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国連「平和への権利宣言」(2016年12月19日総会にて採択)を読む

 今晩(2017年2月22日)配信した「メルマガ金原No.2731」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
国連「平和への権利宣言」(2016年12月19日総会にて採択)を読む

 日本国憲法前文は4つの段落で構成されていますが、そのうちの第2段落は、「恒久の平和を念願」するとともに、「全世界の国民が」「平和のうちに生存する権利を有することを確認する」と宣言しています。
 
 日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。
 
 日本国憲法施行の翌年(1948年)、第3回国際連合総会は、「世界人権宣言」を採択し、世界人権法発展の画期をなしましたが、そこに「平和のうちに生存する権利」を認めた明確な規定はありませんでした。
 「世界人権宣言」は、その後、1966年の第21回国連総会で、2つの国際人権規約(いわゆる社会権規約自由権規約)として採択され、締約国に法的義務が課されるとになりましたが、「平和のうちに生存する権利」あるいは「平和への権利」が保障されることはなく、その実現は、2016年12月19日、「平和への権利宣言」(Declaration on the Right to Peace)が国連総会全体会合で採択されるのを待たねばなりませんでした。
 
 昨年12月の国連総会での採択に際しては、賛否が分かれ、賛成多数での採択となりました。2月19日付の東京新聞が報じたところによると、主な賛成国、反対国、棄権国は以下のとおりだったとのことです。
 
賛成(131カ国) 
 中国、ロシア、インド、ブラジル、キューバインドネシア北朝鮮、シリアなど
反対(34カ国)
 米国、英国、フランス、ドイツ、日本、カナダ、スペイン、韓国など
棄権(19カ国)
 イタリア、トルコ、ポルトガルなど
 
 東京新聞の記事の一部を引用します。
 
東京新聞 2017年2月19日 朝刊
「平和に生きる権利」日本、採決反対 戦争を「人権侵害」と反対する根拠 国連総会で宣言

(抜粋引用開始)
 
平和に生きる権利をすべての人に認める「平和への権利宣言」が国連総会で採択された。国家が関与する戦争や紛争に、個人が「人権侵害」と反対できる根拠となる宣言。日本の非政府組織(NGO)も深く関与し、日本国憲法の理念も反映された。NGOは宣言を具体化する国際条約をつくるよう各国に働きかけていく。(清水俊介)
 日本のNGO「平和への権利国際キャンペーン・日本実行委員会」によると、きっかけは二〇〇三年のイラク戦争。多くの市民が巻き込まれたことをスペインのNGOが疑問視し「平和に対する人権規定があれば戦争を止められたのでは」と動き始めた。賛同が広がり、NGOも出席できる国連人権理事会での議論を経て、昨年十二月の国連総会で宣言を採択した。
(略)
 立案段階で日本実行委は「全世界の国民が、平和のうちに生存する権利を有する」との日本国憲法前文を伝え、宣言に生かされる形に。憲法施行七十年となる今年、各国のNGOとともに、国際条約をつくって批准するよう働き掛けを強めていきたい考え。
 ただ、国連総会では、米英などイラク戦争の有志連合の多くが反対。日本も反対に回った。日本外務省人権人道課の担当者は「理念は賛成だが、各国で意見が一致しておらず議論が熟していない」と説明する。
(引用終わり)
 
 東京新聞も伝えるとおり、このたびの国連総会における「平和への権利宣言」の採択に至る道のりでは、世界各国のNGOが主導的な役割を演じ、我が国においても、「平和への権利国際キャンペーン・日本実行委員会」が中心となって活発な活動を行ってきました。今後は、さらに「宣言から条約へ」を目指していくとのことです。
 
 私としては、「平和への権利宣言」の採択に勇気付けられる一方、欧米諸国の「反対」の真の理由が知りたいという気持ちもぬぐえません。日本が「反対」した理由?別に外務省に教えてもらわなくても、「反対」している諸国を見れば推測はつこうというものです。

 「平和への権利宣言」に対してどのような評価をするにしても、この宣言の採択に至った経緯を知り、さらに何よりも「宣言」そのものを熟読するのが前提であることはいうまでもありません。
 そのように考え、「平和への権利宣言」を日本語で読めるサイトを探したのですが、やはり「平和への権利国際キャンペーン」ホームページに載っている(仮訳)しかないようです。
 そこで、同キャンペーン・日本実行委員会事務局長の笹本潤弁護士のご了解をいただき、同キャンペーン・ホームページの中の「平和への権利とは」というコーナーに掲載された経過と(仮訳)のほぼ全文を転載させていただくことにしました。
 私も、じっくりと読み、「平和への権利」について考えをめぐらしたいと思います。
 皆さまも是非ご一読ください。
 
平和への権利国際キャンペーン 平和への権利とは
(引用開始)
平和への権利のあゆみ
はじまりは、戦争で“生きること”を奪われた人々を守りたい想い
スペイン市民から成る団体(スペイン国際人権法協会)が、2005年、ひとつの権利を国際人権として認めてもらうために運動を始めました。この権利こそが平和への権利です。
2003年からイラク戦争国連の承認を得ぬまま始められました。
“もしこのときに、世界に「平和への権利」があれば、戦争を止め、“生きること”で苦しむ人々を救えるのではないか“
 
市民一人ひとりが導いた平和への権利
スペインからはじまった平和のための一滴は、世界中のNGOを巻き込み大きな波へと成長を遂げます。
世界各地で国際NGO会議を開き、専門家や市民の声を集め世界の市民による平和への声として宣言を出しました。
2006年スペインでは、「ルアルカ宣言」の採択を機に、「ビルバオ宣言」、「バルセロナ宣言」の採択へと継きました。そして、アジア、アフリカ、南北アメリカでも市民一人ひとりがNGOとして30回以上の議論を経て、2010年12月には、世界900ものNGOが集結し、多くの専門家や各NGOの平和への考えを人権として反映させた「サンティアゴ宣言」が採択されました。
 
平和を人権として謳うサンティアゴ宣言
サンティアゴ宣言は、「平和」の意味の多義性を人権という視点から実現させようとしています。
それは、戦争や軍事的行動の否定だけでなく、貧困などの構造的暴力や差別や偏見を生みだす文化的暴力の否定も含まれています。
 
 
市民から国連へ「平和への権利」のお届け物
NGOによってつくられた「サンティアゴ宣言」が2011年に正式に国連に提出されたことにより、平和への権利は、議論の場を国連に移しました。平和への権利を国連人権理事会で国際宣言として採択するため、サンティアゴ宣言は国連の諮問委員会草案として「国連宣言案を検討するための作業部会」で、2013年から2015年にかけてNGOと政府によって議論がなされました。
 
平和への権利宣言の誕生へ
2016年7月1日、平和への権利宣言がキューバ政府の提案により、国連人権理事会32会期で正式に採択され、国連総会に提出されました、これには、世界中のNGOが驚かされました。そして遂に同年12月、国連総会31会期において平和への権利は国際宣言として採択されました。
 
これからの平和への権利宣言――あなたにできること
平和への権利は、国際宣言として採択されましたが、一人ひとりの平和を権利として保障するためにはここからが正念場です。国際宣言が国際条約として各国に批准され、平和が人権として市民の手に戻ってくるためにも、あなたの協力が必要です。平和への権利がより良い人権として、平和のうちに生きることを私たち自身の手で実現していきましょう。署名にご協力を宜しくお願いします。

   
平和への権利宣言(仮訳)

国連総会は、

国連憲章の目的及び原則に導かれ、

世界人権宣言、市民的及び政治的権利に関する国際規約、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約、ウィーン宣言及び行動計画を想起し、

また、発展の権利に関する宣言、持続可能な開発目標を含む国連ミレニアム宣言、2005年世界サミット成果文書をも想起し、

さらに、平和的生存のための社会の準備に関する宣言、平和に対する人民の権利宣言及び平和の文化に関する宣言と行動計画、かつ、この宣言に関連する他の国際文書を想起し、

植民地独立付与宣言を想起し、

諸国家は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならないという原則、諸国家は、その国際紛争を平和的手段によって国際の平和及び安全並びに正義を危うくしないように解決しなければならないという原則、国連憲章に従って、いずれかの国の国内管轄権内にある事項にも干渉しない義務、国連憲章に従って、協力し合う諸国家の義務、人民の同権及び自決の原則、諸国家の主権平等の原則及び諸国家は、国連憲章に従って負っている義務を誠実に履行しなければならないという原則を、国連憲章に従った諸国間の友好関係及び協力についての国際法の原則に関する宣言が、厳粛に宣言したことを想起し、

その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、又は、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎み、かつ、その国際紛争を平和的手段によって国際の平和及び安全並びに正義を危うくしないように解決するための、国連憲章に掲げられているすべての加盟国の義務を再確認し、

平和の文化の十分な発展は、外国の支配又は占領という植民地的あるいは他の形態のもとで生きる人々を含む、国連憲章に掲げられ、かつ、国際人権規約、並びに、1960年12月14日国際連合総会決議1514(XV)に盛り込まれている「植民地及びその人民の独立を認める宣言」に具体化されている自己決定に対するすべての人民の権利の実現と一体的に結びついていること(integrally linked)を確認し、

1970年10月24日国際連合総会決議2625(XXV)に具体化されている「国際連合憲章に従った諸国間の友好関係及び協力についての国際法の原則に関する宣言」に規定されているように、国又は領域の国民的統一及び領土保全の部分的又は全体的破壊に対して、又はその政治的独立に対して行われるいかなる試みも、国際連合憲章の目的及び原則に矛盾することを確信して、

平和的手段による紛争又は争議の解決の重要性を認め、

テロリズムの行為、方法及び実行が、国際連合の目的及び原則の重大な侵害を引き起こすものであり、かつ、国際の平和及び安全に対して脅威となり、諸国の友好関係を害し、諸国の領土保全及び安全を脅かし、国際協力を妨げ、人権、基本的自由及び社会の民主的基盤の破壊を目的とするものであることを認め、国際テロリズムに関する廃絶措置宣言を想起し、テロリズムのいかなる行為も、行われたとき及び行った者のいかんを問わず、犯罪であり、かつ、正当化することのできないものであることを再確認し、

テロリズムとの闘いにおけるあらゆる方途は、国連憲章に掲げられているものと同様に、国際人権法、難民法及び国際人道法を含む、国際法のもとでの義務に従わなければならないことを強調し、

テロリズムにかかわる国際条約の当事国となっていないすべての諸国に、当事国になることを優先事項として考慮することを要請し、

万人のための人権促進と保護及び法の支配は、テロリズムとの闘いに必要不可欠であることを再確認し、効果的なテロ対策措置と人権の保護は矛盾する目標ではなく、補完及び相互補強であることを認め、

戦争の惨害から将来の世代を救い、基本的人権に関する信念をあらためて確認し、一層大きな自由の中で社会的進歩と生活水準とを促進し、かつ、寛容を実行し、また、善良な隣人として互いに平和に生活するため国連憲章前文に掲げられているとおり連合国の人民の決定を再確認し、

平和と安全、開発と人権は、国連システムの柱であり、集団的安全と福祉のための基盤であることを想起し、開発、平和及び安全、人権は関連しあうものであり、相互に補強するものであること認め、

平和とは、紛争のない状態だけでなく、対話が奨励され紛争が相互理解及び相互協力の精神で解決される、また、社会経済的発展が確保される積極的で動的な参加型プロセスを追求するものであることを認め、

人類社会すべての構成員の固有の尊厳と平等で譲ることのできない権利とを承認することは、世界における自由、正義及び平和の基礎であることを想起し、平和が人間の固有の尊厳に由来する不可譲の権利の完全な享受により促進されることを認め、

すべての人は、世界人権宣言に掲げる権利及び自由が完全に実現される社会的及び国際的秩序に対する権利を有することをも想起し、

さらに、貧困を根絶し、万人のための持続的経済成長、持続可能な開発及び世界の繁栄を促進する世界的な取り組み、かつ、各国内及び各国間の不平等を是正する必要性を想起し、

国連憲章の目的及び原則に従った武力紛争予防、かつ、世界中の人民が直面する相互連関的な安全及び開発課題に効果的に対処する手段として武力紛争予防の文化を促進する取り組みの重要性を想起し、

国の十分かつ完全な開発、世界の福祉及び平和の目的は、あらゆる分野における男性と対等な条件での最大限の女性参加を追求することをも想起し、

戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならないことを再確認し、平和的な手段による争議や紛争を解決する重要性を想起し、

人権及び宗教と信念の多様性の尊重を基礎とし、あらゆるレベルで寛容及び平和の文化を促進する世界対話を発展させる国際的な努力を強化する必要性を想起し、

紛争後の状況における国家オーナーシップ原則を基礎とした開発援助及び能力強化は、携わるすべての者を含む社会復帰、社会再統合及び和解の過程を通じて平和を回復すべきであることをも想起し、かつ、平和及び安全の地球的規模の追求のために国際連合の平和創造、平和維持及び平和構築活動の重要性を認め、

さらに、平和の文化及び正義、自由、平和のための人類の教育とは、人間の尊厳に欠くことのできないものであり、かつ、すべての国民が相互の援助及び相互の関心の精神を持って果たされなければならない義務であることを想起し、

平和の文化は、平和の文化に関する宣言で確認されるように、価値観、考え、行動の伝統及び様式、かつ、生き方から成る一連のものであり、このすべてのことは、平和への寄与を可能にする国内的及び国際的環境によって育まれるべきであることを再確認し、

平和及び安全の促進に貢献する価値観として緩和及び寛容の重要性を認め、

市民社会組織が、強化された平和の文化をもたらし得ることと同様に、平和構築及び平和維持をもたらし得るという重要な貢献を認め、

諸国家、国際連合及び他の関連ある国際機構が、平和の文化を強化し、かつ、訓練、指導、教育を通じて人権意識を保つことを目的としたプログラムへの資源を分配するための必要性を強調し、

さらに、平和の文化の促進に対する人権教育・研修に関する国際宣言の貢献の重要性も強調し、

相互の信頼と理解を根底にして、文化の多様性、寛容、対話、協力を重んじることが世界の平和と安全を保証する最善策のひとつであることを想起し、

平和を可能にし、平和の文化に貢献する美徳と同様に、寛容とは、我々の世界的文化、表現形態及び人間の在り方の豊かな多様性の尊重、受容及び理解であることを想起し、

さらに、法の支配を基礎とした社会全体及び民主的枠組みのなかでの発展における不可分なものとして、民族的または種族的、宗教的及び言語少数者に属する人々の権利の継続的な促進及び実現は、人民及び諸国家間の友好、協調、平和を強化することに対する貢献であろうことを想起し、

国家、地域及び国際レベルで戦略、計画、政策及び特別な積極的措置を含む適切な立法を立案し、促進し、実施し、平等な社会発展を進め、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連ある不寛容の犠牲者すべての市民、政治、経済、社会、文化的権利を実現することを想起し、

人種主義、人種差別、外国人排斥及び関連ある不寛容は、それが人種主義及び人種差別に等しい場合、人民と諸国の間の友好で平和な関係の障害となり、武力紛争を含む多くの国内紛争や国際紛争の根因となることを認め、

平和を推進する手段として、全人類、世界の人民及び諸国の間の寛容、対話、協力及び連帯を実践することが非常に重要であると認めることにより、自らをこれらの活動へと導くよう、そのためにも、現在及び将来の世代の双方が、将来の世代を戦争の惨害から免かれるという最高の願望で、平和のうちに共に生きることを学ぶことを現在の世代が確保すべきであり、関係者らに厳粛に招請し、

以下のとおり宣言する。
 
Article 1
Everyone has the right to enjoy peace such that all human rights are promoted and protected and development is fully realized.

第1条
すべての人は、すべての人権が促進及び保障され、並びに、発展が十分に実現されるような平和を享受する権利を有する。
 
Article 2
States should respect, implement and promote equality and non-discrimination, justice and the rule of law and guarantee freedom from fear and want as a means to build peace within and between societies.

第2条
国家は、平等及び無差別、正義及び法の支配を尊重、実施及び促進し、社会内及び社会間の平和を構築する手段として、恐怖と欠乏からの自由を保障すべきである。
 
Article 3
States, the United Nations and specialized agencies should take appropriate sustainable measures to implement the present Declaration, in particular the United Nations Educational, Scientific and Cultural Organization. International, regional, national and local organizations and civil society are encouraged to support and assist in the implementation of the present Declaration.

第3条
国家、国際連合及び専門機関、特に国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)は、この宣言を実施するために適切で持続可能な手段を取るべきである。国際機関、地域機関、国家機関、地方機関及び市民社会は、この宣言の実施において支援し、援助することを奨励される。
 
Article 4
International and national institutions of education for peace shall be promoted in order to strengthen among all human beings the spirit of tolerance, dialogue, cooperation and solidarity. To this end, the University for Peace should contribute to the great universal task of educating for peace by engaging in teaching, research, post-graduate training and dissemination of knowledge.

第4条
平和のための教育の国際及び国家機関は、寛容、対話、協力及び連帯の精神をすべての人間の間で強化するために促進されるものである。このため平和大学は、教育、研究、卒後研修及び知識の普及に取り組むことにより、平和のために教育するという重大で普遍的な任務に貢献すべきである。
 
Article 5
Nothing in the present Declaration shall be construed as being contrary to the purposes and principles of the United Nations. The provisions included in the present Declaration are to be understood in line with the Charter of the United Nations, the Universal Declaration of Human Rights and relevant international and regional instruments ratified by States.

