2019年6月5日配信(予定)のメルマガ金原No.3420を転載します。
長峯信彦氏(愛知大学教授)「安倍改憲のトリックを斬る~憲法制定過程の真実と平和憲法を守る歴史的責任~」講演レジュメを読む(守ろう9条 紀の川 市民の会 第15回総会)」
私も運営委員を務める地域9条の会「守ろう9条 紀の川 市民の会」は、2005年1月に結成総会を開いて以来、概ね毎年春に総会を、秋に憲法フェスタを開催してきました。
そして、県内の他の地域9条の会と比較して、当会の大きな特色が、上記総会と憲法フェスタでの記念講演に多くの憲法学者の皆さんをお招きしてきたことであることは、これまでも度々ご紹介してきました。
先日(6月2日)開催した第15回総会での記念講演をお願いした長峯信彦先生(愛知大学教授)が、当会で講演されたちょうど10人目の憲法研究者となります。その10人は以下の方々です。
森英樹名古屋大学名誉教授(2014年総会)
石埼 学龍谷大学教授(2016年総会)
植松健一立命館大学教授(2017年総会)
三宅裕一郎三重短期大学教授(2018年総会) ※現・日本福祉大学教授
長峯信彦愛知大学教授(2019年総会)
なお、過去の記念講演の内容については、「九条の会・わかやま」にその要旨が掲載される例となっており、レジュメなどをご紹介した私のブログと併せ、巻末に、過去の9人の先生方の講演内容をご紹介した「九条の会・わかやま」と私のブログにリンクしておきますのでご参照ください。
今回の長峯信彦先生の講演について事前告知した私のブログ(長峯信彦愛知大学教授(憲法学)講演会のご案内(2019年6月2日@和歌山市河北コミセン/守ろう9条 紀の川 市民の会)/2019年5月16日)もご参照いただければと思います。
http://blog.livedoor.jp/wakaben6888/archives/53365666.html
さて、今回の長峯先生から事前にお送りいただいたレジュメは、ワープロ専用機で印刷した紙ベースのものであったため(来場者にはこの全12頁のレジュメを印刷して配布)、そのまま私のブログに掲載することは無理だろうと諦めていたのですが、当会運営委員で、「九条の会・わかやま」事務局も兼ねる南本勲さんが、そのレジュメをスキャニング(及び修正作業)をしてデータとして提供してくださり、長峯先生からも、それを全文私のブログに掲載するお許しをいただきましたので、みなさまにお読みいただけることとなりました。
講演時間は約1時間50分といったところであり、これだけのレジュメの内容をお話いただくにはとても十分とはいえず、天皇制についての部分は全面カットとなったのは残念でした。
いずれにせよ、長峯先生がこれだけ詳しいレジュメを書かれたのは、「この日私の話を聴かなかった方にも、後日臨場感をもってご理解いただけるようにと願って書いたものです(もし、後日、皆さんのあいだでこれをネタの一つにして熱く議論していただければ、それはもう望外の喜びです。)」(当会役員へのメールから)ということですから、私のブログへの転載がそのような議論の一助となればと願っています。
ふんだんにユーモアを交えながら、熱く、かつ分かりやすく語りかけてくださった長峯先生の講演を、(最近の当会の総会にしては)多くの参加者に聴いてもらえたのは幸いでした。ただ、年齢層が著しく高めに偏っているのは、いずこの「9条の会」も共通の悩みの種ではあるのですが。
ちなみに、長峯先生の講演終了後の第2部は総会議事ですが、その議案書(全6頁)をPDF化しましたのでご参照いただければと思います。
「守ろう9条 紀の川 市民の会」2019年度 第15回総会 議案書
http://web2.nazca.co.jp/rituko31/kinokawasiminnokaisoukaigiansyo20190602.pdf
それでは、以下に長峯信彦先生の講演「安倍改憲のトリックを斬る~憲法制定過程の真実と平和憲法を守る歴史的責任~」のレジュメ全文をご紹介します。
なお、PDF版も併せて掲載しますが、これは、南本勲さんがスキャニングした上で、極力オリジナルに近づけて整理してくださったものです。
PDF(レジュメ本体)
http://web2.nazca.co.jp/rituko31/nagaminerejumepdf20190602.pdf
PDF(レジュメ資料)
http://web2.nazca.co.jp/rituko31/nagaminesiryoupdf20190602.pdf
2019年6月2日(日)
和歌山市河北コミュニティセンター
守ろう9条 紀の川 市民の会 第15回総会 記念講演
安倍改憲のトリックを斬る
長峯 信彦
≪ニーメラー牧師の警句≫
「ナチスは最初、ユダヤ人を攻撃した。私はユダヤ人ではなかったから黙っていた。
そして彼らは共産党を攻撃した。私は共産主義者ではなかったから黙っていた。
更にナチスは、社会民主党や自由主義者を攻撃し始めた。この時は少し怖いと思ったが、自分は聖職者だから大丈夫だろうと思っていた。
最後にナチスは、キリスト教の教会を攻撃した。私は牧師だったので、この時はさすがに声を上げたが、もうその時、一緒に声を上げてくれる者は残っていなかった。」
≪「憲法」とは≫
普段は憲法のありがたみや重要性はほとんど意識できないかも。しかし(たとえば阪神・東北の大震災で空気・水・電気のありがたみがわかったように)、いざそれが本当になくなってしまう時、その重要性は初めて身に染みてわかることだろう。
◆憲法=空気や水のような、私たちにとって必要不可欠の存在
◆憲法は、国や社会の基本的な「あるべき姿」を定める法規範
憲法や法律を真剣に勉強するには、社会における「人の痛み」を理解(想像)できるような「人の心」が必要。条文だけを暗記して人の痛みを理解できない“アタマでっかち”な人間が裁判官や弁護士になったりすると、社会は暗くて冷たいものに・・
◆憲法学や法律学ほど、人の心を必要とする「血の通った学問」はない(渡辺洋三)
【第1部】改憲主張「憲法はアメリカが作った」のトリック(嘘と危険性)と憲法制定過程の真実―天皇を護る避雷針として日本の権力者はGHQ草案を選択した―
・1945年7月26日 ◆ポツダム宣言(米・英・中/後にソ連も)
「日本国民の自由に表明せる意思に従い、平和的傾向を有し且つ責任ある政府が樹立」されること(第12項)
「日本国民の間における民主主義的傾向の復活強化に対する一切の障害を除去」
「言論・宗教・思想の自由並びに基本的人権の尊重」の確立(第10項)
★鈴木貫太郎首相「ただ黙殺するだけ」⇒連合国側「ignore無視・拒否」と理解、ポツダム宣言拒絶と解して態度を硬化
★8月6日 広島へ原爆投下/8月9日 長崎へ原爆投下
当時の日本政府(鈴木貫太郎内閣)はかなり迷ったあげく、「天皇の国家統治の大権」を変更しない可能性があればポツダム宣言を受諾しようとしたが、連合国側からは「日本国の最終的な政治形態は日本国民の自由に表明せる意思により決定されるべきもの」との回答だけ⇒★結局、原爆が落ちるまで戦争を止めなかった日本政府
・1945年8月14日 日本政府がポツダム宣言を正式に受諾【「八月革命」成立】
・8月15日 敗戦/昭和天皇のラジオ放送
【Part Ⅰ】現憲法に結実した日本人の憲法草案―輝きを失わない鈴木安蔵らの「憲法研究会」草案―
・1945年11月5日 憲法研究会が初会合←既にこの頃GHQでは鈴木安蔵の論文を英訳して一定の注目!〔原秀成『日本国憲法制定の系譜Ⅲ』563(2006年)〕
・1945年12月26日 ◆憲法研究会の憲法草案公表(GHQ草案の約2ケ月前)
・1946年 1月11日 ◆憲法研究会案を分析し高く評価した「ラウエル文書」(GHQ民政局の内部文書)
★「民主主義的で、受け容れ可能。」(democratic and acceptable)
★国民主権、差別禁止、労働者の権利など「著しく自由主義的な諸規定」(Outstanding Liberal Provisions)
★不可欠な規定が若干欠如 ラウエルはこれを綿密に列挙した⇒なぜ?
