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「放送法の誤った解釈を正し、言論・表現の自由を守ることを呼びかけるアピール」と記者会見(12/15)のご紹介

 今晩(2015年12月16日)配信した「メルマガ金原No.2306」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
放送法の誤った解釈を正し、言論・表現の自由を守ることを呼びかけるアピール」と記者会見(12/15)のご紹介

 今年の秋、にわかに放送法が注目を集める契機となったのは、(少なくとも私にとっては)本来、放送
法が適用あるいは類推されるべき場面ではないにもかかわらず、同法4条を根拠として、放送大学執行部が主任講師の了解も得ず、学内サイトに掲載する単位認定試験の問題文を勝手に5行削除した「日本美術
史('14)」事件でした。
 そして、わずか1か月の間に、何と全部で5本も放送法がらみの話題をメルマガ(ブログ)で取り上げ
ていました。
 時系列的に振り返ってみると、以下のとおりです(いずれも2015年)。
 
◎8月7日 放送大学の学内サイトに2015年度第1学期単位認定試験の問題文と回答を掲載するに際し、「日本美術史('14)」(主任講師は佐藤康宏東大教授であり問題文作成者も同教授)の第12問の問題文(導入部)から「現在の政権は、日本が再び戦争をするための体制を整えつつある。平和と自国民を守るのが目的というが、ほとんどの戦争はそういう口実で起きる。1931年の満州事変に始まる戦争もそうだった。それ以前から政府が言論や報道に対する統制を強めていた事実も想起して、昨今の風潮には警戒しなければならない。表現の自由を抑圧し情報をコントロールすることは、国民から批判する力を奪う有効な手段だった。」を、「本学としては、不適切と考え」「本学の責任において一部削除した上で公表」(10月23日付・放送大学長コメント)した。なお、その根拠を放送大学長は「本学においては、放送による授業と印刷教材及び単位認定試験の相互の補完関係及び一体性に鑑みて、単位認定試験についても公平性、公正性の確保が必要と考えてき」たことを挙げた。
※大きく報じられたのは10月20日付・毎日新聞の記事以降。
 
◎11月6日 放送倫理・番組向上機構BPO)の放送倫理検証委員会が、NHK総合テレビ「クローズアップ現代」(2014年5月14日放送)とその基になった関西ローカル「かんさい熱視線」(同年4月25日放送)についての調査結果を公表し、当該番組に「重大な放送倫理違反があった」と判断するとともに、総務大臣が、放送法を根拠に2009年以来となる番組内容を理由とした行政指導(文書での厳重注意)を行ったことに対し、放送法が保障する「自律」を侵害する行為で「極めて遺憾である」と指摘した。また、自民党情報通信戦略調査会がNHKの経営幹部を呼び出し、非公開の場で説明させたことについても、「放送の自由とこれを支える自律に対する政権党による圧力そのものである」として厳しく批判した。
 
◎11月10日 高市早苗総務相安倍晋三首相が、衆議院予算委員会(閉会中審査)において、放送法総務相が放送局に対して行政指導を行う権限があるとの解釈を明らかにした。
 
◎11月14日 産経新聞に、翌15日讀賣新聞に、「放送法遵守を求める視聴者の会」による1頁全面意見広告「私達は、違法な報道を見逃しません。放送法第四条をご存知ですか?」が掲載され、TBSニュース23のメインキャスターである岸井成格氏の番組内での発言を指弾するとともに、同会ホームページにおいて、番組スポンサーへの「問い合せ」を慫慂する呼びかけを行った。
 
 こう見てくれば、「放送法?関係ないだろう」と思える放送大学執行部による問題文無断削除事件も、開かれた言論空間を圧殺しようとする圧力に同調した動きとして、安倍首相や高市総務相による強権的で偏った(誤った)放送法解釈の表明や、政権支持勢力によるあからさまな言論封殺の意見広告と、決して無縁でないばかりか、その露払いくらいは務めていたのだなと思いますね。
 
 このような事態を放置できないと考えた研究者やジャーナリスト有志が、昨日(12月15日)、「放送法の誤った解釈を正し、言論・表現の自由を守ることを呼びかけるアピール」を発表し、外国特派員協会で記者会見を行いました。
 以下に、まずそのアピール全文と賛同人リストをご紹介します(弁護士ドットコムNEWSから引用)