第5条
この宣言のいかなる内容も国連の目的及び原則に反すると解釈してはならないものとする。この宣言の諸規定は、国連憲章、世界人権宣言及び諸国によって批准される関係する国際及び地域文書に沿って理解される。

​​(翻訳:本庄未佳)
(引用終わり)

共謀罪をめぐる最新ニュース、動画、声明のご紹介

 今晩(2017年2月21日)配信した「メルマガ金原No.2730」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
共謀罪をめぐる最新ニュース、動画、声明のご紹介

 学習会の講師を頼まれたのを機に始めた共謀罪シリーズも、第4回までは順調に(?)来たものの、和歌山での企画案内や森友学園スキャンダルなど、他の記事の配信に忙しく、気がつけば、3月3日の学習会まであと10日となり、さすがに焦ってきました。
 レジュメについては、主催者が配布してくれることになっている『一からわかる共謀罪 話し合うことが罪になる』の中の、特に海渡雄一弁護士が書かれた「共謀罪って何?自由を奪う監視社会の到来」をレジュメ代わりにしようと開き直っているので、まあいいのですが、何が困るといって、肝心の法案が、閣議決定されるまでは、インターネットで閲覧できるようにならないことです。
 2年前の「安保法案」の時も、2015年5月14日の法案閣議決定までは、批判する対象が確定しないのですから、非常に困ったものでした。
 けれども、学習会の準備をするために、「早く閣議決定してくれ」と言う訳にもいきませんしね(法案
の国会上程絶対阻止!と主張しているのですから)。
 ということで、一体どんなことになるやら講師自身が一番不安ですが、3月3日の学習会の概要を再掲しておきます。
 
学習会「共謀罪とは何か?その狙いとは」
講師 金原徹雄(弁護士)
日時 2017年3月3日(金)午後6時30分~
場所 和歌山市勤労者総合センター6階文化ホール
主催 和歌山県平和フォーラム、戦争をさせない和歌山委員会
入場無料 参加者には『一からわかる共謀罪 話し合うことが罪になる』(2017年1月発行/頒価200円)を配布予定
 
 なにしろ、条文の本体が一般市民の前には姿をあらわさないので、報道機関の伝えるところに目配せしておくしかないでしょうか。
 最新のニュースにこういうものがありました。
 
時事ドットコム(2017/02/21-20:50)
資金手配や下見、条文で例示へ=「共謀罪」の準備行為-法務省

(引用開始)
 法務省は21日、「共謀罪」の構成要件を改め「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案の条文に、処罰の前提となる準備行為の具体例を盛り込む方針を固めた。「資金や物品の手配」「関係場所の
下見」などと例示する方向で、3月上旬にも国会に提出することを目指す。
 同省はまた、テロ等準備罪の法定刑について、殺人など「懲役・禁錮10年超の罪」を未然に検挙した場合は「同5年以下」、大麻密輸など「懲役・禁錮4年以上10年以下の罪」の場合には「同2年以下」
とそれぞれ設定する方針も固めた。
 計画段階での処罰を可能にする同法案をめぐっては、「犯罪のことを話題にしただけで罰せられるのではないか」との懸念が出ていた。同省は、具体的な準備行為を伴った場合に限って処罰対象とする方針を
示してきたが、不安解消に向け、条文でも例示する必要があると判断した。
(引用終わり)
 
 ただ、こういうニュースに接しても、条文自体を読んでみないことには、適切な評価をくだすことは不可能ですね。まあ、「例示」というからには、必ず「等」というマジックワードがもらさず付いてくるのだろうなあ、ということ位は想像がつきますが。
 
 あと、2月16日に行われた共謀罪を考える超党派の議員と市民の勉強会(第2回)「私は共謀罪の国会提出に反対です」の動画(NPJとUPLAN)をご紹介しておきます。共謀罪そのものの問題点については、特に立命館大学松宮孝明教授のスピーチに耳を傾けていただければと思います。
 
NPJ 「私は共謀罪の国会提出に反対です」(1時間37分)

司会:福島みずほ参議院議員社民党
発言(発言順)
冒頭~ 佐々木隆博衆議院議員民進党
1分~ 真山勇一参議院議員民進党
3分~ 逢坂誠二衆議院議員民進党
8分~ 小宮山泰子衆議院議員民進党
9分~ 藤野保史衆議院議員共産党)    
10分~ 泉 健太衆議院議員民進党
12分~ 初鹿明博衆議院議員民進党
13分~ 郡 和子衆議院議員民進党
15分~ 鎌田 慧氏(ルポライター)
22分~ 糸数慶子参議院議員沖縄の風
24分~ 杉尾秀哉参議院議員民進党
26分~ 森 裕子参議院議員自由党
28分~ 近藤昭一衆議院議員民進党
31分~ 佐高 信氏(評論家)
36分~ 井上哲士参議院議員共産党
37分~ 川田龍平参議院議員(無所属)
40分~ 孫崎 享氏(評論家)
44分~ 中野晃一氏(上智大学教授)
49分~ 飯島滋明氏(名古屋学院大学教授)
54分~ 松宮孝明氏(立命館大学教授)
1時間08分~ 山田健太氏(日本ペンクラブ
1時間15分~ 太田啓子氏(明日の自由を守る若手弁護士の会)
1時間22分~ 小林基秀氏(新聞労連委員長)
1時間28分~ 岩崎貞明氏(日本マスコミ文化情報労組会議事務局長)
1時間31分~ 樋口 聡氏(出版労連 出版・産業対策事務局長)
1時間33分~ 福島みずほ参議院議員社民党
 
20170216 UPLAN「私は共謀罪の国会提出に反対です」(共謀罪を考える超党派の議員と市民の勉強会第2回(1時間32分)
 

日本ペンクラブの声明)
日本ペンクラブ声明 「共謀罪に反対する」
(引用開始)
共謀罪によってあなたの生活は監視され、
共謀罪によってあなたがテロリストに仕立てられる。
私たちは共謀罪の新設に反対します。
 
 私たち日本ペンクラブは、いま国会で審議が進む「共謀罪(「テロ等組織犯罪準備罪」)」の新設に強く反対する。過去の法案に対しても、全く不要であるばかりか、社会の基盤を壊すものとして私たちは反対してきたが、法案の本質が全く変わらない以上、その姿勢に微塵の違いもない。
 過去に3度国会に上程され、いずれも廃案となった法案同様、いま準備されている共謀罪は、事前に相談すると見なされただけでも処罰するとしている。これは、人の心の中に手を突っ込み、憲法で絶対的に保障されている「内心の自由(思想信条の自由)」を侵害するものに他ならない。結果として、表現の自由
、集会・結社の自由など自分の意思を表明する、あるいは表明しない自由が根本から奪われてしまう。
 しかも、現行法で、十分なテロ対策が可能であるにもかかわらず、共謀罪を新設しなければ東京オリンピックを開催できないというのは、オリンピックを人質にとった詭弁であり、オリンピックの政治的利用
である。
 このような法案を強引に成立させようとする政府の姿勢を許すわけにはいかない。  
 法案の成立を断固阻止すべきである。

  2017年2月15日

   一般社団法人日本ペンクラブ
     会長 浅田次郎
     言論表現委員長 山田健太
(引用終わり)
 

シンポジウム「障害者差別解消法と弁護士の役割」(3/18@和歌山ビッグ愛/和歌山弁護士会主催)のご案内

 今晩(2017年2月20日)配信した「メルマガ金原No.2729」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
シンポジウム「障害者差別解消法と弁護士の役割」(3/18@和歌山ビッグ愛/和歌山弁護士会主催)のご案内
 
 年度末の1~3月に集中する傾向のある和歌山弁護士会主催シンポジウムですが(憲法問題など、日弁連が重点活動分野に指定して共催分担金を出してくれる緊急企画は別です)、今年度の掉尾を飾るのは、高齢者・障害者支援センター運営委員会が準備してきたシンポジウム「障害者差別解消法と弁護士の役割」です。
 同委員会が3月にシンポを計画しているという話はだいぶ以前から耳に入っていましたが、昨日、長岡健太郎委員長が、近弁連管内の弁護士が登録している某MLに、チラシのデータなどを添付して内容を紹介した上で、「拡散歓迎です。」「盛りだくさんの内容です。」「3/18は和歌山ビッグ愛へ!」「皆様ぜひご予定ください!」という熱烈参加要請の投稿を行っているのに気付き、それで初めてシンポの内容を知りました。

 以下に、チラシ記載情報を転記しておきますが、委員長自身が「盛りだくさん」と言うとおり、基調講演が2人(岡山理科大学和歌山大学)、基調報告が3人(和歌山県和歌山市、障害者本人)、それにパネルディスカッション(明石市沖縄県ほか)を行い、トータル4時間を予定するというのですから、そのゲストの多彩さと併せて、「これは近弁連(近畿弁護士会連合会)のシンポか?」と見まがうばかりであり、担当委員会の気合いの入り方も尋常ではないようです。
 
 ということで、私も和歌山弁護士会の会員として、シンポに参加するだけではなく、広報に一役買うくらいの協力はしなければならないだろうと思い、まだ会員に対してチラシを添付した参加要請書も届いていないにもかかわらず、弁護士会事務局からチラシを1枚入手して本稿を書いているという次第です。
 
 なお、障害者差別解消法については、2015年12月17日に、私のメルマガ(ブログ)で「障害者差別解消法(2016年4月1日施行)を学習するための資料のご紹介」という記事を書き、基礎的な法令等にはリンクしておきましたので、ご参照いただければと思います。
 ここでは、障害者差別解消法そのものにだけリンクしておきます。
 
 
 それでは、チラシに記載された内容を転記します。
 
チラシから引用開始)
シンポジウム 
障害者差別解消法と弁護士の役割
 
2017年3月18日(土)
午後0時30分~午後4時30分(午後0時 開場)
和歌山ビッグ愛 1F 大ホール
 
入場無料・予約不要
手話通訳、要約筆記、ユーストリーム中継あり
 
 平成28年4月1日、障害者差別解消法が施行され、和歌山市では障害者差別解消推進条例も施行されました。
 本シンポジウムでは、何が「差別」に当たるのか、「合理的配慮」とは何かについて、具体的事例も交えながら理解を深めるとともに、障害当事者、市民、行政、そして弁護士・社会福祉士等の専門職が広く連携して、障害の有無を問わず共に暮らせる社会を作っていくためにどのようなことが必要か、そのための具体的な相談体制や解決のための仕組みについて考えていきたいと思います。
 
基調講演
①川島 聡氏(岡山理科大学 総合情報学部 社会情報学科 准教授)
 「合理的配慮とは何か」
西倉実季氏(和歌山大学 教育学部 准教授)
 「合理的配慮をめぐるプライバシーの問題」
 
基調報告
和歌山県の取組状況(和歌山県障害福祉 課長 中林憲一氏)
和歌山市の取組状況(和歌山市障害者支援課 課長 坂下雅朗氏)
③和歌山での具体的事例を元に(石田雅俊氏=和歌山市内の障害当事者)
 
パネルディスカッション
【コーディネーター】
長岡健太郎(和歌山弁護士会高齢者・障害者支援センター運営委員会委員長)
【登壇者】
石田雅俊氏
山田 賢氏(明石市 福祉部 福祉総務課 障害者施策担当係長)
上間清香氏(沖縄県 広域相談専門員)
森脇大介(弁護士会・和歌山弁護士会
 
主催 和歌山弁護士会(担当:高齢者・障害者支援センター運営委員会)
共催 障害と人権全国弁護士ネット
後援 和歌山県和歌山市和歌山県社会福祉士
お問い合わせ 和歌山弁護士会 TEL:073-422-4580 FAX :073-436-5322
(引用終わり)
 
 それから、チラシに記載されているとおり、昨年4月の法律の施行に合わせ、和歌山市では、和歌山市障害者差別解消推進条例が施行されたのですが、その際、和歌山市手話言語条例も同時に施行されたということを、今日、このメルマガ(ブログ)を書くために和歌山市のホームページを閲覧して初めて知りました。
 和歌山市民でも知らない人が多いと思いますので、最後に、この2つの条例を(少し長くなりますが)全文引用します。
 
和歌山市障害者差別解消推進条例
(目的)
第1条 この条例は、障害を理由とする差別の解消について、基本理念を定め、市の責務並びに市民及び事業者の役割を明らかにするとともに、障害を理由とする差別の解消を推進するために基本となる事項を定めることにより、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号。以下「障害者差別解消法」という。)による施策と相まって、障害のある人もない人も共に安心して暮らしやすい和歌山市の実現に寄与することを目的とする。
(定義)
第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
(1)障害 身体障害、知的障害、精神障害発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害をいう。
(2)障害者 障害がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。
(3)社会的障壁 障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。
(4)障害を理由とする差別 障害を理由とするあらゆる区別、排除又は制限であって、政治的、経済的、社会的、文化的、市民的その他のあらゆる分野において、他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を認識し、享有し、又は行使することを害し、又は妨げる目的又は効果を有するものをいう。
(基本理念)
第3条 障害者に対する障害を理由とする差別の解消は、次に掲げる事項を旨として図られなければならない。
(1)全ての障害者は、自ら選択した場所に居住し、その地域社会を構成する一員として社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会が確保されること。
(2)全ての障害者が、必要かつ合理的な配慮が的確に行われることにより、障害者でない者と等しく、権利を行使し、機会を得、又は待遇を受けることができること。
(3)全ての障害者は、言語(手話を含む。)、文字の表示、点字触手話指点字、拡大文字、音声、平易な言葉、朗読その他の補助的及び代替的な意思疎通の形態、手段及び様式(次条及び第5条において「意思疎通手段」という。)であって、当該障害者が選択したものによる情報の取得又は利用するための支援が保障されること。
(市による意思疎通支援の実施)
第4条 市は、前条の基本理念にのっとり、障害者に対し、情報の取得又は利用のための支援を行うものとする。
2 前項の規定による支援は、障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じ、適切に行われなければならない。
3 市は、第1項の規定による支援について、情報処理に関する技術を活用して行うよう努めるものとする。
(市の責務)
第5条 市は、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明(障害者の保護者、後見人その他の関係者(以下「保護者等」という。)が当該障害者の代理人として行ったもの及びこれらの者が当該障害者の補佐人として行ったものを含む。)があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないと認めるときは、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施についての必要かつ合理的な配慮を行わなければならない。
2 市は、第3条に定める基本理念にのっとり、障害及び障害者に対する理解を深め、障害を理由とする差別を解消するために必要な施策を策定し、及び実施する責務を有する。
3 市は、第3条第3号に規定する支援を行うため、次に掲げる施策を行うものとする。
(1)障害者の意思疎通手段に対する市民の理解の増進及び当該意思疎通手段の普及を図るための施策
(2)手話通訳者、要約筆記者、点訳者、朗読者その他の意思疎通支援(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号。次項及び第7条第3項において「障害者総合支援法」という。)第77条第1項第6号に規定する意思疎通支援をいう。)を行う者の配置の拡充
(3)その他障害者の円滑な情報の取得又は利用に資する施策
4 市は、前項各号に掲げる施策を障害者基本法(昭和45年法律第84号)第11条第3項の規定に基づく和歌山市障害者計画及び障害者総合支援法第88条第1項の規定に基づく和歌山市障害福祉計画との整合性を図りながら、総合的かつ計画的に実施するものとする。
(市民等の役割)
第6条 市民及び事業者は、障害及び障害者に対する理解を深めるとともに、市が実施する施策に協力するよう努めるものとする。
(障害を理由とする差別に関する相談)
第7条 障害者又は障害者の保護者等は、当該障害者が障害を理由とする差別を受けたと認めるときは、当該障害を理由とする差別について、市長に相談することができる。
2 市長は、前項の規定による相談があったときは、次に掲げる事務を行うものとする。
(1)障害者又は障害者の保護者等への事実の確認を行う事務
(2)障害者又は障害者の保護者等に必要な助言及び情報提供を行う事務
(3)関係行政機関への紹介を行う事務
3 市長は、市が障害者総合支援法第77条第3号に掲げる事業の実施を委託している者に、前項各号に掲げる事務の全部又は一部を委託することができる。
(助言又はあっせんの求め)
第8条 障害者は、障害を理由とする差別を受けたと認めるときは、市長に申し出て、当該障害を理由とする差別に該当する事案(以下「差別事案」という。)を解決するため、市長が障害者、障害者の保護者等又は障害を理由とする差別をしたとされる者(市を除く。)(以下「当事者等」と総称する。)に必要な助言をすること又は当事者等の間に立ち、差別事案の解決に資するあっせん案の提示を行うことを求めることができる。
2 障害者の保護者等は、前項の規定による申出をすることができる。ただし、当該申出が当該障害者の意思に反することが明らかであると認められるときは、この限りでない。
3 前2項の申出は、次の各号のいずれかに該当すると市長が認めるときは、することができない。
(1)行政不服審査法(平成26年法律第68号)その他の法令により審査請求その他の不服申立てをすることができるとき。
(2)申出の原因となる差別事案が発生した日(継続的な行為にあっては、その行為の終了した日)から3年を経過しているとき(その期間内に申出ができなかったことにつきやむを得ない理由があるときを除く。)。
(3)現に犯罪の捜査の対象となっているとき。
(調査)
第9条 市長は、前条第1項又は第2項の規定による申出があったときは、当該申出に係る事実について調査を行わなければならない。
(助言又はあっせん)
第10条 市長は、前条の規定による調査の結果、必要があると認めるときは、当事者等に対し、必要な助言をし、又は当事者等の間に立ち、差別事案の解決に資するあっせん案の提示を行うことができる。
2 市長は、前項の規定による助言又はあっせん案の提示を行うかどうかの判断に資するため、又は前項の助言又はあっせん案の内容について意見を求めるため、第14条の規定により置く和歌山市障害者差別解消調整委員会(以下「調整委員会」という。)に諮問することができる。
3 市長は、第1項のあっせん案を作成しようとするときは、当事者等の意見の聴取を行わなければならない。
4 当事者等は、第1項のあっせん案を受諾したときは、その旨を記載し、記名押印又は署名した書面を市長に提出しなければならない。
(勧告)
第11条 市長は、前条第1項の規定により助言をし、又はあっせん案を提示した場合において、障害を理由とする差別をしたと認められる者が正当な理由がなく当該助言に従わず、又は当該あっせん案を受諾しないときは、当該障害を理由とする差別をしたと認められる者に対して当該助言に従うこと又は当該あっせん案を受諾するよう勧告することができる。
(公表)
第12条 市長は、前条の勧告を受けた者が、正当な理由がなく、当該勧告に従わないときは、当該者が受けた勧告の内容を公表することができる。この場合において、当該勧告の内容に個人又は法人(法人でない団体を含む。以下この条において同じ。)に関する情報であって、特定の個人又は法人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより特定の個人又は法人を識別することができることとなるものを含む。)が含まれているときは、当該情報を除いて公表しなければならない。
(意見の聴取)
第13条 市長は、第11条の勧告又は前条の公表をしようとする場合には、あらかじめ、期日、場所及び差別事案の内容を示して、公表の対象となる者その他差別事案に関係する者又はその代理人の出席を求めて、意見の聴取を行わなければならない。ただし、当該公表の対象となる者その他差別事案に関係する者又はその代理人が正当な理由がなく意見の聴取に応じる意思がないと認められるときは、意見の聴取を行わないで勧告し、又は公表することができる。
和歌山市障害者差別解消調整委員会の設置等)
第14条 本市に障害を理由とする差別を解消するための取組を推進するため、調整委員会を置く。
2 調整委員会は、次に掲げる事項について調査審議し、市長に意見を述べるものとする。
(1)市長が諮問する差別事案に対する助言又はあっせん案の提示に関する事項
(2)障害を理由とする差別の解消の推進に関する事項
(3)障害者の意思疎通支援に関する施策の実施状況等に関する事項
(4)その他障害を理由とする差別の解消の推進に関して市長が必要と認める事項
3 調整委員会は、委員35人以内で組織する。
4 委員は、次に掲げる者のうちから、市長が委嘱し、又は任命する。
(1)国又は地方公共団体の機関の職員であって、福祉、保健、医療、介護、教育その他の障害者の自立と社会参加に関連する分野の事務に従事するもの
(2)特定非営利活動法人促進法(平成10年法律第7号)第2条第2項に規定する特定非営利活動法人その他障害者に係る公益の増進に資することを目的とした団体に属する者
(3)障害者又はその介護若しくは支援をする者に関する団体が推薦する者
(4)障害者に係る福祉又は保健に関する学識経験者
5 委員の任期は、2年とする。ただし、委員が欠けた場合における補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
6 委員は、再任されることができる。
7 調整委員会に委員長を置き、委員の互選により選任する。委員長は、会務を総理し、調整委員会を代表する。
8 委員長に事故があるとき、又は委員長が欠けたときは、あらかじめ委員長が指名する委員がその職務を代理する。
9 調整委員会の会議(以下この条において単に「会議」という。)は、委員長が招集する。ただし、委員の全員が新たに委嘱され、又は任命された後最初に招集すべき会議は、市長が招集する。
10 委員長は、会議の議長となる。
11 調整委員会は、委員の過半数の出席がなければ、会議を開くことができない。
12 調整委員会の議事は、出席委員の過半数で決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。
13 調整委員会は、必要があると認めるときは、委員以外の者に対して会議への出席を求め、その意見若しくは説明を聴き、又は必要な資料の提供を求めることができる。
14 委員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も同様とす
る。
15 調整委員会の庶務は、福祉局社会福祉部において処理する。
16 この条例に定めるもののほか、調整委員会の運営に関し必要な事項は、委員長が調整委員会に諮って定める。
   