⇒憲法の最高法規性、違憲立法審査権、刑事被告人の権利、地方自冶etc.
〔高柳賢三・田中英夫ら『日本国憲法制定の過程Ⅰ』P.27-39(1972年)〕
◆ラウエルの列挙こそ、GHQ草案作成にあたって憲法研究会秦を下敷きにした証左
★ラウエル中佐の肉声証言録音が現存(I did use, We did use that draft.)
◆①「日本国の統治権は日本国民より発する」
◆②「天皇は国政を親(みずか)らせず、国政の一切の最高責任者は内閣とする」
◆④「天皇の即位は議会の承認を経るものとする」
敗戦前後、日本政府が一番こだわったのは
◆国体の護持=「神権的君主(主権者)としての天皇」の救済延命
他方GHQは、連合国側(アメリカ本国、ソ連、オーストラリアetc)から天皇を裁判にかけるよう圧力を受けていた。
そんな中で、英国の立憲君主制(法的主権者はあくまでも国王)よりも安全な「儀礼的存在としての天皇」を早々と提唱した憲法研究会案はGHQの注目を浴び、起草の下敷きとされた。
★ラウエル中佐の肉声証言
〔NHK-ETV「焼け跡から生まれた憲法草案」2007.2.10放送〕
・1946年1月21日 幣原(しではら)喜重郎(きじゅうろう)首相がマッカーサーと会談⇒◆戦争放棄の方向で意気投合
大平(おおだいら)メモ「マッカーサーは立ち上がって、感動して幣原の手を握った」云々〔田中英夫『憲法制定過程覚え書』P.92(1979年)〕
・2月1日 当時日本政府が作成中の保守的な憲法草案を毎日新聞がスクープ
↓(なんと)
◆日本政府の憲法草案は、明治憲法と変わらない古色蒼然としたもの
≪明治憲法≫ ⇒ ≪1945年当時の日本政府の諸案≫
・天皇は神聖にして侵すべからず⇒★天皇は至尊にして侵すべからず
・天皇は国の元首にして統治権を総攬⇒★日本国は万世一系の天皇が統治権を総攬(そうらん)
・大日本帝国は万世一系の天皇が統治⇒★日本国は君主国とし、万世一系の天皇を以て君主となす
①天皇は国の頭部(at the head of the state) ②戦争放棄、軍備撤廃、交戦権否認
③封建制度の撤廃、貴族特権の廃止(国民の平等)
・1946年2月4日~13日 GHQ内部で憲法草案【GHQ草案】の起草
◆憲法起草をしたGHQ民政局では弁護士資格を持つ3人が中枢の運営委員(♪)となり、他に法学・政治学を修めた人も多い。中には国会議員や高位行政官の経験者もいた。かのベアテ・シィロ夕(22歳)は民政局通訳だったが、女性の人権条項を担当。
①♪ケーディス大佐(40歳) Harvard Law School卒、弁護士。合衆国の法務職員を歴任
②♪ラウエル中佐(42歳) Stanford L.S.卒、弁護士。法学博士。合衆国法務官。保守的な人、民政局では数少ない共和党員。主に司法権部分を担当
③♪ハッシー中佐(44歳) Virginia L.S.卒、弁護士。準裁判官、自治体行政官を歴任
④スウォウプ中佐(53歳) 合衆国下院議員、準州知事、合衆国内務省の局長などを歴任
・2月8日 当時の日本政府作成の憲法草案【松本案】がGHQに提出される
・2月13日 GHQは政府草案【松本案】を否定、逆に日本政府にGHQ草案を提示
・1946年3月6日 日本政府が新しい憲法原案【3月6日案】を発表(=政府原案)
・1946年4月10日 衆議院総選挙 ◆日本史上初の男女平等の普通選挙(45年12月成立の新選挙法下)。選挙後、幣原内閣退陣、吉田茂内閣発足。この選挙により誕生した議員たちこそ、まさに「日本国民の自由に表明せる意思」(ポツダム宣言)に相当。この意思に基き、日本政府原案に対する審議が国会で正式に行なわれることに。◆事実上の憲法制定議会
・6月8日 枢密院(すうみついん)本会議【天皇も出席】(枢密院は天皇による諮詢(しじゅん)/明治憲法56条)
三笠宮崇仁(昭和天皇の末弟/皇族委員)の発言「戦争放棄については、・・結構な規定と考へ賛意を表する。・・皇室典範については、皇族としてば遺憾なことと思ふ。・・新憲法については大体賛成であるが、・・反対もしないが賛成もしかねるので、本官は棄権したいと思ふ。」〔『帝国憲法改正案審議録』P.190(1986年 国書刊行会)〕
【PartⅡ】憲法制定過程における日本の国会審議―日本人の手による「日本国憲法」の完成―
・1946年6月20日 日本政府、第90回帝国議会に「明治憲法改正案」を正式に提出(日本国憲法の政府原案が正式に日本の国会に提出された)
「第90回帝国議会」というのは、形式的には明治憲法下での議会
◆日本人自身の手による審議により、「国民主権」や「社会権」の明記などの重大修正も行なわれて新憲法へ
【1】「国民主権」の明記
憲法制定過程における最大の論点は「主権」はどこにあるのか、であった。
明治憲法と同様に「天皇」なのか(内閣は天皇を輔弼ほひつするだけの補助的存在に過ぎない)、それとも「国家全体」(天皇と国民が共有するという「君民同治」説)か、あるいは「国民」のみか、で議論は熾烈を極めていた。
◆「社会権」は憲法研究会の森戸辰男(衆議員/後に文部大臣)が、自ら国会議員となり(社会党)、国会内の憲法制定小委員会(委員は14人のみ)で主張して実現
【3】無償・義務教育を「中学段階まで含む」ことに(現行憲法26条)
GHQ草案や日本政府原案には「初等教育」とだけしか書いてなかったが、これを中学校まで延ばし、「普通教育」と修正するように猛烈に連動した中学校教師たちが全国にいた。特に、名古屋市の守山青年学校(現・中学校)の校長であった黒田穀(つよし)は、最も中心的に運動した人として知られている。〔NHK「憲法誕生」2007.4.〕
・1946年 8月24日 衆議院本会議において政府提出の憲法改正案を修正の上、可決
