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インターネット選挙運動のすすめ~参院選公示まであと2日

 今晩(2016年6月20日)配信した「メルマガ金原No.2493」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
インターネット選挙運動のすすめ~参院選公示まであと2日

 参院選公示まであと2日、立候補予定者やその事務所関係者はもちろんですが、これまで選挙に直接関わったことなど一度もないけれど、現在の日本の政治状況に強い危機感を抱き、自分に出来ることを是非やりたいと考えている市民が今までになく増えているという実感を、多くの人が感じているのではないでしょうか。

 ところで、今年の参議院議員選挙は、18歳、19歳の国民が選挙権を行使する初の国政選挙となる訳ですが、3年前の参議院議員選挙は、インターネット選挙運動が解禁された後、初めて実施される国政選挙でした。
 あれから3年、その間には2014年12月の衆議院総選挙も行われましたが、インターネット
が政治の流れを変えたという実例を、私たちはまだ持ち得ていないと言っても間違いではないでしょう。
 
 さて、いよいよ明後日から選挙運動突入です。
 3年前からインターネットによる選挙運動が解禁されたと言っても、インターネット媒体にも公職選挙法の選挙運動に関する規制は等しく適用されるのですから、インターネットだけ事前運動ができる・・・はずがありませんので、ご注意を。
 
 とりあえず、公示まであと2日、参考となるサイトでしっかり勉強した上で、合法的に何が出来るのかをよく見極めてください。
 インターネットによる選挙運動を解説したサイトは、探せば色々ありますが、最新のものとして(何しろ今日アップされました)、NPJ(News for the People in Japan)の特設ページ「選挙へ行こう~自民党改憲草案と参議院選挙@2016」に掲載された大城聡弁護士による論考をご紹介しておきます。
 
公職選挙法とインターネット ~新しい言論空間の誕生~
寄稿:大城聡(弁護士) 2016年6月20日

(抜粋引用開始)
1 インターネット選挙運動の解禁
 公職選挙法が改正され、前回の参議院議員選挙(2013年)からインターネットによる選挙運動が解禁され
ました。解禁前は、インターネットのホームページやブログなども「文書図画の頒布」(同法142条)にあた
ると解釈されて、選挙期間中の書き込み、更新が禁止されていました。
 しかし、公職選挙法の改正で、「インターネットを利用する方法による文書図画の頒布」は自由となり
ました(同法142条の3)。改正後は、インターネットによる選挙運動は原則自由です。
 実は、この法改正によって、選挙に関するインターネット上の言論(報道・評論)も実質的に自由に行えるようになりました。今回の参議院選挙では、選挙権年齢が18歳以上に引き下げられます。インターネットから情報を得ることが多い世代が、どのような情報に接して投票先を選ぶことになるのかは、民主主義
の未来にかかわる非常に重要な問題です。
 そこで、本稿では、公職選挙法とインターネットを利用した言論(報道・評論)がどのように自由になっ
たのか、その意義は何なのかを解説します。
2 実質的に禁止されていた選挙に関するインターネット上の言論
(略)
3 インターネットを利用するときの注意点
 公職選挙法は、候補者に対して悪質な誹謗中傷をする等表現の自由を濫用して選挙の公正を害すること
がないよう、インターネット等の適正な利用に努めなければならないと定めています(同法142条の7)。
 また、公職選挙法は、何人に対しても、署名運動の禁止(同法138条の2)、人気投票の公表の禁止(同法138条の3)を規定していますので、これらの禁止行為はインターネットを利用しても行うことはできません