附 則
(施行期日)
1 この条例は、平成28年4月1日から施行する。ただし、第8条から第14条までの規定は、同年7月1日から施行する。
(検討)
2 市長は、この条例の施行後3年を経過した場合において、条例の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の見直しを行うものとする。
 
和歌山市手話言語条例
(目的)
第1条 この条例は、手話が言語であるとの認識に基づき、手話を普及させ、かつ、地域において手話が使用されやすい環境を整備するための市の責務並びに市民及び事業者の役割を明らかにすることにより、ろう者とろう者以外の者が共生することのできる地域社会の実現に資することを目的とする。
(基本理念)
第2条 手話は、独自の言語体系を有する文化的所産であり、ろう者が大切に伝承し、かつ、育んできたものであるということに鑑み、手話についての理解及び手話の普及は、手話を必要とする市民が手話により意思の疎通を円滑に行う権利を有しており、その権利は最大限尊重されるべきであるという認識に基づいて行われなければならない。
(市の責務)
第3条 市は、市民及び事業者の手話についての理解の促進を図り、手話が使用されやすい環境を整備するために、次に掲げる施策を推進するものとする。
(1)手話についての理解の推進及び手話の普及に関する施策
(2)市民の手話の獲得及び習得に関する施策
(3)前2号に掲げるもののほか、市長が必要と認める施策
(市民等の役割)
第4条 市民及び事業者は、第2条に定める基本理念に対する理解を深め、前条各号に掲げる施策に協力するよう努めるものとする。
(施策を推進するための方針)
第5条 市長は、第3条各号に掲げる施策を推進するための方針を定めるものとする。
2 市長は、前項の方針を定めようとするときは、ろう者、手話通訳者その他の関係者の意見を聴かなければならない。
   附 則
 この条例は、平成28年4月1日から施行する。
 
(弁護士・金原徹雄のブログから)
2015年12月17日
障害者差別解消法(2016年4月1日施行)を学習するための資料のご紹介

2016年6月5日
緊急予告!6/19市民集会「緊急事態条項と日本国憲法(講師:伊藤真弁護士)」(和歌山弁護士会)のご案内
2016年10月19日
12/3シンポジウム「シングルマザーの権利擁護―養育費算定表の問題点と履行確保の方策について―」(和歌山弁護士会)のご案内
2016年12月26日
1/21「シンポジウム 実りある面会交流~子どもの健やかな成長のために~」(和歌山弁護士会)のご案内
2017年1月20日
2/15「低周波音問題について考える」シンポジウム(和歌山弁護士会)のご案内

障害者差別解消法シンポ・チラシ 

放送予告3/10&3/11原発事故被災地への「帰還」をテーマとした2本のNHKスペシャル

 今晩(2017年2月19日)配信した「メルマガ金原No.2728」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
放送予告3/10&3/11原発事故被災地への「帰還」をテーマとした2本のNHKスペシャ

 間もなく6回目の3.11がやって来ます。例年、この時期には、震災関連のドキュメンタリー番組が
各局で放送されます。
 けれども、東京電力福島第一原発事故による被災者、避難者、被災自治体にとって、6年目の春は、4年目や5年目とは大きく異なった意味を持っています。
 
平成27年6月12日 原子力災害対策本部
「原子力災害からの福島復興の加速に向けて」改訂

(抜粋引用開始)
 こうした観点から、事故から6年を超えて避難指示の継続が見込まれる帰還困難区域以外の区域、すなわち避難指示解除準備区域・居住制限区域については、各市町村の復興計画等も踏まえ遅くとも事故から6年後(平成29年3月)までに避難指示を解除し、住民の方々の帰還を可能にしていけるよう、除染の
十分な実施はもとより、インフラや生活に密着したサービスの復旧などの加速に取り組む。
(引用終わり)
 
 東京電力福島第一原発が立地する大熊町双葉町は、帰還困難区域以外の区域を含めて全町避難指示が続くものの、それ以外は上記方針通り、浪江町、富岡町、飯舘村の帰還困難区域を除く全域と、川俣町山木屋地区の避難指示を解除する方針であると伝えられています(河北新報)。
 福島県等からの自主避難者に対する災害救助法に基づく住宅支援の今年3月末での打ち切りが、上記方針と一体のものであることは言うまでもありません。
 
 6回目の3.11をどう切り取るか、各局のドキュメンタリー番組の制作スタッフは色々と悩んだことと思いますが、どう考えても、6年目の今年、国の「帰還」政策を抜きにした番組は作れないでしょう。
 先日、ご紹介した関西ローカルの番組、MBSドキュメンタリー映像'17『消去される自主避難者(仮)』もその一例でしたが、今日ご紹介するNHKスペシャル2本も「帰還」がテーマです。
 そのうち、3月11日放送分の番組案内に書かれた一節放射能で汚染された広大な地域を除染し、人が戻るという世界でも先例のない“帰還政策”」を念頭に置きながら、今年の3.11ドキュメンタリーに注目したいと思います。
 
原発事故後、福島の若者の間で広まったある行為がある。15歳の誕生日を迎えた記念に、震災以来帰ることのなかった故郷を初めて訪ねるというものだ。安全への配慮から今も避難指示区域への一時帰宅は大人しか認められず、子どもは一切許されていない。許可が下りるボーダーラインとなるのが「15歳」なのだ。その年齢になるのを待ちすでに多くの若者が故郷へと向かってきた。今も時間がとまったままの街。毎日通った学校、馴染みのお菓子屋、友人と遊んだ公園、そして自宅。それぞれの場所に立ち止まって言葉をなくす者もいれば、歩いているうちに自然に涙があふれてきたという者もいる。未曾有の原発事故により尋常ならざる生活を送ることになった彼らにとって、短い故郷への旅は、失われた時間を見つめ、自分が歩んできた道のりを整理しこれからの生き方に思いを馳せる、いわば大人へと成長する旅でもある。
 番組では、故郷を目指す福島の若者たちに密着する。この6年はいったいどんな歳月だったのか。帰郷により、彼らのなかで何が変わり、どう新しい1歩を踏み出してゆくのか。困難を乗り越え懸命に生きてきた福島の10代の姿を通して、人間の普遍的な成長の物語を描く。」
 
福島第一原発事故から6年。避難指示が出されていた地域は大きな転機を迎える。“帰還困難区域”を除く大部分の地域で、避難指示が一斉に解除される計画なのだ。「住民が帰るための環境が整った」と国が判断したためで、これにより原発事故で立ち入りが制限された区域の7割が地図上から消えることになる。
 しかし、現場では様々な問題が取り残されたままだ。今回、避難指示が解除されるのは、これまでと比べて格段に放射線量が高かった地域。未だ点在するホットスポット、営農再開を阻む除染廃棄物の山、にも関わらず打ち切られていく東京電力からの賠償・・・。帰る条件が整っていないと訴える住民も少なくない。一方の自治体は、これ以上避難が続くと帰還意欲が失われ、町が消滅するという危機感から避難指示解
除を急いでおり、両者の溝が深まっている。
 また、既に避難指示が解除された自治体も復興への道は見通せていない。住民の帰還は思うように進まず、コンパクトタウン建設など、復興の切り札としてきた事業も大幅に遅延している。その原因を探ると
原発に依存してきた地域が抱える構造的な問題が見えてきた。
 放射能で汚染された広大な地域を除染し、人が戻るという世界でも先例のない“帰還政策”。いま現地
で何が起きているのか。原発事故からの復興に苦闘する現場を見つめる。」

安倍内閣は「憲法99条は内閣総理大臣が憲法改正を主張することを禁止する趣旨のものではない」と断定した

 今晩(2017年2月18日)配信した「メルマガ金原No.2727」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
安倍内閣は「憲法99条は内閣総理大臣憲法改正を主張することを禁止する趣旨のものではない」と断定した

 私が憲法問題についての学習会講師を頼まれるようになったのは、「憲法9条を守る和歌山弁護士の会」の2代目事務局長となった2006年1月以降のことですから、もう10年以上が経っていますが、その中で、「立憲主義」をどう説明したものかということについては試行錯誤の連続でした。
 その10年間の紆余曲折の末にたどりついた現在の説明の見本を、(長くなりますが)末尾に掲載しておきます。これは、2016年6月15日(水)、「憲法をまもりくらしに活かす田辺・西牟婁会議」主催の学習会用に書いたレジュメからの抜粋です(自民党「日本国憲法改正草案」批判レジュメ~2016年参院選直前ヴァージョン)。
 そこに書きましたように、日本国憲法「第10章 最高法規」を構成する第97条~第99条は、緊密な論理的つながりをもって、我が国が「立憲主義」の原理に立つことを宣明した諸規定であり、公務員の憲法尊重擁護義務を定めた第99条は、単なる訓示規定にとどまるようなものではなく、日本国憲法の骨格をなす重要条文の1つなのです。
 
日本国憲法(昭和二十一年十一月三日憲法)
第九十九条 天皇又は摂政及び国務大臣国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。
 
 その「国務大臣」全体を首長として統括する内閣総理大臣が、国会における施政方針演説で、「憲法施行七十年の節目に当たり、私たちの子や孫、未来を生きる世代のため、次なる七十年に向かって、日本をどのような国にしていくのか。その案を国民に提示するため、憲法審査会で具体的な議論を深めようではありませんか。」(2017年1月20日・第193回国会・衆議院本会議における安倍晋三内閣総理大臣の施政方針演説より)と国会議員に呼びかけることは、三権分立立憲主義、何より日本国憲法第99条によって課された憲法尊重擁護義務に違反するのではないのか?ということは当然いだかれる疑問です。
 
 そして、今国会で、この点を直截に質す質問主意書を提出した議員がいるということを、マガジン9に南部義典さんが連載している「立憲政治の道しるべ 第112回 憲法改正論議の呼びかけは、憲法違反ではない」異例の政府答弁書を読む」を読んで知りました。
 
 その議員とは、逢坂誠二衆議院議員民進党・無所属クラブ)です。
 逢坂議員の質問主意書(2回行われています)と、それに対する内閣の答弁書を以下に全文ご紹介しようと思いますが、まずその前に、南部義典さんが、安倍首相による改憲呼びかけ演説をどう評価しているかをご紹介しておきましょう。私も全く同感です。
 
(抜粋引用開始)
 内閣総理大臣は、国会の慣例によって毎年1月に召集される通常国会の冒頭、その1年の取り組み方針を政策項目ごとに述べます。これを施政方針演説といいます。施政方針演説は、召集の日に行われること
が多く、衆議院参議院それぞれの本会議場で、同一の演説内容で行われます。
 安倍総理はこれまで6回、施政方針演説を行っています。過去の演説を改めて検証してみると、2013年を
除く計5回、憲法改正に関して言及しています。
 2013年、「言及なし」が一度だけあります。この年は、7月に参議院議員選挙が控えていたため、いわゆる「安倍(的保守)色」を封印して、安全運転の政権運営を以て、選挙の勝利を導こうとした思惑があったと言われています(⇒選挙の結果、自由民主党は31議席増となり、歴史的大勝を収めました)。しかし
、翌2014年以降になると態度が一変し、その後一貫して、憲法改正論議を堂々と呼びかけているのです。
 何より着目すべきは、ことし(2017年)の発言です。「憲法審査会」という衆議院参議院の常設機関を直接、名指ししているからです。内閣総理大臣憲法上、行政権を司る内閣の首長であることは間違いありませんが(66条1項)、立法権を司る国会、つまり衆議院参議院の運営等に関して、内閣、内閣総理大臣には何の権限も認めていません(権力分立の原則)。「憲法審査会」をどのように運営していくかは
専ら、各議院の裁量に属する事項です。
 憲法改正に対する安倍総理の執着心は、すべての議員が知るところであり、特段珍しくもないというのが率直な受け止めかも知れません。しかし、憲法改正論議の呼びかけは、年々自制が利かなくなり、露骨さを増してきています。今や、一人の政治家としての意見の表明を超えた「悪しき容喙(ようかい)=口
出し」であり、国会の権限を侵害する(憲法違反)に至っているというのが私の認識です。
(引用終わり)
 
 それでは、以下に、逢坂誠二衆議院議員民進党・無所属クラブ)による質問主意書とそれに対する内閣答弁書を引用します。
 
平成二十九年一月二十三日提出 質問第一六号
内閣総理大臣が国会に対して憲法改正の議論を促すことのできる根拠に関する質問主意書
提出者 逢坂誠二

(引用開始)
 安倍総理は、平成二十九年一月二十日の第百九十三回国会の施政方針演説の中で、「憲法施行七十年の節目に当たり、私たちの子や孫、未来を生きる世代のため、次なる七十年に向かって、日本をどのような国にしていくのか。その案を国民に提示するため、憲法審査会で具体的な議論を深めようではありませんか」(「本発言」という。)と述べ、憲法改正に関する国会議論を促すような発言を行っているが、この発言に限らない一般論として、内閣総理大臣憲法及び国会の関係に関して疑義があるので、以下質問す
る。
一 内閣総理大臣が、国会に対してどのような根拠によって憲法改正に関する議論を促す権限を有してい
るのか。根拠法とともに、その権限を持つ理由について具体的に示されたい。
二 内閣総理大臣は、行政府の長であり、何らかの国会の議論のあり方を促すのは、三権分立の観点から
適切ではないと思われるが、政府はどのような見解を持っているのか。具体的に示されたい。
三 本発言は、内閣総理大臣としての安倍晋三氏の立場で行われたのか。あるいは、平成二十八年十月五日の参議院予算委員会でいうところの「自民党の総裁の立場としては、既にこの憲法改正草案が、これは谷垣総裁当時に自民党で議論を重ねた末取りまとめられたわけでございますが、自民党に対しましては総裁として、この草案の下にまとまってしっかりと憲法審査会において議論してもらいたいということは話をしております」と表明しているところの、自民党総裁である安倍晋三氏の立場で行われたのか。政府の
見解を示されたい。
四 安倍総理は、平成二十八年十月五日の参議院予算委員会で、「憲法審査会はなぜつくられたかということでございますが、まさに憲法を審議する場において、これはつくられたわけでございます。私は、ここに立っておりますのは、行政府の長として、今回政府として提出をした補正予算、そして、あるいはまたこの補正予算に関わる法案等々についてここで答弁をする義務を果たしていくわけでございまして、憲法につきましてはまさに国会において議論をしていく、衆議院参議院で発議をする、責任と誇りを持って発議をされる」と答弁しているが、行政府の長である内閣総理大臣が本発言で「憲法審査会で具体的な議論を深めようではありませんか」と促すことは、「衆議院参議院で発議をする、責任と誇り」を傷つ
け、「行政府の長として」「答弁をする義務を果たすこと」に反しないか。政府の見解を示されたい。
五 憲法は、国家権力の監視と抑制を行う規範であり、改正発議は議会がその自由意思で「責任と誇りをもって発議」するべきものであり、行政府の長である内閣総理大臣が議論を促すべきものではない。憲法は国家権力の濫用を縛るものであり、縛られる対象である行政府の長が自らその内閣総理大臣としての施政方針演説の中で規範の改変を促すことは、明らかに則を越え、三権分立に反するものであると考えるが
、政府の見解を示されたい。
 右質問する。
(引用終わり)
 
平成二十九年一月三十一日受領 答弁第一六号
内閣衆質一九三第一六号 平成二十九年一月三十一日
内閣総理大臣 安倍晋三
衆議院議員逢坂誠二君提出内閣総理大臣が国会に対して憲法改正の議論を促すことのできる根拠に関する
質問に対する答弁書

(引用開始)
一及び二について
 御指摘の「憲法改正に関する議論を促す権限」及び「何らかの国会の議論のあり方を促す」の意味する
ところが必ずしも明らかではないが、内閣総理大臣は、憲法第六十三条の規定に基づき議院に出席することができ、また、国会法(昭和二十二年法律第七十九号)第七十条の規定に基づき、内閣総理大臣が議院の会議又は委員会において発言しようとするときは、議長又は委員長に通告した上で行うものとされてい
る。
 議院の会議又は委員会において、憲法第六十七条の規定に基づき国会議員の中から指名された内閣総理大臣が、憲法に関する事柄を含め、政治上の見解、行政上の事項等について説明を行い、国会に対して議論を呼び掛けることは禁じられているものではなく、三権分立の趣旨に反するものではないと考えている

三から五までについて
 御指摘の「内閣総理大臣が本発言で「憲法審査会で具体的な議論を深めようではありませんか」と促すことは、「衆議院参議院で発議をする、責任と誇り」を傷つけ、「行政府の長として」「答弁する義務を果たすこと」に反しないか」及び「規範の改変を促す」の意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の施政方針演説は安倍内閣総理大臣が行ったものであり、一及び二についてでお答えしたとおり、議院の会議又は委員会において、憲法第六十七条の規定に基づき国会議員の中から指名された内閣総理大臣が、憲法に関する事柄を含め、政治上の見解、行政上の事項等について説明を行い、国会に対して議論を呼び掛けることは禁じられているものではなく、三権分立の趣旨に反するものではないと考えている

(引用終わり)
 
 質問されたことにまともに答えずにはぐらかすというのは安倍晋三首相の得意の答弁パターンですが、この質問主意書に対する答弁も全く同断です。
 この点については、南部義典さんがマガジン9に書かれた批判を引用しておきましょう。
 