・1946年10月6日 貴族院本会議において憲法改正案を修正の上、可決
・1946年10月7日 衆議院本会議において貴族院から回付された憲法改正案を可決
・1946年10月19日 枢密院本会議【天皇は欠席】
・1946年10月21日 枢密院本会議【天皇も出席】にて憲法改正案を全会一致で可決
・1946年11月3日 「日本国憲法」を明治憲法の改正として天皇の名で公布
・1947年5月3日 日本国憲法施行
【第1部 憲法制定過程 まとめ】
―日本国憲法は本当に私たち国民に押しつけられたのか―
◆無謀な「中国アジア侵略戦争」の遂行主体は日本の権力者たちだったという事実(1931~45年の「15年戦争」)
◆日本の権力者たちは原爆が落ちるまで戦争を止めようとしなかったという事実
◆日本政府は天皇の救済延命を図るために自らポツダム宣言受諾を選択したという事実
◆当時の日本政府の憲法案は「天皇主権」にこだわる極めて保守的なものだったという事実
◆「国民主権」「人権」を唱えていた日本人は既に明治期から存在し(自由民権連動)、戦後直後には「象徴天皇制」を唱えた日本人グループさえ存在していたという事実
◆日本国憲法は、初の男女平等選挙により誕生した日本人議員たちによって審議され、「国民主権」「社会権」明記など重大修正も経て国会で成立した、という事実
↓(しかし)
もし、それでも「憲法は押しつけられた」「自主憲法を!」と云うのであれば・・
★日本の近代化【洋服・洋食・TV・携帯などの西洋近代文明】も、最初は全て黒船来航によって西洋列強から「押しつけられた」もの。これらも全てダメなのか?
★「日曜日」などは元々キリスト教の安息日。“日本国有”にこだわる方々は当然返上して、ガムシャラに働くんでしょうね!(現在のカレンダーは1582年にローマ教皇が制定した、強度にカトリック色の濃いもの)
【第2部】改憲主張「憲法9条は現実に合わせて変えろ」のトリック(嘘と危険性)
イイ・ワルイといった「価値判断」vs 判断の根拠となる「認識」
「パチン子的状況」に陥る日本⇒◆認識と価値判断の混濁
⇒「憲法9条は現実に合わせて変えろ」という論(に対し)
★「法の姿」と“現実”とがズレた時、なぜ“現実”に合わせるのですか?
―もし「現実に合わせて」法を変えるのなら―
・路駐だらけの道路の駐禁措置は、すぐに解禁せねばならないですよネ?
・麻薬や拳銃が国内に満ち溢れたら、「現実に合わせて」解禁するのですか?
★そもそも“現実”“現実”って、一体何を指すのですか?
◆日本の軍事費は世界で約第7~8位(約5兆円)。自衛隊の武装レベルは世界最高水準。海自は(1700億円イージス艦に象徴されるように)英海軍をも凌ぐほど高性能。他方、陸自はソ連上陸対策の90式戦車(10億円)をなぜか2007年まで300両も製造。 3000億円もの巨額の無駄遣い!〔水島朝穂『徹底分析 集団的自衛権』P.285 岩波2015〕
◆ステルス性能の最新鋭戦闘機F35-Bは一機180億円。日本は今後147機配備し(中期防)、併せて日米両方のF35-Bを発艦させるべく、護衛艦イズモを空母化する。歴然とした戦力そのものを日本は蓄え過ぎていないか!〔井上哲士議員の鋭い追及 2019.2.7参予委〕
◆その“現実”とは、私たち一般市民が本当に望んでいるものなのか?戦争や軍事行動によって利益を得る勢力が望んでいるだけではないのか
◆「もし攻められたら?」という抽象的で架空の問いは無意味。なぜなら、戦争有事や軍事衝突は、地震のような偶発的自然現象ではないからだ。戦争は、貧困・大失業・経済破綻などの非軍事的要因を引き金とする人為的災厄だ。これらを除去・緩和できるのは、軍事力の安易な発動ではなく、人間の努力以外にないのである。(長峯「憲法と有事法制」『月刊 自治研』(2002年7月号))
◆もし、日本政府(安倍政権)がホントに本気で「北朝鮮がミサイル攻撃して来る」と信じているのならば、原発の再稼働は絶対に許されないはずである。しかし奇怪なことに、日本海側の原発(泊・柏崎・敦賀・大飯・高浜等)を中心に再稼働申請されている。なぜか?政府自身、北朝鮮がミサイル攻撃して来ないと確信しているからである!〔豊下楢彦&古関彰一『集団的自衛権と安全保障』岩波新書2014 P.67-71〕
↓(まさに)
①ミサイルの脅威から国民を守るため集団的自衛権解禁と説く安倍政権が、原発がミサイルで狙われた際の対策として「屋内退避」ぐらいしか考えていないなんて不真面目すぎて許せない!と厳しく批判〔山本太郎議員の鋭い追及 2015.7.29参特委〕
②仮に万万が一、北朝鮮が狂ったように日本を攻めるとすれは、それは日米が人為的に北朝鮮を「窮鼠(きゅうそ)猫を噛(か)む」状態に追い込み、日本攻撃に大儀名分を与えてしまったような場合だ。しかしそうさせないのが外交努力であり政治の責任のはず。
【第3部】憲法違反の戦争法制
【1】◆戦争法制(2015.7.15衆院特委で強行採決/7.16衆院採決強行)(15.9.17参院特委「聴取不能」状況下で“採決”偽装/9.19未明 参院採決強行)
(1)武力攻撃事態法・自衛隊法の改定【2015年戦争法制】
⇒“日本の安全”のためだから、国会承認は事前も事後もOK
◆2015年戦争法制では、朝鮮有事?を想定した「公海上での米軍艦船防護」等?を口実に自衛隊の直接的な武力行使が“集団的自衛権”の名の下に正当化される。実際に日本が攻撃された事態ではないにも拘らず、日本有事との関連を大きな口実するのが特徴
↓(もし「安倍改憲」になれば)
◆憲法に「自衛隊・自衛権」を明記すれば、単純に“自衛”の名の下にこれらの軍事行動(戦争活動)が野放図に拡大してゆくことは、火を見るよりも明らか!