 
(引用開始)
放送法の誤った解釈を正し、言論・表現の自由を守ることを呼びかけるアピール
 テレビ放送に対する政治・行政の乱暴で根拠のない圧力が目に余ります。
 自民党筆頭副幹事長らによる在京テレビ報道局長への公平中立の要請、総務大臣によるNHK『クローズア
ップ現代』への厳重注意、自民党情報通信調査会によるNHK経営幹部の事情聴取、同党勉強会で相次いだ『マスコミを懲らしめるには広告収入がなくなるのが一番。経団連に働きかけよう』といった政治家の発言、政治・行政圧力を批判したBPOの意見書を真摯に受け止めない安倍晋三首相、菅義偉官房長官谷垣禎一
自民党幹事長の発言など。
 こうした政治・行政のテレビ放送に対する圧力が、テレビ報道を萎縮させて、人々に多様なものの見方を伝えるテレビという表現の場を狭め、日本の言論・表現の自由を著しく損なっていると私たちは考えま
す。
 とくに政治家や行政責任者が、日本の放送を規定する『放送法』の趣旨や意義を正しく理解できず、誤った条文解釈に基づく行動や発言を繰り返していることは大問題です。放送法は第一条で、放送全体の不
偏不党、真実、自律を保障することを公権力に求め、政治・行政の放送への介入を戒めています。
 放送法は放送による表現の自由を確保することを目的とする法律であり、不偏不党や中立を放送局に求めてはいません。放送法第四条一項二の『政治的な公平』を番組ごとに要求したり、ある番組を放送法第四条違反と決めつけたりすることことはまったくの誤りで、首相の一方的な主張を伝える番組、ある法律
に反対するキャスターを一方的に伝える番組、どちらもテレビに存在してよいのです。
 その一方だけを放送法違反として排除するのはおろかです。およそ先進的な民主主義国では考えられないマスメディアへの介入によって、自由な民主主義社会を危うくしてはなりません。政治家や行政責任者には、表現の自由を謳う放送法を正しく解釈して、尊重し、テレビ放送への乱暴で根拠のない圧力を抑制することを強く求めます。政治家や行政責任者は放送が伝える人々の多様な声に耳を傾け、放送を通じて
、政策を堂々と議論すべきです。
 テレビやラジオには、表現の自由を謳う放送法を尊重して、自らを厳しく律し、言論・報道機関の原点に立ち戻って、民主主義を貫く報道をすることを強く求めます。放送局は圧力を恐れず、忖度や自主規制
を退け、必要な議論や批判を堂々と伝えるべきです。
 私たちは放送法の誤った解釈を正し、言論・表現の自由を守ることを呼びかけるアピールを通じて、問題の所在を内外のマスメディアに広く訴え、メディア関係者のみならず、多くの人びとに言論・表現の自
由について真剣に考え、議論をしてほしいと願っています。
●賛同人
松本功(ひつじ書房編集長)/マッド・アマノ(パロディスト)/岩崎貞明(『放送レポート』編集長)
是枝裕和(映画監督)/小田桐誠(ジャーナリスト)/篠田博之(『創』編集長)/柴山哲也(ジャーナリスト)/上滝徹也(日本大学名誉教授)/桧山珠美(フリーライター)/田中秋夫(放送人の会理事/日本大学藝術学部放送学科講師)/高橋秀樹(日本放送協会・常務理事/メディアゴン・主筆/日本マス・コミュニケーション学会)/ジャン・ユンカーマン(ドキュメンタリー映画監督/早稲田大学招聘研究員)/壱岐一郎(元沖縄大学教授/九州朝日放送)/永田浩三(ジャーナリスト/武蔵大学教授)/古川柳子(明治学院大学文学部芸術学科教授)/真々田弘(テレビ屋)/岡室美奈子(早稲田大学教授/演劇博物館館長)/隅井孝雄(ジャーナリスト)/小玉美意子(武蔵大学名誉教授/メディア研究者)/川喜田尚(大正大学表現学部教授)/諸橋泰樹(フェリス女学院大学教員)/高瀬毅(ノンフィクション作家)/中村登紀夫(日本記者クラブ/放送批評懇談会/日本民放クラブ/日本エッセイスト・クラブ)/大橋和実(日本大学藝術学部放送学科助手)/藤田真文(法政大学社会学部メディア社会学科教授)/兼高聖雄(日本大学藝術学部教授)/石丸次郎(ジャーナリスト/アジアプレス)/田島泰彦(上智大学教授)/白石草(OurPlanetTV)/小林潤一郎(編集者/文筆業)/須藤春夫(法政大学名誉教授)/谷口和巳(編集者)/茅原良平(日本大学藝術学部放送学科専任講師)/海南友子(ドキュメンタリー映画監督)/野中章弘(ジャーナリスト/早稲田大学教員)/鎌内啓子(むさしのFM市民の会運営委員)/豊田直巳(フォトジャーナリスト/映画『遺言~原発さえなければ』共同
監督)/碓井広義(上智大学文学部新聞学科教授)/八田静輔(民放労連北陸信越地方連合会元委員長)
(引用終わり)
 
