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注目!ETV特集「平和に生きる権利を求めて~恵庭・長沼事件と憲法~」(2018年4月28日放送)~恵庭事件公判の録音が公開された

 2018年4月23日配信(予定)のメルマガ金原No.3126を転載します。
 
注目!ETV特集「平和に生きる権利を求めて~恵庭・長沼事件と憲法~」(2018年4月28日放送)~恵庭事件公判の録音が公開された
 
 このところ、NHK・EテレのETV特集をご紹介する機会が多くなっているような気がします。特にここ1~2か月の間、障がい者関連の優れたドキュメンタリーの放映が続きました。例えば、
 「長すぎた入院」(2月3日)
 「居場所があれば立ち直れる~累犯障害者 社会で生きるために~」(2月24日)
 「愛する人がいればこそ~知的障害者の恋愛・結婚・子育て~」(3月31日)
などなど。
 
 今日ご紹介する「平和に生きる権利を求めて~恵庭・長沼事件と憲法~」は、まだ見ていませんが、「砂川事件 60年後の問いかけ」(2017年12月16日)の姉妹編と見ても良いかもしれません。
 番組案内を引用します。
 
NHK・Eテレ
本放送 2018年4月28日(土)午後11時00分~午前0時15分
再放送 2018年5月3日(木)午前0時00分~1時15分(2日深夜)
ETV特集「平和に生きる権利を求めて~恵庭・長沼事件と憲法~」
(番組案内から引用開始)
 自衛隊の合憲・違憲が争われた恵庭事件。裁判の録音がテレビで初めて公開された。裁判で提起された平和的生存権が、その後長沼ナイキ基地訴訟でどう問われてきたのか迫る。
 自衛隊をめぐり注目された裁判の録音が公開された。北海道の恵庭事件。演習の騒音に抗議し自衛隊の通信線を切断した酪農家が起訴された。自衛隊が合憲か違憲か争われたが札幌地裁は憲法判断をせず無罪判決を下した。ここで提起された平和的生存権は長沼ナイキ基地訴訟の地裁判決で示され、その後イラク派遣差し止め訴訟の名古屋高裁判決で確定した。今沖縄の基地問題でよりどころとなる平和的生存権をめぐるスクープ・ドキュメント。
(引用終わり)
 
 まず、恵庭(えにわ)事件についての「裁判の録音がテレビで初めて公開された」というのに驚きます。そもそも、裁判の録音って?書記官や速記官が備忘のために録っていたものが「公開」されるはずはないですよね。
 刑事訴訟規則(恵庭事件は刑事事件です)215条は、「公判廷における写真の撮影、録音又は放送は、裁判所の許可を得なければ、これをすることができない。但し、特別の定のある場合は、この限りでない。」と定めていますが、恵庭事件では、裁判所が録音を許可していたのだろうか?
 
 ETV特集の番組紹介ページには3枚の写真が掲載されており、そのキャプションは以下のように記されています。
 
「平和的生存権が初めて主張された恵庭事件」
「恵庭事件の法廷録音が初めて公開」
憲法前文に記された「平和のうちに生存する権利」」
 
 そして、25秒の予告動画を文字起こししてみると、
 
ナレーター:自衛隊をめぐって注目された裁判の録音が初めて公開されました。
自衛隊幹部の証言(録音):わが国に対して侵略してくるものに対して戦うのだというならば、自衛隊は軍隊だ。
ナレーター:演習の騒音に抗議した兄弟。2人が提起した「平和に暮らす権利」を見つめます。ETV特集、28日、夜11時。  
 
というものでした。これを見ても、この「録音」の正体が分からない。
 
 そこで、あれこれネット検索していると、以下のような資料がPDFでアップされているのに気がつきました。「はじめに」の部分を引用してみます。
 
北海道立図書館所蔵 長沼事件関係資料目録(発行日 平成16年8月10日)
(引用開始)
                               は  じ  め  に
 この目録には、長沼町ナイキ基地建設に関わる現地長沼の動き、支援団体の運動、裁判等の資料を収めた。この運動の一翼を担った北海道平和委員会(松井愈氏遺族所蔵資料を含む)に収蔵されていたものを一括譲渡されたので、同委員会にまつわる資料が多いのはそのためである。
 事件は1968年5月末、防衛庁が第三次防衛力整備計画の一環として、空知支庁管内長沼町の馬追山脈に、航空自衛隊高射隊ナイキハーキュリーズ基地を設置する準備をすすめていると公表したことに始まる。6月には、「長沼町ミサイル基地設置反対共闘会議」が結成され、全道的な反対運動の広まりをみせ、長沼町は東日本最大の基地反対の町と呼ばれるようになった。一方、推進派の運動も浸透し、警察機動隊との衝突が繰り返される中、馬追山の水源涵養保安林の指定解除が合法か否か裁判で争うことになった。
 これに対し、昭和48年9月7日、札幌地方裁判所(福島重雄裁判長)は自衛隊を軍隊と断定し、防衛庁設置法、自衛隊法についても憲法に違反すると言及する判決を下し注目されたが、札幌高等裁判所最高裁判所でこれを取り消した。(最高裁判決S.57.9.9)
 目録の記載は、原則として Ⅰ.現地、Ⅱ.公判、Ⅲ.支援団体、Ⅳ.その他資料、Ⅴ.自筆原稿・メモ、Ⅵ.その他、Ⅶ.映画・スライド、Ⅷ.録音テープ に大別し、資料番号は通番とした。なお、映画フィルム、録音テープは別置した。不明な事項については記載を省略あるいは〔 〕で補い記入した。
 チラシ・ポスターの類は見出し等を標題とし、1枚ずつ番号を付してある。       請求記号 H393.1-Na
この資料を当館が収蔵するにあたり、北明邦雄様、黒川ミヱ様、君尹彦様にお世話になった。資料の分類、作成等についてもご助言をいただいたことを記し、感謝したい。
 なお、別に恵庭事件関係資料も収蔵しているので、あわせて利用されたい。
(引用終わり)
 