(抜粋引用開始)
 国会議員の中から指名された内閣総理大臣が(憲法67条1項)、衆議院参議院の要求に応じて委員会等に出席し、答弁している限りでの話であるから(同63条)、憲法上問題はない。これが、答弁書に示され
た、内閣の言い分です。
 しかし、逢坂議員の質問とは、論点がズレてしまっていて、きわめて不明瞭です。そもそも、63条、67条1項は、権力分立に関する総括的な規定ではありません。それぞれ、国務大臣等の議院出席・答弁義務、内閣総理大臣の指名議決の件を定めているにすぎず、国会と内閣の関係性を解くための一般法理を導くことはできないのです。どう寝転んでも、63条、67条1項の解釈から、内閣総理大臣衆議院参議院の委員
会、本会議で憲法改正論議の呼びかけを行うことの「合憲性」は引き出せません。
 仮に、この「論理」を用いるならば、「各地の高等裁判所は、一票の較差問題に関して、違憲無効判決を下すべきではない」「沖縄県辺野古の埋め立て承認を取り消した件につき、処分を撤回するよう、裁判所は毅然と判断すべきである」といった意見を、裁判所に対して呼びかけることも憲法上問題ないとい
うことになってしまうでしょう。
(引用開始)

 南部さんが「仮に」以降で書かれたことは、本来であれば、実際に起こるはずのない事例ですが、「安倍政権ならやりかねない」と思いませんか?
 この答弁に納得できない逢坂誠二議員は、再度の質問主意書を提出しました。
 
平成二十九年二月一日提出 質問第四三号
内閣総理大臣が国会に対して憲法改正の議論を促すことのできる根拠に関する再質問主意書
提出者 逢坂誠二

(引用開始)
 先般提出した「内閣総理大臣が国会に対して憲法改正の議論を促すことのできる根拠に関する質問主意書」(質問第一六号)に対する答弁書(内閣衆質一九三第一六号。以下「答弁書」という。)の内容に疑
義があるので、以下質問する。
一 平成二十九年一月二十日の第百九十三回国会の施政方針演説における安倍総理の発言は、答弁書でいう「国会に対して議論を呼び掛ける」のではなく、さらに踏み込んだ「憲法審査会で具体的な議論を深めようではありませんか」と行政府の長である内閣総理大臣立法府に対して憲法改正に関する議論を促す
ものであると受け止めているが、この点、政府はどのような認識を持っているのか。見解を示されたい。
二 答弁書でいう「国会に対して議論を呼び掛けることは禁じられているものではなく、三権分立の趣旨に反するものではないと考えている」ということの意味は、安倍総理の当該発言には何ら政治的な拘束力はなく、「政治上の見解」の「説明を行」ったに過ぎず、一定の効果を持つ政治意思の表明ではなかった
と理解して良いか。
三 二に関連して、安倍総理の当該発言は「国会議員の中から指名された内閣総理大臣」の発言であること、「三権分立の趣旨に反するものではない」ことが答弁書で明示されており、一定の政治上の効果を国
会に与えることを意図しているものではないのか。見解を示されたい。
四 日本国憲法第九十九条「天皇又は摂政及び国務大臣国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負う」との規定によって、総理大臣には日本国憲法を遵守し尊重する義務がある
と認識しているが、政府の見解を明らかにされたい。
五 総理大臣が憲法改正を主張するのは、日本国憲法第九十九条の規定に反すると思われるが、政府の見
解を示されたい。
六 総理大臣が国会に対して、単に憲法に関する議論を促すのではなく、憲法の改正についての議論を促
すことは、日本国憲法第九十九条の義務に反すると思われるが、政府の見解を示されたい。
 右質問する。
(引用終わり)
 
(引用開始)
一について
 御指摘の「さらに踏み込んだ」の意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の発言は、先の
答弁書(平成二十九年一月三十一日内閣衆質一九三第一六号。以下「前回答弁書」という。)一及び二に
ついてでお答えしたとおり、国会に対して議論を呼び掛けたものと認識している。
二及び三について
 お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないため、お答えすることは困難である。いずれにしても政府としては、前回答弁書一及び二についてでお答えしたとおり、議院の会議又は委員会において、憲法第六十七条の規定に基づき国会議員の中から指名された内閣総理大臣が、憲法に関する事柄を含め、政治上の見解、行政上の事項等について説明を行い、国会に対して議論を呼び掛けることは禁じられているものではな
いと認識している。
四から六までについて
 政府としては、憲法第九十九条は、日本国憲法が最高法規であることに鑑み、国務大臣その他の公務員は、憲法の規定を遵守するとともに、その完全な実施に努力しなければならない趣旨を定めたものであって、憲法の定める改正手続による憲法改正について検討し、あるいは主張することを禁止する趣旨のもの
ではないと考えている。
(引用終わり)
 
 この再度の質問趣旨書に対する内閣答弁で最も重要な部分は、質問と照らし合わせて考えると、「憲法第九十九条は、(内閣総理大臣が)憲法の定める改正手続による憲法改正について検討し、あるいは主張することを禁止する趣旨のものではない」と言い切ったことにあると言うべきでしょう。
 この答弁書の作成には、当然内閣法制局が関与しているはずですが、集団的自衛権行使を容認して以降、「毒を食らわば皿までも」という投げやりな心境なのでしょうかね。
 2015年9月15日の中央公聴会で濱田邦夫元最高裁判事が「今は亡き内閣法制局」と発言した時には、「そこまで言わなくても」と思ったものでしたが、今となってはまことに的確な評言であったと感じ入るばかりです。
 
(参考レジュメ)
2016年6月15日(水) 西牟婁教育会館にて
憲法をまもりくらしに活かす田辺・西牟婁会議
「自民党改憲案を斬る~いま主権者がなすべきこと~」用レジュメ
から
(抜粋引用開始)
5 憲法は誰が守るべきものか(立憲主義とは何か)
 問題続出の自民党改憲案の中でも、とりわけ重大な肝となる条文は、樋口陽一先生、小林節先生が語られているとおり、現行13条「すべて国民は、個人として尊重される。」が「全て国民は、人として尊重される。」に変更され、「個人」が消滅していることでしょう。
 この点については後ほど触れられればと思いますが、以下には、2012年4月27日に自民党改憲案が発表された後、私自身が自民党ホームページに掲載された改憲案をざっと通読した時に最も衝撃を受けた条文「102条1項 全て国民は、この憲法を尊重しなければならない。」を中心に、やや詳細に自民党改憲案の反立憲主義ぶりをご紹介しようと思います。
 
 さて、この改憲案を最初の前文から読み始めた人は、「なんて義務規定が多いんだ」と思われるでしょう。ざっと目に付く規定を抜き出してみます。
 
3条2項 日本国民は、国旗及び国歌を尊重しなければならない。
9条の3 国は、主権と独立を守るため、国民と協力して、領土、領海及び領空を保全し、その資源を確
保しなければならない。
12条後文 国民は、これを濫用してはならず、自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚し、常
に公益及び公の秩序に反してはならない。
19条の2 何人も、個人に関する情報を不当に取得し、保有し、又は利用してはならない。
21条2項 前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びに
それを目的として結社をすることは、認められない。
24条1項後文 家族は、互いに助け合わなければならない。
25条の2 国は、国民と協力して、国民が良好な環境を享受することができるようにその保全に努めなければならない。
28条2項前文 公務員については、全体の奉仕者であることに鑑み、法律の定めるところにより、前項
に規定する権利の全部又は一部を制限することができる。
92条2項 住民は、その属する地方自治体の役務の提供を等しく受ける権利を有し、その負担を公平に
分担する義務を負う。
99条3項 緊急事態の宣言が発せられた場合には、何人も、法律の定めるところにより、当該宣言に係る事態において国民の生命、身体及び財産を守るために行われる措置に関して発せられる国その他公の機関の指示に従わなければならない。この場合においても、第十四条、第十八条、第十九条、第二十一条そ
の他の基本的人権に関する規定は、最大限に尊重されなければならない。
102条1項 全て国民は、この憲法を尊重しなければならない。
 
 この一々にコメントを付すことも可能ですが、それをやり出すときりがありません。ただ、12条後文は、まず日本語になっていません。改憲派は、現行憲法が翻訳憲法であって日本語としておかしいと批判しますが、十分意味は伝わります。これに対し、自民党改憲案の12条後文はそもそも文法的に成り立ちません。
 
 それはそれとして、私は、この自民党改憲案を、発表されてから遅くとも6日以内には読んでいます。なぜはっきりそう言えるかと言うと、2012年5月3日に配信した「メルマガ金原」で「憲法記念日に考える(立憲主義ということ)」という記事を書いているからです。
  ブログに転載した前編
  ブログに転載した後編
 それは、改憲案102条1項「全て国民は、この憲法を尊重しなければならない。」を読んだ衝撃によって一気に書き上げたものでした。
 私が言わんとしたのはこういうことです。やや長くなりますが、この部分が今日のお話のポイントなので、我慢してお付き合いください。
 
 現行の日本国憲法は、97条から99条までの3箇条で「第10章 最高法規」という章を設けています。引用してみます。
 
第97条 この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。
第98条 この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するそ
の他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。
2 日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。
第99条 天皇又は摂政及び国務大臣国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。
 
 「第1章 天皇」「第2章 戦争の放棄」「第3章 国民の権利及び義務」「第4章 国会」「第5章 内閣」「第6章 司法」「第7章 財政」「第8章 地方自治」「第9章 改正」までは、どういうことが規定されているのか、章の標題だけからでも、ある程度は推測がつくと思いますが、「最高法規」という第10章の標題を読んだだけで何らかのイメージがわく人がどれほどいるでしょうか?実際に3箇条の条文を読んでみたらどうでしょう?
 「どうやら憲法が一番偉い規定であって、他の法律などは憲法に違反すると効力がないということを定めたのかな」位のことは(98条にそう書いてあるのですから)誰でも分かると思いますが、最高法規性を定めた98条と、その前後の97条、99条との関係、何故この3箇条で一つの章をわざわざ設けているのか、ということは少し説明を加える必要があります。
 実は、今日のお話は、この第10章の意義とこれをなきものにしようとしている自民党改憲案の対比を説明すれば、ほぼそれで尽きると言ってもよい位なのです(というか、他にも重要な論点はあるのですが、多分お話している時間がありません)。
 私自身、日本国憲法の条文を初めて通読したのは、大学の1回生として教養課程の「憲法」を受講した時だったから相当昔のことですが、その時は、「第10章 最高法規」の本当の意義は全然分かっていませんでした。
 学生時代の私が何より疑問に思ったのは97条でした。基本的人権の重要性を強調するのであれば、「第3章 国民の権利及び義務」の最初の方に置けば良いし、実際、第3章には既に以下のような条文が置かれています。

第11条 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権
、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。
第12条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。
 
 大学に入ったばかりの私には97条の存在意義が理解できず、「11条や12条と無駄に重複しているのではないか」などと考えていたものです。97条や99条の重要性を理解するまで、相当時間がかかったように記憶しています。
 ここで、97条及び99条の意義を理解するためのこれ以上ない「反面教師」として、自民党改憲案「第11章 最高法規」を読んでおきましょう。
 
現行の第97条 → 全文削除
憲法の最高法規性等)
第101条 この憲法は、国の最高法規であって、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関する
その他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。
2 日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。
憲法尊重擁護義務)
第102条 全て国民は、この憲法を尊重しなければならない。
2 国会議員国務大臣、裁判官その他の公務員は、この憲法を擁護する義務を負う。
 
 どこをどう変えようとしているのかを確認しましょう。
 97条はどうなったか?「全面削除」です。これについて、自民党「Q&A(増補版)」は、「我が党の憲法改正草案では、基本的人権の本質について定める現行憲法 97条を削除しましたが、これは、現行憲法 11 条と内容的に重複していると考えたために削除したものであり、「人権が生まれながらにして当然に有するものである」ことを否定したものではありません。」としています。
 けれども、そらなら何故11条ではなく97条の方を削除したのかについては一言も触れられていません。
 現行98条は、ほぼそのまま101条となっていますが、現行99条の憲法尊重擁護義務はどうなったか?
 まず、現行規定にはなかった「国民」の憲法尊重義務なるものが102条1項として規定されています。
 102条2項には、現行の99条からあえて「天皇又は摂政」を削除した上で、公務員の憲法擁護義務を残しています。
 
 ここで、「立憲主義」とは何かを考えるために、迂遠なようではありますが、日本で最初の近代的「憲法」として制定された「大日本帝国憲法」を振り返っておきたいと思います。
 1888年(明治21年)6月22日(大日本帝国憲法公布の約8か月前)、憲法草案を審議していた枢密院において、議長である伊藤博文が述べた以下の発言は非常に著名なものです。
 
「そもそも、憲法を創設するの精神は、第一君権を制限し、第二臣民の権利を保護するにあり。ゆえに、もし憲法において臣民の権利を列記せず、ただ責任のみを記載せば、憲法を設くるの必要なし」(原文は旧字・カタカナ・句読点なしなので、読みやすくしました)
 
 そして、大日本帝国憲法「第2章 臣民権利義務」の中で、臣民に直接義務を課す規定は、兵役の義務(20条)と納税の義務(21条)を定めた2箇条だけにとどめられていました。
 伊藤博文が正しく指摘しているように、そもそもなぜ憲法を定めるかと言えば、それは国民の権利・自由を保障する(臣民の権利を保護する)ためであって、そのために国家権力に制限を加える(君権を制限し)必要があるからです。つまり、「憲法を守らなければならない」という規範の名宛人は国家であって国民ではない、というのが大原則なのであって、これが「立憲主義」の本質です。
伊藤博文の発言の淵源の1つが、1789年~大日本帝国憲法発布のちょうど100年前~フランス人権宣言(人及び市民の権利の宣言)16条「権利の保障が確保されず、権力の分立が規定されないすべての社会は、憲法をもつものでない。」(岩波文庫「人権宣言集」の訳による)にあることは言うまでもありません。
 
 ここまで書けば、現行憲法の「第10章 最高法規」において、憲法の形式的最高法規性を明示した98条に先立ち、基本的人権の不可侵性を強調した97条がなぜその直前に置かれねばならなかったかが理解されるでしょう。
 97条は、憲法が最高法規でなければならないその根拠を明示した規定なのです。
 そして、99条の憲法尊重擁護義務に列挙された「天皇又は摂政及び国務大臣国会議員、裁判官その他の公務員」は、正に最高法規である憲法規範の名宛人である国家を実際に運営する主体であるがゆえに、明示的に「憲法尊重擁護義務」が課せられているのです。
 以上のとおり、97条-98条-99条という第10章の3箇条は、非常に論理的なつながりをもって
構成されており、最も根本的な憲法の基本原理である「立憲主義」を明らかにした章なのです。
 
 さて、自民党改憲案です。
 97条が全面削除されることにより、伊藤博文の言う「臣民の権利を保護する」という憲法の最も重要な目的が消えてなくなっています。
 98条の形式的最高法規性はそのまま残っていますが、現行の第10章において、真に重要な規定は97条と99条であり、98条はこれらの条文の存在理由を論理的に明らかにするために必要であったため、97条と99条の間に置かれた規定です。
 考えてもみましょう。憲法が形式的に法律等の規範より上位にあるなどということは、規定があろうが
なかろうが「当たり前」でしょう?
 そしてとどめは99条です。自民党は新102条で、あろうことか国民の憲法尊重義務をまず規定しました。
 実はこの規定に限らず、先に列挙したとおり、自民党改憲案には国民に義務を課す規定が目白押しです。数え方にもよりますが、新たな義務規定が少なくとも10箇所はあります。
 自民党改憲案は、国際標準で言えば「憲法」の名に値しません。
 もちろん、世界には様々な国家があり、それぞれ憲法を持っているのですから、伊藤博文が述べたような意味での「立憲主義」に立脚した憲法ばかりではなく、国民の自由・権利よりも「公益や公の秩序」を重しとする全体主義国家の憲法もあるでしょう(特定のファミリーが三代にわたって強権的に国民を支配している国も近隣にありますしね)。
 しかし、そのような「立憲主義」に立脚しない「憲法」は、「近代的意義の憲法」とは言いません。自
民党は、「立憲主義」を捨て去ることによって、日本を全体主義国家にしようと提唱していると言わざるを得ません。
(引用終わり)
 

森友学園への不明朗な国有地払下げを追及した宮本岳志衆議院議員(日本共産党)の質疑(テキスト)を読む(付・自由法曹団記者会見)

 今晩(2017年2月17日)配信した「メルマガ金原No.2726」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
森友学園への不明朗な国有地払下げを追及した宮本岳志衆議院議員日本共産党)の質疑(テキスト)を読む(付・自由法曹団記者会見)

 財務省近畿財務局が、大阪府豊中市内の国有地を学校法人森友学園に異常な廉価で売却したのではないか?という第一報を朝日新聞が報じたのは2月9日のことでした。
 
 
 この第一報では、「財務局が森友学園に売った土地の東側にも、国有地(9492平方メートル)があった。財務局が10年に公共随契で豊中市に売ったが、価格は約14億2300万円。森友学園への売却額の約10倍とみられる。ここは公園として整備された。」という部分が最も注目されたと思われます。
 この時点では、近畿財務局は売却金額を公表しておらず、隣地との売却価格の著しい落差に目が行ったのも無理はありません。
 
 しかし、近畿財務局が価格の公表に転じたものの、疑惑は深まるばかりという状況であり、朝日新聞以外の大手メディアによる報道も見られるようになりました。まだ一切報じていない大手新聞やTVもあるようですが、共産党民進党が国会で重点的に追及することになれば、いつまでも頬被りという訳にはいかなくなるでしょう。実際、NHKも今日になってようやくニュースで取り上げたようです。
 
東京新聞-共同通信 2017年2月15日 20時44分
小学校建設の国有地問題、解明へ 売却の真相、弁護士団体が表明

(引用開始)
 大阪府豊中市で私立小学校建設を計画する学校法人「森友学園」(大阪市淀川区)に、評価額の14%で払い下げた国有地の売却額を国が非開示にした問題で、弁護士団体「自由法曹団」が15日、大阪市内で記者会見し、「売却経緯の真相を解明したい」と表明した。
 会見で村山晃弁護士は、「売り払う過程に不自然な点が多い」と強調。国が地下のごみ撤去に8億円余りかかると見積もり、評価額9億5600万円から差し引いたことについて「費用の算定根拠が示されていない」などと疑問を示した。
 小学校は4月開校予定で、名誉校長は安倍晋三首相の夫人昭恵さん。
(引用終わり)
 
