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wakaben6888のブログ

憲法を大事にし、音楽を愛し、原発を無くしたいと願う多くの人と繋がれるブログを目指します

レファレンス掲載論文「共謀罪をめぐる議論」(2016年9月号)を読む

 今晩(2017年2月6日)配信した「メルマガ金原No.2715」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
レファレンス掲載論文「共謀罪をめぐる議論」(2016年9月号)を読む

 私は、憲法問題をテーマとした学習会の講師を頼まれることは時々ありますが(昨日も某団体から依頼されて話してきました)、それ以外の問題をテーマとしてということになると、依頼自体めったにありま
せんから、いざ頼まれると、「にわか勉強」をしなければならなくなります。
 実は、今日、以前から付き合いのある某団体から「共謀罪についての学習会をやりたいので」ということで講師を頼まれたものの、とても人前で話すほどの知識の蓄積はないと自覚していましたので、「他に詳しい弁護士がいるのでは?」と言って断わろうとしたのですが、たってと頼まれたため、断り切れずに
引き受けてしまいました。
 現時点では、我ながら「安請け合い」と言うしかありませんが、引き受けてしまったからには、最低限
の準備はせざるを得ません。けれども、メルマガ「毎日配信」、ブログ「毎日更新」のかたわら、共謀罪
の勉強もするという両面作戦をやっている時間はありません。
 かくなる上は、メルマガ(ブログ)において、シリーズで「共謀罪」関連の情報を紹介がてら、自分の
勉強もするしか方法がありません。
 ということで、今日は、日本における「共謀罪」をめぐる議論状況を俯瞰する論文を探し出しましたの
で、それを読んでみたいと思います。
 それは、国立国会図書館が、「各分野の国政課題の分析、内外の制度の紹介、国政課題の歴史的考察等、国政の中長期的課題に関する本格的な論説を掲載した月刊の調査論文集」として発行している月刊誌「レファレンス」の昨年9月号に掲載された論文です。
 
レファレンス No.788(2016年9月)
共謀罪をめぐる議論
国立国会図書館 前 調査及び立法考査局 行政法務課 長末  亮

http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_10195997_po_078803.pdf?contentNo=1


 「短報」という角書きが付いていますが、PDFファイルで14ページありますので、全文引用する訳にもいきません。以下には、「目次」、「要旨」、「はじめに」、「Ⅶ 共謀罪に対する賛否」、「おわ
りに」のみ引用しますが、出来ればリンク先で全文をお読みいただきたいと思います。
 立法の参考資料を提供するという国立国会図書館のあり方からして当然のことですが、賛否両論のどちらかに偏することなく、これまでの議論状況を簡潔に要約した小論であり、これから色々な論文を読んだり、動画を視聴したりする上での前提知識として、頭に入れておく価値があると思います。
 
(引用開始)
目 次
はじめに
Ⅰ 概念の整理
Ⅱ 国際組織犯罪防止条約との関係
Ⅲ 各国の規定
Ⅳ 検討の経緯
Ⅴ 各案の比較
 1 適用団体
 2 共謀以外の行為
 3 対象犯罪
 4 配慮規定等
Ⅵ 国際組織犯罪防止条約に関する論点
 1 共謀罪の創設の義務付け
 2 共謀罪の対象犯罪の限定
Ⅶ 共謀罪に対する賛否
 1 肯定的な立場について
 2 批判的な立場について
おわりに
別表 共謀罪各案の比較
 
要旨
 最近、改めて注目されている共謀罪について、議論の背景や論点の整理を行う。共謀罪をめぐっては、人権の制約の懸念と、犯罪・テロ対策の必要性の調和をいかにして行うかという議論がなされている。背景には、国際組織犯罪防止条約の存在があり、内容の是非のほか、条約の解釈・適用についても議論が行われている。
 
はじめに
 最近、特に 2015年 11月のパリ同時多発テロ事件の発生以降、いわゆる共謀罪の創設に関する新聞報道等が目に付くようになってきている。現行法では、テロリスト等の組織的犯罪集団が大量殺人の実行を決定したとしても、計画にとどまる段階では検挙・処罰することができないため、共謀罪を新設し、計画段
階で処罰すべきとの主張がある。一方、処罰対象が広がりすぎること等を危惧する見解もある。
 刑事法辞典では、共謀とは「犯罪を共同で遂行しようという意思を合致させる共同謀議、または謀議の結果として成立した合意、あるいは共同犯行の意識の形成をいう」と説明している。共謀罪とは、ある特定の犯罪を行うことを合意(共謀)することによって成立する犯罪を指す。なお、共謀罪の内容について、例えば文末の別表に挙げた政府案では、おおよそ次のように規定している。懲役・禁錮長期4年以上の犯罪(例えば殺人罪はこれに含まれる)を、組織犯罪処罰法が定める団体(組織化されたテロリスト集団は
これに含まれ得る)が共謀した場合を処罰する。共謀以外の行為については文言上要求していない。
 共謀罪を創設する法案は、我が国が未締結である国際組織犯罪防止条約に加入するために必要であるとされ、平成15(2003)年以降、数度にわたって国会に提出されてきたが、成立していない。
 共謀罪の必要性が最近改めて論じられるようになったもう1つのきっかけとしては、平成25(2013)年に、オリンピック・パラリンピック東京大会が平成32(2020)年に行われることが決まり、テロ対策の必要
性が改めて注目されるようになったことがある。ただし、国際組織犯罪防止条約は、経済的利益を目的とした国際的組織犯罪を対象にしているものであり、主義主張を背景とするテロとは本来関係ないというこ
とも指摘されている。
 共謀罪の創設をめぐる議論は、国際組織犯罪防止条約が関係するため、法案の内容の是非のほか、条約の解釈・適用についても議論が行われていることが特徴である。国際組織犯罪防止条約の締結については、マネーロンダリングやテロ資金供与対策の国際協力を推進する政府間会合である金融活動作業部会(Financial Action Task Force: FATF)から指摘がなされており、国際的な観点からの対応も迫られている。本稿では共謀罪についての議論の経緯を紹介し、国際組織犯罪防止条約に関するものを含めた論点の整理を行う。
 