 また、記者会見には、ジャーナリストの坂本衛(さかもと・まもる)氏と綿井健陽(わたい・たけはる)氏、立教大学社会学部准教授の砂川浩慶(すなかわ・ひろよし)氏が出席しました。
 動画も複数アップされていますが、以下には、FCCJ公式チャンネルの動画をご紹介します(司会は神
保哲生さんが英語で行っています)。
 
Mamoru Sakamoto, Takeharu Watai & Hiroyoshi Sunakawa: Abe Administration and Media(1時間39分)
 

 政府が、政権与党が、その支持勢力が、権力と資金力に物を言わせて言論を支配しようという企てが、国民の眼前で“公然と”(!)行われており、アピールも言うとおり、「およそ先進的な民主主義国では
考えられない」状況が進行しています。
 問題は、それが「異常な」「あり得ない」事態だという認識がなかなか広がっていかないということで
す。
 憲法違反の安保法制だけではなく、表現の自由言論の自由の侵害に対しても、全国民的な抗議の声をあげ続ける必要があります。 
 
(弁護士・金原徹雄のブログから)
2015年10月22日
放送大学「日本美術史('14)」単位認定試験にかかわる見過ごせない大学の措置について 

(忘れないために)
 「自由と平和のための京大有志の会」による「あしたのための声明書」(2015年9月19日)を、「忘れないために」しばらくメルマガ(ブログ)の末尾に掲載することにしました。
 
(引用開始)
  あしたのための声明書
 
わたしたちは、忘れない。
人びとの声に耳をふさぎ、まともに答弁もせず法案を通した首相の厚顔を。
戦争に行きたくないと叫ぶ若者を「利己的」と罵った議員の無恥を。
強行採決も連休を過ぎれば忘れると言い放った官房長官の傲慢を。
 
わたしたちは、忘れない。
マスコミを懲らしめる、と恫喝した議員の思い上がりを。
権力に媚び、おもねるだけの報道人と言論人の醜さを。
居眠りに耽る議員たちの弛緩を。
 
わたしたちは、忘れない。
声を上げた若者たちの美しさを。
街頭に立ったお年寄りたちの威厳を。
内部からの告発に踏み切った人びとの勇気を。
 
わたしたちは、忘れない。
戦争の体験者が学生のデモに加わっていた姿を。
路上で、職場で、田んぼで、プラカードを掲げた人びとの決意を。
聞き届けられない声を、それでも上げつづけてきた人びとの苦しく切ない歴史を。
 
きょうは、はじまりの日。
憲法を貶めた法律を葬り去る作業のはじまり。
賛成票を投じたツケを議員たちが苦々しく噛みしめる日々のはじまり。
人の生命を軽んじ、人の尊厳を踏みにじる独裁政治の終わりのはじまり。
自由と平和への願いをさらに深く、さらに広く共有するための、あらゆる試みのはじまり。
 
わたしたちは、忘れない、あきらめない、屈しない。
 
     自由と平和のための京大有志の会
(引用終わり) 
 

(付録)
『世界』 作詞・作曲:ヒポポ田 演奏:ヒポポフォークゲリラ