今晩(2016年8月27日)配信した「メルマガ金原No.2551」を転載します。
1年ぶりに映画『祝福(いのり)の海』を観た~東条雅之監督の「旅の途中」
私たちが実行委員会を作って映画『祝福(いのり)の海』上映の準備をしていた当時、みんな「トレーラー(予告編)があったらいいのにね」と言いながらも、「東条監督も、試写会用ヴァージョンから公開用の完成版にするための最後の編集作業の真っ最中で、とても予告編まで作っている余裕はないだろうから」との配慮から、東条雅之監督に「予告編が欲しい」というようなリクエストは(少なくとも私は)しませんでした。
その後、東条さんのYouTubeチャンネルに『祝福(いのり)の海』の予告編がアップされたものの、それが、昨年7月の映画完成から10ヶ月近くが経った今年の5月5日のことだったのですから、ある意味驚きですよね。
映画を既にご覧になった方も、未見の方も、是非公開からほぼ1年越しでアップされた「予告編」をご覧ください。
映画「祝福いのりの海」 予告編(3分53秒)
ところで、私は、この『祝福(いのり)の海』をこれまで3回観ています。
2016年5月1日 和歌山市にて 試写会版(2時間10分余)
2016年7月25日 和歌山県田辺市紀南文化会館小ホールにて 完成版(2時間ちょうど)
2016年7月26日 和歌山市あいあいセンター6階ホールにて 同上
そして、今日(8月27日)の午後、私は、和歌山市ぶらくり丁「almo」での「地球塾vol.1」として上映された『祝福(いのり)の海』を13ヶ月ぶりに観てきました。
監督の東条さんとも久しぶりに再会できたし、上映後の参加者によるフリートーキングで色々な意見が聞けたし、非常に充実した半日でした。
なお、今日観たヴァージョンは、昨年7月の完成版の一部をさらにカットして1時間50数分になっていましたが、私としては、この短縮によって、作品の凝集力がさらに高まったと思いました。もっとも、これは上映前に私が東条監督から、完成版との変更箇所を聞いていたから分かることで、聞いていなければ、多分変更に気がつかなかったでしょうけどね。
予告編が要領良くまとめていますが、この映画の構成は大略以下のようになっています。
映画の真実は細部に宿ると言いますから、本来なら、以上のそれぞれのセクションで印象に残ったシーンのあれこれを語るべきなのかもしれませんが、私の拙い文章で伝えられることなどわずかなものであり、それよりも、東条監督自身の映像を観ていただくに如くはないと思います。
東条監督が、映画製作の過程でYouTubeチャンネルで公開し、その一部を『祝福(いのり)の海』に使用した動画をいくつかご紹介したいと思います。
最終的に、膨大な素材を編集して2時間の映画となったのですが、「映画は編集だ」ということを実感していただくには、機会をとらえて実際に映画の上映会に足を運んでいただくいしかありません。
今後の上映会については、映画の公式サイトの中の「上映予定」をご覧ください。
【坂本フジヱさん】
91歳現役の助産師 坂本フジヱさんのお話 「平和でこその命」 2014.7.13(1時間10分)
「91歳(日本最高齢)の現役助産師の坂本フジヱさんが「平和でこその命~生きとし生ける者みな仲良く住みよい世の中をめざして~」と題して田辺で講演されました。坂本さんはこれまで4000以上のお産に関わってこられています。
この講演は、田辺のお母さんたちがつくった「9条ママnetキュッと」の結成記念イベントの中で行われました。“キュッと”という名前は、9条と、子どもをキュッと抱きしめることを掛けてつけたそうです。赤ちゃんを抱いたお母さんの姿も多く、約100人が参加しました。集団的自衛権の容認など、昨今の政治の動きを敏感に感じ取っているのは、とりわけ子どもを持つお母さんなのかもしれません。
全国各地で講演されている坂本さんも、戦争の体験を話すのは今回が初めてということでした。青春時代を戦争に明け暮れながら懸命に生き、長年、お産の現場で命に向き合ってこられた坂本さんのお話は、僕たちが生きる上で大切なメッセージになると思います。ぜひ耳を傾けてみてください。命の奇跡のお話(18分30秒~)も必聴です。
