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「芸人9条の会」結成に思う

 今晩(2015年9月6日)配信した「メルマガ金原No.2205」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
「芸人9条の会」結成に思う

 安保関連法案が、9月14日から始まる週に参議院強行採決される可能性が高いと取り沙汰される中、新しい「9条の会」が誕生したというニュースに接しました。その名も「芸人9条の会」。
 
共同通信 2015/09/05 17:26
笑い交えて政権批判 「芸人9条の会」旗揚げ

(引用終わり)
 笑いを通じて平和の尊さを訴えようと、コメディアンや落語家、歌手らが「芸人9条の会」を結成し、5日、東京・浅草のホールで旗揚げ公演を開いた。政権批判を織り交ぜたパフォーマンスに、観客からは
大きな拍手が送られた。
 コント集団「ザ・ニュースペーパー」結成時のメンバーで、現在はソロ活動をするコメディアンの松元ヒロさん(62)は、自らを日本国憲法に見立てた一人芝居を披露。「68歳になりましたが元気ピンピンです。今隠居しても、年金がもらえるかどうか不安です」とおどけてみせた。
(引用終わり)
 
 調べてみると、8月22日に東京新聞が会の結成を大きく取り上げていました(さすが芸能に強い都新聞の流れをくむだけのことはある)。おそらく21日に記者発表をしたのでしょうね。
 
東京新聞 2015年8月22日 朝刊
今こそ「芸人9条の会」 安保法案「黙ってられぬ」

(抜粋引用開始)
 他国を武力で守る集団的自衛権を柱とする安全保障関連法案が参院で審議される中、落語家やコメディアンら笑いのプロが、憲法九条を守ろうと「芸人9条の会」を立ち上げた。政治的発言がタブー視されがちな芸能界だが、安保法案審議に「黙っていられない」と感じる芸人も少なくなく、落語家の古今亭菊千
代さん(59)の呼びかけに約二十人が賛同した。九月五日には東京・浅草で旗揚げ公演を開く。
 女性真打ち第一号の菊千代さんは、約十年前から「9」と刺しゅうを入れた着物で高座に上がるほど、九条への思い入れが強い。映画監督らでつくる「映画人九条の会」などができたのを知り、「芸人の世界
にないのはおかしい」と発奮。自身のフェイスブックなどで「芸人9条の会」の結成を呼びかけた。
 第一次安倍政権改憲への動きが強まったのに危機感を抱き、二〇〇六年、「九条落語」を発表。古典落語の中でも、安倍政治をチクリと一刺しするなど、笑いの中に平和のアピールも潜り込ませている。「
黙っていたら何も言えなくなる」と危ぶむ。
 いち早く同調したのが、政治風刺コントなどで知られる松元ヒロさん(62)。歴代首相の物まねパフォーマンスが人気だが、最近は擬人化した日本国憲法になりきる「憲法くん」が話題だ。憲法の来歴や九
条の置かれている状況をせりふとギャグを交えて表現する。
 上演のたび、こうしたパフォーマンスが不要な世が来ることを念じてきたが、「雲行きが怪しくなってきた」。最近は憲法を考えるイベントなどでの上演依頼が舞い込み、「国会審議が進んでも諦めず、最後までみんなの代弁者として芸で訴えたい」と語る。
(略)
◆芸人9条の会メンバー
オオタスセリ(お笑いタレント)、岡大介(たいすけ)(三味線・演歌師)、おしどりマコ&ケン(お笑いコンビ)、恩田えり(寄席囃子(はやし))、桂文福(落語家)、古今亭菊千代(落語家)、趙博(ミュージシャン)、露の新治(落語家)、林家彦いち(落語家)、松元ヒロ(コメディアン)、中山千夏(タレント)、河内亭九里丸(漫談)、亀田雪人(サーカス芸)、神田香織(講談師)、ジョニーH(歌手
)、マジカル・パワー・マコ(音楽家)、幸野&鬼嫁(三線フォークデュオ) (敬称略、21日現在)
(引用終わり)
 