 少し長くなりますが、上記目録の「録音テープ」の部分を引用します。
 
(引用開始)
Ⅷ 録音テープ
90-1『清水さんの話』1972.7 2巻
90-2『73.9.7公判闘争 テント学習会』『同テント(続)』 2巻
90-3『73.9.7 長沼判決公判』3巻
90-4『73.9.7 判決中継』 2巻
90-5『73.9.7 北海道の窓ニュースの窓』 1巻
90-6『長沼判決にあたって 対談』1973.9.9 2巻
90-7『長沼2審第1回 テント』1974.7.2  1巻
90-8『長沼控訴審第1回弁論』1974.7.3  2巻
90-9『長沼2審第1回公判 報告集会』1974.7.3 2巻
90-10『第二審第二回公判 テント学習会』1974.9.8 2巻
90-11『第五回長沼収穫祭』1974.11.23 2巻
90-12『長沼二審第3回公判 テント学習会』1974.12.16 1巻
90-13『長沼二審第3回公判 テント学習会・報告集会』1974.12.16-17  1巻
90-14『長沼二審第3回公判 報告集会』1974.12.17 1巻
90-15『長沼第4回公判 テント』1975.2.21  2巻
90-16『長沼二審公判』1975.2.21 3巻
90-17『長沼控訴審 公判報告集会』1975.2.21  3巻
90-18『長沼2審第5回公判 テント』1975.5.15 3巻
90-19『長沼第二審第五回公判』1975.5.16 2巻
90-20『第5回公判 報告集会』1975.5.16 2巻
90-21『公判・現調・清水宅』1975.5.17 2巻
90-22『長沼第二審第6公判 テント学習』1975.7.23  3巻
90-23『長沼第二審第6公判 報告集会』1975.7.24 2巻
90-24『長沼第二審第6公判 報告集会』1975.7.24 3巻
90-25『第6回公判闘争・平和田交流』1975.7.25 2巻
90-26『9.7 長沼判決2周年記念集会2』1975.9.7 1巻
90-27『長沼フォーラム』1975.10.3 2巻
90-28『第6回収穫祭』75.11.23 2巻
90-29『長沼二審第8回公判 テント』1975.12.4 2巻
90-30『長沼二審第9回公判』1976.3.12 2巻
90-31『長沼二審第9回公判 報告集会』1976.3.12 2巻
90-32『長沼第10回国民法廷』1976.6.10 2巻
90-33『長沼-国民法廷』 〔1975〕.7.25 2巻
90-34『8.5 判決(マスコミ)』1976.8.5 1巻
90-35『長沼第2審“判決”糾弾国民法廷』1976.8.5 4巻
90-36『76 収穫祭』1976.12.19 1巻
90-37『清水さんをしのぶ集い』 1976.12.10 2巻
90-38『長沼学習決起集会』1977.1.23 4巻
90-39『水害現地調査』1981.9.6 1巻
90-40『長沼水害緊急学習集会』1982.1.18 2巻
90-41『長沼最高裁判決抗議集会』1982.9.10 2巻
90-42『長沼一審判決十周年記念集会 1983.9.3-4 5巻
90-43『長沼のたたかい』(25分) 北海道平和委員会 *89-1 スライド「長沼のたたかい」ナレーション
(引用終わり)
 
 以上の北海道立図書館作成の資料目録によれば、長沼ナイキ訴訟(長沼事件)の、少なくとも控訴審(札幌高裁)の第1回、第4回、第5回、第9回の各公判の録音が同図書館に所蔵されているようなのです。そして、「別に恵庭事件関係資料も収蔵している」と書かれていますので、今回公開された録音というのは、北海道立図書館所蔵資料なのかもしれません(番組を見てみないと何とも言えませんが)。
 しかし、どうやって裁判所の録音許可をとったのだろう?当時は、ICレコーダーなど影も形もなく、かなり大がかりなオープンリール録音機を持ち込む必要があった(電源は裁判所に使わせてもらった)はずなのですが。
 
 ETV特集で公開される録音が北海道立図書館所蔵のものかどうかはともかく、同図書館が所蔵する「長沼事件関係資料」(多分「恵庭事件関係資料」も?)が、北海道平和委員会から一括譲渡を受けたものというのが、考えてみればすごいですね。
 
 番組予告を見て、読んで、大いに期待が高まりました。是非録画しよう。