生きとし生ける者みな仲良く住みよい世の中をめざしていきましょう。」
※この講演会の映像は、映画『祝福(いのり)の海』では使用されていませんが、坂本さんのまとまった講演動画は珍しく、貴重なものなのでご紹介しました。
【2011年2月 中国電力による埋立工事強行】
中国電力 約600人動員し作業強行① 2011.2.21~(9分08秒)
「中国電力が約600人を動員して、田ノ浦の埋め立て工事に取りかかっています!21日午前2時半、陸から約400人でやってきて、田ノ浦を封鎖するための工事を力づくで強行。海では、埋め立てのための岩石を積んだ巨大台船など10数隻を田ノ浦に向かわせています!」
中国電力 約600人動員し作業強行② 2011.2.22(3分40秒)
「中国電力が約600人を動員して、田ノ浦の埋め立て工事に取りかかっています。2日目となる22日も海では岩石を積んだ台船10数台を動かし、陸では約400人で田ノ浦を封鎖しようと試みています。」
【佐藤幸子さん】
それでも世界は美しい 佐藤幸子さん 2013.2.20(24分27秒)
【田中徳雲さん】
福島からのメッセージ~田中徳雲さん・南相馬市 同慶寺 住職~(10分00秒)
※今年の3月にアップされたこの動画は、これまで撮影した映像の中から田中徳雲さんをフューチャーして再編集したものとも言えますが、映画『祝福(いのり)の海』の一部を抜き出した1つのピースという趣きもあります。
【百姓庵・井上雄然さん シーカヤッカー・原康司さん 祝島「こいわい食堂」・芳川太佳子さん】
映画「祝福(いのり)の海」上映後トーク 2015.11.29(54分22秒)
※映画で使われた映像ではありませんが、山口県徳山市で行われた上映会での山口県関係の出演者3人の方のトークが聴けます。
ところで、去る8月3日、山口県が、中国電力が申請していた上関原発建設予定地の公有水面を埋め立てるための免許の延長を許可したというニュースに接し、今すぐ2011年はじめのような事態になるわけではないとしても、祝島島民をはじめ、反対運動の最前線にいる人たちの気持ちはいかばかりかと思って暗澹たる気持ちになっていました。
そういう中で、今日、再び『祝福(いのり)の海』を観、上記YouTube動画を再視聴するにつけても、2011年2月21日深夜に始まった中国電力による埋立工事強行のシーン(よく東条さんが撮影してくれていたものだ!)には胸が締め付けられる思いがします。
このような悪夢のシーンが繰り返されることのないよう、私たちが背負うべき課題は大きいという認識を新たにしました。
最後に、上映終了後の意見交換セッションで、私から東条さんに対し、「これはいのちの物語。」というコピーを打ち出した『祝福(いのり)の海』は、壮大なサーガの第1作だと思うが、この後の計画は?』と質問したところ、第2作の具体的な予定はなく、それよりも、実際の自分たちの生活を、どれだけ自分の理想に近づけていけるか、仲間とともに取り組む実践を大事にしていきたい(要約がうまくなかったかもしれませんが)ということでした。
その後、予告編を見直してみると、最初の方に表れるクレジットは以下のようなものでした。
色とりどりのいのちが暮らすこの地球(ほし)で
いのちが喜ぶ暮らしとは?世界とは?
平和を求める旅の中で生まれたドキュメンタリー
これはいのちの物語
別に映像作家を目指していた訳でも何でもない東条さんにとって、『祝福(いのり)の海』を完成させた今も、23歳から続く、平和を求める「旅の途中」なのでしょうね。その長い旅の中で生まれた最初の大きなモニュメントが『祝福(いのり)の海』であり、次のモニュメントとしての第2作の映画が作られる可能性はもちろんあるにしても、それが、いつどのような素材を対象として作られるのか、東条さん自身にも今はまだ何とも言えないのかもしれません。
東条雅之ファンの私としては、次回作がいつ観られるかは分からぬながら、彼の「旅の途中」における良き仲間であり続けることが出来れば、まずは満足しなければならないでしょう。