毎日新聞 2017年02月16日 22時08分
国有地:格安の謎…査定9億円、学校法人へ1億円で売却

(抜粋引用開始)
 国が売却した土地(約8770平方メートル)は豊中市野田町にある。取得したのは、大阪市淀川区で幼稚園を運営する学校法人「森友学園」で、今春、小学校が開校する。名誉校長には安倍晋三首相の妻昭恵さんが就くといい、注目度は更に高まった。
 元々、この地区は近くにある伊丹空港の騒音対策区域だったため、国土交通省大阪航空局が土地を買い進めてきた。航空機の性能が上がり、1989年に区域解除されたことに伴って区画整理が始まり、一つに集約された広い土地が生まれた。
 国はこの土地が不要になり、大阪航空局の依頼を受けた近畿財務局が2013年に売却先を公募。森友学園が手を挙げた。
 森友学園は15年5月、土地を借り受ける契約を結び、校舎建設に着手。ただ、地中からガラス片や木くずなどのごみが見つかった。学園側は「国に撤去を任せると時間がかかる」との理由で土地の購入を希望し、近畿財務局は昨年6月に随意契約で売却した。
 ここで問題になったのが、近畿財務局がとった売却額の非開示の措置。国の通達により公表が原則だが、学園側が地下ごみの風評被害を懸念し、開示に同意しなかった。これを問題視した豊中市議が、開示を求めて大阪地裁に提訴した。
 提訴から2日後、学園側が開示に同意し、売却額は1億3400万円と判明した。学園は「公表しないことで、不当に安く取得したと誤解を受ける恐れがある」と考えたという。
 ただ、開示だけで事態は収束しなかった。近畿財務局から依頼を受けた不動産鑑定士は、土地を9億5600万円と評価したことが明らかになり、売却額との開きに注目が集まった。財務省によると、大阪航空局は地下に埋まったごみの撤去・処分費を約8億円とはじき出しており、これが差額の根拠となったという。
(引用終わり)
 
NHK NEWS WEB 2月17日 18時38分
鑑定価格より低く売却の国有地 財務省は適正価格と説明

(抜粋引用開始)
 大阪・豊中市にあった国有地が、学校法人に鑑定価格より低く売却されたことをめぐり、財務省衆議院予算委員会で、土地で発見された大量のゴミの撤去費用として8億円余りを差し引いたもので、適正な価格だったと説明しました。
 この問題は、大阪・豊中市にあったおよそ8800平方メートルの国有地を、国が去年、大阪・淀川区の学校法人「森友学園」に、鑑定価格よりも低く売却したものです。
 これについて、17日の衆議院予算委員会財務省の佐川宣寿理財局長は、学園側に貸し付けていた国有地に小学校を建設中、地中から大量のゴミが発見され、学園側が1年後のことし4月に開校が迫る中、ゴミを撤去する意向を示したと説明しました。そして佐川理財局長は、鑑定価格の9億5600万円から8億円余りをゴミの撤去費用などとして差し引き、1億3400万円で売却したとしたうえで、「適正な価格で売り渡した」と述べました。
 一方、民進党側は「不動産鑑定の評価額より値下げされたのはなぜなのか。学校設置の認可とも関連したのではないか」と指摘しました。
 これに対し、安倍総理大臣は「妻の昭恵が小学校の名誉校長になっていることは承知している。私や妻が、この認可あるいは国有地払い下げに、事務所も含めて、一切関わっていないということは明確にさせていただきたい」と述べました。そのうえで、安倍総理大臣は「私や妻が関係しているということなれば、間違いなく総理大臣も国会議員も辞めるということは、はっきり申し上げておきたい。全く関係ない」と述べました。
(引用終わり)
 
 今日は、IWJの記事を2本、テキストと動画をご紹介したいと思います。
 1つは、一昨日(2月15日)の衆議院財務委員会における宮本岳志議員(日本共産党)による質疑のテキストです。
 いずれ、正式な会議録が衆議院のホームページにアップされると思いますが、これはおそらく会議録確定前の速記録(未定稿)でしょう。
 ざっと通読しましたが、日本共産党の調査能力の高さに感心しましたね。この質疑の模様は衆議院インターネット審議中継で見られますし、そこから切り取ったYouTube動画もありますが(1つ紹介します)、これまで朝日新聞の第一報を読んだだけで憤慨していた人に、是非このテキストを熟読して欲しいですね。動画も併せて視聴されると良いとは思いますが、私としてはテキストをまずお読みになることをお勧めします。
 非常によく出来たミステリーを読む醍醐味に近い、と言っては不謹慎でしょうが、どこに問題の所在があったのかという目の付け所が非常に的確であると思いますし、私としても非常に参考になりました。
 今日(2月17日)の衆議院予算委員会でもこの問題が取り上げられたようであり、さらに新しい疑惑が出てきているかもしれませんが、15日の宮本岳志議員(と日本共産党タクスフォース)によって明らかにされた点を出発点とし、これを多くの国民の共通認識にする努力をしなければならないと思います(ということで、私もメルマガ&ブログで取り上げたのですが)。
 
IWJ 【国会ハイライト】国有地が9割引の1億3000万円で払い下げ!次々と明らかになる「森友学園」をめぐる国ぐるみの疑惑!共産党・宮本岳志議員の追及を全文掲載!「極右学校法人の闇」第2弾! 2017.2.17
 
「森友学園」国有地払い下げ問題 国会で追及へ! 宮本岳志(共産)2/15 衆院財務金融委員会(32分40秒)

 
 なお、上記の宮本議員による質疑をより良く理解するために、以下の文書は目を通しておかれた方が良いと思います。
 
大阪府私立学校審議会 平成27年1月30日答申
大私審第15号 小学校の設置について(答申)

(抜粋引用開始)
 平成26年12月9日け私第2826号で諮問のあった事項については、平成27年1月27日開催の大阪府私立学校審議会臨時会において、下記のとおり結論を得たので答申します。
                    記
第4号議案  瑞穂の國記念小學院の設置の件
 慎重審議の結果、上記の件について以下の条件を附して認可適当と認める。
 小学校建設に係る工事請負契約の締結状況、寄附金の受入れ状況、詳細なカリキュラム及び入学志願者の出願状況等、開校に向けた進捗状況を、次回以降の当審議会定例会において報告すること。
(引用終わり)
 
国有財産近畿地方審議会 第123回(平成27年2月10日) 議事録
(抜粋引用開始)
【藪野委員(弁護士(藪野・藤田法律事務所))】 売買予約契約を予め結んでおかれるということだったのですが、価格ですね。通常は、価格をフィックスして、予約完結権を行使したときに、それで売買が成立するということになるかと思うのですが、今回違いますね。
 先ほどその年度ごとに相続税路線価格を示して協議するというお話もありましたけれども、価格の設定はどのようにされているんですか。
【立川管財部次長】 これは一般的に不動産鑑定士に評価をお願いしてそれを使うと。それを買い受けが可能となった時期にタイムリーに鑑定評価に出しまして、その有効期限内に買っていただくという形でやらせていただこうと思っています。
 ですから、売買予約契約書には時価で買いましょうと、借地権も見ませんというふうなことを特約で盛り込んでいるところでございます。
(略)
【平井委員(㈱読売新聞大阪本社編集局 管理部長)】 今回の件は、当審議会よりもむしろ私学審で議論があり、たぶんその議論の決着が着いたから今回の審議会に持ち込まれたのだと思います。その上でまず、この少子化の中で、「私立の小学校を作るのでその運営主体に土地を売却する」ということですが、私学の小学校経営というのは本当に大丈夫なのでしょうか。それから、10年間まず借地として貸して、その後に時価で売るとのことですが、今後10年間の地価の推移がどうなるか、また、今後10年で私立の小学校の経営環境というのはそれほど改善しないと思われますが、いざ、売却する段になって、地価が上がっていて、買い手が「その価格では買えません」と言い出すリスクはないのでしょうか。
【立川管財部次長】 リスクはあるといいますか、一般的に同様の事案全てに当てはまることだと思うのですけれども、リスクは一定程度あるのだというふうに思っています。
(略)
【角野委員(関西学院大学総合政策学部教授)】 今の件の確認ですけども、だいたい学校法人の背景というのは普通の企業会計とは全然違っていまして、かなりリスクヘッジがかかっているということは理解しているのです。それでも、今のお話で10年の期限で、10年経ったときに売買契約が結べない、恐らく在学生の利益のためには引き続き、その定借期間を延長せざるを得ないということが見えていると思うのですけどね。その上で、なおかつさらに経営が行き詰まったときには、想定されるのはまず募集停止にして、その上で現在そのときに在学中の児童が卒業するまでは面倒見ますと。そのお金はちゃんと内部留保させられているはずなのですよね。
 ということで、そこまでの安全はきっと私学審議会でチェックされているとは思いますが、その上で10年経って定借延長します。しかし、さらに経営が改善される見込みがなくて募集停止になりましたというような最悪の際には、こういう土地は定借の期間をあるところで打ち切って国に戻すというような流れになるのでしょうか。
【立川管財部次長】 そうですね。事業用定期借地契約の中に、我々、先ほども説明しましたが、用途指定制度を特約として盛り込んでおりまして、まず入り口ではきちんと期日までに小学校が実際にできるかどうかというところでまず、もしできなければ事業予定者とはいえ、その時点でできないのであればもう打ち切りますよと。土地を更地にして返してくださいよということを義務付けています。
(略)
【今井委員(奈良女子大学 名誉教授)】 先ほどから出ているご意見のとおり、そういうふうに考えますけれども、私学審でどのくらい短期間の間に認可されるのかというのが、まずかなり条件が付いているのは少し気になるところではあります。
【立川管財部次長】 私学審の附帯条件、あくまでといいますか、答申は認可適当ということで、いずれ要件が整えば認可をするというふうなことで答申がなされておりまして、それをより現実的なものにするために、森友学園に対して一定のことをしなさいと、それを私学審のほうでグリップするので定例的に報告をしなさいと、進行管理をするというふうなことで、認可に向けての条件でございますので、この条件を淡々と履行していけば学校もできますし寄附も来るでしょうしと。工事契約なども今、収支計算に盛り込んでいる請負代金の金額でやっていくんだということを、一つ一つつぶしていくということの趣旨を踏まえて、こういった附帯条件ということとされておりますので、我々もそういった条件が履行された上で認可を得られることを前提として処理を今、進めていこうというふうに考えておりまして、こういった形で諮問させていただいているところなのでございますけれども、今の段階でそういったことが確定的にできないというふうなことでもあれば、そもそもこうやって諮問すらしませんし、こういった申請自体もあり得ないと思うのですけれども、一応こういったことをきちんと履行することということで先方から申請を受けて、進めるということでやってきておりますので、ここはスタートするべきなのだろうというふうに考えているところでございます。
(略)
【中野会長(京阪神ビルディング㈱代表取締役社長(元三井住友銀行副会長))】 いろんなご意見が出る中で、基本的にやっぱり安定的なところにお貸しをして、かつ購入してもらうということが国有財産は前提ですよね。学校法人ですから悪いわけではありませんが。したがって、附帯条件が付いて認可適当というのは条件が満たされて認可適当になりますので、それが満たされるという前提の中でこの審議会としては了というような形でまとめていったらどうかと思うのですが、そういう形でよろしゅうございますか。私学審議会において、附帯条件が極めて明確に付いていますので、こういう前提の中で進めさせていただくということでよろしゅうございますか。(「はい」の声あり
それでは、そういうことでご了承いただいということで。
(引用終わり)
 
 もう1つのIWJの記事は、宮本議員が国会で国を追及していた同じ2月15日、自由法曹団大阪支部と京都支部の弁護士が、豊中市の現地調査を行った後、大阪地裁本館1階記者室で行った記者会見の動画です。全編(40分14秒)視聴しましたが、少なくとも私には非常に有益でした。
 私は、この自由法曹団の記者会見動画を視聴してから宮本岳志議員の質疑のテキストを読みましたので、それでよりよく理解できたのかもしれません。
 もちろん、「売買予約」とか「予約完結権の行使」とかの法律用語が出てきますので、民法の基礎知識の有無で理解度に差が出るのはある程度致し方ないとは思いますが、それでも、記者会見の動画を視聴し、それから宮本議員の質疑をテキストで読むというのが、一番のお勧めの方法です。
 

関西ローカルだけど見て欲しい!~2/26『消去される自主避難者(仮)』(MBSドキュメンタリー映像'17)付・2/10「ちちんぷいぷい」も良かった

 今晩(2017年2月16日)配信した「メルマガ金原No.2725」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
関西ローカルだけど見て欲しい!~2/26『消去される自主避難者(仮)』(MBSドキュメンタリー映像'17)付・2/10「ちちんぷいぷい」も良かった

 「関西ローカルでの放送であることがまことに残念な」と多くの視聴者が口にする大阪・毎日放送MBSドキュメンタリー映像(今年は「'17」が最後に付きます)は、原則として、毎月最終日曜日の24時50分~25時50分に放送されます。
 先月(1月29日)放送された『沖縄 さまよう木霊~基地反対運動の素顔~』(ディレクター:斉加尚代さん)も素晴らしい作品でしたが、今月(26日)放送される番組も見逃せません。
 
2017年2月26日(日)24時50分~25時50分(27日・0時50分~)
毎日放送 MBSドキュメンタリー映像'17
『消去される自主避難者(仮)』

東日本大震災とそれにともなう原発事故からまもなくまる6年。この3月末で、国が設定した避難指示区域外から避難している“自主避難者”への住宅無償提供が終了する。これにより自主避難者は「帰還」か「定住」かの選択を、否応なく迫られる。国や福島県は、避難指示区域外は放射線量も低く、「避難する状況にない」とするが、本当にそうなのか。「このままでは避難者が消去され、原発事故がなかったことにされてしまう」・・・被災地から日本各地に離散した自主避難者を訪ね、早期の避難終了へのさまざまな思いと、制度の問題点について考える。」
 
 この番組についての紹介は、今のところ以上で全てですが、今後、「取材ディレクターより」が追加掲載されることもありますので、気がついたら(ブログ版だけですが)補充紹介しようと思います。
 
 ところで、もしかしたら上記番組のための取材ソースを利用してだったかもしれないのですが(多分そうでしょう)、同じMBS毎日放送)が、月曜日から金曜日までの毎日、13:55~17:50という時間枠で放送している「ちちんぷいぷい」という情報番組の中の「石田ジャーナル」というコーナーで、去る2月10日(金)、「故郷に帰るか、それとも・・・きょうのテーマは原発事故による避難者の話」という特集が放送されました。
 ・・・と書いたものの、毎日放送が昼間から夕方にかけて、何と4時間近い長時間の情報番組を放送しているなどとは全然知らず、もちろん見たこともありませんでした。このことは、森松明希子さんが
Facebook自主避難者仲間の田中里子さんが上記番組の放送内容をFBでレポートした文章をシェアしていたので気がついたのです。
 そして、田中里子さんのレポートを読み始めてから、私自身、「そういえば田中さんともFacebook友達になっていた!」ことを思い出したのでした。
 その田中里子さんのFacebookでのレポートは、まもなく「東日本大震災避難者の会 Thanks & Dream(サンドリ)」ブログに転載されており、サンドリ代表の森松さんも、FBで「各種mlでも情報拡散、お願いしますm(._.)m」と書かれていましたので、私のブログに全文転載しても差し支えないでしょう(田中さんのFBでの元記事も公開設定だったし)。
 
【3.11避難者のレポート】MBS ちちんぷいぷい「原発自主避難者住宅支援問題」(2017年2月10日・毎日放送を見て)
(引用開始)
昨日、たまたまTVをつけたら、MBSの「ちちんぷいぷい」という情報番組だった。
そこで特集されてたのが、原発自主避難者。
今年3月で打ち切られる住宅支援問題を絡めた話。(ちちんぷいぷい動画
なかなかの良質な内容だったと思うので、一日遅れですが紹介します(長いです)。
 
まず、映されたのが2011年12月に文科省が計測した航空モニタリングでのセシウム134と137の土壌沈着量のマップ。
これを見せながら、『放射線管理区域』にしなければならないようなレベルの醜い汚染が福島だけでなく、他の県――――宮城、茨城、栃木、群馬、千葉、東京などにも広がっている、と。
 
おお!これは。。。決して関東方面では報道されないことじゃないか。
 
私、東京→三島→大阪の避難者だけど、三島にいたときも聞かなかったな。

ここで、『放射線管理区域』の説明が入る。
「例えば、レントゲン室。飲食も禁止。寝ることも禁止。子どもは立ち入り禁止の場所です」と。
「でも政府から避難指示が出たのはこの地域のみ。」と赤く塗られた地域を指す。
これは原発から20km以内の場所、また年間20ミリシーベルトを超える地域。
 
ここ以外の地域でも。。。お子さん、いてはったら。。。。逃げるでしょ?(一同、大きく頷く)
でもそうした人たちは自主避難者にされてしまうんです。」
 
「居ても寝てもあかん場所やのに!?」という声が入る。
 
その住宅支援が今年3月で終了する事が決まっており、
避難者達は『帰還』か『定住』かの苦渋の選択を迫られている。
 
ここで入ったのが茨城と福島から大阪に自主避難されているお二人のインタビュー。
避難に伴う苦しい暮らしぶりが伝わってくる。
 
「困ってます、本当に。。。」
「避難した時と状況は変わらない。とてもじゃないけど戻れる気持ちにはなれない。」と答える避難者の
女性。
 
住宅は誰にとっても暮らしの基盤だ。それをもとに仕事が決まり、学校生活が始まり、生活のためのネットワークが築かれていくのに。
 
避難者が住宅支援の延長を求めても、頑なに退け、寄り添う気を全く見せない国と福島県
 
大阪府大阪市も「災害救助法の適用が終了する中、
独自の被災者支援の実施は予定しておりません。」
という紋切り型の返答を繰り返すばかり、全く呆れる。
 
避難者女性の悲痛な訴え、
「じゃあ、私たちはどこに訴えたら寄り添った制度に変えていただけるようにお願いできるんですかね?

これには、あの人達、どう答えたのだろう。。。
 
そのあと、住宅支援に関する井戸謙一弁護士のコメント。
原発事故は長期にわたって被曝が続きます。自然災害を想定した災害救助法の枠組みで住宅支援をする
のは問題です。」
原発を推進してきた国は責任を取っていません。加害者として被災者の住居を確保する責任から新たな
制度を立ち上げる必要があったと思います。」
 
本当にそうだ、原子力惨禍は普通のいわゆる自然災害とは違うってのは誰でもわかることなんじゃないの
一度汚染された土地は長い年月をかけても元に戻らない。これまで体験したことのない桁外れの被害を生
んだ、あるいは今も進行形で生んでいる『人災』なのに。
なのに、加害者である国はどうして新しい法律を作って被害者住民を救済しようとしないんだ?
 