Ⅰ 概念の整理 (略))
Ⅱ 国際組織犯罪防止条約との関係 (略)
Ⅲ 各国の規定 (略)
Ⅳ 検討の経緯 (略)
Ⅴ 各案の比較 (略)
Ⅵ 国際組織犯罪防止条約に関する論点 (略)
 
Ⅶ 共謀罪に対する賛否
 これまで、共謀罪法案と国際組織犯罪防止条約との関係、共謀罪法案各案の比較等について説明してき
たが、これらの事項を踏まえ、最後に共謀罪そのものについての賛否両論を紹介する。
1 肯定的な立場について
 共謀罪が必要であるとする立場からは、①国際組織犯罪防止条約を締結し、国際的な義務を果たすこと
の重要性、②摘発を行う上での有効性が主張される。
 ①については、主要先進国の1つである我が国が国際組織犯罪防止条約を締結していない状態は望ましくない、捜査共助や犯罪人引渡しについて、我が国が「抜け穴」(ループホール)にならないような措置が必要である、と主張されている。ただし、前述のとおり、共謀罪(あるいは参加罪)を創設しなくても条約自体は締結できるとする見解もあり、議論が分かれているところである。また、犯罪人引渡しについては、共謀罪が創設されていない状況下でも、米国において薬物犯罪の共謀罪(コンスピラシー)で追われていた人物を引き渡す際、我が国と米国の双方で犯罪とされているかどうかという点につき、肯定的に解
して引渡しを認めたという東京高等裁判所の決定はある。
 ②については、テロが起こった後では遅すぎる、テロの実行を相談して決めたという段階で検挙しなければ、未然防止が難しい、と主張されている。ただし、「はじめに」でも触れたように、国際組織犯罪防止条約それ自体はテロを対象にしているわけではないとの指摘がある。また、地下鉄サリン事件について、たとえ共謀罪があったとしても情報がなかったから防ぐことは無理であったし、逆に情報があったなら
共謀罪がなくても防げたであろうとの意見も述べられている。
2 批判的な立場について
 共謀罪について批判的な立場からは、①多数の犯罪について犯罪の実行の着手がない場合を処罰するこ
とは、思想でなく行為を処罰する刑事法体系の基本原則と矛盾する、憲法上の内心の自由表現の自由を脅かすことが懸念される、②処罰範囲があいまいで拡大するおそれがある、共謀罪の対象となる団体に企
業やNGO、組合も含まれ、一般市民も処罰されることが懸念される、といった意見が表明されている。
 この点、①については、我が国のこれまでの刑事法では実行の着手前の処罰は例外的であり、共謀罪を創設することは、結果犯を中心とする考え方に添わないのは確かであるが、国際組織犯罪防止条約は社会への脅威という危険を重視する観点から犯罪の共謀段階からの処罰を組織犯罪対策として定めたのであり
、この意義を踏まえて世界標準に合わせていくべきだといった見解がある。
 ②の懸念に対しては、前述のとおり、国会に提出された共謀罪法案は複数存在し、対象となる団体や犯罪を限定することについて、様々な検討がなされた。
 
おわりに
 最近の報道によると、法務省は、共謀罪という罪名を変更すること、適用対象団体を組織的な犯罪集団に限定すること、共謀だけでは処罰対象とはせず、犯罪実行に必要な資金や物品の準備などがあって初め
て適用すること、といった形で法案の内容を検討しているとされている。
 共謀罪の創設をめぐっては、国会において活発に審議がなされた平成18年から最近に至るまで一貫して、人権の制約への懸念と、犯罪対策の必要性との調和をいかにして行うかという議論が行われている。新
しい犯罪の創設については、内容を吟味して建設的な議論を行うことが必要であろう。
(引用終わり)
 

(付録)
『そこにある場所』 作詞・作曲:嶋田奈津子 
演奏:なつおmeets南風
 
※2015年9月23日ライブ@ララ・ロカレ