブ  5人
  日本共産党県議団  3人
  公明党県議団  3人
  維新の党県議会派  1人
となっています。
 共産党を1議席減らし、維新の党に1議席与えるというのが和歌山県民の選択であった訳で、意見書の採否が7対34で否決(定数より1人少ないのは議長が採決に加わらないからでしょう)となるのも宜なるかなと慨嘆せざる
を得ません。
 
 和歌山県議会ほど圧倒的な票差ではなくても、和歌山と同じように安保法制の慎重審議を求める意見書
が否決された県議会は他にもあるようです。
 しかし、県議会レベルでもこのような意見書が可決されたところもあるというニュースもご紹介しておきましょう。和歌山からも遠からぬ(というか南部で県境を接している)三重県議会です。
 
東京新聞 2015年6月17日 朝刊
安保法案 政府は慎重審議を 三重県議会が意見書可決

(抜粋引用開始)
 三重県議会は十六日の本会議で、安全保障関連法案について政府に慎重な審議を求める意見書案を賛成
多数で可決した。
 意見書案は第一会派の民主・連合系「新政みえ」が提出。議長を除く五十議員のうち、自民の二会派と
公明を除く二十七議員が賛成した。
 意見書案では、政府は海外での武力行使をしないとの平和憲法の原則を転換しようとしながら審議を簡略化していると指摘。結論ありきで法改正を強行する姿勢は容認できないと批判する。また、国民の多くが政府の説明を不十分と感じ、憲法学者集団的自衛権の行使を認める解釈や法案が違憲であると指摘し
ているとして、通常国会での成立にこだわらず、慎重な審議を求めている。
(略)
(引用終わり)
 
 
 自民党が第一会派ではない、岡田克也民主党代表のお膝元である、という事情は和歌山とは全然違いますが、そう言ってあきらめてしまってはどうしようもないですからね。
 とりあえず、和歌山県民に、県議会議員のそれぞれが、安保法制についてどのような態度をとったかをしっかりと伝えることが第一歩ですね。それが4年後の選挙の結果となって反映されるかどうかが問題なのですが。