★存立危機事態:高村(こうむら)自民党副総裁「もしホルムズ海峡が通行不能となり、石油が入って来なくなって日本の寒冷地で凍死者が出たら、国民の生命・自由・幸福追求の権利が根底から覆される事態じゃないですか!」(2015.5.3 NHK憲法記念日討論)
★安保法制懇報告書(2014.5.15)安倍首相「紛争国から逃れ出る際にお父さんお母さんや子どもたちが、紛争国から出る時に乗る米軍の船を守ることができない!」
・しかし民間機での脱出例はあるが「米軍に救出された例は聞いたことない」(防衛省)
★(しかも)安倍首相の掲げる事例はリアリティーがない。通常は、戦争状態に突入するずっと前の段階で現地の大使館が日本人に退避勧告を出して帰国を徹底させるので、「米軍艦船に乗って日本人が退避する」例など、あまりにも非現実的な想定。〔柳沢協二・元内閣官房副長官補(防衛省出身)NHKスペシャル2014.5.16〕
↓(しかも!)
★在韓米軍が行なう非戦闘員避難救出作戦は航空機なので、艦船という想定がそもそも間違い。しかも救出対象は在韓の米国民を筆頭に英・加・豪等の欧米系に限定される。日本国民が米軍艦船で救出されることは絶対にあり得ないシナリオだ。(豊下稔彦&古関彰一「集団的自衛権と安全保障」岩波新書 2014 P11)
◆絶対にあり得ない架空のシナリオ、人を欺くトリック(豊下稔彦)
◆国民に対して総理大臣自らが行なう「出る出る詐欺」(長峯)
安倍晋三は「一日総理大臣」を毎日やっているような人!(笑)
(2)重要影響事態法の新設【周辺事態法からの衣替え/2015年戦争法制】
1999年の周辺事態法は、当時から戦争法と呼ばれた悪法だったが、一度も発動されずに「重要影響事態法」案に衣替えする。周辺事態法すら違憲なのに、更に異常な内容に。“日本の安全のため”を口実に、日本への攻撃はないにも拘らず、
・米軍および(今回は)他国軍の戦争行為にも軍事支援を拡げる内容
・地理的制約の撤廃⇒米軍と他国軍への軍事支援が地球規模・グローバルに
◆出撃準備中の米軍戦闘機に日本の税金で給油:憲法上疑義があるから周辺事態法では見送られていたのに(当時の大森政輔法制局長官)、今回の内容は明確に違憲ではないか!〔共産党・塩川鉄也(6/26)&本村伸子(7/2)鋭い追及 2015衆特委〕
↓(これに対し)
安倍晋三「出撃前の戦闘機への給油は、それ自体は「燃料補給」行為であって武力行使ではない。また給油場所は、実際の攻撃行為が行われる場所から遠く離れているので問題はない。」←エッ本当ですか!〔共産党・塩川鉄也 15.6.26衆特委〕
↓(長峯流に翻訳すると)
★もし仮に「これから名古屋で人を殺す」と明言する殺人鬼に、安倍晋三が東京で「このお握り食べて元気出してネ。この切符で新幹線乗ってネ」と言い、食料・交通費を提供しても、ただの「エネルギー補給/燃料補給」ですか? 実際の殺人が名古屋で行なわれても「遠く離れている」から殺人共犯に問われないのですか? アホな!
↓(しかも)
◆法案が成立していない現時点で既に、日米軍事訓練は「敵地制圧」内容。明らかに専守防衛の逸脱だ。また今まで輸送不可とされた弾薬を「武器ではない」として法案では可としているなど違憲極まりない!〔社民党・福島瑞穂の鋭い追及 2015.7.30参特委〕
↓(更に)
◆自衛隊の統合幕僚監部作成の内部資料では、法案が成立した前提で部隊編成計画まで詳細に書かれており、大問題だ。〔共産党・小池晃の鋭い追及 2015.8.11参特委〕
◆自衛隊「陸自教範 兵站(へいたん)」:「兵站はできるかぎり前方で、主攻撃の支援に便利なように配置する。・・(戦場での)戦闘力を維持・増進して作戦を支援する」と明記。
兵站が武力行使と一体不可分の軍事行動であることは明らかではないか!
(3)国際平和支援法【垣久法/2015年戦争法制の中の新法】
⇒日本の安全のためでないから「例外なき国会の事前承認」(??)
一見厳しそうな条件だが、実際には「重要影響事態」などと接続すればホゴにできる
・他国のテロ等「世界の」有事の際、他国の戦争行為に自衛隊が軍事支援する内容
・既に「補給・輸送・基地警備」などという違憲性の強い項目(テロ特措法)を行なってきた“実績”を背景に、今回は◆「弾薬提供」を付加
↓
★中谷防衛相「核兵器もミサイルも≪弾薬と同様、消耗品≫であるから武器ではない。だからその輸送は今回の法案上は除外されない」と答弁〔2015.8.5参院特委〕
◆補給・輸送の兵站部隊こそ、戦時国際法上では確実に攻撃対象たり得るのであり、文字通り武力行使と一体である。〔共産党・志位和夫の鋭い追及 2015.5.27衆院特委〕
・「現に戦闘をしている現場」でなければ、必ずしも「非戦闘地域」(イラク特措)でなくても派兵可能に。歯止めなき戦争法制の実態がますます明らかに!
↓(しかも驚くべきことに)
◆昨日激戦だった場所も、今日銃声が≪現に≫聞こえてなければ、戦闘現場に近い場所でも「ハイ日本製の弾薬ど~ぞ!」「ミサイル運びましたよ~」なのか?アホな!