「とにかく、今、国は戻したくってしょうがないんです。除染したって言ってますけどね、山や細かい所まではしてない。避難者の人たちが自宅に戻って実際に測っても『むっちゃ高いやん』ってことがあったりする。」
(こういう説明ってメディアであまり聞かなかった気がするから意外だった。原発イジメはどこも取り上
げたけど、実際問題、なぜ帰れないのか、避難元の汚染&除染の事態はどうなのか、は触れてなかったよ
うに思う。これ、ちゃんと言ってくれないと、自分のワガママで帰らない人、っていう誤解は解けないよね。)

何が何でも帰還させたい国と自治体。
彼らが返答にもならない返答を繰り返すのを聞いてて、先日、日テレの深夜番組でおしどりマコさんが話
してた言葉が頭をよぎった。
とある専門家が言ってたという驚愕の言葉。
「世界で既に50基の原発を作ることが決まっている。今までは原発は事故を起こさない、というセール
トークをしていたが、福島で原発事故が起こってしまった以上、住民たちが除染し、住み続けることが出来る、事故が起こっても大丈夫、というモデルケースをつくっていくことが重要。」というもの。
はぁ!?人の命を賭しても作りたいモデルケースって何なんだ。。。もはや憤りを通り越して、こういう
ことを真面目に考え付く人たちと交わし合える言葉って私達にはあるんだろうか、と思ってしまう。
ま、自分なりにやれることをやっていくしかない、っていつもこれで終わるんだけど。

最後に、自主避難者の問題を分かり易く、丁寧に説明し、かつ事実を歪曲することなく伝えてくださった
この番組に感謝したい。
その中でも紹介してたけど、自主避難者にフォーカスし、取材した番組が今月放送されるそうで。
絶対見ないとねって思う。
皆さんもぜひ!
(東京→三島→大阪・田中里子 20170211)
 
2月26日(日)深夜0時50分~ MBS『映像’17 消去される自主避難者』(関西地区のみ放送)
(引用終わり)  
 
 なお、この約17分のコーナーでは、何人かのコメンテーターというかレギュラー出演者というかが、石田英司さんの解説に肯いたり、間(あい)の手を入れたりするのですが、その中で最も適切で納得のできる発言をしていたのは桂吉弥さんでしたね(なぜ私がそう言えるかはあえて書かない方が良いでしょうけど)。
 
(付記)
 ところで、サンドリ・ブログを閲覧していると、「『3.11避難者の声~当事者自身がアーカイブ~』表紙決定しました!東日本大震災避難者の会 Thanks & Dream 通称:サンドリ」という、ほぼ写真だけの記事が目につきました。
『3.11避難者の声~当事者自身がアーカイブ~』(サンドリ)表紙 代表の森松さんがにこやかに微笑み、「チラ見せ!」「絶賛準備中」という吹き出しがついた写真から分かることは、サンドリが発行する避難者の声を集めた新しい冊子が発行間近ということですね。そういえば、この前大阪で森松さんに会った時にそんな話が出ていたような。
 と思ったら、原発賠償関西訴訟弁護団のMLに、Y弁護士から、「東日本大震災避難者の会Thanks & Dream(サンドリ)が新冊子「3.11避難者の声」を発行しました。(略)避難者の生の声が詰まっています。私の事務所に多数お預かりしています。」という投稿が。つまりもう出来上がったのですね。
 Y弁護士からは、「一部につき〇〇〇円のカンパをお願いします。これが、サンドリの活動に活かされ
ていきます。」と要請されていますが、これは弁護団メンバーに対してなので、サンドリ自体が一般に頒布する場合にどうするかは、公式ブログでの発表をお待ちください。

詳報・内容確定!“フクシマを忘れない!原発ゼロへ 和歌山アクション2017”(2017年3月12日@和歌山城西の丸広場)

 今晩(2017年2月15日)配信した「メルマガ金原No.2724」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
詳報・内容確定!“フクシマを忘れない!原発ゼロへ 和歌山アクション2017”(2017年3月12日@和歌山城西の丸広場)

 以下のとおり、昨年12月に「速報」を、先月(1月)末に「続報」をお届けした“フクシマを忘れない!原発ゼロへ 和歌山アクション2017”(2017年3月12日@和歌山城西の丸広場)の正式チラシがようやく届きましたので、予告通り「詳報」をお伝えします。
 ただし、「詳報」だからこれまでで一番詳しい記事になるということではなく、より正確に言えば、最終的に決定した内容をお伝えするということですから、「確報」とでもした方が適切なのかもしれません。
 
 
 それでは、早速、チラシ記載情報をご紹介します。
 ただし、チラシの表面と裏面には、重複箇所も結構ありますので、私の責任で適当にシャッフルして整理したハイブリッド版をお送りします。オリジナルのチラシは、PDFファイルでご確認ください。
 
チラシ記載情報から引用開始)
フクシマを忘れない!
原発ゼロへ
和歌山アクション2017
 
2017年3月12日(日)10:00~15:00
和歌山城西の丸広場
 
参加無料
小雨決行
 
内容盛りだくさん!
ミニSLが走るよ!
 
主催 「フクシマを忘れない!原発ゼロへ 和歌山アクション2017」実行委員会
連絡先 実行委員会事務局 
 TEL:073-436-3520 FAX:073-436-3554 
 E-mail:w-gezero@naxnet.or.jp
実行委員(会構成)団体
楠見子連れ9条の会、原水爆禁止和歌山県協議会、原発をゼロにする和歌山県民の会、憲法を生かす会和歌山、子どもたちの未来と被ばくを考える会、原発を止めよう和歌山市民の会
  
 
「フクシマを忘れない!原発ゼロへ 和歌山アクション2017」は、原発ゼロ、再稼働反対をアピールするつどいです。どなたでも参加できます。気軽にお寄りください。
 
全体集会 10:00~11:00
・オープニング
  バンド演奏:紀州五十五万石
・実行委員会挨拶
・福島からの報告
  元双葉高校教員 松本佳充(よしみつ)さん
  3.11原発事故当時、双葉高校に勤務。(自宅は帰宅困難区域)
・集会アピール
 
アピールパレード 11:10~12:10
パレードコース
西の丸広場→砂の丸広場横→追廻門→県庁前交差点→(左折して三年坂通り)→屋形町交差点(この交差点角に関西電力和歌山支店がある)→(左折して屋形通り)→三木町交差点→(左折してけやき大通り)→西の丸広場
たいこ、コスプレ、ぬいぐるみなど、大歓迎です。プラカードや横断幕など用意して参加いただければうれしいです。
 
ブース企画 12:00~14:30
・模擬店 飲食物など
・展示(福島原発被災地パネル)
・子ども向けブース(プラバン、エコカルタ、絵本の読み聞かせなど)
★ミニSLが走ります
 
ステージ企画 12:30~14:45
・紀北農芸高校(和太鼓)
・円香(まどか)(歌うたい・アーティスト)
・子どもたちの未来と被ばくを考える会(コント)
・ナツオ(ウクレレ弾き語り)
・実行委員団体(1分間アピール)
 
県内の3.11関連企画
●那賀●「フクシマを忘れない原発ゼロ那賀2017」 原発再稼働反対スタンディング
 3月12日(日)10:00~10:30 岩出市紀の川市
●西牟婁●「フクシマを忘れない!原発ゼロ紀南アクション」 パレード
 3月11日(土)16:20 田辺市
(引用終わり) 
 
 以下、アトランダムにいくつか補足説明をしておきます。
 
〇全体集会のオープニングを飾るユニット「紀州五十五万石」の演奏に初めて接したのは、2015年3月8日に開催された“フクシマを忘れない!原発ゼロへ 和歌山アクション2015”でのことでした(あの時は、ただの「五十五万石」といったと思うけど、いつから「紀州」がついたのだろう?)。リードボーカルの歌舞さんを支える男性2人は、実名を公表しているかどうか未確認のため、お名前を紹介するのは控えます(みんな知ってるでしょうけど)。
CIMG3221 おそらくこのユニットでの最新の演奏が2月12日(日)にポポロハスマーケット和歌山市中ぶらくり丁)で行われたようで、12時からのステージ出演者に「紀州五十五万石」の名前が見えます。
 ところで、3月12日のオープニングで紀州五十五万石が歌う曲が何か?ということは(他の出演者もそうですが)チラシには何も書かれていませんので、当日のお楽しみなのですが、本メルマガ(ブログ)の読者にだけそっと(でもないか)お知らせすると、スリーマイル島原発事故発生の半年後、1979年9月に開かれた“NO NUKES コンサート”のテーマ曲としてジョン・ホールが作った“Power”を日本語詞で歌うのではないかという噂を耳にしました。当たるも八卦当たらぬも八卦ということで、お楽しみに。
 
〇全体集会のメインゲストは、3.11当時、福島県立双葉高校で教員をされていた松本佳充(まつもと・よしみつ)さんです。浪江町のご自宅は帰還困難区域と指定されています。私たち実行委員が会議の際に読ませてもらった資料の中に、松本さんが書かれた「迷犬タロの物語」という一文がありました。福島県立高等学校教職員組合女性部が編集した『福島から伝えたいこと 第3集 希望は闘いの中に』に収録されています。
 長年共に暮らしてきた犬(雑種のタロ)を、3.11原発事故による避難指示によって心ならずも置き去りにして大量被ばくさせてしまったこと、一時帰宅して生き延びていたタロと2度にわたって再会できたものの、避難先に連れて行けるか分からず、車で立ち去る松本さんをどこまでも走って追いかけてきたタロの姿、3たび一時帰宅したものの行方が分からなくなっていたタロと埼玉県の動物保護団体の施設で奇跡的に再会し、再び一緒に暮らせるようになったこと、しかし、やがて元気をなくして病死したタロ。たんたんとした叙述であり、ことさら原発事故を呪うような表現はありませんが、かえって胸に迫るものがあります。
 その冊子の表紙が掲載されたサイトがありましたが、その表紙に描かれた絵は、松本さんの「迷犬タロの物語」をモチーフにして描かれたのではないかと思います。
 今年の“フクシマを忘れない!原発ゼロへ 和歌山アクション2017”のチラシのために奥野亮平さんが描いてくれた原発イランウータンが犬と一緒にいるイラストも、「迷犬タロの物語」にインスパイアされての図柄だと推測します。
 
〇今年は、2013年以来4年ぶりに、ミニSLが西の丸広場にやって来ます。4年前の写真を掲載した私のブログ(「福島を忘れない!原発ゼロ 和歌山3・10フェスティバル」写真集)をご覧ください。
 2013年もミニ蒸気機関車がやって来る!と宣伝し、たしか原発イランウータンもSLにまたがっていたと思います。たしかにミニSLは西の丸広場にやって来たのですが、私のブログの写真のとおり、実際に子どもたちを乗せて喜ばせてくれたのはミニ新幹線でした。ミニSLが動かなかったのは、何らかの技術上の問題があったためと聞いています。
 そして今年2017年、万全の準備の上、再びミニSLがやって来ます。ここでは、今度こそ無事西の丸広場をミニSLが疾走することを祈りつつ、愛好者のメッカ、ミニトレインパークを走るミニSLの勇姿を、小谷英治さんのYouTubeチャンネルからご紹介します(ここに映っているミニSLがやって来るという訳ではないでしょうが?)。

 
〇今年のステージ企画では、新趣向として、子どもたちの未来と被ばくを考える会によるコントが上演されます。同会共同代表の松永久視子さん(司会も担当されます)の話によると、ごく短時間のコントのようなのですが、中身については見てのお楽しみとさせていただきます。
 
〇ステージ企画には、紀北工芸高校の皆さんによる和太鼓演奏もあるというのが楽しみですね。なお、円香(まどか)さんとナツオさんについては、「続報」で詳しくご紹介しましたので、そちらをご参照ください。
 
〇全体集会終了後のアピールパレード、やはり関電前を通らない訳にはいかないだろうということで、今年も和歌山城周辺の大回りコース(約1時間)で行います。是非多くの方のご参加をお願いします。
 

(付録)
紀北農芸高校和太鼓部 『鼓風
華』
 
紀北農芸高校和太鼓部 『農芸流れ太鼓』
 

※第46回和歌山県高等学校総合文化祭邦楽部門発表会より

フクシマを忘れない!2017(表)フクシマを忘れない!2017(裏) 

司法に安保法制の違憲を訴える意義(10)~東京地裁「女の会」訴訟(第1回口頭弁論)における原告・原告代理人による意見陳述

 今晩(2017年2月14日)配信した「メルマガ金原No.2723」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
司法に安保法制の違憲を訴える意義(10)~東京地裁「女の会」訴訟(第1回口頭弁論)における原告・原告代理人による意見陳述

 2016年8月15日、全国の女性106人が原告となり、違憲な安保法制の制定によって被った損害の賠償を求め、東京地方裁判所に国家賠償請求訴訟を提起しました。いわゆる「女の会」訴訟です。
 その第1回口頭弁論が、去る2月10日(金)午後3時から、東京地方裁判所103号法廷で開かれました。当日は、原告代理人2名(中野麻美、角田由紀子両弁護士)と原告2名(池田恵理子さん、高里鈴代さん)による意見陳述が行われましたが、その陳述用原稿を本メルマガ(ブログ)に転載するご許可をいただきましたのでご紹介します。是非1人でも多くの方にお読みいただきたいと思います。
 
 ご案内のとおり、東京地裁には、既に「安保法制違憲訴訟の会」による差止訴訟と国賠訴訟が提起(2016年4月26日提訴)されており、その他にも、全国各地で多くの違憲訴訟が提起されています。もちろん、それらの訴訟には数多くの女性が参加されています。
 それにもかかわらず、何故女性だけの訴訟提起が必要だったのか?について、疑問を持たれる方がおられるかもしれません。
 幸い、第1回口頭弁論前に発行された「違憲訴訟の会ニュース 第3号(2017年1月25日発行)」に、安保法違憲訴訟「女の会」事務局・亀永能布子さんによる文章が掲載されていましたので、その一部を引用させていただきます。
 
女たちの安保法制違憲訴訟 2 月10日、第1回口頭弁論 
傍聴へのご支援をお願いします

(抜粋引用開始)
(略)
 
私たちが女性たちだけで違憲訴訟を起こした理由の一端が、この裁判長の態度に示されています。国の違憲・違法な新安保法制の制定・施行によって、憲法に保障された私たちの権利が侵害されました。その権利とは、憲法制定権・平和的生存権・人格権ですが、特に、私たちの裁判では、法の成立過程でも、法の内容においても、女性の代表権が奪われ、女性の権利が侵害されたと訴えています。
 女性にとって、戦争は特別な影響と被害をもたらします。戦争は女性の身体と性を道具にします。戦時性暴力(日本軍「慰安婦」制度)や、今なお世界の戦争で支配の手段として行われている女性への集団レイプ、米軍基地周辺で繰り返される女性に対する性暴力犯罪や殺人事件。女性に対する暴力は、戦争・軍隊と一体化してその装置として組み込まれています。それだけではありません。戦時体制への国民の動員は、過去に経験したように、性別役割分業と家父長制による女性支配を強めます。しかし、国会では、女性にかかわる問題は一切審議されませんでした。唯一、女性と子どもが登場したのは、安倍首相が、アメリカの軍艦に女性と子どもが乗っているフリップを使って、「日本の女性と子どもを守るために自衛隊が米艦船を護衛しなければならない」と、強弁した時だけです。これは嘘で、アメリカの軍艦が他国の民間人を乗せて救護することはありえません。安倍首相は、戦争加担を正当化するために、女性と子どもを利用したのです。
 「女・子どもを守るために」という論理は、たとえば、沖縄戦で起きた悲惨な「集団自決」が「生きて米軍の捕虜になれば女は強かんされ殺される」と住民を脅し、「玉砕」に追い込んだ構造と同じものであることを思い起こさねばなりません。
 また、私たちはこの裁判で、「武力による紛争解決モデル」が社会的に承認されることによって暴力と差別が蔓延し、平和と民主主義、基本的人権の尊重という憲法で守られた生活の土台が掘り崩されていくことも訴えていきます。みなさまのご支援と、第1回口頭弁論の傍聴をよろしくお願いします。

(引用終わり)
 
 私がこれに付け加えることはありません。ただ、引用部分の冒頭で「この裁判長の態度」と述べられた内容を知りたい方は、リンク先で原文をお読みください。裁判官も口が滑るということはあるでしょうが、それも元来の心掛けが自然に発露するものですからね。
 もっとも、報告集会冒頭での中野麻美弁護士の報告によると、事前協議から第1回弁論までの間に裁判長が交代したようです(事前協議での不適切発言が交代の原因か否かは不明です)。
 なお、その中野弁護士の報告で語られた(法廷でも陳述された)キャッチフレーズ「平和なくして男女平等なし 男女平等なくして平和なし」が端的にこの訴訟の意義を語っていることを申し添えます。
 
 当日、裁判終了後に行われた記者会見と報告集会の模様については、UPLANによって動画がアップされていますのでご紹介します。
 
20170210 UPLAN【記者会見・報告集会】女たちの安保法制違憲訴訟(1時間32分)

冒頭~ 開廷前の東京地裁前街頭宣伝
5分~ 第1回口頭弁論終了後の記者会見

 6分~ 中野麻美弁護士
 9分~ 原告・池田恵理子さん(元NHKディレクター)
 14分~ 原告・高里鈴代さん(元那覇市議会議員)
17分~ 角田由紀子弁護士
 19分~ 経過報告
 20分~ 質疑応答
32分~ 報告集会
 33分~ 第1回口頭弁論の報告 中野麻美弁護士
 44分~ 原告・福島瑞穂さん(弁護士、参議院議員
 47分~ 原告・池田恵理子さん
 54分~ 原告・高里鈴代さん
 1時間07分~ 角田由紀子弁護士
 1時間14分~ 全国の訴訟の取組から 杉浦ひとみ弁護士
 1時間22分~ 質疑応答
 

原告ら代理人 弁護士 中野麻美
 
1「平和なくして男女平等なし」「男女平等なくして平和なし」
 これは、女性の参政権と地位向上に尽力した市川房枝が先の戦争から得た教訓です。
 日本国憲法は、個人の尊厳のうえに差別のない社会を実現することを国家の使命とし、軍隊をもたず戦争を放棄することを誓いました。この憲法をもったことは、原告らの誇りであり、粉骨砕身、差別や暴力のなかから人生を切り開き、行動する支えになってきたものでした。
 
2 戦争は人間を目的化・道具化・序列化します。個人こそ社会の主人公であって、自由にして平等であるという基本原理にたったときには、戦争は放棄されるべきです。また、戦争と軍隊は、女性の性を道具として支配の対象にしてきました。憲法が男女平等の本質的かつ普遍的な権利を保障する以上、戦争放棄条項も永久普遍の原理として守られるべきものです。
 