 また、電子メールを利用する方法による選挙運動用文書図画については、候補者・政党等に限って頒布することができますが、候補者・政党等以外の一般有権者は引き続き禁止されていますので注意が必要で
す(公職選挙法142条の4第1項)。
 この他に、投票日当日は情報発信しないなど、候補者・政党以外の第三者が選挙運動をするときに守るべきルールを守れば、選挙期間中もインターネットで選挙について情報発信ができます。インターネット
選挙解禁の法改正は、選挙運動だけではなく、選挙に関する言論の自由の場も生み出したのです。
4 インターネット上に生まれた新しい言論空間
 選挙運動で、「清き一票のお願い」や「対立候補者への批判」という情報だけがインターネット上で溢
れても、有権者にとっては十分な判断材料があるとは言えません。むしろ、インターネット選挙解禁によって生まれた新しい言論空間には、これまでの選挙の常識であった「清き一票のお願い」、「対立候補
への批判」からの脱却が期待されます。
 インターネットによってより多くの情報を知ることで、有権者はより賢く、より深く考えて、投票先を
決めることができるようになります。インターネット選挙解禁によって生まれた新しい言論空間は、民主主義の未来を左右する非常に重要なものです。
 インターネット上では、社会問題に取り組む様々な個人や団体が情報を発信しています。社会問題の解決には多くの場合、より有効な政策が必要です。社会問題と選挙を結びつけた情報があれば、自分の関心ある社会問題に関する情報を調べることで、政策から吟味して投票先を選ぶこともできるようになります。また、各候補者・政党の政策を比較、論評する情報があれば、投票先を選ぶ際の判断材料の一つとなります。選挙期間中に、新聞・テレビだけではなく、インターネットを利用してさまざまな情報に接するこ
とで、自分の一票をどのように使うか、より良く考えることができます。
 インターネット選挙解禁の真の効果があらわれるのは、これからです。選挙という民主主義の重要な機会に、良い情報を発信すること、そして、良い情報を受け取ること、その両方を私たち自身が行うことが、自分たちの社会を自ら責任を持って担っていくために必要なのです。インターネット選挙解禁は、新しい言論空間を生み出しました。それがより良い未来の選択につながるかどうか、その鍵は私たち自身が持
っているのです。
(引用終わり)
 
 なお、もっと詳細な情報が知りたい(そんな勉強をしている時間があるのか?という問題はありますが)という人のためには、総務省ホームページの選挙関連情報を集めているコーナーの中に「インターネット選挙運動の解禁に関する情報」というページがありますので、そこに集められた資料の中から、自分が知りたい情報が見つけやすいコンテンツを選んでアクセスすることをお奨めします。
 
 「インターネット選挙運動解禁(公職選挙法の一部を改正する法律)の概要」というPDFファイル21ページの説明資料がありますので、系統的に理解するためにはまずこれを読むべきなのでしょう。
 
 ただし、これではやや迂遠なので、もっと具体的なケースに即した解説が読みたいという人のためには、「改正公職選挙法(インターネット選挙運動解禁)ガイドライン/インターネット選挙運動等に関する各党協議会」(第1版:平成25年4月26日)が良いと思います。もっとも、PDFファイルで67ページもありますが、何も全部読む必要はありません。冒頭に、目次として様々な設問が掲載されていますので、自分の知りたい内容を目次で探し、該当ページの解説を読めば良いのです。
 
 例えば、「【問11】候補者・政党等以外の者は、SNSのユーザー間でやりとりするメッセージ機能を利用して選挙運動用文書図画を頒布することはできるか。また、当該選挙運動用文書図画がメッセージの受信者自身の電子メールアドレスに自動的に転送された場合、選挙運動用電子メールの送信主体の規制に違反したこととなるか。- 19 -」が知りたければ、19頁の解説を読んでみることになります。
 
(引用開始)
【答】
1 本改正では、「電子メール」を、特定電子メール法の定義を用いて、「SMTP方式又は電話番号方
式を使用した電気通信」としており(公職選挙法142条の3第1項、特定電子メール法2条1号)、これらの通信方式以外の通信方式を用いるもの、具体的には、フェイスブックやLINEなどSNSのユー
ザー間でやりとりするメッセージ機能は、「電子メール」ではなく、「ウェブサイト等」に含まれる。
 したがって、候補者・政党等以外の者も、SNSのユーザー間でやりとりするメッセージ機能を利用し
て選挙運動用文書図画を頒布することができる。
2 また、仮に、当該メッセージ機能を利用して頒布された選挙運動用文書図画が受信者自身の電子メールアドレスに自動的に転送された場合には、それはメッセージの受信者自身の設定によるものであり、メッセージの送信者があずかり知るところではないため、メッセージの送信者自身は、あくまで、ウェブサイト等を利用する方法により選挙運動用文書図画を頒布したものと評価され、送信主体の規制に違反した
こととはならない。
(引用終わり)
 
 ただ、このガイドラインが作られた時は、まだ選挙権は20歳以上の者しか行使できませんでしたので、18歳、19歳の者が、SNSを利用してどんなことが出来るのかがよく分かりません。
 それについては、総務省文部科学省が共同で作った高校生向け副教材「私たちが拓く日本の未来」を紹介するコーナーからQ&Aに入っていくという方法があります。
 この冊子の「参考編 第1章 投票と選挙運動等についてのQ&A」を参考にしてください。
 例えば、こういうQ&Aなどが参考になるのではと思います。
 