【2】“集団的自衛権”― 長峯流まとめ(笑)
あるところにアベさんという人が、「コベ」という犬を一匹飼っていました。そこへリカさんという大好きな女性から「ねぇ、うちの可愛いライオンの赤ちゃん、ぜひ飼って(買って)くれない?」と優しく頼まれ、アベさんは喜んで飼うことに決めました。ちなみにリカさんの苗字は「天(あめ)」です(笑)アベさんにとってリカさんの言葉は、いつも、文字通り「天の声」なのでした。
でも、近所のヤトウさんは、家族総出で警告に。「この赤ちゃんライオン、今は可愛いけど、数年経ったら手に負えなくなっちゃうよ!」アベさんは自信たっぷり反論。「大丈夫!だってライオンの赤ちゃんって、犬と同じだよ!ちゃんと限定的かつ安全に飼うから大丈夫!ヤトウの皆さんはホント心配症だよなぁ」
アベさんは赤ちゃんライオンに「シンゾー」と名付けました。そしてアベ・コベとアベ・シンゾーは一緒の檻で飼われることに。が数年後、アベさんが帰宅すると、コベはシンゾーに噛み殺されてしまってるではありませんか!アベさんは驚愕、落胆。そこへシンゾーが、かつての可愛いさとは似ても似つかぬ横暴な態度で現れました。「アベさん、今日からオレに従ってもらうよ!人間がこの檻に入って、オレ様が檻の外に出るからね!」それを物陰から見ていた天(あめ)リカさん、こっそりシンゾーにウィンク。「あぁ、これじゃあ、本当にあべこべじゃないかぁ・・」アベさんは檻の中で、悲しく嘆き続けました、とさ。おしまい(笑)
【出演】アベさん=愚かな政治指導者 ヤトウさんの家族=野党の皆さん
犬・ワンちゃん(コベ)=個別的自衛権/文民統制の効いた自衛力
ライオン(シンゾー)=集団的自衛権/コントロール不能となって暴走する軍事力
【第4部】日本国憲法の先進的な価値原理
【1】“普通の国”より「普遍的価値の国」へ
【人権】と【民主主義】
つい200年余前の西欧でも70年前の日本でも、人権も民主主義も反体制の危険思想
今、どうか? ⇒「人権」も「民主主義」も今や世界共通の価値理念
【徹底した平和主義】
・90年前(パリ不戦条約)までは、侵略戦争禁止の約束など実現不可能と思われていた
・ほんの70年前まで日本では、天皇の統帥大権を否定するあり得ない危険思想だった
今、どうか? ⇒「侵略戦争禁止」程度の平和主義は多くの憲法で採用
◆「戦争放棄・戦力不保持・交戦権否認」(9条)や「平和的生存権」(前文)まで明記したのは日本だけ
◆戦争や軍事行動は国家権力の発動なしにはあり得ない。憲法9条はまさに世界で先駆的にそれを厳しく禁止してきたのである。
◆憲法9条こそは、日本全体を戦争から遠ざけ、私たち日本の市民に対する世界の信頼と安心を醸成させた、最大の「国際貢献」をしてきた功労者だ。この第9条こそ、世界共通の価値理念にしてゆくべきではないだろうか。
◆もし憲法に「自衛隊・自衛権」を明記すれば、“自衛”の名の下に軍事行動(戦争活動)が野放図に拡大してゆくことは必至!
⇒しかも、軍事費の増大は火を見るよりも明らか!
2019年度:日本の軍事費5兆3000億円←年間の文教科学予算とはば同額
しかし、文教科学予算のうち1兆3000億円は「科学」関係予算。
「教育」予算は年間4兆円しかない!(義務教育賞はその中の1兆3000億円デス)
◆日本の軍事費は世界で第7~8位。しかしジェンダーギャップ指数(世界経済フォーラム )はなんと世界第110位前後。世界全体を150ヶ国とし、これを学校の一学年になぞらえると、「日本は軍事費では学年順位1ケタ!しかし男女平等に関しては学年順位110番前後の成績不良者」ということになる。この逆でなければならない!
【2】憲法は空気や水みたいに最も大切なもの
★2005年4月25日JR福知山線脱線事故は107名もの犠牲を出した大惨事。1分半の遅れにこだわって猛スピード出したことが原因。犠牲は、出て初めてその大きさに気づくもの
★今「自衛隊の明記」「国際環境の変化」等、多種のこだわりが改憲論を支配する。が、それらに強くこだわり続けることが、結果として、大切な憲法の「命」を失う―角を矯めて牛を殺す―ことになりはしないだろうか
◆日本国憲法は、近代立憲主義150年の歴史を満載した「完全装備の豪華客船」だ。
米国憲法になかった「社会権」「性別による差別の禁止」「女性参政権」は当然完備。しかも世界で最も先駆的な「戦争放棄・戦力不保持・平和的生存権」まで装備済み。
◆戦争も原発もTPPも、個人の尊厳と幸福追求からは隔絶した権力者や財界の保身・利益の象徴。そしてそれらは“国家の威信/電力安定/経済の国際化”といった耳触りの良い言葉でいつも本質が隠されてきた。しかし、もう騙されてばいけない。
◆戦争も原発も、「現実の結果」という≪答え≫をまざまざと人類に示した。あとは我々が本質をきちんと直視し、真に人類にとって必要な価値は何か、真に未来に向けた責任ある選択は何か、という≪正解≫を実現してゆくだけではないだろうか(終)
【付録】≪現行の象徴天皇制の問題点≫
⇒しかし、生前退位を認めるか否かは憲法問題ではなく、あくまでも立法政策の問題。憲法には、生前退位を禁ずる規範内容も具体的規定も存在しない。
◆ただし「天皇にも人権があるから生前退位認めるべき」という理由付けには問題あり!
