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共謀罪をめぐる最新ニュース、動画、声明のご紹介vol.6~立憲デモクラシーの会が声明を出しました

 今晩(2017年3月17日)配信した「メルマガ金原No.2754」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
共謀罪をめぐる最新ニュース、動画、声明のご紹介vol.6~立憲デモクラシーの会が声明を出しました

 1週間ぶりの共謀罪シリーズです(第15回)。
 今週は、日本弁護士連合会が、3月14日(火)に「いわゆる共謀罪に関する法案の上程に反対する市民集会」弁護士会館)を、ついで昨16日(木)には「いわゆる共謀罪に関する法案の上程に反対する院内学習会」参議院議員会館)を連続して開催しています。
 また、昨日(16日)は、日弁連の院内学習会(12時30分~13時30分)と併行して、共謀罪
案に反対する法律家団体連絡会が主催する「共謀罪法案に反対するデモ&院内集会」(12時~/日比谷公園霞門~衆議院第二議員会館)が開かれるなど、法律家団体の活動が目立ちました。
 この内、「共謀罪法案に反対するデモ&院内集会」については、UPLANによる動画がアップされていましたのでご紹介します。
 
20170316 UPLAN 共謀罪法案に反対するデモ&院内集会(2時間07分)
 
 
 さて、今日、「最新ニュース、動画、声明」としてご紹介しようとするのは、立憲デモクラシーの会が、一昨日(3月15日)発表した「共謀罪法案に反対する声明」です。
 立憲デモクラシーの会は、「今必要なことは、個別の政策に関する賛否以前に、憲法に基づく政治を取り戻すことである。たまさか国会で多数を占める勢力が、手を付けてはならないルール、侵入してはならない領域を明確にすること、その意味での立憲政治の回復である。そして、議会を単なる多数決の場にするのではなく、そこでの実質的な議論と行政監督の機能を回復することである。」(
設立趣旨)と宣言し、2014年4月に結成された大学教員等を中心とした研究者のグループですが、呼びかけ人の内、法学専攻者では圧倒的に憲法研究者が多く、刑事法学研究者は、京都大学高山佳奈子教授くらいだったでしょうか(※呼びかけ人)。
 
 その高山教授らが中心となり、去る2月1日には、「共謀罪法案の提出に反対する刑事法研究者の声明」が出されており、既に私のメルマガ(ブログ)でもご紹介済みです。
 
 今般、立憲デモクラシーの会として声明を出すことになった経緯については、記者会見の冒頭、山口二郎共同代表が述べられたとおり、「この法案が憲法の定める基本的人権の尊重や政府権力の暴走を防ぐという立憲主義の観点から大いに問題があるということで、何等かの反対の意思表示をすべきではないかと内部で議論を」した結果として発表されたものです。
 共謀罪を考える上で、刑事法学的観点からだけではなく、憲法学的観点や政治学的観点からの考察は欠かせません。その意味から、今回の立憲デモクラシーの会からの声明は貴重なものだと思います。
 以下、新聞報道、声明、記者会見の動画(及び文字起こし)の順にご紹介します。
 
(その1 ニュースの部)
朝日新聞デジタル 2017年3月15日23時22分
共謀罪法案に反対声明 学者ら「政府の説明は不十分」

(抜粋引用開始)
 法学や政治学などの専門家で作る「立憲デモクラシーの会」が15日、犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織的犯罪処罰法改正案に反対する声明を発表した。「国際条約の批准やテロ
対策のために法案が必要だとする政府の説明は不十分で、納得いくものとは言いがたい」と批判した。
 同会共同代表の山口二郎・法政大教授(政治)や長谷部恭男早大教授(憲法)、高山佳奈子・京都大
教授(刑法)ら5人が都内で記者会見した。
 声明は、人権を制約しかねない刑事罰は必要最小限度にとどめるという原則や、「犯罪行為は既遂の場合に処罰する」といった刑事法の基本原則を揺るがしかねないと指摘。「数の力で無理やり押し通せば、
日本の議会制民主主義に対する国民の信頼をますます損なう」と主張している。
 長谷部教授は「立憲主義の観点から、刑事法の基本原理を動かすには十分な理由が必要だが、必要性も合理性も立証されていない」と話した。高山教授は「(批准のために法案が必要と政府が説明する)国際組織犯罪防止条約の目的はマフィア対策。テロ対策という別の目的を結びつけて法案を作るのは、国民を
欺く行為だ」と述べた。
(引用終わり)
 