3 私たちがこの訴訟で問題にしている安全保障法制は、その制定過程から重大な憲法違反を重ねるものでした。
 憲法学者のほとんど全員が憲法違反だというのに、政府は、これまでの解釈をクーデタのように変えてこの法律を国会に上程し、武力による紛争解決を法的に承認してしまいました。
 世論が注目する国会などの場面では、何度も「女性と子どもを護る」というフリップを用いて武力行使の必要性を説明し、家父長制と戦争の正当性を繰り返し人々にイメージさせました。
 世界各地で、女性に対する性暴力・性虐待が戦争の手段にされたくさんの人たちを傷つけています。日本軍性奴隷制や米軍による性暴力がいまだに女性たちを傷つけていて、戦争は終わっていないのです。そして、戦争の正当化が日常の生活における女性に対する暴力や差別を強化することが告発されてきました。
 安全保障法制は、生活のあらゆる場面において女性の権利を脅かします。
 それなのに、これらのことは何一つとして議論・検討されないまま、この法律は強行採決されました。いったい、どうしてそれが「積極的安全保障」に資するもので、「国民の人権を守る」ことになるのか、国際紛争への軍事介入や日本の軍事化は女性たちの人権を侵害するものではないのか、私たちはきちんとした説明を受けていないのです。
 にもかかわらず数を頼んでこの法律を強行採決するのは、デモクラシーの理念の否定であると同時に、女性たちの政治的権利を否定するものです。
 
4 立法やその制定過程が憲法に違反し、正当性もなく、民主的代表制を完全に無視して制定されたとき、そのような法律は廃止されるべきであり、この国と社会の主人公としてその効力を認めるわけにはいきません。立法府と異なる立場からそれを判断するのが裁判所に与えられた使命です。裁判の公開の原則のもとに立法過程をすべて明らかにし、検証しなければならず、私たちにはそれを求める権利があります。
 被告国は、私たちの主張は、単なる不安や危惧を抽象的に述べるにとどまるものであるから国賠法上の要件を満たさないといっています。そして、安保法制の違法性を裏付ける重要な事実について、「認否に値しない」として回答を拒否しています。このような姿勢は、国民から信託を受けた政府の対応としても、訴訟当事者としても許されるべきではありません。
 
5 原告ら各人の権利侵害はそれぞれ多様です。そして、政府や国会議員の違法行為は、既に原告らそれぞれの権利利益を現実に侵害しています。被告国には、このような訴訟態度を直ちに撤回してきちんと認否反論して証拠を提出するよう求めます。また裁判所には、違憲審査権を行使するにふさわしく、訴訟指揮権を行使されるよう強く求めるものです。
                                        以上
 

 
 私は1950年、大空襲で多数の犠牲者を出した東京・江東区に生まれ育ち、高校時代にはベトナム戦争での惨たらしい戦場報道に接して戦争は絶対嫌だと思ってきました。中国に出征した父に戦争体験を聞いても、住民虐殺や強かんには沈黙するだけだったので、「加害兵士の娘である私」を自覚するようにもなりました。1973年にNHKのディレクターになってからは、大空襲や原爆、中国残留孤児など、戦争体験を語り継ぐ番組を数多く作りました。「慰安婦」の番組も1991年から96年までに8本は作りましたが、97年以降は企画が全く通らなくなり、一市民として「慰安婦」被害者や元兵士の証言を記録する活動を始めました。「慰安婦」制度を裁いた2000年の女性国際戦犯法廷には主催団体の一員として取り組み、2010年にNHKを定年退職した後は、日本で唯一の「慰安婦」資料館、アクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」(wam)の館長となって今に至っています。
 こうした経験から、憲法改正をライフワークと公言する安倍晋三首相が、日本を「普通に戦争ができる国」にしようと強行した安保法制の制定・施行を許すことができません。首相はこの20年余り、「慰安婦」の記録と記憶を抹殺しようと躍起になってきました。これは、戦争と性暴力をなくすために勇気をふるって凄惨な被害体験を語ってくれた女性たちを再び傷つけるものです。
 
●日本軍は戦争中、アジア各地に慰安所を作りましたが、そのきっかけは日本兵の強かんが頻発した南京大虐殺でした。慰安所は強かん防止と性病予防のため中国各地に設置され、戦域が東南アジアに広がると、現地女性を拉致・監禁・輪かんする「強かん所」も増え続けました。しかし厳しい報道規制によって慰安所の存在は国民には知らされず、敗戦直前には戦犯裁判を恐れた軍上層部が関連文書を焼却させました。兵士たちは「慰安婦」を“戦場の売春婦”と思い込まされ、加害の意識はありませんでした。
 「慰安婦」制度が性奴隷制であり、女性への人権侵害で重大な戦争犯罪だと知られるようになったのは、1991年に韓国の金学順さんが名乗り出てからです。彼女は日本政府が「慰安婦は民間業者が連れ歩いた」と答弁したことに憤り、立ちあがりました。それを機に、韓国、フィリピン、中国、台湾、オランダなど各国の女性が名乗り出て、日本政府に謝罪と賠償を求める裁判を起こしました。これら10件の裁判は最高裁で原告敗訴となりましたが、8件の裁判では事実認定がされています。また審理過程で綿密な聞き取りや資料発掘が行われ、「慰安婦」制度の実態と全貌がわかってきました。
 この事実は国際社会に大きな衝撃を与えます。旧ユーゴやルワンダでの集団強かんが問題となった時代です。1993年の国連の世界人権会議は「女性に対する暴力は人権侵害」と決議し、国連総会では「女性への暴力撤廃宣言」を採択しました。
 対応を迫られた日本政府は「慰安婦」調査を行い、93年には河野官房長官が「慰安婦」の強制を認めてお詫びと反省を発表しました。しかし政府は「法的責任はない」と「賠償」は行わず、国民からの募金で「女性のためのアジア平和国民基金」を推進したので、被害女性からは批判や受け取り拒否が起こりました。
 
●こうした国内外の動きに危機感をつのらせたのが、歴史修正主義の政治家やメディアでした。彼らは「慰安婦」を“戦場の売春婦”として、90年代後半から激しいバッシングに乗り出します。1997年度版の中学歴史教科書の全てに「慰安婦」が記述されたために教科書会社への攻撃が始まり、やがて教科書から「慰安婦」は削除され、2012年度版では遂にゼロになってしまいました。
 報道現場でも、90年代後半から「慰安婦」報道を抑える動きが強まりました。2000年の「女性法廷」を取り上げたNHKの番組が政治介入による改竄が暴露されて、その一端が明るみに出ました。「女性法廷」は右翼の猛攻撃を受けながら開催されましたが、各国から被害女性64人が参加し、海外メディアは95社、200名が取材に訪れて世界中に報じ、今では現代史に残る出来事となっています。ところが国内での報道は低調で、とりわけNHKが放送した「女性法廷」の番組は異常でした。法廷の起訴状も判決も主催団体もカットされ、出演者のコメントは脈絡なく編集され、「女性法廷」を否定するトーンになっていたのです。あまりのことに主催団体はNHKや制作会社を提訴したところ、その審理中にNHK職員の内部告発によって、安倍晋三官房副長官(当時)ら自民党の政治家たちの介入で、放送直前に番組が改竄されたことが明らかになりました。東京高裁では政治による番組改竄を認めて原告は勝訴、被告NHKらに200万円の賠償支払いを命じました。この事件は報道への政治介入が克明に暴かれた、放送史上稀にみる事件になりました。
 
●ここまで徹底して「慰安婦」がなきものにされるのは何故か。安倍首相は1993年に国会議員になってから一貫して、あの戦争は「アジア解放の正しい戦争」だったと言っています。しかし女性たちを性奴隷にした「慰安婦」制度は明らかな戦争犯罪であり、「正しい戦争」とは相いれません。そこで「慰安婦」は民間業者が連れ歩いたもので、日本軍に責任はなかったことにしたい…つまり日本軍が犯した加害事実に向き合う勇気がないのです。
 安倍首相は第1次安倍政権の時から「慰安婦の強制の証拠はない」と主張し続け、メディアは政権に同調して「慰安婦」を否定するか、報道を自粛してタブー扱いしてきました。2015年12月末に日韓両政府が「慰安婦」問題は「最終的・不可逆的解決」に達したとする日韓「合意」を発表し、日本のメディアの多くが「一件落着」と報じ、大方の世論もそう受け止めました。ところが、韓国の被害女性も世論も日本とは真逆で、日韓両政府への批判を強めており、この落差は大きくなるばかりです。このような日本国内の世論形成は、安倍首相たちが20年余りかけて「慰安婦」の報道と教育を管理・統制してきた結果だと言えましょう。
 昨年5月末には日本を含むアジア8ヵ国の民間団体がユネスコの世界記憶遺産に「日本軍『慰安婦』の声」の登録を共同申請しました。右派のメディアや日本政府はこの登録を阻止しようと、官「民」一体で取り組んでいます。日本の登録団体の中心にいるwamへの攻撃は激化し、爆破予告の脅迫状まで送られてきました。こうした不穏な動きは、安保法制下での出来事です。「慰安婦」問題を訴える輩は”敵“として攻撃してもいいのだ…と思う者たちがうごめき出したのです。
 
●安保法案をめぐる国会審議では、「慰安婦」制度に関する国連の勧告も、南スーダンアフガニスタンイラクなど紛争下での戦時性暴力についても、何ひとつ取り上げませんでした。私に参考人として意見を述べたり、公聴会で発言する機会を与えてほしかったと痛切に思います。国会審議で戦争遂行の装置だった「慰安婦」問題を議論できず、法案を廃案にできなかったことは、日本人としての戦後責任を果たせなかったという点で、慚愧の念に堪えません。「慰安婦」問題の真の解決を目指してきた被害女性や国内外の女たちの努力を無にすることだからです。
 私はジャーナリストとしての仕事も、「慰安婦」支援や資料館の運営に取り組んできたこれまでの人生も全て否定されたような衝撃と苦痛に襲われています。安保法制は、加害国だった日本がやってはならないことなのです。戦争と性暴力のない世界を築くためにも、違憲である安保法制を何としても廃止しなければなりません。
                                        以上
 

原告 高里鈴代
 
1 5歳で終戦を迎え、台湾から宮古島へ、そして那覇
 私は、現在76歳です。1940年に台湾で生まれました。父は東京農大卒業と同時に、台湾総督府農林省に勤務しました。私の家族は、米軍の爆撃を避けて防空壕で終戦を迎え、終戦の混乱の中をかいくぐって郷里の沖縄・宮古島に引き揚げてきました。そのとき私は5歳でした。
 私が小学校4年生の2学期に父の転職で那覇市に移りました。家庭の経済は、宮古島でそうであったように、那覇でも厳しく、母親の着物は下駄の鼻緒となって売られました。
 
2 フィリッピン留学が私の人生を決めた
 私は沖縄の短大卒業後、フィリッピン・マニラにあるハリス・メモリアル・大学へ留学しました。そこでの2年間が私の生き方を方向づけました。
 第1は、アジア・太平洋戦争で日本軍がフィリッピンの人々への残忍な戦争行為をした事実とそれが犠牲者に深い痛みをもたらしていたことを、現地の人々の口から繰り返し聞いて知ったことでした。
 もう1つは、クリスマス休暇で訪ねた友人の住んでいる町が、実は米軍基地の町であったことの衝撃でした。友人の町は、沖縄のコザに来ているのかと錯覚するほど、沖縄の基地の街そのものの姿でした。その街は、アジア最大の米海軍スービック基地のオロンガポ市でした。沖縄に基地があるのではなく、基地の一部に沖縄があると強く実感しました。
 
3 売春防止法の制定が遅れた背景
 本土では、1956年に売春防止法が制定されていたのですが、沖縄にはありませんでした。1967年に、本土で売防法制定のために奔走していた矯風会の高橋喜久江さんが、沖縄での売防法成立の遅れを調査するために、来沖されました。私は高橋さんに同行し、沖縄の現状を学びました。立法院議会へ再三の立法要請がなされても、法律が成立しなかったのには2つ理由がありました。
 第1は、もし、売防法が成立したら、米軍兵士たちの暴力のはけ口は、かつてのようにまた地域社会に戻って来るのではないかという恐れが、議員たち及び地域社会の中に強くあったということでした。軍事支配を背景に、そこでは圧倒的なむき出しの暴力が日常的に存在していたのです。日本の敗戦により、沖縄の女性の身体は米軍兵士たちに文字通り踏み荒らされ続けてきたのです。米兵の容赦ない暴力から一般の人が逃れるために、沖縄に集娼地区が作られたのです。これが廃止されると、それ以前のように米兵が民家に踏み込んだり、歩いている女性を掴まえたりして手当たり次第に強姦をするようになるという心配でした。
 もう一つは、売防法が成立すると、女性たちが米兵から日々稼ぐドルはどこへ行ってしまうのかという心配でした。当時の沖縄の女性たちは、厳しい強制管理売春の中で生きて、沖縄経済を支えるドルをかせいでいたのです。私は、この女性の状況と彼女たちの心身をむさぼりつくすとでもいうしかない売買春の実態に触れて、女性の人権侵害であると強く思いました。
 
4 ベトナムの狂気は基地の街で
 そのような状況の中で、施行は2年後の復帰時として、1970年には売防法が成立しましたが、その同じ日にもうひとつの決議があります。それは当時前原高校3年の女子生徒がレイプの被害から逃れるために抵抗し体中をナイフで切られ重傷を負う事件を受けてのものです。沖縄は米兵からの暴力を防ぐための集娼地帯のはずだったのですが、実際はそういうものを越えて暴力が起こり続けていたわけです。70年の売防法制定日には、この女子高校生の被害に対する抗議声明が出されたのです。
 ベトナム戦争中、米兵は沖縄から出撃し、休暇になれば沖縄に戻ってきました。ベトナムに送られれば命の保障はないことを米兵たちは知っていましたし、殺戮の現場から戻ってきた兵隊は荒れており、売春女性たちが彼らの不安や怒りなどの受け皿とされていました。
 私は高橋さんに同行しての見聞で、沖縄の女性の問題に深く関わりたいと考え、その後は、まず、売春に関する新聞資料の収集を始め、売防法の問題に関心を持つようになっていきました。
 
5 婦人相談員に
 私は、婦人相談員の仕事を知って勉強をし直して、1977年4月、東京都婦人相談センターの電話相談員第一号に採用され、女性が女性であるが故に受ける暴力、理不尽な差別扱いなどの相談に携わるようになりました。1981年4月に沖縄へ帰り、1年間、うるま婦人寮(婦人保護施設)でボランティアの後、那覇市の婦人相談員として1982年から7年間働きました。
 
6 那覇市議会での活動
 私は、1989年、那覇市議会議員へ立候補し当選しました。以後、市議会議員を4期務めました。婦人相談員としての仕事は、女性を人権の回復へ支援する意義ある仕事だと思っていましたが、婦人相談員の仕事と司法の限界を思い知らされ、社会の性差別意識を変えたいという思いから選挙に出ることを決意し、女性たちと共に当選を勝ち取ったのです。
 
7 北京女性会議へ
 日本への復帰後も米軍の削減はなく、米軍の演習による事故・事件は続き、女性に対する暴力も後を絶ちませんでした。1995年、国連の世界女性会議(北京会議)への参加準備の中で、沖縄は直接の紛争状態の中にあるのではないけれども、戦後から50年にわたり、大規模の米軍が駐留し、人権侵害、生命の危機、暴力が起こり続けており、「長期軍隊駐留下における性暴力」を戦争犯罪として捉えるべきではないかと、「軍隊・その構造的暴力と女性」のワークショップを北京会議の一角で開きました。
 
8 北京会議の最中に3米兵による少女強姦事件が起こった
 北京会議のさなか、1995年9月に起こった3米兵による少女強姦事件は、復帰後の米軍人の特徴を現した事件です。事件に抗議する県民大会には、沖縄の人々の積年の怒り、痛み、そしてこれ以上の人権侵害を許さないと8万5千人の県民が結集しました。
 この県民大会の会場で、私は、女性たちと一緒に立ち上げた「強姦救援センター・沖縄、REICO」を10月25日に開設するとのチラシを配り続けていました。性暴力相談活動は、今も継続しています。
 同時にその県民大会直後に結成されたのが、女性たちによる「基地・軍隊を許さない行動する女たちの会」です。早速に政府に対して、日米地位協定を北京行動綱領(日本政府は署名しています)の精神に則して改正することを求めました。
 
9 私が原告になった理由・私の被害
 私は、沖縄で米兵による女性の人権侵害をつぶさに近距離でみてきました。沖縄は71年間軍隊の支配下にあります。
 婦人相談員として、あるいは那覇市市議会議員として、常に女性たちの苦しい現実に寄り添い、解決に力を尽くしてきました。沖縄ではいまも毎日軍隊との共存を強いられているのです。軍隊が女性にとってどのようなものであるかを身に沁みて知りました。
 軍隊の本質は、家父長制に基づく力による支配を強行する組織です。沖縄では特に、米軍人の女性に対するレイプ、絞殺事件は、9ケ月の乳児から5歳の幼児を含めあらゆる年齢に及んでおり、ベトナム戦当時には、年間2~4人の女性が絞殺されました。
 沖縄の戦後71年を軍隊の女性への性暴力、殺害などを通して振り返る中で、その人権侵害性を声を大にして訴えます。軍隊の駐留によってもたらされる暴力、それによって傷つき、苦しむ女性たちの存在、その回復支援に取り組んできた者として、訴えます。
 私は、少しでも性差別のない、暴力のない社会を作ろうと働いてきました。沈黙を強いられている女性たちと共に、暴力の元凶である米軍の撤退、削減を求め、声を上げてきました。しかし、安保法制法は、その全く真逆なところにあり、私の、私たちの声を完全にかき消すものです。戦後71年経って、再び振り出しに押し戻されたような屈辱感と怒りを強く感じます。私は、安保法制法の撤回を求めます。
                                        以上
 

原告ら代理人 弁護士 角田由紀子
 
1 戦争被害の現在性
 日本において、戦争が一般の人々に与えた被害の悲惨な事実は、アジア・太平洋戦争の時期を通じて、多くの人々の体験の中に刻印されています。女性や子どもはその被害の中心にありましたが、今日に至るも被害は癒されることなく、人々の心身の深いところで存在し続けております。今回の安全保障法制は、それらの深い傷を呼び起し、再体験を迫るものです。安全保障法制の制定過程そのものが、女性の存在を無視し、女性の声に一度たりとも耳を傾けることなく、文字通り、暴力的なものでした。その内容と制定過程に直面して、原告たちは、深い苦痛と不安に曝されています。その苦痛や不安は、漠たるものではなく、現実に女性たちの心身に深い打撃を与えるものです。
 