↓(なぜなら)
◆そもそも「人権」という考え方は、どんな血筋の人であれ、人一般が全て、同じ立場で憲法上の権利を享受するという原理。それは元来、身分制社会における「君主・貴族等の特権」に対抗して主張された概念である。
↓(それゆえ)
◆君主の血筋として認められてきた人々(天皇・皇族)が、その血筋であることの表明を一切辞めて「人一般(人間一般、一般の人)」になることなしに「人権」主体になることは、原理的にあり得ない。
◆「特定の血筋でしか継承できない特別の地位(天皇、国王等)」という考え方は、明らかに身分制概念そのもの。これは人権概念に全く逆行する。
この点をまず認識しなければ、天皇制関係の議論はぐちゃぐちゃに混乱してしまう。
①「天皇・皇族にだって最低限の人権はあるはずだ」という言い方はよくされるが、これは原理的には矛盾した主張だ。もし天皇や皇族が本当に「人権主体」ならば、その血筋であることの表明を辞めて「人一般(一般の人)」になったんデス、と表明しているに等しいからだ。
②あるいはもし、天皇や皇族に“人権があるはず”ならば、現在の状況は、特定の人々にだけあまりにも重大な人権制約を憲法の下で認めることになってしまい、それ自体重大な憲法違反になってしまうからだ。
↓(それはあたかも)
・和歌山県民と三重県民にだけは、政治的な言論・表現の自由も、職業選択の自由も一切認めない、というのと同じ。
・両県民の結婚は全て、カップルごとに県議会で審議し、許可するかどうかは個別に決定する。今後結婚するカップルには、男子が誕生するまで、不妊治療も含め、諸々のことを一生懸命“頑張って”もらう、というのと同じ。
③「天皇・皇族にだって人権はあるはずだ」という言い方は、正しくは、「天皇・皇族といえども、人間としての尊厳はあるはずだ」と言うべき。
一方、人間としての尊厳の話は、裁判所を通じて実現可能な「人権(一般人の権利・自由)」の話とは異なることに注意。
④天皇・皇族への特別扱い(良くも悪くも)をどのように減らしていくべきかという議論は、「天皇・皇族にだって人権はあるんだから」という俗っぽい前提から出発してはならない。その議論はあくまでも、
◆象徴天皇制を含む統治機構の制度が、日本国憲法上の原理原則【憲法上の公序の要請】にどこまで合致しているかいないか、という観点から行われるべきである。〔樋口陽一『憲法(第3版)』P.179 (2007年)〕
天皇死亡or天皇交代と同時に元号も変えるという「一世一元の制」
◆日本の歴史上、実はたったの150年間しかない!
日本に「大王(オオキミ)/天皇」と呼ばれた最高主権者が存在した全時代約1600年間のうちの僅か10分の1にも満たない、という客観的事実
・「大化」「元禄」といった元号は存在しても、「大化天皇」「元禄天皇」はいない
・「令和」への変更は天皇の生死とは関係なく行なわれたが、一世一元の制は墨守
↓
◆このような一世一元の制が国民主権原理と調和的であるはずがない
【3】現行皇室典範で、女系天皇はおろか、女性天皇すら一切認めていない点
皇室典範1条「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する。」
論点A:女性天皇を認めないことは、憲法14条の「男女平等」に反するか?
論点B:「女性天皇を認めないこと」と「女系天皇を認めないこと」は同じか?
古来より、天皇になるには男性であれ女性であれ、「皇統に属する男系男子か男系女子」であることが絶対条件だった。⇒女系男子も女系女子も即位不可とされてきた
①古代の推古(すいこ)天皇★(在位592~628年)と敏達(びだつ)天皇はどちらも欽明(きんめい)天皇の子(異母兄妹)だが、推古は敏達の皇后になっている。二人の間には実子もいた。古代における異母兄妹問の結婚は珍しくない。
②推古天皇★の同母兄は用(よう)明(めい)天皇。用明の息子が、有名な聖徳太子(厩(うまや)戸(ど)皇子(のみこ))。聖徳太子は叔母である推古天皇に仕えていたが、推古より先に死亡。推古は74歳まで36年もの長期にわたり異例の在位(当時の天皇は10年前後で交代している)。現在なら90歳近くの高齢になるまで、大きな政変もなく政権を維持したことになる。驚異!
③蘇我入鹿(そがのいるか)を討伐した中大兄皇子(なかのおおえのみこ)で有名な天智(てんぢ)天皇は、敏達(びだつ)天皇の曾孫。大海人(おおあま)皇子(のみこ)はその同母(?)弟で、後の天武(てんむ)天皇。彼は壬申じんしんの乱で権力を掌握。
天智の娘は叔父天武の皇后となり、天武の死後、天皇になった。それが持(じ)統(とう)天皇★。
④天武と持続★の間に生まれた草壁皇子(くさかべのみこ)は、天武の次の天皇と期待されたが若くして病没(即位せず)。草壁の正妃は、天智の娘にして持続の16歳下の妹、元明(げんめい)天皇★。元明は、1歳年下の甥と結婚した姉さん女房だった。(妻は叔母、夫は甥、の関係)
天武の死後は、皇后(草壁の実母)の持統が即位。持統は天武の皇后だったから天皇になれたのではなく、父親が天皇で自分は「男系女子」だったから即位の資格があったという点に注意!持統も元明も天智の娘。後に即位する元正天皇★(文武天皇の姉、聖武天皇の伯母)も草壁・元明の娘。皆れっきとした「皇統に属する男系女子」であった。天皇になるには男性であれ女性であれ、「皇統に属する男系の男子・女子」であることが絶対条件だった。→女系男子も女系女子も即位不可
⑤他方、「皇統に属する男系男子」であれば全員に即位の資格があったかと言えば、全然そうではない。基本的に生母の血筋で即位ランキングが決まってしまい、選挙予想みたいに「当選確実」から「当落線上」「ほぼ無理」まで多岐に分かれていった。
⑥「鳴くよ(794)鶯(うぐいす)平安京」で有名な桓武(かんむ)天皇は、生母が朝鮮半島・百済(くだら)からの渡来人の血筋の高野新笠(たかののにいがさ)★という身分の低い女性だったため、即位は難航した。しかも桓武の父の白壁王(しらかべのみこ)【光仁(こうにん)天皇】という人は、天智の男系の孫ではあったが、当初は即位ランキングから完全に外れていた官人(大納言)でしかなかった。以前、平成天皇が「桓武の母は朝鮮系」とわざわざ述べたことは、興味深い。
しかし政変が重なり、当時61歳の白壁王に突然白羽の矢が立ち光仁天皇として即位。今なら、有名でない80歳近くの“窓際族”官僚が突然総理大臣になる感じ。桓武はその11年後、遅めの44歳で天皇に。桓武は天智の血を引く男系男子(曾孫)だったので、これ以降の天皇家男系の血統は天武系ではなく、全て天智系に転換した。
【陛下・殿下】元来は敬称ではなく、逆の意味。殿下は宮殿の下の意、陛下は宮殿の下の長い大きな階段の下の意。元々中国の皇帝が住む、高い階段の上に在る宮殿に由来する語。日本には陛が存在しないので陛下という言葉は使われて来なかった。中国で陛下に立つ番兵(下っ端役人)に対し、「陛下の方にまで申し上げます」と言って取り次いでもらい、その番兵の許可を得たら、今度は大きな階段を登って宮殿の下まで行き、殿下にいる役人に「殿下の方にまで申し上げます」と言って宮殿内の貴人に取り次いでもらう。もし皇帝等が許可したら宮殿内に入れる(が、皇帝との直接対話は不可)。日本では「昇殿」と言い武士は長く昇殿できず。昇殿の初例は1098年源義家(頼朝の祖父の祖父)、内昇殿は1132年の平忠盛(清盛の父)が初という。(終)