(その2 声明の部)
 立憲デモクラシーの会が3月15日に発表した「共謀罪法案に反対する声明」の全文です。
 
(引用開始)
共謀罪法案に反対する声明
 
2017年3月15日
立憲デモクラシーの会
 
 政府は、広範囲にわたる犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」法案(組織的犯罪処罰法改正案)の今国会での成立を図っている。同法案は、対象とする数が当初案より絞られたとはいえ、277もの罪を対象とするもので、刑事罰の謙抑性の原則(人権を制約しかねない刑事罰は必要最小限に留めるという原則)や、犯罪行為が既遂の場合に処罰するという原則など、刑事法の基本原則を揺るがしかねないとして、刑事法研究者からも広く、懸念や批判の声があがっている。
 
 政府は、国際的な組織犯罪の防止に関する国連条約(以下「国際的組織犯罪防止条約」という)を批准する上で同法案が不可欠であると説明している。しかし、この条約は、Convention against Transnational Organized Crimeという英語名からも分かる通り、国境を超えるorganized crimeの活動防止を目的とするものである。
 
 organized crimeとは、マネーロンダリング、違法薬物・銃器の密輸・密売、売春目的での人身取引等の犯罪を、利得を目的として継続的に行う集団を指す(日本で言う「暴力団」、外国で言う「マフィア」)。organized crimeを「組織的犯罪」と訳すこと自体、妥当性に疑念があるが、277もの罪につき、共同で行う目的を持つ人の集まりを包括的に「組織的犯罪集団」とし、その活動を計画段階で処罰対象とする共謀罪法案と、国際的組織犯罪防止条約とでは、そもそもの趣旨・目的が異なる。各国に立法対応の余地を広く認める条約の文言(*)が、条約の本来の趣旨を超えて、異なる目的のために濫用されている疑いがある。同条約の公式「立法ガイド」も、各国の刑事法の諸原則に基づく法整備を求めるのみで、共謀罪の導入を必須とはしていない。
 
 また、政府は東京オリンピックを控えたテロ対策を、同法案が必要な理由として挙げているが、テロ対策を目的として、爆弾テロ防止条約、人質行為防止条約、航空機不法奪取防止条約等、数多くの条約がすでに締結されており、それらと国際的組織犯罪防止条約とは体系をそもそも異にしている。
 
 以上で述べた通り、国際的組織犯罪防止条約を批准するために、あるいはテロ対策のために、共謀罪法案の成立が必要であるとの政府の説明はきわめて不十分であり、納得のいくものとは言い難い。刑事罰の謙抑性、既遂処罰の原則等の刑事法の基本原則を揺るがしかねないものである以上、なおさら、立法の合理性・必要性は厳密に立証されるべきである。
 
 同法案については、法務大臣の指示で法務省が、正式の法案提出を待って国会で議論すべきだ(つまり、それまでは議論すべきでない)との文書をマスコミ各社に配付した後、撤回・謝罪にいたるなど、政府による説明の内容のみならず、審議に向けた政府の姿勢にも疑問がある。立法の合理性・必要性に深い疑念の残る法案を十分な説明もないまま、数の力で無理やり押し通せば、日本の議会制民主主義に対する国民の信頼をますます損なうこととなろう。
 
* 国際的組織犯罪防止条約は、犯罪集団(organized criminal group)を、3人以上からなる継続的集団で、4年以上の拘禁刑で処罰されるべき犯罪の実行を目的とし、金銭その他の物質的利益を直接または間接に獲得することを目的とするもの、と広く定義している。
(引用終わり)
 
(その3 動画の部)
 3月15日(水)午後2時から、衆議院第1議員会館第3会議室で開かれた記者会見の動画は、今のところ、IWJによるものだけしか見つけていません。
 全編動画を見るためには会員登録(有料)が必要です(是非登録をお願いします)。
 ハイライト動画と併せてご紹介します。
 
 
 
 ところで、この記者会見の模様については、「立憲デモクラシーの会」ホームページに、質疑応答部分も含めた文字起こしが掲載されており、非常に便利です。
 是非、全文をお読みいただければと思います。
 以下に、出席された5人の方の発言の一部(といってもやや長いですが)をご紹介します。
 