 ネット記事にはなっていないようですが、しんぶん赤旗も、旗揚げ公演当日と翌日に紹介記事を書いてくれたようです。
 

 また、レーバーネットに、旗揚げ公演の写真が掲載されていました。この記事で、会場の浅草「ときわ
ホール」(325席)が満席であったことが分かります。
 
 
 ちなみに、「芸人9条の会」結成を公表した8月21日時点でのメンバーは17組19人であったものが(東京新聞)、旗揚げ公演当日の9月5日時点では、「会のメンバーが60人に達した」(しんぶん赤旗)そうです。
 
 ところで、私自身、振り返ってみれば、複数のいわゆる「9条の会」での活動期間が10年以上になっていることに気がつきますが、おそらく多くの人が、10年前後の期間、9条を守る運動に多大の時間と精力を費やしてきたのではないかと思います。
 それは、2004年6月の「九条の会」アピールに直接、間接に応えて、2~3年の間に全国に多数の「9条の会」が結成されたこと、そして、そのメンバーに新陳代謝が乏しかったこと(少なくとも私が関与している団体はそうです)が主な原因でしょう。
 次々と新しい人が入ってくるという状況があれば、経験年数の長短が会員の間にあるのが自然なのですが、各地の「9条の会」、特に「地域9条の会」は、どこも中心メンバーの固定化に悩んできたのが実情でしょう(そういう意味からは、弁護士9条の会のような職能別の「9条の会」は、本来新人を次々と迎え入れているべきなのですが)。
 
 さて、そのような経緯を踏まえ、憲法が最大の危機を迎える中での「芸人9条の会」の結成です。最初、このニュースに接した時の私の感想は、申し訳ないけれど、「なぜ今『9条の会』なの?」というものでした。
 何しろ、今、目の前に差し迫った危機は、「9条明文改憲の危機」ではありません。9条だけではなく、憲法そのものの規範性を無効化する「憲法自体の危機」なのですから。そして、その危機に立ち向かうためには、いわゆる「9条改憲派」とも手を握り、立憲主義の破壊を食い止めることが焦眉の急であるというのが時代の趨勢だと思っていましたから。
 
 しかし、よくよく考えてみれば、過去10年以上に及ぶ「9条の会」の運動が全く無力、無意味であったはずはなく、現在の反立憲主義のための闘いの重要な基盤となっていることは疑いありません。もちろん、場合によれば、「9条を守る」ということの意味を再定義する必要が生じるかもしれませんが。
 そもそも、2004年6月10日に発表された「九条の会」アピールの末尾は、以下のようにしめくくられていました。
 
(抜粋引用開始)
 私たちは、平和を求める世界の市民と手をつなぐために、あらためて憲法九条を激動する世界に輝かせたいと考えます。そのためには、この国の主権者である国民一人ひとりが、九条を持つ日本国憲法を、自分のものとして選び直し、日々行使していくことが必要です。それは、国の未来の在り方に対する、主権者の責任です。日本と世界の平和な未来のために、日本国憲法を守るという一点で手をつなぎ、「改憲のくわだてを阻むため、一人ひとりができる、あらゆる努力を、いますぐ始めることを訴えます。
(引用終わり)
 
 このアピールは、決して憲法9条の明文改憲を阻めればそれでよし、などとは言っていません。「九条を持つ日本国憲法を、自分のものとして選び直し、日々行使していくこと」をこそ訴えているのです。
 そういう意味から考えても、今この時に、新しい「9条の会」が生まれることには十分な意義があると再認識した上で、「芸人9条の会」の今後の活躍に期待したいと思います。
 
 なお、昨日の旗揚げ公演の動画は見当たりませんでしたので、1年以上前になりますが、松元ヒロさんが「憲法くん」を演じた動画を最後にご紹介したいと思います。
 2014年6月4日、なかのゼロ大ホールで開かれた「6.4九条の会東京のつどい」の動画の中に、
松元ヒロさんの出演シーンが収録されています(17分~25分)。一部省略もあるようですが、日本国憲法前文の朗読(22分~)はノーカットです。
 
6・4九条の会東京のつどい