【資料】GHQの中枢で憲法草案起草にあたったラウエルは法学博士号を持つ弁護士で、合衆国法務官も経験したことのある実務家でした。
憲法研究会草案に対してラウエルが詳細に書いたコメント(重要文書)
連合国最高司令部民政局行政部
1946年1月11日(GHQ草案作成の1ヶ月前)
幕僚長に対する覚え書き←マッカーサーの側近に提出
〔案件〕私的グループ(※憲法研究会)による憲法改正草案に対する所見
4.一般原則、第1条-第5条。主権に関するこれらの諸条項には、憲法が国の最高法規であること、および他の法規は憲法に抵触してはならないことを明確に規定する一条を追加するのがよいと考える。
5.国民の権利および義務、第6条-第18条。これらの諸条項は、権利章典をなすものであって、現行憲法(明治憲法)におけるそれよりもはるかに実効的である。言論、出版、教育、芸術および宗教の自由は保障され、かつその他の社会的諸原則もその中に包含されており、そのすべては、民主主義と両立しうるものである。
14.いちじるしく自由主義的な諸規定。
a 国民主権が認められている。
b 出生、身分、性、人種および国籍による差別待遇が禁止されている。貴族制度が廃止されている。
c 労働者に認められなければならぬとされている利益には、一日8時間労働制、有給休暇、入院無料制および老齢年金が含まれている。
d 国民がその意思を直接立法に表明することができるレフェレンダム〔国民投票制度〕が規定されている。
e 皇室経費を含む財政全般に対する支配権が、国会に与えられている。繰越予算は禁止されている。会計検査が必要とされ、会計検査院の長は選挙によるものとされている。
f 財産所有の権利は、公共の福祉に役立つものでなければならぬという要件によって制限されるとされている。
g 土地は、公共の利益に最も良く合致するよう用いられなければならないとされている。
h 新憲法が、10年以内に制定されなければならないとされている。
15.要約 この憲法草案中に盛られている諸条項は、民圭主義的で、賛成できるものである。しかし、若干の不可欠の規定が入っていない。いかなる憲法も、承認を受けるには、以下に示す原理をおりこんでいなければならないと考える。
b 国民の権利〔に関する規定〕を追加し、以下のことを実現すること
(1)人身保護令状により実現されるのと同様の諸権利を認めること
(2)刑事事件における迅速かつ公開の裁判を保障すること
(3)刑事被告人が、同一犯罪について二重の危険にさらされることを禁止すること
(4)自己負罪(self-incrimination)についての保護を確立すること
(5)刑事被告人が自己に不利益な証人のすべてと対決する権利を保障すること
(6)刑事被告人が弁護人に弁護を依頼する権利を保障すること
(7)不当な捜索および押収に対し国民を保障すること
c 立法についての専属的権限が国会に帰属する旨を明確にするよう、第19条の規定をはっきりさせること
d 第34条を修正し、内閣は国会の不信任決議があれば辞職しなければならないものとすること
e 裁判所が立法を違憲と宣言する権限をもつ旨を明確に規定し、かつ、それは、国会による再審査に服し、国会は両院の3分の2の議決により〔裁判所の判断を〕破棄できるものとすること
f 第44条を削除すること
g 憲法の改正は、国民の過半数の投票による承認をえて、はじめて有効になるものとすること
h 国の機関で国会または内閣に対し責任を負わないものは、憲法改正によるのでなければ、創設されることはないものとすること
i 都道府県および市町村の主要職員の公選を規定する条項を設けること
陸軍准将
民政局局長
コートニー・ホイットニー
ラウエル陸軍中佐起草
憲法研究会草案を熟読したラウエルが「高く評価できる所」と「欠けている所」の両方を詳細に記していることは、この草案を実際に下敷きにすれば一国の憲法が完成できる、と確信したからに他なりません。
(参考動画)
長峯先生は、「守ろう9条 紀の川 市民の会」第15回総会に2週間先立つ5月19日(日)、三重県鈴鹿市で、「九条の会すずか」第15回総会で記念講演されました。
主催者がチラシに記載していた演題は「今こそ憲法、安倍九条改憲にNO!を」であったようですが、その講演動画を紹介した「九条の会すずか」のブログの記載によれば、長峯先生が用意された演題は「安倍改憲のトリックを斬る~憲法制定過程の真実と9条を守るべき歴史的責任~」という、「紀の川 市民の会」と同じものであったようです。
http://blog.livedoor.jp/suzuka_9jyou/archives/53387594.html
6月2日の講演終了後、「九条の会すずか」の講演動画のことを話題にしたところ、長峯先生から、「こういう動画がアップされると、他のところで同じジョークが使いにくくなって困る」という述懐をお伺いし、「さもありなん」と納得した次第です。
まあ、それはさておき、「守ろう9条 紀の川 市民の会」のレジュメと「九条の会すずか」の動画とを併せ学んでいただければ、とても有益だろうと確信します。
2019 5九条の会すずか長峯さん講演(2時間04分)
https://www.youtube.com/watch?v=lypB93CDlvk
(付記・9人の憲法研究者の講演録を読む)
過去「守ろう9条 紀の川 市民の会」の総会もしくは憲法フェスタで講演された憲法研究者は9人に及びます。
各講演については、同会及び「九条の会・わかやま」の事務局を兼ねる南本勲(みなもと・いさお)さんが、会紙「九条の会・わかやま」に講演要旨を通常3回に分けて掲載する例となっています。
私のブログと併せ、過去何度かご紹介していますが、10人目の憲法研究者・長峯信彦教授をお招きした講演会の内容をご紹介する機会に、過去の9人の憲法研究者の皆さんの講演要旨をまとめてご紹介します。
【9人の憲法研究者の講演録を読む~「守ろう9条 紀の川 市民の会」で語られたこと(吉田栄司氏、森英樹氏、清水雅彦氏、高作正博氏、石埼学氏、植松健一氏、本秀紀氏、三宅裕一郎氏、飯島滋明氏)】
2018年11月11日(日) 第15回 憲法フェスタ
飯島滋明氏(名古屋学院大学教授)
講演録① 会紙「九条の会・わかやま」363号
http://home.384.jp/kashi/9jowaka/kikansi7/kikansi363.htm
講演録② 会紙「九条の会・わかやま」364号
http://home.384.jp/kashi/9jowaka/kikansi7/kikansi364.htm
講演録③ 会紙「九条の会・わかやま」365号
http://home.384.jp/kashi/9jowaka/kikansi7/kikansi365.htm
金原ブログ「飯島滋明さんの講演「自民党改憲案にどう向かい合うか~私たちの具体的な対抗策は~」レジュメ紹介~第15回 守ろう9条紀の川市民の会 憲法フェスタにて」
http://blog.livedoor.jp/wakaben6888/archives/52677035.html
2018年3月24日(土) 第14回 総会
憲法9条が果たしてきた役割~「自衛隊」の明記によって何が変わるのか?~
講演録① 会紙「九条の会・わかやま」346号