山口二郎氏(法政大学教授・政治学・共同代表)
「ご承知の通り、今の日本の国会は議会の体をなしていない。およそ為政者、権力者が野党の質問さらにはメディアの批判に対して説明責任を果たしていないという現状であります。このような国会において、このような憲法上極めて疑義の多い法案を審議し、通過させるというようなことはありえないと私は思います。今の高山先生のお話でございますけれども、まさにこの安倍政権の政治は「かこつけの政治」でありまして、オリンピックにかこつけて共謀罪を出す。働き方改革にかこつけて残業代ゼロを可能にする。あるいは南スーダンの平和にかこつけて自衛隊を出して武器使用を可能にする。いろんなかこつけがあるわけです。それはまさに国民が一見もっともらしい理屈で「そうかなあ」と思えるような状況をつくっておいて、まったく違う中身の危険極まりない政策、法律を提出し、これを実現するという手法です。国民を欺いて権力にとって都合のいいような法律をどんどんつくっていく。そういうかこつけの手法が今の政
治の特徴でして、この共謀罪法案はその典型例だと思うわけであります。
 それからもう一つ、その濫用の件については各先生から指摘があった通りなんですけれども、日本の政府が基本的人権をどのように考えているかというのは、やはり今、目の前にある具体的事例から大体想像がつくわけですよね。沖縄における山城博治氏に対する誠に不当とも思えるような長期勾留。警察・検察はもとより裁判所さえ基本的人権を守るという砦にはなっていないという感じがするわけです。そのような状況で共謀罪法案ができれば、警察・検察に対してますます人権を抑圧する大きな武器を与えることに
なってしまうということも憂慮しているところであります。
 以上の観点から、やはりこの共謀罪法案を本国会に提出する。まして通過させるということはあっては
ならないと思っているところであります。」
「治安関係、法務官僚、警察官僚には持続する志がやっぱりあるんだなあということを、今回感じています。これは「いつかやりたい」と思っていたわけですね。今、安倍政権のもとで次々と強行採決によって憲法上疑義のある法案が通るという状況ですから、そういう官僚にとってはいわば大きな機会が広がったということでしょう。今まで共謀罪を邪魔していた障害が取り払われて道が広がったということで、こう
いうタイミングで出してきているのではないかなというふうに思うわけですよね。だから、この2,3年間の国会の空洞化というか国会の劣化が、官僚をして「今がチャンス」と思わしめたんじゃないかと私は考えます。」
 
長谷部恭男氏(早稲田大学教授・憲法学)
刑事罰は、これは権力行使が最も先鋭な形で表れるところであることは皆さんご承知の通りでして、その刑罰権の行使を抑制する刑事法の基本原則、異本原理。これを揺るがせにすることは、立憲主義の観点からしても、座視をすることはできないことだろうと思います。少なくともこうした刑事法の基本原則、基本原理。これを動かすには、それを支える十分な理由が必要であるはずですが、本日の声明は、その十分な理由が立証されていないのではないか。そういう疑念を示すものであります。今の声明のなかにもあります通り、そもそもこの法案が成立しなければ締結できないと言われている国際的な組織犯罪防止条約。この条約の趣旨と今回の法案の内容の間には、見過ごしがたい乖離、ズレがあるように見受けられる。そのことからしても、この刑事法の基本原則を動かすに足る十分な理由、必要性、合理性というものが示
されているとは言い難いのではないかと私は考えております。」
「例えば刑事罰の謙抑性というのは、むしろ憲法の個々の条文の前提になっているものの考え方で、もちろんそれが揺るがせにされたときに、例えば憲法31条に反しているのではないか等々と議論することはできるんですけれども、むしろそういう憲法解釈学者がやるようなちまちました議論よりも、もっと根幹にある刑事法に関する基本原則が今、壊されようとしてるんじゃないのか、そちらのほうがむしろ私は重大な問題なのではないかなという、そういう意識を持っております。」
 