(引用開始)
Q15 私は18歳です。今回の選挙で誰に投票しようかと,インターネットで候補者のホームページを調べてみたところ,○○さんの政策に最も共感しました。○○さんは,誠実で良さそうな人なので,SNSで○○さんのメッセージを広めようと思いました。こうしたインターネットを使った活動はできるのでしょう
か。また,こうしたインターネットを使った活動を行う場合に注意する点があれば教えてください。
 選挙運動は,選挙ごとに決められた選挙運動期間(選挙の公示日又は告示日に候補者が立候補の届出をした時から投票日の前日までの間)内にしか行うことができません。したがって,選挙運動期間内において,満18歳以上の者であれば,ホームページ,ツイッターフェイスブック,LINEなどのウェブ
サイト等を利用する方法による選挙運動を行うことができます。
 例えば,次ページの図表のように,自分で選挙運動メッセージを掲示板・ブログなどに書き込んだり,他人の選挙運動の様子を動画共有サイトなどに投稿したり,他人の選挙運動メッセージをSNSなどで広
めることなどができます。
 ただし,ウェブサイト等を利用する方法による選挙運動を行う場合,電子メールアドレスやその他その人に連絡するために必要となる情報(ツイッターのユーザー名や返信用フォームのURL等)を表示することが義務付けられています。一方,電子メールを利用する選挙運動は,候補者や政党等のみに限られ,満18歳未満の者だけでなく,満18歳以上の者も行うことができないので注意が必要です。また,候補者や
政党等から来た選挙運動のための電子メールを他の選挙人に転送することも禁止されています。
(引用終わり)
 
 以上のアンサーの中で「電子メールアドレスやその他その人に連絡するために必要となる情報(ツイッターのユーザー名や返信用フォームのURL等)を表示することが義務付けられています。」という、いわゆる「表示義務」について、どの程度の表示をすれば義務を果たしたことになるのか気になると思いますので、先にご紹介した「ガイドライン」から該当部分を引用しましょう。
 
(引用開始)
【問19】 ウェブサイト等を利用する方法により選挙運動用・落選運動用文書図画を頒布する場合において、電子メールアドレス等をどこに表示すれば表示義務を果たしたことになるか。例えば、ウェブサイト、掲示板、ツイッターフェイスブックの場合、どこに書けばよいのか、リンク先の記載でよいのか。
【答】
1 ウェブサイト等を利用する方法により選挙運動用・落選運動用文書図画を頒布するに当たっては、その者の電子メールアドレスその他のインターネット等を利用する方法によりその者に連絡をする際に必要となる情報が、当該文書図画に係る電気通信の受信をする者が使用する通信端末機器の映像面に正しく表示されるようにしなければならない(公職選挙法142条の3第3項、142条の5第1項)。
2 具体的には、例えば、ウェブサイト(いわゆるホームページ)の場合、全体が1つの文書図画と評価されるため、トップページに電子メールアドレス等を分かりやすく表示するのが原則である。
 ただし、そのウェブサイト中の「トップページに戻る」等のリンクを介して、又はブラウザの「戻る」機能を利用してトップページを表示させることができないページがある場合には、表示義務を課した趣旨から、その中に電子メールアドレス等を表示する必要がある。
3 掲示板の場合、1つ1つの書込みが「文書図画の頒布」と評価されるので、1つ1つの書込みの中に、電子メールアドレス等の連絡先情報を表示する必要がある。
 もっとも、掲示板に自らのIDやハンドルネームを記載し、当該記載に張られたリンク先のページに電子メールアドレス等の連絡先情報が記載されている場合には、表示義務を果たしていると考えられる。
4 ツイッターフェイスブックの場合、投稿をすると、自動的に投稿者のユーザー名が表示され、かつ、ユーザー名によりその者に対し連絡が可能であるので、投稿の中身に電子メールアドレス等を記載していなくても、表示義務を果たしていると考えられる。
(引用終わり)
 
 調べてみれば、「こんなことも出来るのか!」という発見があるかもしれません。文明国の中で、日本ほど選挙運動が不自由な国はないと言われていますが、そういうがんじがらめの規制の中で、インターネットによる選挙運動は規制が非常に緩やかな方です(これが当たり前だと思いますが)。是非賢く活用しましょう。
 

(付録)
『この島~憲法9条のうた~』 作詞・作曲:からすのまさき 演奏:m&n
 
※“HAPPY BIRTHDAY 憲法 in Wakayama 2015”から