http://9jowl.mikosi.com/kikansi6/kikansi346.htm
講演録② 会紙「九条の会・わかやま」347号
http://9jowl.mikosi.com/kikansi6/kikansi347.htm
講演録③ 会紙「九条の会・わかやま」348号
http://9jowl.mikosi.com/kikansi6/kikansi348.htm
金原ブログ「三宅裕一郎氏(三重短期大学教授)「憲法9条が果たしてきた役割-「自衛隊」の明記によって何が変わるのか?-」講演レジュメを読む(守ろう9条 紀の川 市民の会 第14回総会)」
http://blog.livedoor.jp/wakaben6888/archives/51740965.html
2017年11月3日(金・祝) 第14回 憲法フェスタ
本 秀紀氏(名古屋大学大学院教授)
安倍政権の9条破壊を許さない~海外で戦争する『自衛隊』は認められない~
講演録① 会紙「九条の会・わかやま」336号
http://9jowl.mikosi.com/kikansi6/kikansi336.htm
講演録② 会紙「九条の会・わかやま」337号
http://9jowl.mikosi.com/kikansi6/kikansi337.htm
講演録③ 会紙「九条の会・わかやま」338号
http://9jowl.mikosi.com/kikansi6/kikansi338.htm
金原ブログ「2日連続 名古屋大学大学院教授(本秀紀氏&愛敬浩二氏)から学ぶ憲法をめぐる動向」
http://blog.livedoor.jp/wakaben6888/archives/51030439.html
2017年4月1日(土) 第13回 総会
植松健一氏(立命館大学教授)
安倍首相はなぜ憲法(constitution)を変えたいのか
講演録① 会紙「九条の会・わかやま」321号
http://9jowl.mikosi.com/kikansi6/kikansi321.htm
講演録② 会紙「九条の会・わかやま」322号
http://9jowl.mikosi.com/kikansi6/kikansi322.htm
講演録③ 会紙「九条の会・わかやま」323号
http://9jowl.mikosi.com/kikansi6/kikansi323.htm
金原ブログ「植松健一氏(立命館大学教授)「安倍首相はなぜ憲法(constitution)を変えたいのか」講演レジュメを読む(守ろう9条 紀の川 市民の会 第13回総会)」
http://blog.livedoor.jp/wakaben6888/archives/49789095.html
2016年4月2日(土) 第12回 総会
戦争法は廃止、憲法9条が輝く日本を取り戻そう~今、私たちにできること~
講演録① 会紙「九条の会・わかやま」296号
http://9jowl.mikosi.com/kikansi5/kikansi296.htm
講演録② 会紙「九条の会・わかやま」297号
http://9jowl.mikosi.com/kikansi5/kikansi297.htm
講演録③ 会紙「九条の会・わかやま」298号
http://9jowl.mikosi.com/kikansi5/kikansi298.htm
金原ブログ①「石埼学龍谷大学法科大学院教授の講演をレジュメから振り返る~4/2「守ろう9条 紀の川 市民の会」第12回総会から」
http://blog.livedoor.jp/wakaben6888/archives/47245589.html
金原ブログ②「石埼学龍谷大学法科大学院教授の【設問】に答える~「安保法制」講師養成講座2」
http://blog.livedoor.jp/wakaben6888/archives/47269693.html
2015年11月3日(火・祝) 第12回 憲法フェスタ
高作正博氏(関西大学教授)
「戦争法制」で日本はどんな国になるのか~私たちはどう対抗すべきか~
講演録① 会紙「九条の会・わかやま」285号
http://9jowl.mikosi.com/kikansi5/kikansi285.htm
講演録② 会紙「九条の会・わかやま」286号
http://9jowl.mikosi.com/kikansi5/kikansi286.htm
講演録③ 会紙「九条の会・わかやま」287号
http://9jowl.mikosi.com/kikansi5/kikansi287.htm
講演録④ 会紙「九条の会・わかやま」288号
http://9jowl.mikosi.com/kikansi5/kikansi288.htm
金原ブログ「「第12回 憲法フェスタ」(11/3 守ろう9条 紀の川 市民の会)レポートと11月中の和歌山での取組予定のお知らせ」
http://blog.livedoor.jp/wakaben6888/archives/45947345.html
2014年11月8日(土) 第11回 憲法フェスタ
清水雅彦氏(日本体育大学教授)
ちょっと待った!集団的自衛権~日本を戦争する国にさせない~
講演録① 会紙「九条の会・わかやま」260号
http://9jowl.mikosi.com/kikansi5/kikansi260.htm
講演録② 会紙「九条の会・わかやま」261号
http://9jowl.mikosi.com/kikansi5/kikansi261.htm
講演録③ 会紙「九条の会・わかやま」262号
http://9jowl.mikosi.com/kikansi5/kikansi262.htm
金原ブログ「『脱走兵』が日本の現実とならないように~11/8守ろう9条紀の川市民の会「第11回 憲法フェスタ」」
http://blog.livedoor.jp/wakaben6888/archives/41187120.html
2014年3月30日(日) 第10回 総会
森英樹氏(名古屋大学名誉教授)
「国家安全保障基本法」は戦争体制を作りあげるもの
講演録① 会紙「九条の会・わかやま」243号
http://9jowl.mikosi.com/kikansi4/kikansi243.htm
講演録② 会紙「九条の会・わかやま」244号
http://9jowl.mikosi.com/kikansi4/kikansi244.htm
講演録③ 会紙「九条の会・わかやま」245号
http://9jowl.mikosi.com/kikansi4/kikansi245.htm
金原ブログ「森英樹氏講演会を開催しました(守ろう9条 紀の川 市民の会・第10回総会)」
http://blog.livedoor.jp/wakaben6888-3745ta/archives/37269182.html
2012年11月3日(土・祝) 第9回 憲法フェスタ
吉田栄司氏(関西大学教授)
講演録① 会紙「九条の会・わかやま」205号
http://9jowl.mikosi.com/kikansi3/kikansi205.htm
講演録② 会紙「九条の会・わかやま」206号
http://9jowl.mikosi.com/kikansi3/kikansi206.htm
講演録③ 会紙「九条の会・わかやま」207号