千葉 眞氏(国際基督教大学特任教授・政治学)
共謀罪法案は、稀代の悪法と言われました、戦前戦中の1925年制定の治安維持法を思い起こさせる面があります。もし制定されれば「平成の治安維持法」になる大きなリスクを持っている。そういう法案ではないかと思って、大変憂慮しております。とりわけ2013年には特定秘密保護法が制定され、さらに自民党改憲草案には97条において緊急事態条項が記されておりますし、こういうものが三点セットになると戦前戦中に猛威をふるった治安維持法の再来となる危険性があるように思います。今後どんな勢力が政権を担当するかわかりません。そういうなかでこの法律を利用し誤用しようとする政権が現れないとは限らな
い。私はそのあたりを大変憂慮しております。
 治安維持法は思想犯の取り締まり、集会結社の取り締まりという二つの標的、ターゲットを持っておりました。最初は無政府主義者共産主義者日本共産党員に限定されておりましたけれども、数次の大きな改定を通じまして数多くの団体や人びとを逮捕し、また投獄するという歴史的背景をもった法律でした。その結果、例えば、非戦・反戦キリスト者たち、ホーリネス系、プレズレン系、燈台社の人たち。数多くの人たちが逮捕されておりますし、さらに大本教への弾圧は過酷なものでありました。当時、不敬罪であるとか、疑似宗教であるとか、そういう新しい概念を使って、このような戦争政策に反対する団体や諸個人に対する非常に厳しい施策が採られたわけであります。そこでやはり顕著なのは、拡大解釈が権力担当者によって自由になされたということ、そして当時「草木もなびく」と言われた絶対的権力の行使の手段に、治安維持法が使用されたという事実です。」
 
五野井郁夫氏(高千穂大学教授・政治学)
「先ほど千葉先生からもお話があった通り、やはり治安維持法におけるさまざまな状況をわれわれは想起せざるを得ない。特に1941年、昭和16年の治安維持法改正時に「国体を変革することを目的として結社を組織したる者」、「結社を支援することを目的として結社を組織したる者」そして「結社の組織を準備することを目的として結社を組織したる者」という条文を創設しています。この条文を根拠に、準備行為を行ったと官権によって判断されれば検挙してもよいということが実際にあったわけです。警察の側、捜査機関の側が判断した場合には、外形的にどうであるかではなくて「内面がこうに違いない」と判断すれば、事実行為なしでも誰でも犯罪者として捕まえられることになります。今回、閣議決定されるということになっている共謀罪とほぼ変わらないことが、昭和16年の治安維持法改正のときにも掲げられているわけ
です。
 では、この結果どうなったのかということですけれども、こういうことがまかり通ったことで、戦中には悲惨な事件が起きました。とりわけ本件に関連して想起したいのは横浜事件です。共謀罪が通ってしまうと、現在でも争われている横浜事件の二の舞になるのではないかと思うわけです。横浜事件は、改造社の雑誌、中央公論社岩波書店朝日新聞社など、さまざまな言論・出版関係者が逮捕されて拷問を受け、4名の方が獄死し、戦時中最大の言論弾圧であり冤罪事件であります。これによって『改造』と『中央公論』が廃刊させられています。同様の要件として「準備行為」というものが、今回の共謀罪には見え隠れしております。過去の悲劇をもう二度と繰り返さないためにも、共謀罪は絶対に容認できないものと考えます。そしてこの共謀罪を定めたテロ等準備罪は、人々が自己の内面で自由に物事を考えるという民主主義の営みを根幹から揺るがすような、大変危険な法案です。従いまして、このような法案は、廃案が妥当であろうと考える次第です。」
 