2 戦争と女性の性的被害について
 戦争がその本質において、女性への性的加害行為を伴うものであることは、過去世界中の様々な戦争で、十二分に証明されております。そのことは、沖縄では戦争中に始まり敗戦後から今日まで、常に現在進行形であり、どれだけ多くの女性が命を奪われ、人としての尊厳を奪われたかを、特に注目しなければなりません。この事実は、私たちに戦争と女性の関係の本質をはっきりと示すものです。
 日本軍「性奴隷制」の問題の真摯な解決を置き去りにした政権による安全保障法制に、原告たちは「安全保障」という言葉とは裏腹に極めて大きな危険を感じております。安全保障法制は、次の戦争を確実に準備するものとして、目に見える形であるいは見えない形で、既に女性たちの生活の安全を脅かしております。原告たちの多くは、女性への性暴力を含む暴力と闘ってきております。この社会を女性や子どもなど権力を持たない人々にとってできるだけ安全なものにしたいと、日々努力をしてきました。それが、戦争という究極の暴力を肯定する法制がとられたことで、これまでの努力が根こそぎ否定されてしまいました。それは、そのことに力を尽くしてきた原告たちの生き方そのものの否定であります。原告たちの努力を支えてきた根幹にあるのは、日本国憲法です。
 憲法の平和主義、個人の尊重などを明確に否定する今回の法制は、原告たちから将来への希望を奪い、打ちのめしました。言うまでもないことですが、女性への暴力の加害者の多くは、男性であり、男性のそのような暴力にいわば「お墨付き」を与えるのが、今回の法制です。その法制は、昨年3月29日に施行され、昨年11月から南スーダンに派遣されている自衛隊には、武力行使を容認する新任務が与えられました。南スーダンでは、性暴力が頻繁に起きていることは、新聞等で報道されており、国民の多くが知っております。このことは、国内での女性の安全に大きく悪影響を与えるものといわざるを得ません。
 いかに近代化された戦争であっても、戦争はそれに従事する人間を必要とします。かつての戦争の時代に国を挙げて「産めよ増やせよ」がとなえられ、その実現が強要されました。病弱な女性が子どもを産むことに耐えられず、堕胎をした例がありましたが、その女性は堕胎罪で逮捕されました。堕胎罪は、今でも刑法に規定されており、戦争に向かう社会が、女性の性にどのように敵対的であるかの例です。少子化対策という言葉でさまざまに行われている政策は、「産めよ増やせよ」政策と無関係ではありません。
 
3 個人としての女性の否定
 戦争とそれに伴う戦時性暴力の基盤になっているのは、日常生活の隅々までを支配している家父長制です。今日では「家父長制」という言葉が使われることは少なくなりましたが、社会の仕組みとしてのそれは生き続けております。
 家父長制の仕組みがむき出しであった社会において、憲法は女性に人間解放をもたらしました。戦争肯定社会は、憲法が女性にもたらした個人としての権利を否定するものです。多くの原告たちは、憲法13条、14条及び24条等によって保障された人権をしっかりと手にして戦後の人生を築いてきました。戦前には閉ざされていた多くの場所で女性たちは、羽ばたいてきたのです。もちろん、彼女たちの生き方の骨格は憲法です。しかし、安全保障法制は、それらを否定するものです。原告たちが体験させられた苦痛や恐怖や不安は、彼女たちが生きることの根幹にかかわるものです。
 ある原告は、教育者や研究者として、憲法に導かれて新しい社会を作ることに尽力してきました。ある原告は、政治家として国会等で奮闘してきましたが、安保法制法は、女性政治家からその本来の活動の場を奪い、大きな被害を与えました。ジャーナリストや公務員等の原告たちも、その自由な活動を制約されたり、不本意な活動を強制される危機に瀕しており、これらの原告たちが具体的に受けた苦痛に対して、被告が損害賠償をするべきであります。原告たちが現に被っている被害及び損害が正当に償われるべきです。そのために、司法が憲法によって付与されている責務を果たさねばなりません。
 私は原告の女性たちが、既に被っている被害について、その一部を指摘しました。詳細は、今後原告本人尋問等で立証する予定です。 
                                        以上
 

(弁護士・金原徹雄のブログから)
2016年9月3日
東京・安保法制違憲訴訟(国賠請求)が始まりました(2016年9月2日)
※過去の安保法制違憲訴訟関連のブログ記事にリンクしています。
2016年9月6日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(1)~東京・国家賠償請求訴訟(第1回口頭弁論)における原告訴訟代理人による意見陳述
2016年9月10日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(2)~東京・国家賠償請求訴訟(第1回口頭弁論)における原告による意見陳述
2016年10月4日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(3)~東京・差止請求訴訟(第1回口頭弁論)における原告訴訟代理人による意見陳述
2016年10月5日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(4)~東京・差止請求訴訟(第1回口頭弁論)における原告による意見陳述

2016年12月9日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(5)~東京・国家賠償請求訴訟(第2回口頭弁論)における原告代理人による意見陳述

2016年12月10日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(6)~東京・国家賠償請求訴訟(第2回口頭弁論)における原告による意見陳述

2017年1月5日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(7)~寺井一弘弁護士(長崎国賠訴訟)と吉岡康祐弁護士(岡山国賠訴訟)の第1回口頭弁論における意見陳述

2017年1月7日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(8)~東京・差止請求訴訟(第2回口頭弁論)における原告訴訟代理人による陳述
2017年1月8日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(9)~東京・差止請求訴訟(第2回口頭弁論)における原告(田中煕巳さんと小倉志郎さん)による意見陳述


(付録)
「女の平和」1.17国会ヒューマンチェーンのテーマ~弱いものいじめをするな
  

予告・田中優氏講演会「健全な農地と地球環境を未来につなぐ~奇跡の黒い土「テラ・プレタ」をヒントに」2/22@和歌山市

 今晩(2017年月13日)配信した「メルマガ金原No.2722」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
予告・田中優氏講演会「健全な農地と地球環境を未来につなぐ~奇跡の黒い土「テラ・プレタ」をヒントに」2/22@和歌山市

 巻末リストのとおり、メルマガ(ブログ)でたびたび取り上げてきた田中優さんですが、何故かかけ違って一度も直接お話を伺ったことがなかったのですが、来週、ようやくその講演をうかがえるようです。
 来る2月22日(水)、JR和歌山駅前のJAビル2階「和(なごみ)ホール」において、NPO法人和歌山有機認証協会が総会を開いた後の午後7時から、田中優さんの講演会が開かれるとのご案内(チラシ同封)が、共催団体の1つであるNPO法人わかやま環境ネットワークから届きました。
 聴講するためには事前申込が必要なので、早速、申込先である和歌山有機認証協会に電話して参加を申し込みましたが、まだ申込み可能ということでしたので、今日のメルマガ(ブログ)でご案内することとしました。
 
 田中優さんは、チラシ記載の紹介文に書かれているとおり、様々な分野で活躍されていますが、巻末リストのとおり、私はそのうちの、電力会社に頼らない「オフグリッド生活」の実践者・先駆者としての田中優さんに特に注目してきました。
 22日の講演のテーマは、「健全な農地と地球環境を未来につなぐ~奇跡の黒い土「テラ・プレタ」をヒントに」というもので、「オフグリッド」とは直接の関係はありません。何しろ、和歌山有機認証協会の総会終了後に行う講演会ですからね。
 けれども、「健全な農地」も「オフグリッド」も、地球環境という大きなくくりの中ではもちろん密接な関連がある訳で、多くの方に参加をお勧めしたい講演会です。
 以下に、チラシ記載情報を転記します。

チラシ文字情報から引用開始)
チラシ表面-
~健全な農地と地球環境を未来につなぐ~
奇跡の黒い土
「テラ・プレタ」をヒントに
 
講師 田中 優
    環境・経済・平和をキーワードに活動する実践的リーダー
 
日時 2017年2月22日(水)19:00~21:00
場所 JAビル2F 和(なごみ)ホールAB
    (JR和歌山駅徒歩2分:和歌山市美園町5-1-1)
参加費 無料
申込 要事前申込
    和歌山有機認証協会
TEL 073-499-4736
FAX 073-499-4735
Mail 
woca@vaw.ne.jp
 
奇跡の黒い土「テラ・プレタ」
それは、遙か昔南米アマゾン流域で作物を作っていた痕跡。近年、各分野において、古いモノから新しいコトが発見される事例が相次いでいますが、「テラ・プレタ」もそのひとつ。
多くの農家さんの関心事である「理想の土づくり」と、現代を生きるわたしたち全員に関わる「地球温暖化」、この2つの課題解決になる大きなヒントがあるようです。
 
主催:NPO法人 和歌山有機認証協会・NPO法人 わかやま環境ネットワーク(WeNET)・和歌山県地球温暖化防止活動推進センター
協力:サスティナブルライフスタイル研究会ofわかやま(SLOW)・NPO法人 市民の力わかやま・サ行研究所
 
チラシ裏面-
持続可能な社会を目指したい人、
農家さん、炭焼き職人さん、地主さん
山主さん、食・農・環境関連の行政さん、
温暖化防止活動推進員さん、お越しください。
 
講演会後の懇親会
予約が必要となります。お名前、ご連絡先を明記のうえ、下記までお送りください。場所は、和歌山駅東口近くです。定員20名(〆切は、定員に達し次第)
FAX  073-499-4735
e-mail
 
woca@vaw.ne.jp
 
18:15より同会場にて、第18回 和歌山有機認証協会通常総会を開催します。OPEN形式ですので、どなたでもお気楽にご来場ください。
 
田中優さんプロフィール
1957年東京都生まれ。
地域での脱原発やリサイクルの運動を出発点に、環境、経済、平和などの、さまざまなNGO活動に関わる。2012年末に岡山に移住。
2013年5月、自宅では電力会社との電線をカットし電力会社に頼らない太陽パネルと独立電源システムの生活、「オフグリッド生活」を始めた。
現在「未来バンク事業組合」「天然住宅バンク」理事長、「日本国際ボランティアセンター」理事、「ap bank」監事、「一般社団法人 天然住宅」共同代表、「自エネ組」相談役を務める。横浜市立大学恵泉女学園大学の非常勤講師。
公式HP 田中優の持続する志
http://www.tanakayu.com/
 
著書
『未来のあたりまえシリーズ1-電気は自給があたりまえオフグリッドで原発のいらない暮らしへ-』合同出版、『放射能下の日本で暮らすには?食の安全対策から、がれき処理問題まで』筑摩書房、『子どもたちの未来を創るエネルギー』子どもの未来社、『シリーズいますぐ考えよう!未来につなぐ資源・環境・エネルギー①~③』岩崎書店、『地宝論』子どもの未来社、『原発に頼らない社会へ』武田ランダムハウス、『幸せを届けるボランティア 不幸を招くボランティア』河出書房新社、『環境教育 善意の落とし穴』大月書店、『おカネが変われば世界が変わる』コモンズ、『今すぐ考えよう地球温暖化1~3』岩崎書店、子ども向け→『世界から貧しさをなくす30の方法』合同出版、『おカネで世界を変える30の方法』合同出版、『天然住宅から社会を変える30の方法』合同出版、『地球温暖化/人類滅亡のシナリオは回避できるか』扶桑社新書、『戦争って環境問題と関係ないと思ってた』岩波書店、『非戦』幻冬舎(以上、共著含む)
ほか多数!!
 
田中優さんのスゴイところ!
データ収集力
高い分析力
豊かな発想力
発想を形にする行動力
ネットワーク構築力
聴く人に希望を与える滑らかな話術
幅広い人に分かり易く伝える文章力
 
会員随時募集しています!
主催者連絡先
NPO法人 和歌山有機認証協会
 〒641-0014 和歌山市毛見996-2
 TEL:073-499-4736
e-mail:
woca@vaw.ne.jp
NPO法人 わかやま環境ネットワーク
和歌山県地球温暖化防止活動推進センター) 
 〒641-0014 和歌山市毛見996-2
 TEL:073-499-4734
e-mail:
wenet@vaw.ne.jp
(引用終わり)
 
 なお、私のところに封書で届いた講演会の案内文書には、主催3団体(といっても、事務所は同じところにありますが)の紹介文が掲載されていましたので、ご参考までに、これも転記します。
 
(引用開始)
~主催団体について~
NPO法人 和歌山有機認証協会(理事長:小林民憲)
 エネルギーと食料の地域自給をめざして活動していた市民団体「和歌山環境ネットワーク」(現・わかやま環境ネットワーク(WeNET)の前身)を母胎として、2000年1月設立、JAS法改定を県内農業の発展に生かそうと、同年10月、登録認定機関として農林水産大臣の認可を受け、以来、認証事業を通じて生産と消費を信頼という絆で結ぶ活動を続けてきた。
 〒641-0014 和歌山市毛見996-2
 TEL:073-499-4736 FAX:073-499-4735
 URL:
http://woca.jpn.org/w/
 
NPO法人 わかやま環境ネットワーク(代表理事:中島敦司)
 地球規模の環境危機を乗り越えるため、エネルギーと食料を自給できる地域作りをめざし1998年設立。2005年7月NPO法人格取得、同年9月和歌山県地球温暖化防止活動推進センター指定。現在約60の団体や企業が参加し、地球温暖化生物多様性、循環型社会、環境保全型農業など、環境全般に関する地域の協働の軸として活動している。
 〒641-0014 和歌山市毛見996-2
 TEL:073-499-4734 FAX:073-499-4735
 URL:
http://wenet.info/
 
和歌山県地球温暖化防止活動推進センター
 地域内で地球温暖化対策に関する普及啓発を行うこと等により地球温暖化の防止に寄与する活動の促進を図ることを目的に、「地球温暖化対策の推進に関する法律」(平成10年10月9日法律第117号・温対法)第24条に基づき地道府県知事等が、地域内で1団体を指定する。和歌山県は2005年7月にNPOわかやま環境ネットワークを指定。
(引用終わり)
 
 ところで、講演会のテーマである「テラ・プレタ」って何?という方が(私を含めて)大半であろうと思いますが、田中優さんの無料メルマガの記事が優さんのブログに転載されていましたので、その一部をご紹介しておきます。
 なお、さらに詳しい情報は、「田中優有料・活動支援版メルマガ」に掲載されているそうです。
 
田中優の持続する志(ブログ) 2017年2月10日
『荒野の知性』~アマゾン奇跡の黒い土「テラ・プレタ」~(2016.11.29発行 田中優無料メルマガより)
(抜粋引用開始)
■奇跡の「テラ・プレタ(黒い土)」
 ところがそのアマゾンに、「テラプレタ(黒い土)」と呼ばれる不思議な土が見つかった。最初は日系移民ぐらいしか注目しなかったものだが、連作障害を起こさず、何度も豊かな作物を収穫でき、過酷な熱帯の条件の中でも劣化していかない土なのだ。この「奇跡の土」は一体何なのか。
 西暦2002年になって、ある研究者が発表した。「テラプレタは人が作り出したもので、6000年、あるいはもっと以前から作られていたものだ」と。それは大きな衝撃だった。アマゾンの過酷な気象の中で、誰も手入れしないままに数千年の時を経て、未だに豊かな養分を維持していたのだ。
 そのテラプレタは、ゴミ捨て場のようなものだったと考える人もいる。土に200度程度の低温で焼いた未熟な炭と、炭を作るときに取れる木酢液を混ぜ、骨や陶器の破片、排泄物などが混ぜられたものだったからだ。しかしその考えもまた、かつて住んでいたアマゾンの人々を見くびった考えかもしれない。今、同様の土を作ろうと実験されているが成功しないのだ。大地から養分を集めて、維持される土を作るのは簡単ではない上、数千年も耐えるかどうかは年数を経ないと実証できないからだ。
 しかも驚かされるのはテラプレタの分布する広さだ。集めるとイギリス二つ分、フランス一国分の面積に匹敵するのだ。これだけの広さがあれば多くの人を養い、都市を形成するほどの収穫量も得られる。今では「エルドラドは実在したかもしれない」と考えられている。あまりにも多くの陶器片や埋蔵物は、点在する集落で使うには多すぎるのだ。
(略)
 ところがテラプレタの炭素吸収量は、これまで考えられていた「炭素吸収農法」よりけた外れに大きいのだ。実にその5倍から20倍も吸収できる。もし炭素源が足りるなら、たった1年で解決できてしまうのだ。
 そもそも炭は、人間が作ることのできる唯一の化石燃料だ。木材の8割の炭素を炭の中に固定し、燃やさない限りそのまま固定することができる。多孔質の空隙は微生物のマンションとなり、微生物は土壌から溶け出した微量元素を貯め混んでいく。
 そのおかげで長年経っても肥沃さが失われないのだと考えられている。この炭の技術では日本は群を抜いている。しかしその日本の技術もまた洗練されすぎたのかもしれない。白炭と呼ばれる高温で焼いた炭と、黒炭と呼ばれる中温の炭はあるが、200度という低温で焼く「半生の炭」などはない。
 私たちは、そろそろ「科学技術が高度に発達した現在が最も優れている」と思い込みを捨ててはどうだろうか。「科学の知性」はさまざまなものの説明には役立し、それぞれの原因を調べるには必要不可欠だ。しかし、それが新たなものを作るわけではない。新たな方策はいつも長年の「経験知」が作り上げている。
 これを荒野の知性と呼んだとすると、今新たに生まれつつある方策は荒野の知性が作っているではないか。
 第七の栄養素と呼ばれる「ファイトケミカル」にしても、ずっと生活の中に生かされてきた調理法はそれを活かしきっている方法だし、「乳酸菌」と呼ばれるまでもなく漬物などたくさんの利用がなされてきた。
 私たちの「科学的慢心」は、もう捨てたらどうだろうか。新たな知性は荒野から生まれる。それを学ぶことで、もしかしたら地球人は温暖化防止の方策を得られるかもしれない。しかしそれは科学が見出したものではない。荒野の知性を科学が説明したに過ぎないのだ。
-☆---★-より詳しくは田中優有料・活動支援版メルマガをご覧ください。-☆---★

(引用終わり)
 
(弁護士・金原徹雄のブログから)
2013年2月24日
再生可能エネルギー固定価格買取制度と「オフグリッド」生活

2013年7月28日
「女性自身」のレポートと映像で知る田中優さんの“オフグリッド生活”
2013年10月5日

木村俊雄氏が語る“メルトダウンの真実“、田中優氏と語る“エネルギーの自給自足”
2014年6月22日
田中優さんが先導する“静かな革命”
2014年10月12日
再生可能エネルギー固定価格買い取り制度の曲がり角から考える「オフグリッド生活」~田中優さん宅取材動画を視る
2014年12月20日 
「日刊SPA!」で読む“オフグリッド生活”の新展開
2016年4月10日
電力自由化とオフグリッドの未来~田中優さんの無料メルマガを読む

田中優・奇跡の黒い土(表)田中優・奇跡の黒い土(裏)