高山佳奈子氏(京都大学教授・刑事法学)
「まず、先ほど長谷部教授からお話がありました通り、国連条約を締結するための法案であるという説明がなされているわけですけれども、この条約はマフィア対策の条約でありまして、テロ対策は国際法上もうまったく別体系になっているということでございます。テロというのは、政治目的や宗教的目的で行われる。そして、一人でも行うことができる攻撃でございます。しかしこの国連条約のほうは、マフィアのような利益を得ることを目的とし継続的に存続する集団をターゲットとしているものですので、この目的の点からも、またその継続する集団が要件になっているかどうかという点からも、マフィア対策とテロ対
策というのは違ったものであるわけです。テロ対策ということを持ち出して、国連条約とそれを結び付けようというのは、内容的にやはり無理がある。これは国民を欺く情報提供がなされてきたと言わざるを得ません。
(略)
 第二番目に、オリンピック開催のために共謀罪法案が必要であるという説明もなされたことがあります
が、これもまやかしであるということができます。なぜかというと、今まで提出されて廃案になっておりました共謀罪法案が最後に国会にかかっていたのは、2009年の夏でございます。この段階ですでにオリンピックの準備は始まっていたのです。もしそのオリンピック招致のために、このような共謀罪処罰が必要であるということであれば、その時点ですでに議論を始める時間的な余裕が十分にありました。それにもかかわらず、そのときにはまったく議論をせずに、最近になってオリンピックを持ち出すというのは、後付けの理由であって、これもやはり国民の目をごまかすものに他ならないと言えます。」
 それから三番目に今般の法案の新しい点は、対象犯罪の数が多く絞り込まれているということでございます。これは、新しい点なんですけど。確かに過失犯ですとか、もともと予備罪が重く処罰されているような類型について、それと別に共謀罪を考えるということは難しいですから、それらの犯罪類型が除かれているのはわかるんですけれども、ではそれ以外の犯罪類型200数十が絞り込まれているんですが、どういう観点から絞り込まれているのか。これはちょっとわからないんですね。それでどういう犯罪が含まれていてどういう犯罪が除かれているのかを見ていきますと、いくつか目につくところがあります。例えば、
特別公務員職権乱用罪とか暴行陵虐罪、それから公職選挙法違反の罪、政治資金規正法違反の罪、政党助成法違反の罪、地方自治法上の署名運動者等に対する妨害罪、最高裁判所裁判官国民審査法の各種の妨害罪などのような、公の権利を私物化する犯罪類型がかなり多く除かれております。また民間の領域で考えてみましても、会社法上の収賄罪、あるいは金融商品取引法上の収賄罪など10ぐらい民間賄賂罪が、共謀罪の対象犯罪から除かれているわけです。しかしこのような汚職や公権力の私物化というのは、マフィア対策条約である国連条約がターゲットにしているはずの内容の犯罪でございますので、これらをわざわざ除いているというのは一体どういう観点なのか、これがまったく理解できないところでございます。
 最後に、先ほど五野井先生がもうおっしゃっていたんですけれども、刑事法的な観点からの法案自体の問題点をまとめて申し上げます。政府は3点から、処罰範囲が限定されていると言っておりますけれども、これは全然限定になっていないのであります。まず、その適用対象となる集団・グループについては、継続して存在していたこととか、過去に違法行為を行ったというようなことは必要ありませんし、いわんや指定や認定はもちろん不要。何の限定もないわけでして、組織的犯罪処罰法に関する最高裁判例でも、もともと普通の目的で、何の違法な目的もなく組織されているグループであっても、客観的に犯罪行為を行っているのであれば、それはその対象となる団体として認められる。ですから、ある時点から一般的集団だったものが組織的犯罪集団として認められるようになるというのが最高裁判例、組織的詐欺罪に
関する判例として出ております。文言上も制限がなされていないということですね。
 それから準備行為。これも法案には例が挙がっているわけですけれども、「その他」というように書い
てあるので全部含まれるということです。しかも、今まで日本法で処罰してきたような予備罪、準備罪とか、あるいは各種の危険物の取り扱いなどの持っているような危険性が実質的に要件となっていませんので、客観的な行為であれば何でも当たりうるということになってしまって、これも無限定です。そして、犯罪の合意がなされたかどうかということですけれども、これも文言上限定がありませんので、従来の最高裁判所判例による共犯の処罰に係る考え方がそのまま妥当すると考えられ、目配せでも該当しますし、確定的な認識がなくても当たる。暗黙の共謀で足りるということにそのままならざるを得ないように思うわけでして、結局その3点のどの点でも限定になっておりません。とりわけその主体の適用対象のところに「テロリズム集団その他」というのが付け加えられたというのが最新の法案の内容になっているかと思いますが、「その他」が入っているので何の限定にもなっていないばかりでなく、そこにその「テロリズム集団その他」をつけただけなので、あとの部分はまったく変更されていません。すなわち、テロ対策を内容とする条文はただの1か条もこの法案のなかには含まれていないということでございます。全体として「テロ対策、オリンピックのためならば法案が必要なんじゃないか」という世論を巻き起こすために嘘の情報を流して国民を騙したことになっているという観点からも、非常に問題があると考えております。」
 
(弁護士・金原徹雄のブログから)
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